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モズスーパーフレア
通算成績29戦7勝
獲得賞金4億429万円
生年月日 2015.04.01(平成27年)毛色 栗毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4 | GIIIカペラS | 中山 ダ1200 | 1人気 | 松若風馬 | 1:10.0 | 上り37.2 | 映像 | |
| 3 | JpnⅠJBCスプリント | 金沢 ダ1400 | 4人気 | 松若風馬 | 1:25.3 | 上り36.7 | 映像 | |
| 5 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 5人気 | 松若風馬 | 1:07.8 | 上り34.5 | 映像 | |
| 3 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1200 | 2人気 | 松若風馬 | 1:08.4 | 上り35.2 | 映像 | |
| 5 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 6人気 | 松若風馬 | 1:09.5 | 上り35.4 | 映像 | |
| 17 | GIIIシルクロードS | 中京 芝1200 | 1人気 | 北村友一 | 1:09.7 | 上り36.0 | 映像 | |
| 4 | JpnⅠJBCスプリント | 大井 ダ1200 | 4人気 | 松若風馬 | 1:11.2 | 上り37.8 | 映像 | |
| 10 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 2人気 | 松若風馬 | 1:09.3 | 上り36.5 | 映像 | |
| 2 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1200 | 1人気 | 松若風馬 | 1:08.1 | 上り35.7 | 映像 | |
| 1 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 9人気 | 松若風馬 | 1:08.7 | 上り34.5 | 映像 | |
| 4 | GIIIシルクロードS | 京都 芝1200 | 2人気 | 松若風馬 | 1:09.2 | 上り35.3 | 映像 | |
| 8 | GIII京阪杯 | 京都 芝1200 | 1人気 | 松山弘平 | 1:09.6 | 上り35.4 | 映像 | |
| 2 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 3人気 | 松若風馬 | 1:07.2 | 上り34.4 | 映像 | |
| 4 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1200 | 2人気 | 松若風馬 | 1:08.5 | 上り35.6 | 映像 | |
| 15 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 2人気 | 武豊 | 1:09.0 | 上り35.8 | 映像 | |
| 1 | GIII夕刊フジオーシャンS | 中山 芝1200 | 1人気 | C.ルメール | 1:07.1 | 上り34.8 | 映像 | |
| 1 | OPカーバンクルS | 中山 芝1200 | 1人気 | 武豊 | 1:07.0 | 上り34.2 | — | |
| 2 | OPラピスラズリS | 中山 芝1200 | 1人気 | 北村友一 | 1:08.1 | 上り34.1 | — | |
| 3 | OP夕刊フジ杯オパールS | 京都 芝1200 | 1人気 | 北村友一 | 1:08.5 | 上り35.1 | — | |
| 1 | セプテンバーS | 中山 芝1200 | 2人気 | 武豊 | 1:07.0 | 上り33.8 | — | |
| 11 | 函館日刊スポーツ杯 | 函館 芝1200 | 2人気 | 丸山元気 | 1:09.4 | 上り34.8 | — | |
| 1 | HTB杯 | 函館 芝1200 | 2人気 | 北村友一 | 1:07.9 | 上り34.9 | — | |
| 5 | GIII中スポ賞ファルコンS | 中京 芝1400 | 9人気 | 中谷雄太 | 1:22.4 | 上り35.8 | 映像 | |
