名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ナランフレグのイメージビジュアル
ナランフレグNaran Huleg
Naran Huleg

ナランフレグ

通算成績37戦6勝

獲得賞金413万円

生年月日 2016.04.05(平成28年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ナランフレグの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
9 GIスプリンターズS 中山 芝1200 13人気 丸田恭介 1:08.6 上り34.4映像
10 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 5人気 丸田恭介 1:11.1 上り35.6映像
17 GI安田記念 東京 芝1600 16人気 丸田恭介 1:33.3 上り34.5映像
4 GI高松宮記念 中京 芝1200 9人気 丸田恭介 1:11.8 上り35.1映像
9 GIII夕刊フジオーシャンS 中山 芝1200 3人気 丸田恭介 1:08.1 上り33.2映像
10 GI香港スプリント シャティン 芝1200 5人気 丸田恭介 映像
3 GIスプリンターズS 中山 芝1200 5人気 丸田恭介 1:08.0 上り33.9映像
9 GI安田記念 東京 芝1600 12人気 丸田恭介 1:32.7 上り33.1映像
1 GI高松宮記念 中京 芝1200 8人気 丸田恭介 1:08.3 上り33.9映像
2 GIII夕刊フジオーシャンS 中山 芝1200 4人気 丸田恭介 1:08.0 上り33.5映像
3 GIIIシルクロードS 中京 芝1200 3人気 丸田恭介 1:08.3 上り33.3映像
1 OPタンザナイトS 阪神 芝1200 2人気 丸田恭介 1:08.5 上り33.2
2 L夕刊フジ杯オパールS 阪神 芝1200 5人気 丸田恭介 1:08.3 上り33.1
10 GII産経賞セントウルS 中京 芝1200 11人気 丸田恭介 1:08.0 上り33.0映像
10 L朱鷺S 新潟 芝1400 3人気 丸田恭介 1:21.5 上り34.1
4 OPTVh賞 札幌 芝1200 3人気 丹内祐次 1:08.0 上り33.4
2 OP鞍馬S 中京 芝1200 1人気 丸田恭介 1:07.2 上り32.8
6 L春雷S 中山 芝1200 5人気 三浦皇成 1:07.7 上り33.2
2 L淀短距離S 中京 芝1200 5人気 丸田恭介 1:08.4 上り33.8
7 L信越S 新潟 芝1400 4人気 丸田恭介 1:21.4 上り33.7
7 L朱鷺S 新潟 芝1400 2人気 丸田恭介 1:21.4 上り34.9
9 GIIIアイビスサマーD 新潟 芝1000 5人気 丸田恭介 0:54.8 上り32.0
5 OP韋駄天S 新潟 芝1000 2人気 丸田恭介 0:54.5 上り31.6
6 L春雷S 中山 芝1200 3人気 丸田恭介 1:08.5 上り34.0
3 GIIIシルクロードS 京都 芝1200 8人気 丸田恭介 1:09.1 上り33.4映像
1 浜松S 中京 芝1200 3人気 丸田恭介 1:08.2 上り32.6
7 奥多摩S 東京 芝1400 8人気 野中悠太郎 1:21.8 上り32.5
5 セプテンバーS 中山 芝1200 1人気 戸崎圭太 1:07.9 上り34.0
1 飯豊特別 新潟 芝1200 1人気 戸崎圭太 1:08.7 上り33.8
1 閃光特別 新潟 芝1000 2人気 戸崎圭太 0:54.6 上り31.7
5 3歳500万下 東京 ダ1400 2人気 戸崎圭太 1:25.7 上り38.0
10 雪うさぎ賞 福島 芝1200 6人気 山田敬士 1:10.2 上り36.2
6 3歳500万下 中山 ダ1200 4人気 丸田恭介 1:11.6 上り36.7
2 ごぎょう賞 中京 ダ1200 3人気 丸田恭介 1:12.3 上り36.4
3 寒椿賞 中京 ダ1400 6人気 丸田恭介 1:26.1 上り38.2
6 カトレア賞 東京 ダ1600 7人気 丸田恭介 1:39.2 上り37.3
1 2歳新馬 東京 ダ1300 6人気 丸田恭介 1:20.0 上り36.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ナランフレグの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ゴールドアリュールGold AllureサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ニキーヤNikiyaNureyev
Reluctant Guest
ケリーズビューティブライアンズタイムBrian's TimeRoberto
Kelley's Day
ビューティークロスタマモクロスTamamo Cross
ミヤマビューティー
STORY

