名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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この世代(生まれ年)

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ニシノデイジーのイメージビジュアル
ニシノデイジーNishino Daisy
Nishino Daisy

ニシノデイジー

通算成績32戦6勝

獲得賞金33,942万円

生年月日 2016.04.18(平成28年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ニシノデイジーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 JGⅠ中山大障害 中山 障4100 4人気 五十嵐雄祐 4:40.4 上り13.7映像
4 JGⅡ東京ハイジャンプ 東京 障3110 2人気 五十嵐雄祐 3:26.0 上り13.2映像
3 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 3人気 五十嵐雄祐 4:48.1 上り13.6映像
4 阪神スプリングJ 阪神 障3900 3人気 五十嵐雄祐 4:26.4 上り13.7
2 JGⅠ中山大障害 中山 障4100 3人気 五十嵐雄祐 4:39.6 上り13.6映像
11 JGⅡ東京ハイジャンプ 東京 障3110 3人気 五十嵐雄祐 3:37.0 上り14.0
9 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 1人気 石神深一 5:00.2 上り14.1映像
3 阪神スプリングJ 阪神 障3900 1人気 石神深一 4:23.0 上り13.5
1 JGⅠ中山大障害 中山 障4100 5人気 五十嵐雄祐 4:45.9 上り13.9映像
2 OP秋陽ジャンプS 東京 障3110 1人気 五十嵐雄祐 3:27.4 上り13.3
1 障害3歳以上未勝利 東京 障3000 1人気 五十嵐雄祐 3:23.1 上り13.5
3 障害4歳以上未勝利 新潟 障2890 5人気 五十嵐雄祐 3:12.0 上り13.3
12 L白富士S 東京 芝2000 13人気 丸山元気 1:58.6 上り34.7
12 LベテルギウスS 阪神 ダ1800 16人気 松若風馬 1:53.5 上り37.7
11 OP霜月S 東京 ダ1400 14人気 内田博幸 1:24.7 上り36.0
18 GIIIエプソムカップ 東京 芝1800 16人気 江田照男 1:47.0 上り36.6映像
12 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 12人気 勝浦正樹 2:01.4 上り38.8映像
13 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 13人気 勝浦正樹 1:33.5 上り34.9映像
13 GIII函館記念 函館 芝2000 6人気 勝浦正樹 2:01.4 上り37.8映像
18 GII目黒記念 東京 芝2500 9人気 田辺裕信 2:31.9 上り37.9映像
6 GII金鯱賞 中京 芝2000 4人気 田辺裕信 2:02.3 上り33.6映像
6 GIIアメリカジョッキークラブカップ 中山 芝2200 6人気 田辺裕信 2:16.1 上り37.2映像
9 GI菊花賞 京都 芝3000 2人気 C.ルメール 3:06.7 上り36.2映像
5 GII朝日セントライト記念 中山 芝2200 2人気 勝浦正樹 2:12.1 上り35.0映像
5 GI東京優駿 東京 芝2400 13人気 勝浦正樹 2:23.1 上り34.3映像
17 GI皐月賞 中山 芝2000 6人気 勝浦正樹 2:00.1 上り35.9映像
4 GII報知杯弥生賞 中山 芝2000 1人気 勝浦正樹 2:03.7 上り37.1映像
3 GIホープフルS 中山 芝2000 3人気 勝浦正樹 2:01.9 上り35.3映像
1 GIII東京スポーツ杯2歳S 東京 芝1800 8人気 勝浦正樹 1:46.6 上り33.9映像
1 GIII札幌2歳S 札幌 芝1800 6人気 勝浦正樹 1:50.1 上り37.0映像
1 2歳未勝利 函館 芝1800 1人気 勝浦正樹 1:49.7 上り35.7
2 2歳新馬 函館 芝1800 2人気 勝浦正樹 1:53.6 上り36.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ニシノデイジーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ハービンジャーHarbingerDansiliデインヒルDanehill
Hasili
Penang PearlBering
Guapa
ニシノヒナギクアグネスタキオンAgnes TachyonサンデーサイレンスSunday Silence
アグネスフローラ
ニシノミライセイウンスカイSeiun Sky
ニシノフラワーNishino Flower

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2016年生まれの鹿毛の牡馬。父ハービンジャー、母ニシノヒナギク。主な勝ち鞍は中山大障害・札幌2歳S・東京スポーツ杯2歳S。