| 1 | 萌黄賞 | 小倉 芝1200 | 4人気 | 中谷雄太 | 1:08.3 | 上り35.4 | — | |
| 6 | OP紅梅S | 京都 芝1400 | 6人気 | 和田竜二 | 1:23.5 | 上り35.7 | — | |
| 8 | つわぶき賞 | 中京 芝1400 | 2人気 | 松若風馬 | 1:23.4 | 上り34.5 | — | |
| 5 | GIIIKBSファンタジーS | 京都 芝1400 | 7人気 | 松若風馬 | 1:23.2 | 上り34.8 | 映像 | |
| 7 | GIII小倉2歳S | 小倉 芝1200 | 1人気 | 松若風馬 | 1:09.4 | 上り36.1 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 小倉 芝1200 | 1人気 | 松若風馬 | 1:08.5 | 上り34.5 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父Speightstown | Gone West | Mr. Prospector |
| Secrettame | ||
| Silken Cat | Storm Cat | |
| Silken Doll | ||
| 母Christies Treasure | Belong to Me | Danzig |
| Belonging | ||
| Roses At Sunset | Valid Appeal | |
| Bid Gal |
旅程 — この馬の物語
2015年生まれの栗毛の牝馬。父Speightstown、母Christies Treasure。主な勝ち鞍は高松宮記念・夕刊フジオーシャンS。
十二万五〇〇〇ドルの栗毛 ― 名と血
2015年4月1日、アメリカで生まれた栗毛の牝馬。生産はアルファデルタステーブルズ。翌2016年9月、キーンランドの1歳馬セールに上場され、12万5000ドルでキャピタル・システムが落札して日本へ渡った。 父スパイツタウンは、3歳の夏に骨折して二度の手術を受け、二年近く競馬場から消えた馬である。本当に強くなったのは6歳の年で、ベルモントパークとサラトガのダート1200mでコースレコードを立て、引退レースとなったブリーダーズカップ・スプリントを勝ってエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれた。遅れて咲く血だった。 母クリスティーズトレジャーはカナダ産の栗毛。多くの仔を送り、一つ上には同じスパイツタウンを父に持つ全姉ゴイアバがいる。だが、その仔たちのうち日本のターフを走ったのは、この一頭だけだった。 「モズ」は馬主キャピタル・システムの冠名である。そしてスーパーフレアとは、恒星の表面で起こる桁外れの規模の爆発をいう。長く静かに燃え続ける星の話ではない。持っているものを、一度に放つ側の言葉だった。 預けられたのは栗東の音無秀孝。宮崎の生まれで、大阪のレストランでコックとして働いた三年のあいだに競馬に惚れ込み、騎手を志して栗東に入った人である。騎手としては1212戦84勝、GIは1985年の優駿牝馬ただひとつ。1995年に開いた自分の厩舎の初勝利は、いきなり重賞の北九州記念だった。この牝馬は、最後まで一度もこの厩舎から動かなかった。
勝ったのは最初の一度だけ ― 二〇一七年
2017年8月19日、小倉の芝1200m、2歳新馬。鞍上は松若風馬。滋賀の生まれで、父は装蹄師。デビュー年の2014年に47勝を挙げてJRA賞最多勝利新人騎手に選ばれた四年目の若手で、所属はこの馬と同じ音無厩舎である。単勝1.7倍の1番人気に応え、ハナを切って1分8秒5で押し切った。馬体重470キロ。 そこからが長かった。二週間あまり後の小倉2歳ステークスも1番人気に推されて7着。京都のファンタジーステークスは5着、暮れのつわぶき賞は8着。いずれも控える形で、直線に向いてから伸びない。年が明けた紅梅ステークスは和田竜二に手綱が渡って6着だった。 新馬を勝った鞍上は、四戦目を最後にこの馬から離れた。主戦と呼べる騎手のいない馬になった。
映像を見返した男 ― 二〇一八年、四人の鞍上
