名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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オルフェーヴルのイメージビジュアル
オルフェーヴルOrfevre
Orfevre

オルフェーヴル

通算成績21戦12勝

獲得賞金157,621万円

生年月日 2008.05.14(平成20年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
オルフェーヴルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 池添謙一 2:32.3 上り36.0映像
2 GI凱旋門賞 フランス 芝2400 1人気 C.スミヨン 映像
1 GIIフォワ賞 フランス 芝2400 1人気 C.スミヨン 2:41.4 映像
1 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 1人気 池添謙一 1:59.0 上り33.0映像
2 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 池添謙一 2:23.1 上り32.9映像
2 GI凱旋門賞 フランス 芝2400 2人気 C.スミヨン 映像
1 GIIフォワ賞 フランス 芝2400 1人気 C.スミヨン 2:34.2 映像
1 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 池添謙一 2:10.9 上り34.7映像
11 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 1人気 池添謙一 3:15.6 上り34.0映像
2 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 1人気 池添謙一 3:11.9 上り36.7
1 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 池添謙一 2:36.0 上り33.3映像
1 GI菊花賞 京都 芝3000 1人気 池添謙一 3:02.8 上り34.6映像
1 GII神戸新聞杯 阪神 芝2400 1人気 池添謙一 2:28.3 上り32.8映像
1 GI東京優駿 東京 芝2400 1人気 池添謙一 2:30.5 上り34.8映像
1 GI皐月賞 東京 芝2000 4人気 池添謙一 2:00.6 上り34.2映像
1 GIIスプリングS 阪神 芝1800 1人気 池添謙一 1:46.4 上り34.3映像
3 GIIIきさらぎ賞 京都 芝1800 2人気 池添謙一 1:47.8 上り33.2
2 GIII日刊スポシンザン記念 京都 芝1600 3人気 池添謙一 1:34.2 上り33.5
10 GII京王杯2歳S 東京 芝1400 1人気 池添謙一 1:22.6 上り33.8
2 OP芙蓉S 中山 芝1600 1人気 池添謙一 1:35.3 上り34.5
1 2歳新馬 新潟 芝1600 2人気 池添謙一 1:37.4 上り33.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
オルフェーヴルの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ステイゴールドStay GoldサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ゴールデンサッシュディクタスDictus
ダイナサッシュ
オリエンタルアートメジロマックイーンMejiro McQueenメジロティターン
メジロオーロラ
エレクトロアートノーザンテーストNorthern Taste
グランマスティーヴンスGrandma Stevens

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2008年生まれの栗毛の牡馬。父ステイゴールド、母オリエンタルアート。主な勝ち鞍は皐月賞・東京優駿・菊花賞。

金細工師の名 ― 兄と、母の血

2008年、白老ファームに生まれた栗毛。名はフランス語で金細工師を意味するオルフェーヴル。父ステイゴールドの「金」と、母オリエンタルアートの「芸術」から導かれた一語だった。 血の物語はこの母系にある。母父はメジロマックイーン、天皇賞を連覇したステイヤーの名門。父ステイゴールドは現役時代、勝ちきれぬまま善戦を重ねた個性派で、その仔には豊かな才能とともに、抑えのきかぬ気性が流れていた。全兄は朝日杯・宝塚記念・有馬記念を勝ったドリームジャーニー。同じ父母から、小柄な兄と、荒々しい弟が生まれた。馬主はサンデーレーシング、預かるのは栗東の池江泰寿厩舎。手綱を託されたのは池添謙一。この男と一頭の暴れ馬の、長い旅が始まる。

暴れ馬の三冠 ― 二〇一一年

才能は誰の目にも明らかで、気性はその才能と同じだけ激しかった。新潟の新馬戦を勝った直後、ゴール後に池添を振り落として放馬し、記念撮影は中止になったという。だが春、馬は結果で気性をねじ伏せる。皐月賞は四番人気から抜け出し、震災の影響で東京開催となった一戦を制した。 東京優駿は不良馬場の中、狭い隙間を脚で割って抜け出す。そして菊花賞、京都の3000mを単勝1.4倍の支持に応えて完勝。皐月賞・ダービー・菊花賞――史上七頭目のクラシック三冠。鞍上の池添にとっても初めての三冠だった。暴れ馬は、世代の頂点で戴冠した。

