名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ノンコノユメのイメージビジュアル
ノンコノユメNonkono Yume
Nonkono Yume

ノンコノユメ

通算成績46戦9勝

獲得賞金57,691万円

生年月日 2012.03.28(平成24年)毛色 栃栗毛セン

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ノンコノユメの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 6人気 真島大輔 2:04.4 上り37.4映像
2 大井記念 大井 ダ2000 5人気 真島大輔 2:05.0 上り36.6
3 ブリリアントカップ 大井 ダ1800 3人気 真島大輔 1:52.0 上り37.9
10 GI東京大賞典 大井 ダ2000 6人気 真島大輔 2:06.4 上り39.1映像
5 JpnⅡ日本テレビ盃 船橋 ダ1800 4人気 真島大輔 1:54.0 上り39.3
2 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 10人気 真島大輔 2:03.3 上り36.9映像
7 金盃 大井 ダ2600 3人気 真島大輔 2:48.7 上り40.3
11 GI東京大賞典 大井 ダ2000 8人気 矢野貴之 2:07.8 上り36.6
2 勝島王冠 大井 ダ1800 2人気 笹川翼 1:52.5 上り36.8
10 JpnⅠJBCクラシック 大井 ダ2000 7人気 笹川翼 2:04.7 上り38.0映像
5 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 7人気 真島大輔 2:06.3 上り36.4
2 ブリリアントカップ 大井 ダ1800 1人気 真島大輔 1:54.1 上り36.6
8 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 9人気 真島大輔 1:36.6 上り36.3映像
2 GI東京大賞典 大井 ダ2000 5人気 真島大輔 2:05.1 上り38.1
2 勝島王冠 大井 ダ1800 2人気 真島大輔 1:53.9 上り37.6
3 マイルグランプリ 大井 ダ1600 1人気 御神本訓史 1:40.0 上り37.3
3 JpnⅡ日本テレビ盃 船橋 ダ1800 2人気 笹川翼 1:53.7 上り38.1
1 サンタアニタトロフィー 大井 ダ1600 1人気 真島大輔 1:39.4 上り37.4
3 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 8人気 真島大輔 2:04.6 上り37.4
10 GIIゴドルフィンマイル メイダン ダ1600 7人気 モレイラ 映像
13 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 7人気 内田博幸 1:37.9 上り36.9映像
7 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 6人気 内田博幸 1:51.2 上り35.7映像
4 GIJBCクラシック 京都 ダ1900 5人気 内田博幸 1:57.1 上り36.3
4 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 3人気 内田博幸 1:36.7 上り35.4
4 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 3人気 内田博幸 1:39.6 上り37.4
1 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 4人気 内田博幸 1:36.0 上り36.1映像
1 GIII根岸S 東京 ダ1400 6人気 内田博幸 1:21.5 上り34.2映像
9 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 6人気 C.デムーロ 1:50.7 上り35.5映像
4 GIII東京中日S杯武蔵野S 東京 ダ1600 7人気 C.デムーロ 1:35.9 上り35.2映像
7 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 4人気 C.ルメール 1:35.7 上り36.0映像
4 GI東京大賞典 大井 ダ2000 4人気 C.ルメール 2:06.9 上り37.0
6 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 4人気 R.ムーア 1:50.5 上り36.6映像
4 JpnⅠJBCクラシック 川崎 ダ2100 4人気 C.ルメール 2:15.8 上り38.9映像
2 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 1人気 C.ルメール 2:04.2 上り36.5
4 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 2人気 C.ルメール 1:40.2 上り37.5
2 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 1人気 C.ルメール 1:34.2 上り34.7映像
2 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 3人気 C.ルメール 1:50.6 上り36.7映像
1 GIII東京中日S杯武蔵野S 東京 ダ1600 2人気 C.ルメール 1:34.7 上り35.2映像
1 JpnⅠジャパンダートダービー 大井 ダ2000 2人気 C.ルメール 2:05.6 上り37.3
1 GIIIユニコーンS 東京 ダ1600 2人気 C.ルメール 1:35.9 上り35.5映像
1 OP青竜S 東京 ダ1600 5人気 C.ルメール 1:36.4 上り34.7
5 OP伏竜S 中山 ダ1800 5人気 横山典弘 1:53.6 上り37.4
1 3歳500万下 中山 ダ1800 2人気 C.デムーロ 1:54.5 上り38.7
3 3歳500万下 東京 ダ1600 2人気 石川裕紀人 1:38.4 上り37.3
2 2歳500万下 中山 ダ1800 6人気 石川裕紀人 1:54.8 上り37.5
1 2歳新馬 東京 ダ1600 2人気 石川裕紀人 1:40.3 上り35.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ノンコノユメの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
トワイニングTwiningフォーティナイナーForty NinerMr. Prospector
File
Courtly DeeNever Bend
Tulle
ノンコアグネスタキオンAgnes TachyonサンデーサイレンスSunday Silence
アグネスフローラ
レディータイクーンクリミナルタイプCriminal Type
ビューパーダンスBuper Dance
STORY