2018年3月4日、小倉の萌黄賞。初めて跨る中谷雄太は、この馬の新馬戦の映像を見返して、逃げたほうがいいと判断した。控えるのをやめ、スピードのまま押し切る形に戻す。1分8秒3、二着に0秒2差。デビューから半年以上を経て、ようやくの2勝目だった。 続くファルコンステークスは中京の1400mで5着。中谷の騎乗はこれが最後になった。6月、函館のHTB杯で北村友一と初めて組んで3勝目。7月の函館日刊スポーツ杯は丸山元気に乗り替わり、また控える形になって11着に沈む。9月、中山のセプテンバーステークスで武豊と初コンビ。1分7秒0、3馬身半差で圧勝し、オープン入りを果たした。 ここまでの4勝は、松若風馬、中谷雄太、北村友一、武豊——すべて別の騎手が挙げたものである。距離も条件もほとんど変わらないのに、鞍上だけが替わり続けた。ただ、新馬も萌黄賞もセプテンバーステークスも、勝ったときはいつも前を走っていた。 秋のオパールステークスは3着、暮れのラピスラズリステークスは2着。オープンでは二度続けて、勝ち馬の背中を見た。
三十二秒三 ― 二〇一九年春
年明けの中山、カーバンクルステークス。武豊を背に単勝1倍台の1番人気。前半3ハロンを32秒8で飛ばして1分7秒0。オープン昇級3戦目にして、初めての勝利だった。 続くオーシャンステークスは、武豊が同じ日のチューリップ賞に騎乗するため、ルメールとの初コンビになった。ゲートが開くと、前半3ハロン32秒3。中山の1200mでこの数字を刻んで最後まで止まらない馬は、そういない。1分7秒1で押し切り、2着ナックビーナスに0秒2差。4歳の春に、この馬はようやく自分の走り方を手に入れた。 三週間後の高松宮記念。重賞を連勝中のダノンスマッシュに次ぐ2番人気に支持され、武豊が戻ってきた。ところが、いつものダッシュがつかない。走りは硬く、直線では下がる一方で、18頭の15着。武豊は、スタートのタイミングは合ったが本来の走りではなかった、と淡々と振り返った。音無は自分を責めた。「ローテーションもあっただろうし、調教もやり過ぎたかも」[^1]。 速さだけでできている馬は、その速さが出ない日に、隠れる場所がない。
出典:スポーツニッポン「【高松宮記念】モズスーパーフレア15着 音無師「やり過ぎたかも…」」2019年3月24日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2019/03/24/kiji/20190324s00004048372000c.html 、閲覧日:2026年7月25日。
戻ってきた鞍上 ― 二〇一九年秋
高松宮記念から五か月、この馬は夏の小倉に帰ってきた。北九州記念。馬体は前走から26キロ増えて506キロ。そして鞍上に、2歳暮れのつわぶき賞以来となる松若風馬の名があった。一年八か月ぶりだった。 この日は逃げず、3番手に控えた。直線で伸びを欠いて4着。最後は苦しくなってしまった、と松若は話している。それでも、この一戦を境にコンビは固定された。引退までの14戦のうち12戦、この馬の背には松若が乗ることになる。 秋、中山のスプリンターズステークス。ダノンスマッシュ、タワーオブロンドンに次ぐ3番人気。今度は控えなかった。前半3ハロン32秒8で押し切りにかかり、直線でも脚色は鈍らない。ゴール手前、外から強襲したタワーオブロンドンに半馬身だけ交わされて2着。1分7秒2。GIでの自己最高成績だった。 続く京阪杯は松山弘平が騎乗して1番人気。楽にハナを切り、前半を34秒台に落として脚を溜めることまでできたのに、4コーナーで行き脚がつかず、直線であっさり交わされて8着。溜めるための馬ではない、という答えが、そこにもう一度書かれていた。
無人のスタンド、十七分 ― 二〇二〇年三月二十九日
5歳初戦のシルクロードステークスは京都で4着。そして高松宮記念。 この週、日本の競馬は観客を入れずに行われていた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた措置で、GIが無観客で施行されるのは、日本中央競馬会が発足して以来はじめてである。表彰式も口取りも縮小された。中京競馬場のスタンドには、誰もいなかった。 金曜からの雨で馬場は重。当日は朝こそ雨だったが、昼過ぎには晴れ間が戻っていた。18頭立ての大外、8枠16番。単勝32.3倍の9番人気。前年の惨敗を知る者にとって、この馬に賭ける理由は多くなかった。 ゲートが開くと、いつも通りだった。内からダイアトニック、ラブカンプー、クリノガウディーらが好スタートを切るなか、外から押して先頭に立つ。後続を数馬身離して逃げ、600m通過は34秒2。残り400m、まだ先頭。残り200m、まだ先頭。外からクリノガウディーが、内からダイアトニックが並びかけてくる。 残り100メートル、先頭に立とうと伸びたクリノガウディーが内側にもたれ、内の二頭に接触した。