名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

名馬録
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ミッキーロケットのイメージビジュアル
ミッキーロケットMikki Rocket
Mikki Rocket

ミッキーロケット

通算成績24戦5勝

獲得賞金42,247万円

生年月日 2013.03.03(平成25年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ミッキーロケットの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
4 GI有馬記念 中山 芝2500 8人気 O.マーフィー 2:32.7 上り36.6映像
5 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 8人気 和田竜二 1:57.2 上り34.0映像
1 GI宝塚記念 阪神 芝2200 7人気 和田竜二 2:11.6 上り35.8映像
4 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 9人気 和田竜二 3:16.4 上り35.5映像
7 GII京都記念 京都 芝2200 7人気 松若風馬 2:17.4 上り37.3映像
4 GII日経新春杯 京都 芝2400 2人気 和田竜二 2:27.2 上り35.3映像
2 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 1人気 和田竜二 1:59.5 上り34.0映像
12 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 14人気 和田竜二 2:10.9 上り40.6映像
4 GII京都大賞典 京都 芝2400 3人気 和田竜二 2:23.3 上り34.0映像
6 GI宝塚記念 阪神 芝2200 8人気 和田竜二 2:12.3 上り36.4映像
7 GI大阪杯 阪神 芝2000 6人気 和田竜二 1:59.4 上り33.9映像
4 GII京都記念 京都 芝2200 2人気 和田竜二 2:14.4 上り34.5映像
1 GII日経新春杯 京都 芝2400 1人気 和田竜二 2:25.7 上り36.0映像
5 GI菊花賞 京都 芝3000 4人気 和田竜二 3:04.0 上り34.6映像
2 GII神戸新聞杯 阪神 芝2400 6人気 和田竜二 2:25.7 上り34.0
1 HTB賞 札幌 芝2000 1人気 池添謙一 2:02.4 上り34.0
2 松前特別 函館 芝2000 1人気 池添謙一 1:59.9 上り35.4
1 3歳以上500万下 函館 芝2000 1人気 池添謙一 2:00.8 上り34.3
13 GI皐月賞 中山 芝2000 14人気 横山典弘 2:00.0 上り35.7映像
5 GIIフジTVスプリングS 中山 芝1800 2人気 C.ルメール 1:48.4 上り34.8映像
2 つばき賞 京都 芝1800 1人気 松若風馬 1:52.6 上り34.7
2 梅花賞 京都 芝2400 3人気 松若風馬 2:30.3 上り35.8
1 3歳未勝利 京都 芝1800 1人気 松若風馬 1:48.9 上り34.6
2 2歳新馬 阪神 芝1800 1人気 浜中俊 1:50.6 上り33.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ミッキーロケットの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キングカメハメハKing KamehamehaKingmamboMr. Prospector
Miesque
マンファスManfathラストタイクーンLast Tycoon
Pilot Bird
マネーキャントバイミーラヴMoneycantbuymelovePivotalPolar Falcon
Fearless Revival
SabreonCaerleon
Sabria

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2013年生まれの鹿毛の牡馬。父キングカメハメハ、母マネーキャントバイミーラヴ。主な勝ち鞍は宝塚記念・日経新春杯。

「冠名+ロケット」 ― 名と血

日本中央競馬会に登録されたこの馬の馬名意味は、素っ気ないほど短い。「冠名+ロケット」。冠名の「ミッキー」は馬主・野田みづきのもので、そこに一頭ぶんの願いを読み込む余地はない。残るのは、ロケットという一語だけである。火を入れて、まっすぐ上がっていく物。名に付されていた説明は、それきりだった。 2013年3月3日、北海道安平町のノーザンファーム生まれ。父キングカメハメハ、母マネーキャントバイミーラヴ。母は愛国産の鹿毛で、イギリスでリステッド競走を二つ勝ち、2009年のナッソーステークスではミッデイの3着に食い込んでいる。その名は英語の一文――金では愛は買えない――と読める。皮肉なことに、その仔は2014年のセレクトセール1歳部門で9936万円(税込)の値をつけ、白地に赤の星散らしを勝負服とするオーナーのもとへ渡った。 血の背後は広い。祖母サブレオンの半兄には、2002年の仏2000ギニーとキーンランドのシャドウェルターフマイルステークスを制したランドシーアがいる。6代母マルガレーテンから枝分かれした一族には、トレヴやジェネラス、日本のフリオーソディーマジェスティの名が連なる。世界に散った牝系の一枝が、安平の育成場で鹿毛の牡馬になった。 デビューは2015年12月12日、阪神の芝1800メートル。浜中俊を背に単勝2.5倍の1番人気に推されながら、ロワアブソリューの2着に敗れている。ロケットは、まだ点火していなかった。

