名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ナルカミのイメージビジュアル
ナルカミNarukami
Narukami

ナルカミ

通算成績10戦5勝

獲得賞金14,332万円

生年月日 2022.03.11(令和4年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ナルカミの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
8 GIII平安S 京都 ダ1900 2人気 戸崎圭太 1:58.5 上り39.4映像
5 JpnⅡダイオライト記念 船橋 ダ2400 1人気 戸崎圭太 2:38.9 上り41.7
6 GI東京大賞典 大井 ダ2000 2人気 戸崎圭太 2:05.8 上り40.1映像
13 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 1人気 戸崎圭太 1:52.6 上り39.4映像
1 JpnⅠジャパンダートクラシック 大井 ダ2000 3人気 戸崎圭太 2:03.7 上り39.0映像
1 JpnⅡ不来方賞 盛岡 ダ2000 1人気 戸崎圭太 2:01.2 上り35.3
1 いわき特別 福島 ダ1700 1人気 戸崎圭太 1:44.2 上り36.8
1 3歳1勝クラス 中山 ダ1800 1人気 戸崎圭太 1:52.9 上り37.5
7 3歳1勝クラス 中京 ダ1800 1人気 坂井瑠星 1:53.9 上り39.4
1 2歳新馬 京都 ダ1800 1人気 坂井瑠星 1:51.2 上り36.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ナルカミの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
サンダースノーThunder SnowHelmetExceed And Excel
Accessories
Eastern JoyDubai Destination
Red Slippers
オムニプレゼンスディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
ヴァレリカVallericcaDynaformer
マンデラMandela
STORY

旅程 — この馬の物語

2022年生まれの鹿毛の牡馬。父サンダースノー、母オムニプレゼンス。

父の雷、子の鳴神 ― 血と名の連鎖

2022年3月11日、北海道日高町のダーレー・ジャパン・ファームに、鹿毛の牡馬が生まれた。父はサンダースノー(Thunder Snow)――ドバイワールドカップを2018年、2019年と史上初の連覇で制した世界の砂王。ゴドルフィンの青い勝負服のもと、砂と芝の双方でGIを制してきた、鉄の意志を持つ競走馬だった。 父の名は「雷と雪」。その血を受けた牡馬には、古来の日本語で雷神を意味する「鳴神(ナルカミ)」の名が授けられた。サンダー=雷の連鎖は意図的な命名であり、ゴドルフィンが産駒に託した期待の重さそのものだった。 母オムニプレゼンスはディープインパクト産駒。その母ヴァレリカはアメリカの名血Dynaformerを父に持つ。父の砂適性と母父ディープインパクトの底力が混じり合った配合。それがどれほどの砂の才能を芽吹かせるか、この時点ではまだ分からなかった。

2秒差の衝撃 ― デビューの日

2024年11月9日、京都競馬場のダート1800m。栗東・坂口智康厩舎から送り出された2歳新馬は、ゲートが開いた瞬間、するりとハナに立った。坂井瑠星を背に、自分のリズムで進み、後続との差を広げ続ける。直線、もう競馬は終わっていた。2着プリンセッサに2秒0の大差。勝ちタイム1分51秒2は、この舞台のコースレコードに0秒2に迫る破格の時計だった。 坂井瑠星は口をついて出た言葉をそのまま並べた。「強かったです。この馬のペースで運びましたが、特に言うことはないくらいとにかく強かった」。この「特に言うことはない」という評が、馬の強さを最も雄弁に語っていた。 父サンダースノーの産駒がデビューから砂を支配した。鳴神は、最初の一戦から鳴り響いた。

中京という壁 ― 若駒の試練

2025年1月、中京競馬場のダート1800m。デビュー戦の圧勝が評価され、単勝1番人気に推されたナルカミは、7着に沈んだ。スタートからリズムを崩し、本来の走りを見せられないまま敗れる。この中京での一戦を最後に、ナルカミは坂口厩舎を離れ、美浦・田中博康厩舎へと移った。関西から関東への転厩である。のちに田中博康が指摘する「中京の導線」の問題――発走まで向かう経路と馬場形態が、この馬の気性と嚙み合わなかった。 次走への乗り替わりが決まった。手綱を受けたのが戸崎圭太だった。 4月、中山ダート1800m。戸崎は一戦目から馬のリズムを摑んだ。1番人気に応え勝利。6月の福島・いわき特別も1番人気で押し切る。2戦続けて「逃げて、制する」競馬を見せた。「この馬のリズムで行かせる」――それが、戸崎が選んだナルカミとの約束事だった。

