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モズカッチャン
通算成績15戦4勝
獲得賞金2億8,837万円
生年月日 2014.02.27(平成26年)毛色 黒鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9 | GII金鯱賞 | 中京 芝2000 | 7人気 | 和田竜二 | 2:01.5 | 上り35.0 | 映像 | |
| 8 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 4人気 | M.デムーロ | 2:33.0 | 上り36.7 | 映像 | |
| 3 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 1人気 | M.デムーロ | 2:13.6 | 上り34.7 | 映像 | |
| 3 | GII札幌記念 | 札幌 芝2000 | 4人気 | M.デムーロ | 2:01.1 | 上り36.0 | 映像 | |
| 6 | GIドバイシーマクラシック | メイダン 芝2410 | 4人気 | C.デムーロ | — | 映像 | ||
| 4 | GII京都記念 | 京都 芝2200 | 2人気 | M.デムーロ | 2:16.5 | 上り35.9 | 映像 | |
| 1 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 5人気 | M.デムーロ | 2:14.3 | 上り34.1 | 映像 | |
| 3 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 5人気 | M.デムーロ | 2:00.4 | 上り36.6 | 映像 | |
| 7 | GII関西TVローズS | 阪神 芝1800 | 2人気 | M.デムーロ | 1:46.2 | 上り34.6 | 映像 | |
| 2 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 6人気 | 和田竜二 | 2:24.4 | 上り34.1 | 映像 | |
| 1 | GIIサンスポ賞フローラS | 東京 芝2000 | 12人気 | 和田竜二 | 2:01.3 | 上り33.9 | 映像 | |
| 1 | 3歳500万下 | 中山 芝1800 | 2人気 | 和田竜二 | 1:51.8 | 上り36.6 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 小倉 芝1800 | 3人気 | 藤岡康太 | 1:48.9 | 上り34.2 | — | |
| 3 | 3歳未勝利 | 京都 芝1800 | 13人気 | 和田竜二 | 1:50.8 | 上り35.8 | — | |
| 6 | 2歳新馬 | 阪神 芝1800 | 10人気 | 藤岡康太 | 1:50.9 | 上り35.7 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ハービンジャーHarbinger | Dansili | デインヒルDanehill |
| Hasili | ||
| Penang Pearl | Bering | |
| Guapa | ||
| 母サイトディーラー | キングカメハメハKing Kamehameha | Kingmambo |
| マンファスManfath | ||
| ベストブートBest Boot | Storm Boot | |
| Bright Tiara |
旅程 — この馬の物語
2014年生まれの黒鹿毛の牝馬。父ハービンジャー、母サイトディーラー。主な勝ち鞍はエリザベス女王杯・サンスポ賞フローラS。
男の名を貰った牝馬
馬名は、冠名の「モズ」に人名を重ねたものである。「カッチャン」の由来になったのは馬主の知人の男性で、本来は牡に付けるはずだった呼び名が、手違いのまま牝馬に残った。以来この馬は、男の名を背負って走ることになる。 2014年2月27日、北海道日高町の目黒牧場生まれの黒鹿毛。父は英国でキングジョージ六世&クイーンエリザベスステークスを11馬身差で圧勝し、日本で種牡馬になったハービンジャー。母サイトディーラーは2006年のセレクトセールで当歳1890万円の値がついた牝馬だが、競走成績を残さないまま繁殖にあがった。母の父はキングカメハメハ、その母ベストブートはアメリカ産である。母は翌2015年にも同じハービンジャーとの間に牡を産んだ――全弟モズリュウオウ。 デビューは2016年12月24日、阪神の芝1800m。鞍上は藤岡康太。10番人気で6着、勝ったインウィスパーズから1秒5離された。まだ何も始まっていない、暮れの阪神だった。
三戦目の白星と、和田竜二
年が明けた2017年1月17日、京都の未勝利戦。13番人気の低評価ながら、勝ったサトノクロニクルから0秒3差の3着に粘る。この日から手綱を取ったのが和田竜二だった。 2月12日、小倉。3戦目にして初勝利を挙げる。鞍上は新馬と同じ藤岡康太で、2着に0秒4差をつけた。3月26日には中山の500万下も勝って連勝。和田が戻った一戦だった。 和田竜二は1977年生まれ、1996年のデビュー。1999年の皐月賞から2001年の天皇賞(春)まで、テイエムオペラオーとともにGIを七つ勝った男である。だが、その春の盾を最後にJRAのGIから遠ざかっていた。モズカッチャンの背に跨ったとき、空白は16年目に入っている。三歳牝馬の未勝利戦から始まったこの縁が、彼をもう一度、頂の際まで連れて行くことになる。
一番枠 ― 府中の二度