二着の春、北の夏

年が明けた2016年1月11日、京都の芝1800メートル。厩舎に所属する若手・松若風馬を背に、二戦目の未勝利戦を勝ち上がる。デビューから引退まで、この馬が栗東・音無秀孝厩舎を離れることはなかった。 だが、そこからが長かった。梅花賞2着、つばき賞2着。人気に推されながら、勝ち切る一歩手前で止まる。クリストフ・ルメールを迎えたスプリングステークスは2番人気で5着。皐月賞では横山典弘が手綱を取ったが、単勝150倍を超える14番人気で13着に沈んだ。勝ったのは、辿れば同じ牝系の遠い枝に連なるディーマジェスティである。クラシックの春に、この馬の居場所はなかった。 休養を挟み、夏は北海道で池添謙一と組んだ。函館の500万下を勝ち、松前特別は2着、札幌のHTB賞を勝つ。三戦二勝。派手ではないが、菊花賞を狙える位置まで、静かに戻ってきていた。

和田竜二が乗る

2016年9月25日、神戸新聞杯。ここから和田竜二が乗る。 6番人気の評価をよそに、勝ったサトノダイヤモンドへコンマ0秒差まで詰め寄る2着。菊花賞への優先出走権を掴んだ。本番の京都3000メートルでは4番人気で5着、勝ち馬はやはりサトノダイヤモンドだった。世代の頂点は、手の届く高さにありながら、まだ一枚遠い。 このとき和田は、テイエムオペラオーの全26戦の手綱を取った男として知られていた。2000年には年間8戦8勝、GIを五つ勝った。だが2001年の天皇賞(春)を最後に、JRAのGIから遠ざかっている。重賞は勝つ。勝ち鞍も積む。最も高いところの扉だけが、開かない。その歳月は、ミッキーロケットに跨がった時点で、すでに15年を数えていた。

雪で二日遅れた重賞 ― 初めてのタイトル

2017年1月15日の京都競馬は、吹雪と積雪で開催中止となった。日経新春杯は二日遅れ、17日に行われる。 単勝2.9倍の1番人気。ミッキーロケットは先団に取り付き、4コーナーで2番手まで上がると、直線で逃げ粘るヤマカツライデンを外からかわし、並びかけてきた同期のシャケトラとの叩き合いをハナ差で凌いだ。重賞初制覇。デビューから12戦目、初めてのタイトルが淀で決まった。 そこからの一年は、届きそうで届かない一年になる。GIに昇格した大阪杯は7着、宝塚記念は6着、京都大賞典4着。台風の雨で不良馬場になった秋の天皇賞では、上がりに40秒6を要して12着に敗れた。年の瀬の中日新聞杯は1番人気に推されながら、メートルダールの2着。 日経新春杯の勝利から、勝てない時間が1年5か月続くことになる。

五月十七日

2018年、連覇を狙った日経新春杯は4着。京都記念は和田が騎乗停止で乗れず、松若に戻して7着。9番人気で臨んだ天皇賞(春)では、レインボーラインの4着に食い込んだ。悪くはない。だが、勝てない。 5月17日、テイエムオペラオーが放牧中に心臓麻痺で倒れ、その日のうちに死んだ。22歳だった。 和田は、引退したオペラオーに一度しか会いに行っていない。ラストランの有馬記念を勝って締めくくれなかった悔いがあり、もう一度GIを勝って一人前になってから、胸を張って報告に行くと決めていたからである。「自分自身、頑なな考えになっていたと言うか、引退後のオペラオーにはGIを勝ってから会いに行くぞと思っていたんです」[^1]。その報告は、間に合わなかった。 訃報の翌週、和田は牧場を訪ねている。墓前ではなかったが、肩の荷が下りた気がした、と後に振り返っている。そんなにこだわらなくていい、と言ってもらえたような気がした、と。 春のグランプリは、一か月あまり先だった。

