名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ノーヴァレンダのイメージビジュアル
ノーヴァレンダNova Lenda
Nova Lenda

ノーヴァレンダ

通算成績18戦6勝

獲得賞金11,954万円

生年月日 2016.02.09(平成28年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ノーヴァレンダの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
8 JpnⅢマーキュリーカップ 盛岡 ダ2000 3人気 森泰斗 2:04.6 上り40.0
1 JpnⅡダイオライト記念 船橋 ダ2400 5人気 森泰斗 2:37.2 上り41.1
1 報知オールスターカップ 川崎 ダ2100 1人気 森泰斗 2:14.4 上り39.6
1 スパーキングオールス 川崎 ダ2100 1人気 森泰斗 2:13.8 上り37.8
2 生田OP 川崎 ダ2000 2人気 森泰斗 2:09.3 上り38.8
15 OP阿蘇S 小倉 ダ1700 6人気 岩田望来 1:45.4 上り39.0
12 OPアハルテケS 東京 ダ1600 14人気 菅原明良 1:36.0 上り36.7
6 L仁川S 阪神 ダ2000 6人気 A.シュタルケ 2:04.5 上り38.3
3 JpnⅢ佐賀記念 佐賀 ダ2000 5人気 A.シュタルケ 2:07.4 上り38.6
5 L福島民友カップ 福島 ダ1700 7人気 中谷雄太 1:45.7 上り38.0
14 GIIIみやこS 京都 ダ1800 11人気 松山弘平 1:52.8 上り40.4映像
3 JpnⅢ白山大賞典 金沢 ダ2100 5人気 和田竜二 2:16.1 上り39.3
9 GIIIユニコーンS 東京 ダ1600 5人気 北村友一 1:36.8 上り37.9映像
5 OP伏竜S 中山 ダ1800 2人気 石橋脩 1:54.6 上り39.1
1 JpnⅠ全日本2歳優駿 川崎 ダ1600 5人気 北村友一 1:42.8 上り40.0
1 もちの木賞 京都 ダ1800 2人気 北村友一 1:52.2 上り37.2
1 2歳未勝利 新潟 ダ1800 1人気 北村友一 1:54.9 上り36.6
2歳新馬 阪神 ダ1800 1人気 川田将雅

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ノーヴァレンダの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ダイワメジャーDaiwa MajorサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
スカーレットブーケノーザンテーストNorthern Taste
スカーレットインクScarlet Ink
モンプティクールクロフネKurofuneフレンチデピュティFrench Deputy
ブルーアヴェニューBlue Avenue
ゲートドクールGaiete de CoeurLomond
Gay Apparel
STORY

旅程 — この馬の物語

2016年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ダイワメジャー、母モンプティクール。

「新しい伝説」という名 ― 心の一族に生まれて

2016年2月9日、北海道安平町のノーザンファームで、一頭の黒鹿毛の牡馬が生まれた。父ダイワメジャー、母モンプティクール、母の父はクロフネ。 母の名はフランス語で「私の小さな心」を意味し、その母はゲートドクールという。この牝系は「クール(cœur=心)」の一語を、代々の名に繰り返し織り込んできた一族だった。祖母ゲートドクールの娘リトルオードリーは1996年の報知杯4歳牝馬特別――現在のフィリーズレビュー――を勝ち、オークスではエアグルーヴの3着に食い込んでいる。同じ祖母から枝分かれした先には、のちにフェアリーステークスと紫苑ステークスを勝つファインルージュ、青葉賞と京都大賞典を勝つプラダリアが控えていた。三つ上の全姉ブランシェクールは中央で4勝を挙げ、TCK女王盃、レディスプレリュード、エンプレス杯と、ダートグレードで三度の二着を並べている。 その一族に生まれた黒鹿毛に与えられたのは、しかし母系の言葉ではなかった。ノーヴァレンダ。ポルトガル語で「新しい伝説」。登録された馬名の意味には、願いがそのまま書き添えられている――伝説になるような活躍を。キャロットクラブが総額2800万円で募った出資者たちは、その願いに乗った。

二歳の暮れ、川崎の重馬場

2018年9月29日、阪神のダート1800m。単勝1番人気に支持された新馬戦は、しかしゴール板に届かなかった。跛行を発症して競走中止。「新しい伝説」を背負った最初の一戦は、着順の残らない一行で終わっている。 二週間後の新潟、2歳未勝利。北村友一を背に2番手から進み、直線で後続を突き放した。11月の京都・もちの木賞も同じ形で、ダンサーバローズに4馬身差をつける。二連勝で、暮れの川崎へ向かった。 12月19日、全日本2歳優駿。重馬場のダート1600m、14頭立て。ノーヴァレンダは5番人気だった。三週間前に兵庫ジュニアグランプリを4馬身差で勝ってきたデルマルーヴルもいる。それでも先団で流れに乗り、3コーナーで先頭に立つと、直線で並びかけてきたデルマルーヴルをアタマ差だけ抑え込んだ。勝ち時計1分42秒8。三連勝で、二歳ダートの頂点に立つ。 鞍上の北村友一にとって、これが初めてのJpnI級制覇だった。そして栗東の斉藤崇史にとっては、中央・地方を通じての重賞初制覇。大学を出てノーザンファームで働き、松永幹夫厩舎で厩務員から調教助手へ上がり、2016年に自分の看板を掲げたばかりの調教師である。開業三年目の厩舎に最初のタイトルを運んできたのは、ダートの二歳馬だった。