砂王への道 ― 不来方賞、そしてダートクラシック

2025年9月2日、盛岡競馬場。第57回不来方賞(JpnII)。ナルカミは初の重賞舞台に臨んだ。戸崎は「特にハナにはこだわっていなかったが、行きっぷりが良くリズム的に行った方がいい」と判断してハナを切り、上がり35秒3の最速で押し切った。重賞初制覇。「プレッシャーを感じていた」と戸崎は振り返る。ジャパンダートクラシックへの切符は、こうして手に入った。[^1] 10月8日、大井競馬場。第27回ジャパンダートクラシック(JpnI、2000m)。3番人気。1番人気のナチュラルライズは、ここで3冠達成を狙っていた。ナルカミは「砂かぶりを避けたい」という戸崎の判断でハナへ。前半1000m通過60秒2は過去10年の同レース最速だった。にもかかわらず、上がり39秒0もメンバー中最速。ナチュラルライズを3馬身引き離してゴール――時計2分3秒7。[^2] 「前走より馬が良くなっていて、リラックスして走れていた。抜群の手応えで直線を迎えられたので、押し切れると思った。今日は本当に強い内容だった」と戸崎は言い、田中博康調教師は「ジョッキーとの呼吸がしっかり合っていた。特別に心肺機能が高い馬だと思う」と語った。[^2] 3歳世代のダート王は、ナルカミに決まった。

出典:東スポ競馬「【盛岡・不来方賞】戸崎「プレッシャー感じていた」断然人気ナルカミが圧勝」2025年9月2日配信、https://www.oricon.co.jp/article/3023910/、閲覧日:2026年6月28日。/スポーツナビ「【ジャパンダートクラシック】「本当に強い」ナルカミ圧逃で三冠阻止、レモンポップ後継馬への第一歩」2025年10月9日配信、https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2025100900019-spnaviow、閲覧日:2026年6月28日。

砂のGIに、連打する試練

3歳ダート王の名は重かった。12月7日、チャンピオンズカップ(GI、中京ダ1800m)。単勝1番人気。しかし、また中京が立ちはだかった。「馬場入場からテンションが高く、ゲート裏まではおとなしくしていたが、スタートでトモを落とす感じになって出遅れた」と戸崎は語った。2025年1月の1勝クラスに続き、中京ではリズムを失う――同じ地で、同じ課題が噴出した。13着。[^1] 中2週でのぞんだ12月29日、東京大賞典(GI、大井ダ2000m)。2番人気。「ハナに行こうかと思ったが、1番が主張してきたので2番手で」と戸崎。折り合いは取れていた。しかし最後の直線で「反応し切れなかった」。田中博康調教師が「3歳馬にとって過酷すぎたローテ。トラウマにならないことを願うばかり」と言葉を慎重に選んだように、ここは心身を削られた一戦だった。6着。[^2]

出典:東スポ競馬「【チャンピオンズC・1番人気なぜ負けた】ナルカミまさかの13着惨敗 戸崎圭太が指摘した「課題」」2025年12月8日配信、https://news.yahoo.co.jp/articles/0b70853f12f0fb2d391dbfc37c83a62997eac347、閲覧日:2026年6月28日。/スポニチアネックス「【東京大賞典】6着ナルカミの敗因は厳しいローテ 田中博師「トラウマにならないことを願うばかり」」2025年12月30日配信、https://news.yahoo.co.jp/articles/eee4ec6c5231beb0f147609710745b093db566e8、閲覧日:2026年6月28日。

再起のゆくえ ― 4歳の春

2026年3月、船橋ダイオライト記念(JpnII、2400m)。「距離が長かった」と戸崎は振り返り、5着。5月の平安ステークス(GIII、京都ダ1900m)は8着。「まだ本来の走りではない」という戸崎の言葉が、現在地を示している。 4歳の夏、ナルカミはまだ問いの途中にいる。心肺機能は「これまで手掛けた重賞馬の中でも特別に高い」と調教師が語るほどの素質を持ちながら、精神面と距離適性という宿題が残る。父サンダースノーが2歳から5歳まで毎年GIを制した持続力を、この砂の鳴神がいつ存分に解放するか。 父が「雷と雪」で2度ドバイに轟いたように、ナルカミが再び砂の上で名を鳴らす日を、今は静かに待つ。

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