名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ミラクルレジェンドのイメージビジュアル
ミラクルレジェンドMiracle Legend
Miracle Legend

ミラクルレジェンド

通算成績25戦12勝

獲得賞金33,242万円

生年月日 2007.02.17(平成19年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ミラクルレジェンドの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 JpnⅡエンプレス杯 川崎 ダ2100 1人気 岩田康誠 2:15.9 上り38.5
6 GII東海テレビ杯東海S 中京 ダ1800 6人気 岩田康誠 1:51.6 上り37.3
6 GIジャパンカップダート 阪神 ダ1800 14人気 川田将雅 1:50.1 上り36.8映像
1 JBCレディスクラシック 川崎 ダ1600 1人気 岩田康誠 1:40.7 上り38.3
1 レディスプレリュード 大井 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:54.0 上り37.3
3 JpnⅢ農林水産大臣賞典スパ 川崎 ダ1600 1人気 岩田康誠 1:39.6 上り37.4
5 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 5人気 内田博幸 2:04.3 上り37.6
5 GII東海S 京都 ダ1900 2人気 C.ウィリアムズ 1:56.6 上り36.1
1 JpnⅢマリーンカップ 船橋 ダ1600 1人気 岩田康誠 1:40.3 上り37.8
6 GIジャパンカップダート 阪神 ダ1800 6人気 岩田康誠 1:51.1 上り37.1映像
1 JBCレディスクラシック 大井 ダ1800 2人気 岩田康誠 1:49.6 上り35.9
1 レディスプレリュード 大井 ダ1800 2人気 岩田康誠 1:50.8 上り36.2
1 OP関越S 新潟 ダ1800 2人気 北村宏司 1:50.0 上り36.6
5 JpnⅢマーキュリーカップ 盛岡 ダ2000 2人気 岩田康誠 2:06.5 上り38.0
3 JpnⅡエンプレス杯 川崎 ダ2100 2人気 C.デムーロ 2:15.4 上り36.8
2 JpnⅢTCK女王盃 大井 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:52.4 上り36.3
1 JpnⅢクイーン賞 船橋 ダ1800 2人気 岩田康誠 1:52.5 上り38.3
1 レパードS 新潟 ダ1800 2人気 北村宏司 1:51.8 上り37.2
4 JpnⅠジャパンダートダービー 大井 ダ2000 4人気 岩田康誠 2:05.3 上り37.2
1 あおぎりS 京都 ダ1800 7人気 岩田康誠 1:51.2 上り36.6
1 3歳500万下 京都 ダ1800 3人気 岩田康誠 1:52.9 上り36.5
1 3歳未勝利 阪神 ダ1800 1人気 国分恭介 1:54.9 上り36.9
6 2歳未勝利 京都 芝1600 4人気 藤田伸二 1:35.8 上り35.8
3 2歳未勝利 京都 芝1600 2人気 岩田康誠 1:35.1 上り35.9
6 2歳新馬 札幌 芝1500 2人気 岩田康誠 1:31.4 上り34.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ミラクルレジェンドの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
フジキセキFuji KisekiサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ミルレーサーMillracerLe Fabuleux
Marston's Mill
パーソナルレジェンドPersonal LegendAwesome AgainDeputy Minister
Primal Force
Highland LegendStorm Bird
Santella
STORY

旅程 — この馬の物語

2007年生まれの栗毛の牝馬。父フジキセキ、母パーソナルレジェンド。

奇跡と伝説 ― 名前の話

2007年2月17日、北海道千歳市の社台ファームに、栗毛の牝馬が生まれた。父はフジキセキ、母はアメリカ生まれのパーソナルレジェンド。名は、その両親から一語ずつ取って継ぎ合わせた造語である。父の名の「キセキ」を英語に置き換えてミラクル、母の名の後ろ半分からレジェンド。奇跡と、伝説。生まれたばかりの牝馬が背負うには、少しばかり大きな名だった。 馬主は社台ファーム代表の吉田照哉、預けられたのは栗東の藤原英昭厩舎。母パーソナルレジェンドは、アメリカでターンバックジアラームハンデキャップを勝った牝馬である。ミラクルレジェンドの四代母の孫には欧州の女王ミエスクがおり、その仔が、世界的な種牡馬となったキングマンボだった。血の格は、名に見合うだけのものがあった。 翌年、同じ母から黒鹿毛の牡馬が生まれる。父はスペシャルウィーク、名はローマンレジェンド。母の名を分け合った姉と弟は、やがて同じ厩舎で、同じ騎手を背に、同じ砂の上を走ることになる。

