名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ナムラクレアのイメージビジュアル
ナムラクレアNamura Clair
Namura Clair

ナムラクレア

通算成績25戦6勝

獲得賞金73,282万円

生年月日 2019.03.30(令和元年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ナムラクレアの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 GI高松宮記念 中京 芝1200 2人気 浜中俊 1:07.1 上り32.7映像
2 GII阪神カップ 阪神 芝1400 1人気 C.ルメール 1:19.0 上り33.2映像
3 GIスプリンターズS 中山 芝1200 2人気 C.ルメール 1:07.2 上り32.7映像
8 GIII函館スプリントS 函館 芝1200 1人気 C.ルメール 1:07.2 上り33.3映像
2 GI高松宮記念 中京 芝1200 1人気 C.ルメール 1:08.0 上り33.3映像
1 GII阪神カップ 京都 芝1400 1人気 C.ルメール 1:20.1 上り33.3映像
3 GIスプリンターズS 中山 芝1200 4人気 横山武史 1:07.1 上り33.2映像
5 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 1人気 浜中俊 1:08.3 上り34.2映像
2 GI高松宮記念 中京 芝1200 2人気 浜中俊 1:08.9 上り33.2映像
2 GIII京都牝馬S 京都 芝1400 1人気 浜中俊 1:20.3 上り33.6映像
3 GIスプリンターズS 中山 芝1200 1人気 浜中俊 1:08.2 上り34.4映像
1 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 1人気 浜中俊 1:09.9 上り35.2映像
8 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 5人気 浜中俊 1:32.9 上り33.9映像
2 GI高松宮記念 中京 芝1200 2人気 浜中俊 1:11.6 上り35.4映像
1 GIIIシルクロードS 中京 芝1200 2人気 浜中俊 1:07.3 上り32.9映像
5 GIスプリンターズS 中山 芝1200 2人気 浜中俊 1:08.0 上り34.5映像
3 GIIITV西日本北九州記念 小倉 芝1200 1人気 浜中俊 1:07.1 上り33.6映像
1 GIII函館スプリントS 函館 芝1200 1人気 浜中俊 1:07.2 上り34.1映像
3 GI桜花賞 阪神 芝1600 6人気 浜中俊 1:33.0 上り33.9映像
2 GIIフィリーズレビュー 阪神 芝1400 1人気 浜中俊 1:19.9 上り34.4映像
5 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 6人気 浜中俊 1:34.3 上り34.1映像
2 GIIIKBSファンタジーS 阪神 芝1400 1人気 浜中俊 1:21.2 上り34.6映像
1 GIII小倉2歳S 小倉 芝1200 4人気 浜中俊 1:07.9 上り33.9
1 OPフェニックス賞 小倉 芝1200 2人気 松山弘平 1:10.8 上り36.4
3 2歳新馬 新潟 芝1600 5人気 鮫島克駿 1:36.1 上り34.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ナムラクレアの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ミッキーアイルMikki IsleディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
スターアイルロックオブジブラルタル
アイルドフランスIsle de France
サンクイーンII Sun QueenStorm CatStorm Bird
Terlingua
Fountain of PeaceKris S.
Coup de Genie
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの青鹿毛の牝馬。父ミッキーアイル、母サンクイーン。主な勝ち鞍は小倉2歳S・函館スプリントS・シルクロードS。

ナムラの娘 ― 名前と一族

北海道浦河町の谷川牧場で、2019年3月30日に生まれた青鹿毛の牝馬。父はミッキーアイル――ディープインパクトを父に持ち、NHKマイルカップとマイルチャンピオンシップを制したマイル王である。母サンクイーンIIはアメリカ生まれ、母の父にスピードの塊Storm Catを置く。血の重心は、長い距離にはなかった。 馬名は、馬主・奈村睦弘の冠名「ナムラ」に、女性名「クレア」を重ねたもの。奈村家はサンクイーンIIから次々と「ナムラ」を冠した仔を送り出してきた。半妹には、のちに重賞の舞台を踏むナムラクララ(父アドマイヤマーズ)もいる。その一族の名をもっとも高く掲げることになるのが、この牝馬だった。だがこれは、ナムラの娘が背負い続けたひとつの重い宿題の物語でもある――四年にわたって、GIの前でだけ立ち止まり続けるという宿題の。

代打から始まった縁

2021年8月1日、新潟の新馬戦。鮫島克駿を背にした牝馬は、逃げるボンクラージュを捉えきれず3着に終わる。二週間後のフェニックス賞は松山弘平とともに、ゴール前でテイエムスパーダをかわして初勝利を掴んだ。そして9月、小倉2歳ステークス――ここで、この馬の生涯を貫く縁が結ばれる。 当初乗る予定だった和田竜二が、前日の札幌で騎乗中に負傷。急遽、代役として手綱を託されたのが浜中俊だった。中団で脚を溜め、直線は大外から鋭く伸びてスリーパーダに2馬身差。重賞初制覇を、代打のはずの男が導いた。この日から浜中は、ナムラクレアの背に長く座り続けることになる。偶然が結んだ縁が、四年を超える物語の起点になった。

