名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ミツバのイメージビジュアル
ミツバMitsuba
Mitsuba

ミツバ

通算成績52戦11勝

獲得賞金35,481万円

生年月日 2012.03.28(平成24年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ミツバの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
5 JpnⅡ名古屋グランプリ 名古屋 ダ2500 5人気 和田竜二 2:46.2 上り40.0
11 GIIIシリウスS 中京 ダ1900 12人気 岩田望来 1:59.2 上り38.2映像
7 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 11人気 和田竜二 2:06.5 上り36.9
11 GIII平安S 京都 ダ1900 13人気 松若風馬 1:57.7 上り36.6映像
7 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 5人気 和田竜二 2:17.4 上り41.8
13 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 15人気 和田竜二 1:50.3 上り36.4映像
6 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 5人気 和田竜二 1:35.7 上り36.4
4 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 5人気 和田竜二 2:05.2 上り38.2
4 JpnⅡダイオライト記念 船橋 ダ2400 2人気 和田竜二 2:38.5 上り38.9
1 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 3人気 和田竜二 2:15.0 上り39.1
2 JpnⅡ名古屋グランプリ 名古屋 ダ2500 3人気 福永祐一 2:40.8 上り37.6
8 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 12人気 松山弘平 1:51.2 上り36.3映像
11 JpnⅢ白山大賞典 金沢 ダ2100 1人気 松山弘平 2:18.4 上り42.5
3 GIIIエルムS 札幌 ダ1700 1人気 松山弘平 1:42.5 上り35.8映像
1 JpnⅢマーキュリーカップ 盛岡 ダ2000 2人気 松山弘平 2:03.5 上り35.2
4 GIII平安S 京都 ダ1900 6人気 松山弘平 1:57.6 上り37.1映像
2 GIIIアンタレスS 阪神 ダ1800 3人気 松山弘平 1:50.0 上り37.7映像
2 JpnⅢ名古屋大賞典 名古屋 ダ1900 2人気 松山弘平 2:02.5 上り36.3
6 GI東京大賞典 大井 ダ2000 5人気 M.デムーロ 2:05.8 上り38.2
6 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 12人気 松山弘平 1:50.5 上り35.6映像
3 JpnⅠJBCクラシック 大井 ダ2000 7人気 松山弘平 2:04.7 上り37.8映像
8 GIIIシリウスS 阪神 ダ2000 2人気 松山弘平 2:04.7 上り36.9映像
1 JpnⅢマーキュリーカップ 盛岡 ダ2000 1人気 松山弘平 2:02.1 上り36.3
1 OPブリリアントS 東京 ダ2100 1人気 松山弘平 2:10.3 上り36.0
11 GIIIアンタレスS 阪神 ダ1800 2人気 横山典弘 1:50.6 上り36.0映像
4 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 3人気 横山典弘 2:15.5 上り38.9
1 OPベテルギウスS 阪神 ダ2000 1人気 横山典弘 2:03.6 上り36.6
1 OPブラジルカップ 東京 ダ2100 3人気 横山典弘 2:08.9 上り38.7
4 GIIIシリウスS 阪神 ダ2000 5人気 松山弘平 2:02.1 上り35.8
1 オークランドRCT 阪神 ダ1800 2人気 松山弘平 1:50.8 上り36.3
4 白川郷S 中京 ダ1800 1人気 松山弘平 1:50.9 上り36.9
1 加古川特別 阪神 ダ1800 2人気 松山弘平 1:49.3 上り34.6
6 韓国馬事会杯 中山 ダ1800 1人気 C.ルメール 1:53.2 上り37.8
2 伊丹S 阪神 ダ1800 2人気 松山弘平 1:51.5 上り36.3
4 北山S 京都 ダ1800 5人気 C.ルメール 1:49.1 上り35.8
5 初夢S 京都 ダ1900 4人気 岩田康誠 1:58.7 上り36.2
1 赤穂特別 阪神 ダ1800 2人気 C.ルメール 1:52.4 上り37.1
4 3歳以上1000万下 阪神 ダ1800 3人気 鮫島克駿 1:53.2 上り37.7
3 釧路湿原特別 札幌 ダ1700 2人気 横山典弘 1:44.7 上り36.9
1 桑園特別 札幌 ダ1700 2人気 C.ルメール 1:44.7 上り37.3
2 3歳以上500万下 札幌 ダ1700 2人気 C.ルメール 1:45.6 上り38.8
4 3歳500万下 東京 ダ1600 3人気 M.デムーロ 1:38.1 上り36.2
3 3歳500万下 京都 ダ1400 4人気 幸英明 1:24.8 上り36.3
3 3歳500万下 阪神 ダ1400 3人気 幸英明 1:24.5 上り36.2
2 3歳500万下 阪神 ダ1400 7人気 幸英明 1:25.1 上り36.8
7 くすのき賞 小倉 ダ1700 7人気 和田竜二 1:45.1 上り37.9
5 3歳500万下 京都 ダ1200 4人気 幸英明 1:11.7 上り35.6
2 2歳500万下 阪神 ダ1200 4人気 幸英明 1:12.9 上り36.8
1 2歳未勝利 京都 ダ1200 2人気 幸英明 1:14.1 上り36.5
3 2歳未勝利 京都 ダ1200 6人気 幸英明 1:13.1 上り36.4
7 2歳未勝利 京都 ダ1200 3人気 福永祐一 1:14.2 上り38.0
5 2歳新馬 阪神 ダ1200 3人気 福永祐一 1:14.3 上り36.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ミツバの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
カネヒキリKane HekiliフジキセキFuji KisekiサンデーサイレンスSunday Silence
ミルレーサーMillracer
ライフアウトゼアLife Out ThereDeputy Minister
Silver Valley
セントクリスマスコマンダーインチーフCommander in ChiefダンシングブレーヴDancing Brave
Slightly Dangerous
ゴールデンジャックアフリートAfleet
コマーズComaz
STORY