二つの勝負服から ― 名の由来

2016年4月18日、北海道浦河町の谷川牧場に鹿毛の牡馬が生まれた。父はハービンジャー、母はニシノヒナギク。冠名「ニシノ」を預かるのは馬主の西山茂行である。 この馬の母系には、西山家が持った二つの宝が並んでいる。三代母ニシノフラワーは、西山牧場が生み、先代オーナー西山正行が所有した名牝だ。1991年の阪神3歳牝馬ステークス、翌1992年の桜花賞とスプリンターズステークスと、性格の異なるGIを三つ勝ち、JRA賞も三度受けた。そのニシノフラワーの娘ニシノミライに配されたのが、同じ一族の勝負服で1998年の皐月賞と菊花賞を制したセイウンスカイである。西山茂行は、父が病に倒れた1996年に牧場の経営を引き継ぎ、後年、この二冠馬の墓石にこう刻んだ。「青雲の空を 駆け抜けた稲妻よ 永遠なれ」[^1]。桜とスプリントの女王と、淀の菊を手にした二冠馬。その両方の血が一頭に集まって、ニシノデイジーになった。 名の意味は、登録上は「冠名+すてきなもの」。だが答えは、もっと近いところにもある。母の名はニシノヒナギク。ヒナギクとは、デイジーのことである。 2018年7月8日、函館の芝1800m。勝浦正樹を鞍上に迎えた新馬戦は、ラブミーファインに1馬身半およばず2着。中1週で臨んだ未勝利戦を1番人気で勝ち上がって、旅が始まった。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア』「セイウンスカイ」、https://ja.wikipedia.org/wiki/セイウンスカイ、閲覧日:2026年7月25日。

二歳の秋、二つの重賞

この馬の名が広く知られたのは、2歳の秋だった。 9月1日の札幌2歳ステークス。6番人気の評価で、4コーナーから先団に取り付くと、直線で粘るナイママを競り落として重賞初制覇を果たす。続く11月17日の東京スポーツ杯2歳ステークスは8番人気。ゴール前で4頭が横一線に並ぶ叩き合いを、アガラスにハナ差だけ先んじて制した。二か月半で重賞を二つ。人気を集めない馬が、いちばん人気の集まる場所へ出てきた。 手綱はどちらも勝浦正樹だった。1997年のデビューからJRA通算967勝、重賞17勝。GIは2002年のNHKマイルカップ(テレグノシス)と2007年の朝日杯フューチュリティステークス(ゴスホークケン)。四十歳の秋に、この鹿毛は彼に重賞を二つ運んだ。 年末のホープフルステークスは最内枠。勝負どころで内に包まれて位置取りを下げざるを得ず、それでも3着に押し上げている。勝ったのは、翌春の皐月賞馬サートゥルナーリアだった。

府中の直線、単勝百七倍

2019年3月の弥生賞。重賞2勝の実績から1番人気に推されたが、重馬場の直線で内を突いたところを外から差し切られ4着。皐月賞は6番人気で、向正面で内に入れた際に他馬と接触するアクシデントがあり、17着に沈んだ。 評価は一気に落ちた。5月26日の東京優駿、単勝オッズは107.9倍。18頭立ての13番人気である。それでも勝浦は折り合いを崩さず、最後方に近い13番手から徐々に押し上げ、直線で上がり3ハロン34秒3を使った。勝ったのは12番人気のロジャーバローズ。ニシノデイジーは0秒5差の5着まで押し上げ、1番人気サートゥルナーリアにアタマ差まで迫っていた。 秋、セントライト記念は2番人気。後方から4コーナーを大外に回して5着。菊花賞ではルメールが手綱を取り、2番人気に支持されたが9着に敗れた。3歳という季節が、静かに閉じた。

掲示板の遠い二年

2020年は田辺裕信を背に、アメリカジョッキークラブカップ6着、金鯱賞6着。目黒記念は18着、夏の函館記念は勝浦に戻って13着だった。 その年の2月5日、曾祖母ニシノフラワーが31歳で世を去っている。桜花賞から二十八年。西山牧場で仔を産み育てた名牝が眠りについた冬、その血を引くニシノデイジーは、勝ち鞍から遠ざかっていた。 2021年は五戦。東京新聞杯13着、新潟大賞典12着。芝が駄目ならとダートの霜月ステークス、ベテルギウスステークスにも矛先を向けたが、いずれも二桁着順。翌2022年1月の白富士ステークスも12着に終わる。2020年からの平地10戦、最高着順は6着だった。 2021年5月9日の新潟大賞典が、勝浦正樹がこの馬の手綱を握った最後の一戦になった。

