名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ノットゥルノのイメージビジュアル
ノットゥルノNotturno
Notturno

ノットゥルノ

通算成績26戦5勝

獲得賞金29,295万円

生年月日 2019.04.16(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ノットゥルノの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 5人気 武豊 2:03.6 上り38.1映像
3 JpnⅡ名古屋グランプリ 名古屋 ダ2100 2人気 武豊 2:14.2 上り40.5
3 JpnⅢ佐賀記念 佐賀 ダ2000 1人気 鮫島克駿 2:09.2 上り38.4
2 JpnⅢ名古屋大賞典 名古屋 ダ2000 4人気 鮫島克駿 2:07.4 上り39.9
5 JpnⅠJBCクラシック 佐賀 ダ2000 3人気 武豊 2:09.6 上り38.7映像
7 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 4人気 武豊 2:08.7 上り39.5映像
1 JpnⅡ名古屋グランプリ 名古屋 ダ2100 1人気 武豊 2:10.9 上り37.9
6 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 3人気 武豊 2:17.3 上り41.4映像
1 JpnⅢ佐賀記念 佐賀 ダ2000 2人気 武豊 2:08.2 上り38.1
4 GI東京大賞典 大井 ダ2000 5人気 武豊 2:07.6 上り37.7映像
8 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 14人気 松若風馬 1:51.5 上り37.5映像
2 JpnⅠJBCクラシック 大井 ダ2000 5人気 森泰斗 2:06.0 上り39.2映像
6 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 6人気 武豊 1:36.1 上り35.8
8 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 5人気 武豊 2:03.4 上り38.1映像
9 GIII平安S 京都 ダ1900 4人気 武豊 2:01.3 上り40.4映像
8 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 4人気 武豊 2:19.3 上り42.7映像
2 GI東京大賞典 大井 ダ2000 4人気 武豊 2:05.3 上り37.7映像
8 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 5人気 武豊 1:52.6 上り37.1映像
7 JpnⅡ日本テレビ盃 船橋 ダ1800 4人気 松山弘平 1:54.6 上り41.2
1 JpnⅠジャパンダートダービー 大井 ダ2000 4人気 武豊 2:04.6 上り38.3映像
2 JpnⅡ兵庫チャンピオンシップ 園田 ダ1870 2人気 武豊 2:02.7 上り39.5
2 OP伏竜S 中山 ダ1800 2人気 武豊 1:52.2 上り37.9
1 3歳1勝クラス 阪神 ダ1800 1人気 武豊 1:53.3 上り38.3
1 3歳未勝利 阪神 ダ1800 1人気 武豊 1:53.7 上り37.5
6 3歳未勝利 中京 芝2000 4人気 武豊 2:02.7 上り35.5
4 2歳新馬 阪神 芝1800 2人気 武豊 1:49.0 上り35.1

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ノットゥルノの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ハーツクライHeart's CryサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
アイリッシュダンストニービンTony Bin
ビューパーダンスBuper Dance
シェイクズセレナーデSheikh's SerenadeUnbridled's SongUnbridled
Trolley Song
Desert StormerStorm Cat
Breezy Stories
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牡馬。父ハーツクライ、母シェイクズセレナーデ。

夜想曲という名 ― 芝の血に、砂の記憶

名はイタリア語で夜想曲を指す。ノットゥルノ。母の名はシェイクズセレナーデ――セレナーデもまた、夜に奏でる調べだ。夜の音楽をまとうように、この鹿毛は2019年4月、下河辺牧場に生まれた。 父はハーツクライ。サンデーサイレンスを父に持ち、有馬記念とドバイを制した芝の名馬である。ところが母系をたどると、風景は一変する。母シェイクズセレナーデの父はアンブライドルズソング、その母はデザートストーマー――1995年のブリーダーズカップ・スプリントを泥の中で制した、アメリカ砂の女傑だ。ストームキャットの血を引くその一族は、芝の軽さではなくダートの重さで走る血だった。芝の名血に、砂の記憶。ノットゥルノは、その二つを一頭に宿して生まれた。 馬主は金子真人ホールディングス。ディープインパクトを送り出した名門であり、かつて「砂のディープインパクト」と呼ばれたカネヒキリの持ち主でもある。管理するのは栗東の音無秀孝。そして手綱を託されたのは、武豊だった。

芝では届かず ― 砂へ替えて

2021年12月25日、阪神の芝1800m。武豊を背にした新馬戦は、2番人気で4着だった。年が明けて中京の芝2000mも6着に沈み、芝では手が届かない。 陣営がダートへ舵を切ったのは、2022年の二月。阪神ダート1800mの未勝利戦で、ノットゥルノは一変した。1番人気に応えて勝ち上がると、続く3歳1勝クラスも危なげなく連勝。砂の上でこそ、この馬は本当の脚を使った。母の母から受け継いだアメリカの砂血が、ようやく目を覚ましたかのようだった。 三月の伏竜ステークスは2着、五月の兵庫チャンピオンシップも2着。重賞のタイトルには一歩届かないまま、それでも相手を強くしながら、ノットゥルノは夏の大一番へと駒を進めていく。