旅程 — この馬の物語

2012年生まれの鹿毛の牡馬。父カネヒキリ、母セントクリスマス。

三月の名、三代の縁

2012年3月28日、北海道日高町のタバタファームに一頭の鹿毛が生まれた。名は植物のミツバ。生まれた日から連想された、それだけの由来である。壮大な願いも、凝った符牒もない。 馬主は協栄、預けられたのは栗東の加用正厩舎。この勝負服の下には、以前から同じ一族が並んでいた。母セントクリスマスの母ゴールデンジャックは、1994年に報知杯4歳牝馬特別とサンケイスポーツ賞4歳牝馬特別を勝ち、優駿牝馬でも2着に食い込んだ牝馬である。その全弟が、2002年のJBCスプリントを制したスターリングローズ。母の半兄サイドワインダーは、京阪杯・京都金杯・関屋記念と重賞を三つ勝った。 そして、その一族に長く跨り続けた騎手がいる。福永祐一。スターリングローズの主戦を務め、サイドワインダーではデビュー戦を勝ち、2005年の関屋記念——福永にとって新潟競馬場で初めての重賞制覇——を手綱に収めた。母セントクリスマスが中央で走った五戦は、その全部が福永の騎乗だった。母は中央で勝てないまま名古屋へ移り、そちらで白星を重ねている。 2014年9月21日、阪神ダート1200mの新馬戦。ミツバの背にいたのは、やはり福永祐一だった。結果は5着。三代目の一頭は、そこから52戦の長い道を歩き出す。

二年をかけた階段

初勝利は4戦目、2014年11月15日の京都・ダート1200m。幸英明を背に、2番人気に応えて未勝利を抜けた。だが、そこからが長かった。3歳のシーズンはなかなか勝ち切れないレースが続き、2勝目は8月22日の札幌・桑園特別まで待つことになる。ルメールに導かれた1700mだった。 12月5日の阪神・赤穂特別をクビ差で凌いで3勝目。年が明けても足踏みは続く。初夢ステークス5着、北山ステークス4着、伊丹ステークス2着、1番人気に推された中山の韓国馬事会杯は6着。それでも6月5日の加古川特別で上がり3ハロン34秒6の脚を使って3馬身半差をつけ、9月17日のオークランドレーシングクラブトロフィーを大外から2馬身半差で抜け出すと、デビューから2年をかけて、ようやくオープンの門をくぐった。 派手さはない。一段ずつ、確実に上がっていく馬だった。

十馬身の逃げ

オープンでの初戦、重賞初挑戦のシリウスステークスは4着。それまでのミツバは、道中を後ろで我慢して差してくる馬だった。 2016年10月23日、東京のブラジルカップ。横山典弘に手綱が替わったこの日、ミツバは自分の型を裏返す。後方待機から一転して先手を取り、4コーナーでは後続を10馬身以上も置き去りにする大逃げ。そのまま1馬身3/4差で押し切って、オープン初勝利を挙げた。2着はオリオンザジャパン。3着には、その年アメリカ三冠のすべてに出走した日本調教馬ラニがいた。 12月18日のベテルギウスステークスは単勝1.8倍。今度は後方から4コーナーで前を捉え、2馬身半差で連勝する。逃げても、差しても勝てる。4歳の暮れに、この馬は自分の走り方をひとつ増やした。