勝てなかった九戦

三歳になると、勝ち鞍が止まった。 伏竜ステークス5着、東京のユニコーンステークスは9着。秋、金沢の白山大賞典でグリムから0秒2差の3着に踏みとどまったが、京都のみやこステークスは14着、福島民友カップは5着。明けて2020年は佐賀記念3着、仁川ステークス6着。そこから一年三か月、この馬は競馬場から姿を消す。 復帰戦の東京・アハルテケステークスは12着、8月の小倉・阿蘇ステークスは15着。2021年8月18日、JRAの競走馬登録が抹消された。中央での通算は10戦2勝。二歳の暮れのあの一戦のあと、九戦して勝てないままだった。名前だけが、実績よりずっと先を歩いていた。

先手を取る馬に生まれ直す ― 川崎・内田勝義厩舎

移った先は、川崎の内田勝義厩舎。二歳の暮れにJpnIを掴んだのと同じ競馬場が、こんどは所属地になった。 南関東で手綱を託されたのは森泰斗。足利でデビューし、足利と宇都宮の廃止に二度あいながら船橋にたどり着き、のちに南関東リーディング9度・地方競馬全国リーディング6度を数えることになる騎手である。 2021年11月11日、転入初戦の生田オープン。ゲートを出るとハナを切り、ハイランドピークにクビ差の2着。これが、南関東でのこの馬の形になった。12月14日、A2・B1条件の準重賞スパーキングオールスターチャレンジでも同じように主張して逃げ、2着に7馬身差をつける。勝ち時計2分13秒8は、時計の出る馬場だったとはいえ、同じ川崎の2100mで行われたその年の川崎記念(2分14秒9)を上回っていた。三年ぶり、四つ目の勝ち鞍だった。 年が明けて1月3日、川崎の重賞・報知オールスターカップ。1番人気に応えてまた逃げ、エルデュクラージュに2馬身半差をつけて押し切る。全日本2歳優駿以来、三年ぶりのタイトルだった。この勝利で得た優先出走権のうち川崎記念は使わず、陣営が選んだのは船橋の2400mだった。

十三年ぶりの扉 ― 二〇二二年三月二十三日、船橋

船橋競馬場、第67回ダイオライト記念。ダート2400m、馬場は不良。14頭のうち4頭が中央からの遠征で、前年のJBCクラシックを制した船橋のミューチャリーも顔を揃えた。ノーヴァレンダは5番人気。馬体重549kgは、生涯でいちばん大きな数字だった。 ゲートを出るとすぐ先手を取り、そのまま行った。不良馬場の2400mを引っ張って、脚色は最後まで衰えない。2着エブリワンブラックに2馬身半、3着ミューチャリーはさらに半馬身後ろ。勝ち時計2分37秒2。 地方所属馬がこのレースを勝つのは、2009年のフリオーソ以来13年ぶりだった。ノーヴァレンダにとっては、全日本2歳優駿以来、三年三か月ぶり二度目のダートグレード制覇。森泰斗は地元・船橋の大レースを勝てた喜びを語り、最後は馬自身の力で勝ってくれたのだと振り返っている。

盛岡、七月十八日

2022年7月18日、盛岡競馬場。マーキュリーカップ、ダート2000m、稍重。3番人気のノーヴァレンダは8着に終わった。勝ったのはバーデンヴァイラー――栗東・斉藤崇史厩舎の馬である。二歳の暮れに川崎でこの馬から最初の重賞タイトルを受け取った調教師が、その日は前を行く側にいた。 レースを終え、上がり運動をしている最中に、ノーヴァレンダは倒れた。心臓麻痺だった。六歳。その日のうちに、生涯が閉じた。 18戦6勝、獲得賞金1億1954万円。二歳の暮れに川崎で頂点に立ち、九戦勝てずに中央を去り、南関東で先手を取る馬に生まれ直して、船橋の不良馬場に十三年閉じていた扉をこじ開けた。母系が代々受け継いできた「心」の一語を離れ、ポルトガル語で「新しい伝説」と名づけられた黒鹿毛は、その名に託されたとおりの道筋を、六年五か月で走り切っている。

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