桜、そして短距離へ

2歳暮れの阪神ジュベナイルフィリーズは5着。明けて2022年、フィリーズレビューは単勝1.7倍の圧倒的1番人気に推されながら、サブライムアンセムにアタマ差の2着に屈した。それでも陣営はクラシックの夢を捨てず、18頭立ての桜花賞へ向かう。好位の内から鋭く伸び、坂で先に抜け出したウォーターナビレラに一度は並びかけたが、そこから少しずつ離された。勝ったのはスターズオンアース。ナムラクレアは3着に食い込むのが精一杯だった。 レース後、浜中はこの馬の距離適性をはっきりと口にした。ベストはもっと短いところにある、と。その見立てのとおり、六月の函館スプリントステークスで彼女は本領を現す。50キロの軽ハンデを味方に1番人気に応え、1分7秒2の好時計で快勝。短距離こそが、ナムラクレアの戦場だった。

淀まぬ銀 ― 高松宮記念

2023年はシルクロードステークスから始動し、ファストフォースとの追い比べをアタマ差で制して重賞3勝目。得意の中京・芝1200で迎えた高松宮記念は、不良馬場の消耗戦になった。ナムラクレアは前を行くファストフォースを最後まで追い詰めたが、1馬身が縮まらない。2着。GIタイトルは、またも指の間をすり抜けた。 それでも浜中は、勝ったファストフォースの鞍上・団野大成に祝福の言葉を贈った。負けた悔しさよりも、若い同僚の初GIを讃える横顔だった。この年、彼女は札幌のキーンランドカップを外から一気に差し切って重賞4勝目を挙げ、秋のスプリンターズステークスでもママコチャの1馬身後ろ、3着。重賞では確かに勝てる。しかしGIになると、あと一歩がどうしても遠かった。

繰り返す、二着と三着

2024年も、構図は変わらなかった。始動戦の京都牝馬ステークスはソーダズリングにクビ差の2着。三度目の高松宮記念は、マッドクールにアタマ差まで迫りながら、二年連続の2着に終わる。数センチが、いつも足りない。 秋のスプリンターズステークスは、浜中が騎乗停止で乗れず、横山武史が手綱を取った。メンバー最速となる上がり3ハロン33秒2で猛然と追い込んだが、届いたのはまたも3着。高松宮記念で二年続けて銀、スプリンターズステークスで二年続けて銅。ナムラクレアは日本の短距離戦線でもっとも強い牝馬の一頭でありながら、表彰台のいちばん高い場所にだけ、どうしても立てなかった。

ルメールの一冠、三度目の春

2024年の暮れ、阪神カップでクリストフ・ルメールを新たに背に迎えると、ナムラクレアは久々の白星を掴む。重賞5勝目。だが、彼女がほんとうに欲しかったのは、たったひとつのGIだった。 2025年3月30日――六歳の誕生日に迎えた高松宮記念。1番人気に推されたが、サトノレーヴに届かず、三年連続の2着。秋のスプリンターズステークスでは、上がり3ハロン32秒7という当日最速の脚でサトノレーヴを差し返し、三年連続の3着に滑り込んだ。高松宮記念で三度の銀、スプリンターズステークスで三度の銅。これほど強く、これほど勝ち切れない女王も珍しい。 暮れの阪神カップは、牝馬初となる五年連続の重賞制覇がかかる一戦だった。中団から馬群を割って先頭に立ちながら、外のルガルに差し返されて鼻差の2着。最後まで、あと少しが遠い馬だった。

最後の手綱

2025年の暮れ、陣営は翌春の高松宮記念を最後に引退させる方針を表明した。舞台は、彼女がもっとも輝き、もっとも涙をのんだ中京・芝1200。そしてラストランの鞍上に戻ってきたのは、一年半ぶりの浜中俊だった。代打から始まった縁が、最後にもう一度、結び直される。 2026年3月29日、2番人気。道中は後方、直線で進路が開かず、外へ持ち出して懸命に伸びたが6着。GI初制覇の悲願は、ついに叶わなかった。レース後、浜中は静かに言葉を継いだ。「ここまでこの馬とたくさんコンビを組めたことは、自分の財産です。クレアにはここまでお疲れさまでしたと言ってあげたいです」[^1]。勝利には届かなかった。それでも、始まりも終わりも同じ男の手綱の中にあったことが、この物語のいちばんの果実だった。

出典:サンスポ(ZBAT!)「【高松宮記念】引退レースのナムラクレアは悲願のGⅠ初制覇ならず 浜中俊騎手『たくさんコンビを組めたことは自分の財産』」2026年3月29日配信、https://www.sanspo.com/race/article/general/20260329-T63Y7IJICFNDDOBXFOOKR6BOXQ/、閲覧日:2026年7月18日。

谷川へ帰る

2026年4月4日、ナムラクレアはJRAの競走馬登録を抹消された。帰る先は、生まれ故郷の谷川牧場。走り出した場所へ、繁殖牝馬として戻っていく。 GIには、とうとう手が届かなかった。高松宮記念で三度の2着、スプリンターズステークスで三度の3着――積み上がっていくのは、表彰台の二段目と三段目の写真ばかりだった四年間。だが、勝ち切れなかったことと、強くなかったことは違う。彼女は日本の短距離戦線のまん中に、四年ものあいだ立ち続けた。銀と銅で埋め尽くされたその戦績こそ、この牝馬がどれほど高い場所で戦い続けていたかの、何よりの証だった。 繁殖牝馬としての初年度は、時代の頂に立った牡・イクイノックスとの配合が予定されているという。母になったナムラの娘が、次にどんな仔を送り出すのか。谷川の草を食むその背に、答えはまだ書かれていない。

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