逸走と大敗 ― 才能の裏側

四歳の春、阪神大賞典で事件が起きた。掛かり気味に進んだオルフェーヴルは、向こう正面で突然外ラチへ向かって逸走する。池添が手綱を引いて立て直すと今度は最内まで後退し、それでも内の馬を見つけて再加速し、大外から猛然と差し込んできた。半馬身差の2着。池添をして、化け物と言わしめるほどの走りだった。勝ちに等しい負けだった。 だが次の天皇賞(春)は本当の負けだった。京都の3200m、単勝1.4倍の絶対人気で11着の大敗。三冠馬が、二桁着順に沈んだ。才能の裏側には、いつも制御しきれない何かが張りついていた。続く宝塚記念で2分10秒9、ようやく古馬GIを勝ったとき、池添は涙を見せた。脆さを知るからこそ、勝利は重かった。

二〇一二年・凱旋門賞 ― あと百メートル

夏、海を渡った。前哨戦フォワ賞を快勝し、凱旋門賞では二番人気に推される。ロンシャンの直線、スミヨンを背にしたオルフェーヴルは大外から猛然と伸び、ついに先頭に立った。日本馬の悲願が、目の前にあった。 だが残り百メートル、馬は内へ大きくよれた。脚色が鈍ったその一瞬を突いて、伏兵ソレミアが外から差し切る。クビ差の2着。先頭に立ってから、勝利だけが手のひらからこぼれた。帰国後のジャパンカップでも、府中の直線でジェンティルドンナと馬体をぶつけ合いながら2着。世代の牝馬に、首の上下だけ及ばなかった。勝てた、と誰もが思うレースで、この馬は勝てなかった。

二〇一三年・凱旋門賞 ― 高い壁

五歳。国内では復活を示し、産経大阪杯を完勝して再び欧州へ向かう。フォワ賞をまた勝ち、二度目の凱旋門賞。今度こそ、と日本中が見守った。 しかし立ちはだかったのは、当年三歳の牝馬トレヴだった。オルフェーヴルは前年と同じく直線でしっかりと脚を使い、力を出し切った。それでもトレヴは別次元の脚で抜け去り、着差は開いた。二年連続の2着。前年は自らよれて落とした一勝を、この年は完璧に走ってなお届かなかった。凱旋門賞の壁は、日本馬の前で二度、同じ馬を撥ね返した。

八馬身 ― 二〇一三年有馬記念

引退レースは、有馬記念と決まっていた。凱旋門賞で二度敗れて帰ってきた馬に、国内のターフは最後の舞台を用意した。三コーナー過ぎ、池添がスパートをかけると、もう勝負はついていた。後続を引き離し、引き離し、ゴール板を駆け抜けたときその差は2着に八馬身。 中山の2500mを2分32秒3。これがこの馬の、そして二人の最後のレースになった。表彰式で池添は、この馬を世界一強い馬だと言い切った。凱旋門賞という世界の頂では二度退けられた馬を、騎手は迷わず世界一と呼んだ。届かなかった舞台があるからこそ、その言葉は強がりではなく、最も近くで力を知る者の確信として響いた。

二十一戦十二勝 ― 脆さという才能

通算二十一戦十二勝。獲得賞金15億7621万円。三冠、宝塚記念、有馬記念二勝、そして凱旋門賞2着が二度。非勝利は九度――新馬戦後のオープン2着、京王杯での二桁着順、阪神大賞典の逸走、天皇賞の大敗、ジャパンカップの惜敗、そして二つの凱旋門賞。 この馬の負けには、いつも「あと少し」と「制御できぬ何か」が同居していた。逸走しても差し返す才能と、先頭に立ってよれてしまう脆さは、同じ一本の気性から出ていた。完成された優等生ではなく、暴れながら世界に最も近づいた一頭。だからこそ、勝ち負けの数字を超えて記憶に残る。引退後は種牡馬となり、2015年には顕彰馬に選ばれた。荒々しい才能は、いま血を通して受け継がれている。金細工師の名を持つ馬が遺したのは、磨かれきらなかったがゆえに眩しい、もう一つの強さの形だった。

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