芝には、届かなかった

2009年8月22日、札幌の芝1500m。鞍上は岩田康誠。2番人気に推された新馬戦は、直線で追い込んだものの6着に終わった。馬体重は440キロ。牝馬としても、決して大きい部類ではない。 秋は京都の芝1600mを二度使った。10月31日は岩田で3着、11月29日は藤田伸二に手綱が替わって6着。上がりは三十四秒台、三十五秒台と、脚そのものは悪くない。それでも、前を行く馬たちは捕まらなかった。三戦して未勝利のまま、この牝馬は四か月半、競馬場から姿を消す。

砂を得た春

2010年4月18日、阪神のダート1800m。復帰戦は、初めての砂だった。鞍上は減量を使える若手の国分恭介。1番人気に応えて直線で差し切り、2着に0秒8の差をつける。芝で三度足りなかったものが、砂の上ではあっさりと揃った。 5月8日の京都・500万下は直線で抜け出して二勝目。6月13日の1000万下あおぎりステークスは7番人気という低い評価で、馬体重も420キロまで絞れていた。それでも差し切って三連勝。四百キロそこそこの体は、砂を掻くたびに前へ出た。

牡馬の群れへ ― 新潟と船橋

夏、陣営は牡馬混合の重賞へ矛先を向ける。7月14日、大井のジャパンダートダービー。三歳ダートの頂点を争う一戦で、勝ったマグニフィカとの差は0秒1の4着。馬体重426キロの牝馬が、世代の一線級に手を掛けかけていた。 8月22日、新潟のレパードステークス。北村宏司に手綱が替わったこの日、最後の直線はグリッターウイングとの叩き合いになる。並んだまま、譲らないまま、ゴール板を通過してタイム差はゼロ。競り勝って、重賞初制覇だった。 12月8日は船橋のクイーン賞。好位の四、五番手から進め、マイペースで逃げるザッハーマインを直線半ばで交わして一馬身半差。重賞は、二つになった。

白い壁 ― ラヴェリータ

年が明けると、行く手に一頭の芦毛が立つ。ラヴェリータ。一つ年上のアメリカ産で、関東オークスとスパーキングレディーカップを勝っていた牝馬である。 2011年2月2日、大井のTCK女王盃。ミラクルレジェンドは単勝1.7倍の1番人気に支持された。好位追走から脚を伸ばし、直線でラヴェリータと並ぶ。だが、クビ差だけ前に出られなかった。 3月2日、川崎のエンプレス杯は不良馬場。中団から追い込み、ラヴェリータ、ブラボーデイジー、プレシャスジェムズと入り乱れた末の3着。二度続けて、同じ芦毛の背中を見た。牝馬の砂路線には、越えるべき壁がはっきりと立っていた。

三月十一日、山元にて

その九日後だった。2011年3月11日、この馬は宮城県山元町の山元トレーニングセンターに滞在していた。社台グループが持つ、育成と休養のための施設である。 地震と津波が東北の海岸線を洗った。山元トレセンは敷地が高台にあったため津波の被害を免れ、在厩していた馬は全頭が無事だった。だが停電と断水が続き、周辺の道路も寸断される。馬とスタッフは、他の牧場へ一時避難した。 栗東へ戻り、次にゲートへ入ったのは7月18日、盛岡のマーキュリーカップだった。四か月半ぶりの馬体は15キロ増えて441キロ。結果は5着、勝ったゴルトブリッツから2秒3。生涯でいちばん大きな着差を、この日につけられている。

