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モズアスコット
通算成績26戦7勝
獲得賞金4億3,571万円
生年月日 2014.03.31(平成26年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5 | GIチャンピオンズカップ | 中京 ダ1800 | 11人気 | 横山武史 | 1:50.0 | 上り36.4 | 映像 | |
| 7 | GIII東京中日S杯武蔵野S | 東京 ダ1600 | 2人気 | 横山武史 | 1:35.9 | 上り36.3 | 映像 | |
| 2 | JpnⅠマイルチャンピオンシップ | 盛岡 ダ1600 | 2人気 | 横山武史 | 1:32.8 | 上り35.5 | — | |
| 6 | JpnⅠかしわ記念 | 船橋 ダ1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:40.5 | 上り37.5 | — | |
| 13 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 5人気 | M.デムーロ | 1:09.9 | 上り33.7 | 映像 | |
| 1 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:35.2 | 上り35.4 | 映像 | |
| 1 | GIII根岸S | 東京 ダ1400 | 3人気 | C.ルメール | 1:22.7 | 上り34.7 | 映像 | |
| 14 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 7人気 | 和田竜二 | 1:34.2 | 上り34.8 | 映像 | |
| 2 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 2人気 | 岩田康誠 | 1:21.3 | 上り33.8 | 映像 | |
| 6 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 5人気 | 内田博幸 | 1:45.0 | 上り34.0 | 映像 | |
| 6 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 7人気 | 坂井瑠星 | 1:31.2 | 上り33.1 | 映像 | |
| 7 | GII読売マイラーズカップ | 京都 芝1600 | 3人気 | C.ルメール | 1:33.6 | 上り32.8 | 映像 | |
| 7 | GI香港マイル | シャティン 芝1600 | 3人気 | C.ルメール | 1:34.3 | — | 映像 | |
| 13 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:33.8 | 上り33.9 | 映像 | |
| 2 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 1人気 | C.ルメール | 1:21.5 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 9人気 | C.ルメール | 1:31.3 | 上り33.3 | 映像 | |
| 2 | OP安土城S | 京都 芝1400 | 1人気 | 坂井瑠星 | 1:20.7 | 上り32.9 | — | |
| 2 | GII読売マイラーズカップ | 京都 芝1600 | 2人気 | C.ルメール | 1:31.5 | 上り34.2 | 映像 | |
| 2 | GIII阪急杯 | 阪神 芝1400 | 1人気 | C.ルメール | 1:20.1 | 上り33.7 | 映像 | |
| 4 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 1人気 | C.デムーロ | 1:19.9 | 上り34.3 | 映像 | |
| 1 | 渡月橋S | 京都 芝1400 | 1人気 | 吉原寛人 | 1:21.5 | 上り34.2 | — | |
| 1 | 三鷹特別 | 東京 芝1400 | 1人気 | C.ルメール | 1:20.4 | 上り33.7 | — | |
| 1 | 3歳以上500万下 | 阪神 芝1600 | 2人気 | C.ルメール | 1:32.7 | 上り33.9 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 中京 芝1600 | 2人気 | 内田博幸 | 1:34.6 | 上り34.3 | — | |
| 4 | 3歳未勝利 | 阪神 芝1800 | 1人気 | 武豊 | 1:46.9 | 上り34.2 | — | |
| 4 | 3歳未勝利 | 阪神 芝2000 | 1人気 | 武豊 | 2:00.6 | 上り35.9 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父Frankel | Galileo | Sadler's Wells |
| Urban Sea | ||
| Kind | デインヒルDanehill | |
| Rainbow Lake | ||
| 母India | ヘネシーHennessy | Storm Cat |
| Island Kitty | ||
| Misty Hour | Miswaki | |
| Our Tina Marie |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2014年生まれの栗毛の牡馬。父Frankel、母India。主な勝ち鞍は安田記念・フェブラリーS・根岸S。