旅程 — この馬の物語

2016年生まれの栗毛の牡馬。父ゴールドアリュール、母ケリーズビューティ。主な勝ち鞍は高松宮記念。

太陽と、速く飛ぶ馬

2016年4月5日、北海道日高町豊郷の坂戸牧場に、栗毛の牡馬が生まれた。父ゴールドアリュール、母ケリーズビューティ。名はモンゴル語のふたつの言葉——太陽と、速く飛ぶ馬——を継いだものである。 坂戸牧場は1968年ごろに開かれた小さな生産牧場で、創業者の坂戸正弘は1994年に世を去っている。以後は妻の節子を含む三人が、この牧場で馬を作り続けてきた。生産者名義は坂戸節子。 母ケリーズビューティの初仔が、半兄インプレスウィナー(父フサイチコンコルド)。JRAで7勝を挙げ、オープン特別を4つ勝ち、京王杯スプリングカップで3着に食い込んだ快速馬だった。母の父はブライアンズタイム、祖母ビューティークロスの父はタマモクロス。3代母ミヤマビューティーはホウヨウボーイの半妹にあたり、その母ホウヨウクインがナランフレグの4代母である。 ゴールドアリュールを配したのは、半兄と同じくノーザンダンサーのインブリードを作ること、そしてダート適性を狙ってのことだった。だが父は、この仔がまだ当歳だった2017年2月18日、心臓疾患のため18歳で世を去っている。 1歳の秋まで牧場で育ち、それから千葉へ移された。牧場で世話をした渡辺明治は、体が丈夫で賢い馬だったと振り返っている。

七戦を要した卒業

2018年10月8日、東京のダート1300m、2歳新馬。鞍上は丸田恭介。6番人気の評価をひっくり返して、いきなり勝った。 丸田は2007年にデビューし、長く宗像義忠厩舎に所属していたが、2018年3月末で厩舎を離れフリーになっている。ナランフレグの新馬戦は、その半年後のことだった。厩舎を出た元弟子に、師はこの馬の手綱を預け続けることになる。 ところが、そこから勝ち星が遠のいた。カトレア賞6着、寒椿賞3着、明けてごぎょう賞2着、中山のダート1200mで6着。4月には福島の芝1200m・雪うさぎ賞で初めて芝を試したが10着に沈み、5月には東京のダート1400mへ戻って5着。ひとつ上のクラスに上がるのに、七戦を要した。

直線の新潟で、脚が見つかる

転機は真夏の新潟だった。2019年7月27日、芝1000mの直線競走・閃光特別。戸崎圭太を背に、上がり31秒7の脚で9か月ぶりの白星を挙げる。続く飯豊特別(新潟芝1200m)も1番人気に応えて連勝した。ダート適性を狙って組まれた配合の仔は、芝の、それも短いところで一気に脚を使う馬だった。 秋のセプテンバーステークスは1番人気で5着、東京の奥多摩ステークスは7着。3勝クラスの壁は厚かった。 そして12月15日、中京の浜松ステークス。手綱が丸田に戻ったこの日、ナランフレグは芝1200mで上がり32秒6を計時し、2着に0秒4の差をつけて突き抜けた。この末脚に、丸田は、この馬が自分を男にしてくれるかもしれない、と競馬記者に漏らしている。2010年の福島記念で重賞は勝っていたが、GIの舞台は、まだ遠いところにあった。

賞金が、足りない

2020年2月、京都のシルクロードステークス。初めての重賞挑戦で、8番人気ながらアウィルアウェイの3着に粘り込んだ。だが、そこから先が長かった。春雷ステークス6着、韋駄天ステークス5着、アイビスサマーダッシュ9着、朱鷺ステークス7着、信越ステークス7着。翌2021年も淀短距離ステークス2着、鞍馬ステークス2着と際どい競馬を重ねながら、頭は取れない。 オープンで二着を続ける馬は、賞金が積み上がらない。収得賞金が足らず、狙っていたGIに駒を進められない年が二度続いた。丸田は、自分がこの馬に遊ばれているのだと省み、乗せ続けてくれる宗像に結果を出さなければと、自らを追い込んでいた。 2021年5月、鞍馬ステークスの後に、馬主の西城公雄が世を去る。所有権は、仕事上の知人であった村木克成が引き継いだ。オーナーが替わって最初の一戦、札幌のTVh賞は丹内祐次が乗って4着。丸田に手綱が戻ってからの朱鷺ステークス10着、セントウルステークス10着は、二桁の大敗だった。 潮目は秋の阪神で変わる。オパールステークス2着に続き、12月18日のタンザナイトステークスを、内から抜け出して勝った。実に2年ぶりの勝利であり、オープン初勝利でもあった。この「内を突く」形が、三か月後に効いてくる。