旅程 — この馬の物語

2012年生まれの栗毛のせん馬。父トワイニング、母ノンコ。主な勝ち鞍はフェブラリーS・ユニコーンS・東京中日S杯武蔵野S。

ノンコの夢 ― 千歳に生まれる

北海道千歳市の社台ファームで、2012年3月28日にその栃栗毛は生まれた。 父はアメリカ生まれのトワイニング。6戦5勝、うちG2を2勝しながら、ホーリーブルの2着に敗れた一戦で脚部不安を発症し、そのまま競走馬をやめた馬である。母はアグネスタキオン産駒のノンコ。名は、その母から採られた。ノンコの夢――馬名の意味はそれだけだった。冠名も飾りもない、母の名に「夢」の一字を継がせただけの名前である。 血はこの牧場の牝系につながっている。3代母ビューパーダンス。その娘の一頭アイリッシュダンスは同じ千歳で生まれ、のちにハーツクライを産んだ。もう一頭の娘レディータイクーンが、この馬の祖母にあたる。母ノンコにとって、ハーツクライは従兄だった。 馬主は山田和正、預け先は美浦の加藤征弘厩舎。2014年11月23日、東京のダート1600m、2歳新馬戦。石川裕紀人を背に2番人気の支持へ応え、この馬は最初の一戦を勝った。

四連勝 ― 三歳の夏

明けて2015年、東京の500万下で3着に敗れ、次の中山で勝ち上がる。4月の伏竜ステークスは5着だった。このとき先着を許した相手が、クロスクリーガーである。 5月の青竜ステークスから鞍上がルメールになった。5番人気で勝つと、6月のユニコーンステークスも2馬身半差の完勝。ダートの三歳路線で、この馬は一気に主役の側へ回った。 その一週間後の6月28日、父トワイニングが大動脈破裂で死んだ。24歳だった。 訃報から十日後、7月8日の大井。不良馬場のジャパンダートダービー。逃げるクロスクリーガーを、ゴール前で差し切った。2馬身半。三か月前に前を行かれた相手を、こんどは後ろから捉えたことになる。三歳のダート王が決まった一戦であり、父の死のすぐあとに産駒が返した、最初の答えでもあった。

一馬身半 ― 二着という場所

11月の武蔵野ステークス。三歳の身で58キロを課されながら、ハナ差でしのいで四連勝とした。 12月6日、中京のチャンピオンズカップ。四連勝中の三歳馬は3番人気に支持された。コパノリッキーがハナを切り、三コーナーでホッコータルマエが一気に進出する。ノンコノユメは後方の内ラチ沿いから追撃態勢に入った。直線、密集の中から抜け出してきたのは単勝66.4倍・12番人気のサンビスタで、先行する二頭をかわし去ると、内のノンコノユメと外のサウンドトゥルーを1馬身半後ろに置いて先頭でゴールした。JRAのダートGIを牝馬が勝った、最初の日でもあった。 翌2016年2月のフェブラリーステークスは、重馬場の東京で1番人気。直線で先頭に立ったモーニンが1分34秒0のコースレコードで駆け抜け、大外から追い込んだこの馬は1馬身1/4届かなかった。5月のかしわ記念は4着。6月の帝王賞はまた1番人気で、またコパノリッキーの2着だった。 走りは間違いなく一線級で、しかし勝ち切れない。頂の一つ下に、居場所が固定されつつあった。

決断 ― せん馬になる

問題は気性にあった。加藤征弘によれば、以前は扱っている人間に飛びかかることがあり、鞍をつけるだけでも大変だったという。帝王賞のあと、陣営は去勢を選ぶ。2016年9月、せん馬として復帰しJBCクラシックへ向かうことが報じられた。 荒れた面は、たしかに消えた。だが勝てない。JBCクラシック4着、チャンピオンズカップ6着、東京大賞典4着。明けて2017年のフェブラリーステークスは7着。そこから九か月近く、競馬場から姿を消した。秋に戻っても武蔵野ステークス4着、チャンピオンズカップ9着。去勢から六戦して4着が三回、3着以内は一度もない。 ただ、その2017年夏の休みには意味があった。右の股関節に疲れが出やすいという持病が癒え、調教でしっかり負荷をかけられる体になっていたのである。成績表が止まっているあいだに、馬は静かに作り直されていた。

越境者 ― 内田博幸が乗る

2018年1月、根岸ステークス。新しい鞍上は内田博幸だった。1989年に大井でデビューし、南関東のリーディングジョッキーを二年続けて獲り、2008年に中央へ移った騎手である。中央競馬だけで130頭を超えるせん馬に乗ってきた男でもあった。 去勢というものをどう思うか。そう問われて、彼はこう答えている。「本来、自然界でやらないことをやるわけだから、それが本当にいいのかは分からない」[^1]。そのうえで、気性的にどうしようもない馬にはやらなければならないとも言い、自分はせん馬と相性がいいかもしれない、と笑った。 1月28日、重馬場の東京ダート1400m。この馬にとって初めての1400m戦で、6番人気。後方から直線一気に伸びてハナ差。時計は1分21秒5、コースレコードだった。2年2か月ぶりの勝利である。