百舌鳥とアスコット ― 名に刻まれた一日
2014年3月31日、アメリカのサマーウインドファームに栗毛の牡馬が生まれた。父はFrankel。14戦14勝、うちGI10勝という完璧な戦績でターフを去った欧州の怪物が、種牡馬となって最初に送り出した世代の一頭である。同期にはソウルスターリングがいて、のちにイギリスでチャンピオンステークスを二度制するCracksmanがいた。 母はIndia。アメリカで15戦6勝、うちグレードレースを二つ勝った牝馬だ。母の半姉が産んだのが、ウッドワードステークスなどアメリカGIを二つ勝ったTo Honor and Serveと、シャンデリアステークスを勝ったAngela Renee。さらに遡れば、四代母Java Moonの全妹が産んだ仔が、のちに日本へ渡って多くの活躍馬を出したブライアンズタイムだった。この牝系と日本の競馬は、初対面ではない。 2015年のキーンランド・セプテンバーセール。一歳のこの馬に27万5000ドル、当時のレートで約3300万円を投じたのは、株式会社キャピタル・システム代表の北側雅司である。理由ははっきりしていた。フランケル産駒が欲しかった、というのだ。 名は、ある一日から採られている。2011年6月14日、イギリスのアスコット競馬場。北側の息子・司が所有し、栗東の矢作芳人が管理していたグランプリボスが、セントジェームズパレスステークスに挑んで8着に敗れていた。そのレースを勝った馬が、フランケルだった。 「グランプリボスが出走したアスコットのG1(11年セントジェームズパレスS8着)で優勝したのがフランケル。私の出身地(大阪府堺市百舌鳥)にちなんだ冠名モズにアスコットと付けたんだ」[^1] モズアスコット。堺の百舌鳥と、イギリスの直線。敗れた日の記憶に、その日勝った馬の血を重ねた名前だった。日本での管理を託されたのも、グランプリボスと同じ矢作厩舎である。
出典:スポーツニッポン「【安田記念】北側オーナー 愛馬Vに興奮「大声が出ました」」2018年6月4日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2018/06/04/kiji/20180603s00004048450000c.html、閲覧日:2026年7月26日。
遅れてきた三歳 ― 四連勝
体質が弱く、デビューは遅れた。初めてゲートに入ったのは三歳の初夏、2017年6月10日の阪神。3歳未勝利の芝2000mを、武豊の手綱で走った。1番人気に支持されながら4着。二週間後、同じ阪神の未勝利戦もやはり武豊で、やはり4着。勝ち上がるまでに三戦を要した。 初勝利は7月16日、中京の芝1600m。内田博幸を背に、ようやくひとつ目を手にする。距離をマイル前後に絞ってからの変わり身は早かった。9月、阪神の500万下で初めてクリストフ・ルメールが跨ると、これも快勝。11月の東京・三鷹特別、続く京都・渡月橋ステークスと勝ち、四連勝でオープンに手が届いた。 渡月橋ステークスの鞍上は、金沢所属の吉原寛人だった。同じ11月26日の同じ京都で、吉原はネロに乗って京阪杯を制し、JRA重賞初制覇を挙げている。金沢の騎手が中央の一日に挙げた勝ち鞍の、ひとつがこの馬だった。 暮れの阪神カップが重賞初挑戦。1番人気に推されたが、イスラボニータの4着に終わる。四連勝の勢いは、重賞の壁の前でいったん止まった。
二着の春
明けて2018年。阪急杯は1番人気だった。中団から鋭く伸びたものの、前で粘るダイアナヘイローにクビ差だけ届かず2着。4月のマイラーズカップは2番手から早めに抜け出しながら、外からサングレーザーの末脚に屈してまた2着。強いのに、勝てない。ルメールを背にしても、最後の半歩が出なかった。 安田記念には登録した。しかし5月20日に発表された最終登録の段階で、獲得賞金による出走順位は19番目。フルゲート16頭から、三つはみ出していた。出走するには賞金を積み増すしかない。矢作は5月27日の安土城ステークスに坂井瑠星を乗せて送り出す。1番人気。そして、またも2着だった。 賞金は加算できなかった。万事休す――と思われたところで、回避馬が続いた。水曜の朝、出走できることが決まる。中6日、連闘での本番参戦である。
連闘の府中 ― 重賞初制覇がGI
2018年6月3日、東京競馬場の芝1600m。9番人気、単勝15.7倍。ルメールは後方のインで我慢し、直線で馬群のなかへ突っ込んだ。壁を割って進路をこじ開け、前を行くアエロリットに迫る。ゴール前、出たのはクビだけだった。 時計は1分31秒3。2012年にストロングリターンが刻んだ安田記念のレースレコードに、ぴたりと並ぶタイレコードである。――その2012年、ストロングリターンにクビ差で敗れて2着に泣いた馬を、この厩舎は忘れていない。グランプリボスだった。名の由来になった馬が届かなかった数字に、名を継いだ馬が並んだ。 この一勝が、モズアスコットにとって重賞初勝利だった。それがGIだった。ルメールにとっても矢作にとっても、安田記念は初制覇である。グレード制が導入された1984年以降、連闘でGIを勝ったのは1989年安田記念のバンブーメモリー、1998年阪神3歳牝馬ステークスのスティンガーに続く三頭目だった。 勝ったあと、ルメールは自分の騎乗より先に厩舎の仕事を讃えた。 「今日に限って言えば、何より矢作先生のトレーナーとしての仕事が見事でした」[^1] 矢作自身は、通常の調整では状態を上げきれないと判断したからこそ連闘に踏み切った、と共同会見で説明している。表彰式のあと、オーナーの北側は、息子の馬がこの舞台で晴らせなかった鬱憤をようやく晴らせたと語った。
出典:スポーツナビ「モズアスコット常識外れの連闘GI勝利 手腕結実の矢作師「いずれ世界で戦う馬」」2018年6月3日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201806030001-spnavi、閲覧日:2026年7月26日。