一分八秒三、内ラチ沿い

2022年、シルクロードステークスでメイケイエールの3着、オーシャンステークスではジャンダルムに3/4馬身差の2着。重賞で続けて好走し、6歳にして初めてGIの馬柱に名前が載った。 3月27日、中京芝1200m、第52回高松宮記念。前日までの雨で馬場は重。18頭立ての1枠2番、8番人気だった。 道中は後方の内。3コーナーを回るあたりで15番手にいた。4コーナーで前の一団が外へ張り出すと、内ラチ沿いに道が開く。ナランフレグはそこへ入り、一頭ずつ確実に捉えていった。ゴール前でレシステンシアとトゥラヴェスーラの間を割り、残り50m、外でロータスランドとキルロードが叩き合うのを尻目に、内から先に決勝線を通過する。 1分8秒3。2着ロータスランドにクビ差、3着キルロードはさらにハナ差。3連単は278万4560円という数字を残した。 「阪神のオープンでもこういう形をこなしてくれていたので、自信を持ってインコースに行きました」[^1]。三走前のタンザナイトステークスで内を突いて勝った経験が、GIの直線で迷いを消していた。 この一勝は、ナランフレグにとって重賞初制覇であり、初のGIだった。同じ日、丸田恭介はデビュー16年目にして初のGIを、宗像義忠は開業30年目にして初のGIを、村木克成は馬主資格を取ってわずか1年目で初のGIを、そして坂戸牧場は創業から半世紀を経て初のGIを手にした。厩舎を離れてなお乗せ続けた師と、その期待に応えられずにいた弟子が、同じレースで初めての頂に立ったことになる。 父ゴールドアリュールの産駒が芝のGIを勝ったのは、これが初めてだった。同じ2016年に生まれた父の仔クリソベリルがダートの頂点に立っていた一方で、ダート向きに配されたはずのナランフレグは、父に芝の一勝を届けた。

出典:Number Web「3連単278万円超の大波乱に…8番人気ナランフレグはなぜGI高松宮記念で突き抜けたのか? 勝負を分けた“インコースの選択”」2022年3月28日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/852565、閲覧日:2026年7月25日。

GI馬として走る一年

タイトルを獲った馬は、次の日から「GI馬」として走ることになる。6月5日の安田記念は初めてのマイル戦。後方から運んで直線は伸びきれず、12番人気の9着だった。 秋、10月2日のスプリンターズステークス。中山の芝1200m。発馬直後に接触があって思っていたより後ろの位置取りになりながら、後方の内をロスなく回り、直線で馬群を割って伸びてきた。勝ったのは春のオーシャンステークスで先着を許したジャンダルム、2着ウインマーベル、ナランフレグは3着。春秋のスプリントGI制覇には0秒2届かなかった。 暮れには香港へ渡った。12月11日、沙田の香港スプリント。ウェリントンが勝ったこのレースで10着。海を越えた一戦は、37戦のうちこの一度きりだった。

不良馬場の中京、そして日高へ

7歳になった2023年、3月4日のオーシャンステークスは出遅れて後方から。上がり33秒2の脚を使いながら9着に終わった。 3月26日、連覇を懸けた高松宮記念。中京の芝は不良まで悪化していた。またも後手を踏み、後方からのレースになる。直線で馬群を割って伸びてきたが、届いたのは4着まで。勝ったのは12番人気のファストフォースで、鞍上の団野大成にとっては初めてのGIだった。9番人気に落ちていた前年の王者について、丸田は、極端な馬場ではあったが通りたいところは通れた、よく頑張ってくれたと振り返っている。 そこからは重い脚が続いた。6月の安田記念17着、8月のキーンランドカップ10着、そして10月1日、中山のスプリンターズステークス9着。これが最後の一走になった。10月7日、JRAの競走馬登録を抹消。37戦6勝、獲得賞金4億13万7000円。 翌8日、ナランフレグは日高町庫富のヴェルサイユリゾートファームに入った。生まれた坂戸牧場と、同じ町である。2024年から種牡馬としての生活が始まり、いまは父ゴールドアリュールの血を次へ渡す側にいる。 太陽と、速く飛ぶ馬。ふたつのモンゴル語を負った栗毛は、日高に生まれ、重馬場の内ラチ沿いに一本の道を見つけ、日高へ帰った。

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