垣根を越える

六歳になっていた。平地で勝てないまま二年が過ぎ、陣営が選んだのは障害への転向だった。 5月28日、新潟の障害未勝利戦。初めて飛越を課された馬は、芝とダートの切れ目を障害と勘違いして跳んでみせた。それでも3着に走っている。6月19日、東京の障害3歳以上未勝利。鞍上は障害を主戦場とする五十嵐雄祐。1番人気に応えて、二戦目で障害の初勝利を挙げた。 11月の秋陽ジャンプステークスで2着。そして12月24日、中山大障害。障害に転じて、まだ四戦目だった。 5番人気。逃げるケンホファヴァルトのすぐ後ろにつけ、二周目の向正面、大生垣の先で先頭に立つ。あとは振り返らなかった。ゼノヴァースに3馬身差、4分45秒9。2018年11月の東京スポーツ杯2歳ステークス以来、四年一か月ぶりの重賞制覇が、J・GIだった。 五十嵐雄祐には2013年のアポロマーベリック以来となる中山大障害制覇、高木登調教師には初めてのJ・GI。そしてこの日は、1番人気オジュウチョウサンの引退レースでもあった。十一歳の王者は6着でターフを去った。

戴冠は来なかった

その年のJRA賞最優秀障害馬に選ばれたのは、ニシノデイジーではなかった。中山大障害を6着で終えて引退したオジュウチョウサン——記者投票288票のうち138票が、五度目の受賞となる王者に投じられた。障害の頂点を勝った馬に、賞は届かなかった。 2023年の春は、そのオジュウチョウサンの主戦だった石神深一が手綱を取った。阪神スプリングジャンプは1番人気で3着。中山グランドジャンプも1番人気に支持されたが、スタートで出遅れて9着に終わる。秋、五十嵐雄祐に戻って臨んだ東京ハイジャンプは11着だった。 12月23日、中山大障害。3番人気のニシノデイジーは、今度は自ら先頭に立って行った。だが二周目の3コーナーで、石神深一を背にしたマイネルグロンに前を譲る。差は10馬身。前年に自分が立った場所を、まるごと明け渡した2着だった。

二年越しの大輪

八歳の一年は、届きそうで届かない春から始まった。阪神スプリングジャンプ4着、中山グランドジャンプ3着、秋の東京ハイジャンプ4着。掲示板には乗る。だが勝てない。 2024年12月21日、中山大障害。晴、良馬場。9頭立ての4番人気だった。 二周目に入って四番手、三番手と押し上げ、最終障害の手前で仕掛けて先頭に立つと、直線は独走だった。エコロデュエルに5馬身差、4分40秒4——二年前に自分が勝った時計を、5秒5縮めていた。前年に10馬身ちぎられたマイネルグロンを含む三頭が競走を中止する荒れた一戦で、1番人気ジューンベロシティは4着。八歳の馬が、いちばん過酷な四千百メートルを、いちばん強い形で勝った。 口取りの写真に、スーツ姿の男が加わった。馬上に跨っていたのは勝浦正樹である。2021年5月の新潟大賞典を最後に、彼がこの馬の手綱を握ることはなかった。その一年後にニシノデイジーは障害へ移り、彼自身は2024年4月に騎手を引退して、5月4日に東京競馬場で引退式を終えていた。三年七か月ぶりに、二歳の秋に重賞を二つ運んでくれた鹿毛の背へ、彼は帰ってきた。

新冠の丘へ

翌12月22日、西山茂行が自身のブログで引退を発表した。12月26日付で競走馬登録抹消。中山大障害の勝利が、そのまま最後の一戦になった。 2024年度のJRA賞最優秀障害馬には、記者投票256票のうち237票が集まった。二年前に届かなかった賞が、二度目の戴冠と一緒に返ってきた。 通算32戦6勝。平地20戦3勝、障害12戦3勝。獲得賞金3億3942万8000円のうち、2億1493万3000円は障害で稼いだものだった。二歳で重賞を二つ勝ち、クラシックを走り、二年間勝てず、垣根を越えて頂に二度立つ——一頭の馬の履歴書としては、ずいぶん振れ幅の大きい三十二行である。 いま、ニシノデイジーは新冠町の白馬牧場にいる。種牡馬として繋養され、血を次へ渡す番になった。桜とスプリントの女王と、青雲を駆けた二冠馬。西山家の二つの宝から生まれた鹿毛は、冬の中山で二度、名のとおりの花を咲かせて帰ってきた。

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