一年八か月 ― 芝で行き場を失う
秋、58キロを背負ったスワンステークスは、鋭く伸びながらロードクエストにハナ差だけ差し切られて2着。本番のマイルチャンピオンシップは1番人気に推されたが、四コーナーでごちゃつく不利があり、直線で見せ場を作れないまま13着。暮れの香港マイルはスタートで出負けし、7着に終わった。 2019年は、さらに長かった。始動のマイラーズカップは7着。安田記念は坂井瑠星を背に6着。秋の毎日王冠は内田博幸で6着。岩田康誠に導かれたスワンステークスではダイアトニックにハナ差の2着と好走したものの、和田竜二が跨ったマイルチャンピオンシップは14着。この年、勝ち鞍はひとつもない。 安田記念のあと八戦を走って未勝利、2着はわずかに二度。手綱は替わり続けた。連闘で春のマイル王になった馬は、芝の上で行き場を失っていた。
それならダートに ― 砂の上の初戦
2019年のマイルチャンピオンシップが終わったとき、引退という選択肢も卓上にあった。だがオーナーからもう一年現役を続けたいと告げられ、矢作は条件をひとつ願い出る。 「それならダートに使わせて下さい」[^1] 根拠はあった。調教での脚捌きとパワー。そして血統である。この馬の母系はアメリカのダート重賞を二つ勝っており、母Indiaの父はヘネシーだ――だから明らかにダートは走る、というのが矢作の読みだった。フランケル産駒は世界的にもダート適性のサンプルが極めて少ないだけで、芝と決めつけられている、とも見ていた。芝でGIを勝ってしまったから試す機会がなかっただけだ、とも言い添えている。 2020年2月2日、東京の根岸ステークス。自身初のダート戦で、スタートは決まらなかった。それでも3番人気の栗毛は直線を外から伸び、早めに先頭に立ったコパノキッキングをゴール前で捉えて1馬身1/4。一年八か月ぶりの勝利であり、芝とダートの双方で重賞を勝った瞬間でもあった。
出典:競馬ラボ「【フェブラリーS】モズアスコット矢作調教師「ダート転向」お願いした理由」2020年2月16日配信、https://www.keibalab.jp/column/interview/2004/、閲覧日:2026年7月26日。
二月二十三日の東京 ― 二刀流
三週後のフェブラリーステークスは、単勝2.8倍の1番人気。ルメールは好スタートから中団を進め、直線半ばで抜け出した。追ってきた16番人気ケイティブレイブとの差は2馬身半。時計は1分35秒2だった。 中央・地方の統一ダートグレードが定められた1997年以降、芝とダートの双方でGIを勝った馬は、クロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドンに続いて史上五頭目。しかもモズアスコットの二つは、どちらも東京のマイルである。同じ直線を、芝と砂で二度制したことになる。矢作はレース前、ここを勝てば東京マイルの芝とダートを両方勝った初めてのGI馬になる、と語っていた。管理する側にとっても、前年暮れの有馬記念、ホープフルステークスに続くGI実施機会三連勝であり、1984年のグレード制導入以降では2004年の松田国英に続く二人目の記録だった。 そしてルメールが、この馬の変化をひとことで言い切った。 「根岸ステークスからモズアスコットは新しい馬になりました」[^1]
出典:スポーツナビ「史上5頭目の二刀流GI馬モズアスコット ルメールも驚く変身「新しい馬になった」」2020年2月23日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/202002230001-spnavi、閲覧日:2026年7月26日。
最後の一年、そして新ひだかへ
次はオーストラリアのドンカスターマイルと決まっていた。しかし新型コロナウイルスの感染拡大で遠征は断念となり、行き先は高松宮記念に変わる。初めての1200m、しかも重馬場。ミルコ・デムーロを背に5番人気で13着だった。その日、中京の直線を先頭で駆け抜けたのは、同じキャピタル・システムの勝負服を着たモズスーパーフレアである。 5月のかしわ記念は船橋のダート1600m。1番人気に応えられず6着。四つのコーナーと地方競馬場の深い砂が向かなかった、とルメールは振り返っている。 秋、鞍上は横山武史になった。盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯では2番手から一度は先頭に立ちながら、アルクトスに交わされて2着。武蔵野ステークスは7着。 引退レースは、2020年12月6日の中京、チャンピオンズカップだった。11番人気。後方から運び、直線ではメンバー最速タイとなる上がり36秒4を使って5着まで押し上げる。勝ち切ることはできない。それでも最後の一完歩まで、この馬の脚は残っていた。手綱を取っていたのは、まだ21歳の横山武史である。 12月11日、競走馬登録抹消。26戦7勝。向かった先は北海道新ひだか町のアロースタッド――名の由来となった一日を走ったグランプリボスが、六年前に送られたのと同じ牧場だった。 種牡馬としての答えは、思いのほか早く返ってきた。2025年の弥生賞ディープインパクト記念をファウストラーゼンが勝ち、産駒初のJRA重賞制覇。その馬は翌2026年、函館記念も勝った。同じ2025年には、エコロアルバがサウジアラビアロイヤルカップを制した。その鞍上は坂井瑠星――あの安土城ステークスで、父に跨っていた男である。 アスコットの直線で敗れた一日から採られた名前が、府中の芝と砂を両方勝ち、いまは日高の風のなかで次の世代へ渡されている。負けた日の記憶に付けられた名としては、上出来すぎる続きだった。
産駒 — 旅を継ぐ馬
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