出典:競馬ラボ「【根岸S】セン馬といえば内田博騎手!?ノンコノユメの去勢効果を聞いてみた」(佐藤ワタル)2018年1月24日配信、https://www.keibalab.jp/yosou/uchirachi/5/ 、閲覧日:2026年7月27日。

超大外 ― 二〇一八年二月十八日

出走16頭すべてが重賞ウィナー、うち9頭がGI・JpnIの勝ち馬という一戦だった。 加藤征弘が内田に伝えたのは一つだけである。直線では、砂をかぶらない外に出してほしい。ゲートが開くと、内田は外の馬を先に行かせ、ノンコノユメを他の十五頭からぽつんと離れた大外へ持ち出した。一頭だけ別のレースをしているような位置取りだった。前ではニシケンモノノフケイティブレイブが引っ張り、1000m通過は58秒3。三コーナーで先頭とは十馬身以上あったが、鞍上は慌てていない。 直線、1番人気のゴールドドリームが抜け出す。馬体重524キロ。追うノンコノユメは450キロだった。七十四キロ軽い体が、大外から一完歩ずつ差を詰める。残り100mで並びかけ、内から迫るインカンテーションを加えた三頭の追い比べを、クビ差で制した。 馬にとって初めてのJRA・GIだった。加藤征弘にとっても、馬主の山田和正にとっても初めてのJRA・GIだった。内田には、2014年のヴィクトリアマイル以来3年9か月ぶりのJRA・GIになる。「諦めないで、人も馬もコツコツ頑張っていれば大きなタイトルを獲ることができる」[^1]。そう言って彼は、それをノンコノユメが証明してくれた、と続けた。 レース後、加藤は優勝馬に与えられるブリーダーズカップクラシックの優先出走権について問われ、興味はある、オーナーの意向次第だと答えている。せん馬だから、海外の大レースで種牡馬としての価値を高めるようなことはしない、とも言った。競馬において、この馬が残せるのは走った記録だけである。だからこそ、走ることのほかに走る理由がなかった。

出典:Number Web「内田博幸が選んだ「超大外」の理由。フェブラリーS王者はノンコノユメ。」(島田明宏)2018年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/829955 、閲覧日:2026年7月27日。

二度目の越境 ― 中央から大井へ

GIを勝ってからは、また勝ち星が止まった。かしわ記念4着、マイルチャンピオンシップ南部杯4着、JBCクラシック4着、チャンピオンズカップ7着。2019年のフェブラリーステークスは13着に沈む。 海外の話は、ドバイという形で実現した。3月30日、メイダンのゴドルフィンマイル。モレイラに手綱を託して10着。生涯ただ一度の海外遠征だった。 そして5月8日、JRAの競走馬登録が抹消される。移った先は大井・小林分場の荒山勝徳厩舎だった。中央のGI馬が南関東へ移る。それは、内田博幸が二十年近くを過ごし、そこから中央へ渡っていった場所へ、こんどは逆向きに越えていくということでもあった。 主戦は大井の真島大輔になった。転入初戦の帝王賞は8番人気で3着。二戦目、7月31日のサンタアニタトロフィーを1番人気で制する。生涯九勝目であり、これが最後の勝利になった。年末の東京大賞典ではオメガパフュームの2着に食い下がる。中央から来た七歳のせん馬は、大井でも一線級だった。

九歳の帝王賞 ― そして千歳へ

2020年2月、五度目のフェブラリーステークスに出走して8着。大井ではブリリアントカップ、勝島王冠と2着を重ねた。 2021年6月30日、帝王賞。九歳。単勝134.2倍の10番人気だった。テーオーケインズの2着に突っ込む。地方所属馬が帝王賞で連対したのは、2010年に優勝したフリオーソ以来11年ぶりのことだった。帝王賞にはこの年までに四度出て、2着二回、3着一回。この馬は、六月の大井をよく知っていた。 2022年、大井記念で2着。6月29日、五度目の帝王賞は6着だった。放牧先の山元トレーニングセンターで馬体を調べたところ球節の具合が思わしくなく、年齢も考え合わせて引退が決まる。7月22日、地方競馬の競走馬登録が抹消された。荒山勝徳は「長く高い水準で頑張ってくれました」[^1]と振り返り、輸送の負担を考えて引退式は辞退したと伝えた。 46戦9勝。そして、10度の2着。頂に届いた日と、ひと足届かなかった日を、ほぼ同じだけ抱えた馬だった。 帰り先は生まれ故郷の社台ファーム、北海道千歳市。祖母レディータイクーンが生まれ、母ノンコが生まれ、この馬自身が生まれた牧である。功労馬として余生を送ることになった。ノンコの夢は、始まった場所へ帰っていった。

出典:中日スポーツ「10歳ノンコノユメ引退 球節の具合が思わしくなく…「厩舎の知名度高めてくれた」今後は社台ファームへ」2022年7月26日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/515120 、閲覧日:2026年7月27日。

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