4月23日、東京のフローラステークス。18頭立ての1枠1番、12番人気。内埒沿いをぴたりと回り、直線で上がり33秒9の脚を放って先頭でゴールした。2着ヤマカツグレース。重賞初制覇である。 5月21日、優駿牝馬。枠はまた1枠1番だった。6番人気。前走と同じように内を進み、4コーナーを回って直線へ。坂を上りながら一気に抜け出した1番人気ソウルスターリングに、内から食い下がる。だが相手はそこでもう一段ペースを上げ、突き放した。1馬身3/4差の2着。 和田にとっては、16年ぶりのGIに最も近づいた一日だった。同じ1番枠を二度引き当てた牝馬は、樫の女王の座に1馬身3/4だけ届かないまま春を終える。
秋、手綱が替わる
9月17日、阪神のローズステークス。この一戦から、手綱はミルコ・デムーロに替わっていた。2番人気に推されたが、入れ込んでいたと鞍上は振り返る。直線で伸びを欠いて7着、勝ったのはラビットランだった。 10月15日、京都の秋華賞。馬場は重。好位から脚を伸ばして3着に押し上げたが、レース後、1〜2コーナーで落鉄していたことが分かる。制したディアドラは、彼女と同じ2014年生まれの、同じハービンジャー産駒だった。0秒2差。 オークス2着、秋華賞3着。三歳牝馬の頂は、二度続けて目の前で閉じた。残された大舞台は、あと一つだった。
クビ差 ― 二〇一七年十一月十二日
京都、晴れ、芝は良。第42回エリザベス女王杯には各世代の実力馬が揃った。1番人気はドバイターフを勝ったヴィブロス。二冠牝馬ミッキークイーン、連覇を狙うクイーンズリング、秋華賞を制したばかりのディアドラ。モズカッチャンは5番人気だった。 クインズミラーグロの先導でゆったりと流れる。その先頭を作った鞍上は藤岡康太――その年の2月、小倉で彼女に初めての勝利をもたらした男である。 5番ゲートを出たモズカッチャンは、道中を好位の内で我慢し、コースロスなく4コーナーを回った。直線、2番手にいたクロコスミアが一気に抜け出す。大外からはミッキークイーンの鋭い脚。そして内から、もう一頭が猛然と追った。クロコスミアをクビ差で捉え、ミッキークイーンをアタマ差で抑える。2分14秒3、上がり34秒1。三歳牝馬が、古馬の女王たちを競り落とした。デムーロは彼女を「いつも一生懸命、真面目に走る馬」と評している[^1]。 管理する鮫島一歩にとっては、開業18年目にして初めての中央GIだった。調教助手から調教師になり、管理馬の延べ62頭目のGI出走で、ようやく手の届いた一つである。 そしてゴール前、彼女がかわしたクロコスミアの鞍上は、和田竜二だった。半年前の府中で内から食い下がりながら突き放された牝馬が、今度は内から差し切る側に回る。その差された相手の背にいたのは、あの日この馬に跨っていた男である。
出典:日本中央競馬会「第42回エリザベス女王杯」2017年11月12日配信、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/eliza/result/eliza2017.html、閲覧日:2026年7月26日。
届かない二年、そして「長かった」
明けて2018年、始動の京都記念は道中中位から伸びあぐねて4着。3月31日にはメイダンへ渡り、ドバイシーマクラシックをC.デムーロで走って6着。帰国後、8月19日の札幌記念では後方から追い込んで3着に届いた。勝ったのはサングレーザーだった。 11月11日、連覇のかかったエリザベス女王杯。好位から脚を伸ばしたが、リスグラシューに屈して3着。12月23日の有馬記念も好位から伸び切れず8着。掲示板の内外を行き来しながら、あの一日の再現はついに訪れなかった。 その間の6月24日、阪神。和田竜二はミッキーロケットで宝塚記念を勝っている。2001年の天皇賞(春)以来、17年ぶりのJRA・GI。ゴールの後、彼は「長かった」と言った[^1]。その春に世を去ったテイエムオペラオーが後押ししてくれたのだと思う、とも。 彼を頂の際まで運んだのは、二度ともこの牝馬だった。一度は背に乗せて、一度は前を行く相手として。
出典:日本中央競馬会「第59回宝塚記念」2018年6月24日配信、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/takara/result/takara2018.html、閲覧日:2026年7月26日。
最後の一鞍と、生まれた場所
2019年3月10日、中京の金鯱賞。7番人気で9着、ダノンプレミアムから1秒4離された。鞍上には1年9か月ぶりに和田竜二が戻っている。2戦目から手綱を取り、フローラステークスとオークスをともにした男が、最後の一鞍にも座っていた。 この後に右前脚の浅屈腱炎を発症し、3月21日、競走馬登録が抹消される。15戦4勝。中央での獲得賞金は2億8837万4000円だった。彼女が運んだ初めての中央GIから8年後の2025年3月、鮫島一歩は定年で厩舎を閉じた。 帰った先は、生まれた目黒牧場である。2020年に初仔モズマワシゲリ(父グランプリボス)。8戦して勝ち星は出ず、金沢、名古屋と移りながら走り終えた。2021年にはモズイージス(父サンダースノー)。栗東から園田、高知へと移りながら、こつこつと白星を拾った。派手ではないが、母の血は確かに競馬場に立ち続けている。 2022年から三年、仔を得られない年が続く。そして2025年、モズアスコットとの間に牝の仔が生まれた。同じ勝負服で安田記念とフェブラリーステークスを勝った先輩が、いまは種牡馬になっている。翌年にも牝馬が続いた。どちらもまだ名を持たない。 彼女に初めての白星をもたらした藤岡康太は、2024年4月6日、阪神競馬場のレース中に落馬し、4日後に世を去った。35歳だった。小倉の未勝利戦を0秒4差で抜け出したあの日から、七年が経っていた。 手違いで男の名をもらった牝馬は、その名のまま京都の直線をクビ差だけ抜け出し、生まれた牧場に帰って母になった。日高の草の上を、名のない牝の仔が母の脇を歩いている。名は、そのうち誰かが付ける。
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