大井の夜 ― ダブルダービー

2022年7月13日、大井のダート2000m。三歳ダートの最高峰、ジャパンダートダービー。ノットゥルノは4番人気だった。 好位集団の外につけると、直線で武豊がじわりと押し上げる。先頭に立ってからは、渾身の押し切り。3番人気ペイシャエスの追撃を四分の三馬身しのいで、ノットゥルノはGI・JpnIの初タイトルを、ナイターの灯りの下で掴み取った。 武豊にとって、この一勝は特別だった。同じ年の五月、彼はドウデュースで日本ダービーを制している。芝とダート、二つのダービーの同一年制覇。しかもジャパンダートダービーの優勝は、2005年のカネヒキリ以来、実に17年ぶりだった。17年前も、この夜も、勝負服は金子真人。武豊とこの馬主のダート馬とを結ぶ縁が、大井の夜にもう一度結ばれた。 レース後、53歳の名手は笑っていた。「僕が53歳ですけど、馬はまだ3歳なので、一緒に頑張っていけたらと思います」[^1]。夜想曲という名の三歳馬と、レジェンドと呼ばれる騎手の、長い並走がここから始まった。

出典:中日スポーツ「”Wダービー制覇”の武豊「僕が53歳ですけど、馬はまだ3歳。一緒に頑張っていけたら」【ジャパンダートダービー】」2022年7月13日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/507572、閲覧日:2026年7月18日。

二番手の季節 ― 古馬の壁

頂の余韻は、長くは続かなかった。秋、古馬に混じった船橋の日本テレビ盃は7着、暮れのチャンピオンズカップは8着。世代の頂点と、古馬の壁のあいだには、まだ確かな距離があった。 それでも大晦日の東京大賞典で、ノットゥルノは意地を見せる。4番人気で2着に粘り込み、勝ったウシュバテソーロ――のちに世界の大舞台で花開く一頭――の、すぐ後ろにいた。 明けて2023年は、二番手の苦さを噛みしめる一年になった。川崎記念8着、平安ステークス9着、帝王賞8着。抜け出せない日々のなかで、秋のJBCクラシックだけは違った。5番人気の低評価をはね返して2着に食い込み、勝ったキングズソードとの差はコンマ9秒。あと一歩が、どうしても遠い。栄光の景色を知る馬が、その景色にもう一度手を伸ばし続けた季節だった。

よみがえる白星 ― 佐賀と名古屋

転機は2024年の二月、佐賀に訪れた。トップハンデの59キロを背負いながら、佐賀記念でノットゥルノは走りを取り戻す。2着キリンジに四馬身。重賞のタイトルは、ジャパンダートダービー以来、久しく手にしていなかったものだった。 五月の名古屋グランプリは、さらに鮮烈だった。1番人気に応えて逃げ、直線でも脚は衰えず、2着に八馬身差をつけてレコードで駆け抜ける。逃げて、後続を突き放し、時計まで塗り替える――ダートの巧者へと成熟した姿が、そこにあった。 勝ち星こそ地方交流の重賞だが、走り続けるなかで、ノットゥルノは何度でも自分を立て直してみせた。年が明けても大井や名古屋の大レースで上位を争い、2025年二月の佐賀記念は1番人気で3着。師の音無が定年を迎えると、その三月、ノットゥルノは美浦の中舘英二のもとへ移った。旅は、厩舎を変えてなお続いていく。

夜の音楽は続く ― ノットゥルノという名の旅

振り返れば、この馬の主戦場は夜だった。大井、川崎、名古屋、船橋――ナイターの照明に照らされた砂の上を、ノットゥルノは何度も駆けた。夜想曲、という名のとおりに。 2025年七月二日、大井の帝王賞で3着。武豊とのコンビで、ノットゥルノはまた掲示板に名を残した。26戦5勝。ジャパンダートダービーの栄冠、佐賀と名古屋の重賞、そして数えきれない二着と三着。華やかなGI連覇の記録こそないが、芝の名血とアメリカ砂の女傑の血を一頭に束ね、デビューから四年近くを第一線で走り抜いた足跡は、それ自体が一つの調べだ。 新馬戦から手綱を取り続けた名手は、あの夜、自分は53歳だと笑っていた。馬はいま七歳、名は現役馬の列にある。夜の音楽は、まだ鳴りやんでいない。再び大井の灯りの下でこの名が呼ばれる日を、静かに待てばいい。

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