盛岡の夏、父と同じ夏

5歳になったミツバは、2月の川崎記念でJpnIに初挑戦する。2番手につけながら4着。届かないが、遠くもない位置だった。4月のアンタレスステークスで11着と大きく崩れたあと、5月7日の東京・ブリリアントステークスを2馬身差で勝って態勢を立て直す。 7月17日、盛岡。マーキュリーカップ。1番人気に推されたミツバは、松山弘平を背に中団から直線で大外へ持ち出し、先に抜け出したピオネロをクビ差で捉えた。通算30戦目、5歳の夏に掴んだ初めての重賞である。 秋は大井のJBCクラシックで7番人気ながら3着。サウンドトゥルーケイティブレイブに続く一角に食い込んだ。翌2018年は名古屋大賞典とアンタレスステークスで連続2着と、あと一歩が続いた。それでも同じ盛岡へ戻ったミツバは、道中6番手から直線で2番手まで押し上げ、逃げるヨシオを捕らえて1馬身差。オースミジェット以来、史上2頭目のマーキュリーカップ連覇だった。 この盛岡の夏を、8歳で勝った馬がいる。2010年の優勝馬カネヒキリ。ミツバの父である。

一・八倍の砂

2018年の夏から秋にかけて、ミツバは支持を裏切り続けることになる。 8月の札幌・エルムステークスは単勝3.9倍の1番人気。最後方から追い込んだがハイランドピークを捉えきれず3着。10月2日、金沢の白山大賞典は1.8倍。2周目の向正面で手応えが怪しくなり、勝ったグリムから7秒0も離された最下位の11着に沈んだ。 その後はJBCクラシックへ向かうはずだったが、捻挫のため回避。12月のチャンピオンズカップも8着に終わる。6歳の秋は、ほとんど何ひとつ噛み合わなかった。 年の瀬、12月24日の名古屋グランプリ。鞍上には4年ぶりに福永祐一が戻ってきた。直線でいったん先頭に立ちながら、チュウワウィザードに半馬身だけ交わされて2着。負けはしたが、この一戦がミツバの向きを変える。

川崎、七歳の初戴冠

名古屋グランプリで手綱を取った福永は、この馬なら川崎記念が向くと陣営に伝えた。それを受けて、年明けの遠征が決まる。ただし福永自身は、前年の覇者ケイティブレイブでこの一戦に臨むことになっていた。空いた鞍上に座ったのが、和田竜二である。 2019年1月30日、川崎2100m。3番人気。中団を進んだミツバは、じわりと位置を押し上げ、直線でケイティブレイブオールブラッシュの間に生まれた僅かな隙間へ迷わず突っ込んだ。割って出て、0秒5差。43戦目、7歳にして初めてのJpnI制覇だった。 川崎記念とマーキュリーカップ。父カネヒキリが勝った二つのレースを、仔もまた勝った。ただしカネヒキリは2016年5月に世を去っており、この日の砂を見てはいない。 加用正が調教師として手にしたG1級のタイトルは二つ。そのひとつが、この日の川崎にある。そして、これがミツバの現役最後の勝利になった。

花を食む馬

戴冠のあとは、坂を下るようだった。船橋のダイオライト記念4着、大井の帝王賞4着、盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯6着、暮れのチャンピオンズカップは13着。2020年に入っても掲示板は遠く、川崎記念7着、平安ステークス11着、帝王賞7着、シリウスステークス11着と敗戦が続いた。 最後の一戦は2020年12月10日、名古屋グランプリ。和田竜二を背に5着。久しぶりに掲示板へ戻ってきた走りだった。翌11日、競走馬登録が抹消される。52戦11勝、獲得賞金3億5481万9000円。 引退したミツバは馬事公苑へ移り、乗馬になった。かつて加用正が騎手を志して門をくぐった場所である。2021年には阪神競馬場の誘導馬に決まり、10月30日から馬場入りの先導を務めるようになった。競馬場の花に鼻先を伸ばして食べてしまう姿が、やがて話題になる。植物の名を持つ馬らしい、と言えば、らしい。 2023年3月4日、チューリップ賞。黒いシルクハットに燕尾服の男が、誘導馬の背にいた。騎手を引退したばかりの調教師、福永祐一である。何頭かいる誘導馬のなかから、福永は自分でミツバを選んだ。新馬戦で組んだ相手だった。 福永はこの一族の三つの世代に跨ってきた。母の母の全弟スターリングローズに、母の半兄サイドワインダーと母セントクリスマスに、そしてミツバに。競走馬としてのミツバと福永は、ついに一度も勝てないままだった。それでも最後は、着順のつかない仕事で、パドックの先頭をゆっくりと歩いた。

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