初代女王 ― 二〇一一年十一月三日

立て直しは早かった。8月6日、新潟の関越ステークスは北村宏司を背に好位から抜け出し、一馬身四分の三差。9月29日の大井・レディスプレリュードでは好位六番手に控え、直線残り150m付近でラヴェリータを交わす。三度目の対決で、初めて前に出た。重賞三勝目だった。 そして11月3日、大井のダート1800m。この年に創設されたばかりのJBCレディスクラシック、その第1回である。新設ゆえダートグレードの格付けはまだ与えられていなかったが、生産者主導のJBC競走に初めて設けられた牝馬の一戦だった。二年後、この競走はJpnIに格付けされることになる。 2番人気。好位を進み、三コーナーから徐々に位置を上げ、直線でまたラヴェリータと並んだ。今度は競り落とした。勝ち時計1分49秒6は、1980年から破られずにいた大井ダート1800mのコースレコードを、三十一年ぶりに0秒3書き換える数字だった。馬体重434キロ。初代女王の座は、小さな栗毛のものになった。 ラヴェリータはこの年限りで競走生活を終える。牝馬同士の重賞で相まみえたのは四度。冬に二度先着を許し、秋に二度先着した。壁は、秋のうちに越えられていた。 12月4日のジャパンカップダートには、その芦毛も出走していた。ラヴェリータが4着、ミラクルレジェンドは後方から追い上げて6着。勝ったトランセンドとの差は0秒5。牡馬混じりの一線には、まだ届く手前の距離が残っていた。

連覇の秋、そして弟

2012年は、走れないレースから始まった。2月29日、川崎のエンプレス杯。降雪で開催そのものが中止になり、ゲートは開かないまま流れた。 4月4日、船橋のマリーンカップ。単勝1.6倍に応えて後方から差し切り、一馬身半差をつける。だが初夏からは牡馬相手に苦しんだ。京都の東海ステークス5着、大井の帝王賞5着、連闘で臨んだ川崎のスパーキングレディーカップは1番人気で3着。帝王賞の日には、馬体が435キロまで落ちていた。 担当の川那部由紀厩務員は、この馬の小ささをよく知っていた。「小さいから当たり負けはするけど、ひるまない根性がありますからね」[^1]。四百四十キロ前後の体で牡馬に真っ向から挑む姿を、いちばん近くで見ていた人の言葉である。 秋、10月4日のレディスプレリュード、11月5日のJBCレディスクラシック。いずれも1番人気に応えて連覇を果たす。JBCは大井の1800mから川崎の1600mへ舞台を移していたが、距離が変わっても結果は変わらなかった。12月2日のジャパンカップダートは14番人気の6着。 そして12月29日、大井。半弟のローマンレジェンドが、東京大賞典の直線でワンダーアキュートとの叩き合いを制した。管理するのは同じ藤原英昭、手綱も同じ岩田康誠。母の名を分け合った姉と弟が、同じ年の暮れに、それぞれの砂で勝ち名乗りを受けた。

出典:スポーツニッポン「【JCダート】“砂の女王”レジェンド ミラクル起こす」2012年11月27日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2012/11/27/kiji/K20121127004646630.html、閲覧日:2026年7月30日。

鉄の女 ― 川崎の花道

2013年1月20日、中京の東海ステークスは後方から追い込んで6着。そして2月27日、川崎のエンプレス杯。三年続けて向かった、川崎の2100mだった。2011年は不良馬場でラヴェリータの後ろ、2012年は降雪で開催そのものが流れて走れずじまい。三年目にして、ようやくこの舞台に正面から立った。 単勝1.1倍。11頭立ての1番人気に応え、エミーズパラダイスに0秒3差をつけて先着する。これが引退レースだった。3月2日、競走馬登録抹消。 通算25戦12勝。中央で12戦5勝、地方で13戦7勝、総獲得賞金3億3242万円。デビュー戦から引退レースまで、25戦のうち17戦でこの馬に跨ったのは岩田康誠だった。 のちに藤原英昭は、震災を越えて重賞をいくつも勝ったこの牝馬を、鉄の女だと評している。四百キロ台の体しか持たずに、三年半、ダートの荒い流れの真ん中を走り続けた馬に、これ以上ふさわしい呼び名はなかった。

千歳へ帰る ― 母として

引退後は生まれ故郷の社台ファームに戻り、繁殖牝馬になった。 二番仔の牡馬グレートタイムは、2016年のセレクトセールで1億5120万円の値がつく。父はキングカメハメハ、預けられたのは母と同じ藤原英昭厩舎だった。2021年10月24日、東京のダート2100mでリステッド競走のブラジルカップを勝ち、母のいた厩舎に一つ、勝ち鞍を持ち帰っている。 七番仔のミラクルティアラは四勝を挙げ、ほかの仔たちも芝と砂を走り継いだ。いまでは孫の代が現役の名簿に載っている。 2026年、19歳。千歳の社台ファームに、あの日440キロだった栗毛はいまも繁殖牝馬として名を連ねている。奇跡と伝説を継ぎ合わせた名は、結局のところ、どちらも誇張ではなかった。

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