出典:スポーツナビ「和田『オペラオーが押してくれた』 長かった17年…天国の相棒へ捧げるGI美酒」2018年6月24日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201806240008-spnavi 、閲覧日:2026年7月26日。

点火 ― 二〇一八年六月二十四日

阪神競馬場、芝2200メートル、稍重。単勝13.1倍の7番人気だった。 サイモンラムセスが引っ張り、1000メートル通過は59秒4。速いと見た有力馬の多くが待機に回る。21年ぶりの外国馬の参戦として注目された香港の年度代表馬ワーザーは後方、連覇を狙うサトノクラウンも中団。そのなかでミッキーロケットは、好スタートから5番手・7番手あたりのインで脚をためた。1番人気サトノダイヤモンドが向正面から一気に位置を上げ、4コーナーでは先頭に並びかける勢いで進出したため、流れは一瞬も緩まない。 直線、内から力強く抜け出したのがミッキーロケットだった。4コーナーから仕掛けたロングスパートでサトノダイヤモンドを競り落とし、外から強襲してきたワーザーをクビ差で振り切る。 2分11秒6。17年前の同じ6月24日、同じ阪神の2200メートルでメイショウドトウが刻んだ勝ち時計を、0秒1上回っていた。その日、2着に敗れていたのが和田竜二とテイエムオペラオーである。 2001年の天皇賞(春)以来、17年ぶりのJRA・GI。宝塚記念は2000年のテイエムオペラオーに続く2勝目で、管理する音無秀孝にとってはこのレース初勝利だった。そしてこの日は、オペラオーの四十九日を迎える前、最後のGIでもあった。 「長かった。テイエムオペラオーが後押ししてくれたのだと思う」[^1]。 名に与えられたたった一語が、五歳の初夏に、ようやく点火した。

出典:日本中央競馬会「第59回 宝塚記念」レース結果・回顧、2018年6月24日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/takara/result/takara2018.html 、閲覧日:2026年7月26日。

二番手の背中 ― ラストラン

秋は京都大賞典から始動する予定だったが、体調が整わず天皇賞(秋)へ回った。8番人気で5着。勝ったのはレイデオロだった。 その後、和田が怪我で戦線を離れる。ジャパンカップは戸崎圭太との新コンビで出走する予定が、右トモの筋肉痛で回避となり、有馬記念へ直行した。有馬の数週間前に和田は復帰していたが、中山でこの馬の背にいたのは、短期免許で来日していたオイシン・マーフィーである。 2018年12月23日、有馬記念。キセキが飛ばす縦長の流れを、ミッキーロケットは終始2番手で追走した。宝塚記念に続くグランプリ二冠が懸かっていた。直線、粘るキセキに馬体を並べにいく。その外から、ブラストワンピースが力ずくで交わし去った。4着、勝ち馬から0秒5差。 ブラストワンピースの鞍上は池添謙一だった。2016年の夏、函館と札幌でこの馬を勝たせた男である。 明けて2019年は京都記念からの始動が予定されていたが、脚部不安を発症して現役を退いた。1月24日、競走馬登録抹消。24戦5勝、獲得賞金4億2247万8000円。GIのタイトルは、あの六月の一つきりだった。

安平から大津へ ― 父になって

優駿スタリオンステーションで種牡馬になった。 2022年6月5日、中京5レース。ジョウショーホープが勝ち、産駒はJRA初出走と初勝利を同じ日に済ませてしまった。この馬は後年、地方の重賞まで勝ち上がる。金沢ヤングチャンピオンを制したダンナイもいる。 そして、同じ勝負服の仔がいる。母はミッキークイーン、2015年の優駿牝馬と秋華賞を勝った牝馬。その間に生まれたミッキーゴージャスは、2024年の愛知杯を三連勝で制して重賞ウィナーになり、2025年にはキャピタルステークスも勝った。冠名を分け合う二頭の血が、また一つタイトルを持ち帰ったことになる。 2025年12月、ミッキーロケットは熊本県大津町へ移った。ストームファームコーポレーション。2026年からは、この地で種牡馬生活を続けている。 火を入れて、上がりきって、燃え尽きる――ロケットとは、本来そういう物の名だ。だがこの馬は燃え尽きなかった。十七年ぶんの重さを負った男を頂上まで運び、安平の草から大津の草へ、生まれた島を南へ渡って、いまも次の火を託す相手を待っている。

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