モズスーパーフレアは体勢を崩した。普通なら、そこで終わる。 終わらなかった。崩された態勢を立て直して、もう一度伸びた。大外から追い込んだグランアレグリアが並びかけたところが決勝線で、4頭が横一線でゴール板を通過する。1分8秒7。四頭とも、同じ数字だった。 着順掲示板に審議の青ランプが灯る。写真判定の結果、1位入線はクリノガウディー、2位モズスーパーフレア、3位グランアレグリア、4位ダイアトニック。だがランプは消えなかった。妨害がなければ内の二頭が先着していたか——裁決が問うたのはそこだった。入線から17分後の15時58分、クリノガウディーは4着に降着し、モズスーパーフレアの1着が確定した。誰もいないスタンドの前で、勝ち名乗りだけが遅れて届いた。 ゴール板を過ぎたとき、松若は負けたと思っていた。デビュー7年目、中央のGIは、これが初めての勝利である。師の音無にとっては、2006年のオレハマッテルゼ以来14年ぶりの高松宮記念だった。そして牝馬がこのレースを勝つのは、2012年のカレンチャン以来8年ぶりのことだった。 名のとおりの馬だった。持っているものを、1分8秒7のあいだに、残らず放った。
五十六キロ半 ― 二〇二〇年夏から二〇二一年冬
夏の小倉、北九州記念。ハンデ56.5キロを背負って1番人気。好スタートからすんなりハナを奪い、自分の形に持ち込んだが、最後にレッドアンシェルに差されて2着。 本番のスプリンターズステークスは2番人気。好スタートから先頭に立ったが、今度はビアンフェが競りかけてきた。前半3ハロンは32秒8。数字は前年と同じでも、隣に馬がいるかどうかで意味は変わる。直線で力尽きて10着、春秋のスプリントGI制覇はならなかった。 11月、大井。初めてのダートだった。JBCスプリントのダート1200mで砂でも先手を取り、4着。適性だけは示した。 6歳になった2021年は、シルクロードステークスから始まった。北村友一と久々に組んで56.5キロを背負い、1番人気。直線でまったく伸びず、18頭の17着。だが連覇のかかる高松宮記念では松若が戻り、重馬場を自分のペースで逃げて5着まで粘った。いいスタートから自分のリズムで運べたが、4コーナーの内で滑る場面があった——松若はそう振り返っている。 夏の北九州記念は3着、秋のスプリンターズステークスは大外枠から先手を取って5着。11月の金沢では、一年ぶりのダートとなったJBCスプリントで軽快に逃げ、レッドルゼルとサンライズノヴァに交わされながら3着に踏みとどまった。6歳の秋になっても、ゲートを出てからの数完歩だけは、まだこの馬のものだった。 12月12日、中山のカペラステークス。ダート1200m、1番人気。大外16番からハナを奪い、直線で一杯になって4着。29戦目だった。
浦河の草 ― 繁殖牝馬として
2021年12月15日、競走馬登録抹消。29戦7勝、獲得賞金4億429万9000円。 行き先は北海道浦河町西幌別の谷川牧場である。1896年に福井から入植した谷川弥吉が礎を築き、1912年に創業した老舗で、1973年の東京優駿を勝ったタケホープを送り出した牧場でもある。浦河の放牧地で、この牝馬は繁殖にあがった。 初仔は2023年に生まれた牡のモズエムブイピー。父はグランプリボス——サクラバクシンオーを父に持ち、2010年の朝日杯フューチュリティステークスと2011年のNHKマイルカップを勝った馬で、その所有者は、この馬の馬主と同じ北側家の名義である。サクラバクシンオーの速さを、逃げてGIを獲った母に重ねた配合だった。 2番仔からあとは、父がモズアスコットに替わっている。フランケルを父に持つアメリカ産の栗毛で、2018年の安田記念と2020年のフェブラリーステークスを勝った、同じ「モズ」の名の馬。そして2020年3月29日、中京の芝1200m、あの日のゲートには、モズアスコットも入っていた。7枠14番、単勝9.8倍の5番人気。結果は13着である。同じ冠名を背負う二頭が同じレースを走り、前を行ったのはこちらだった。その二頭の血が、いま浦河で仔になっている。 鞍上だった松若風馬は、2025年12月、中山のターコイズステークスをドロップオブライトで勝ち、JRA通算500勝に到達した。中央のGIタイトルは、いまもあの一日が与えたひとつだけである。 西幌別の放牧地に、ゲートはない。ハロン棒もない。追ってくる十七頭もいない。一分八秒七だけ続けばよかった速さは、いま、仔たちの脚のなかにある。
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