名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ミックファイアのイメージビジュアル
ミックファイアMick Fire
Mick Fire

ミックファイア

通算成績21戦7勝

獲得賞金19,745万円

生年月日 2020.04.05(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ミックファイアの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 SIIIサンタアニタT 大井 ダ1600 8人気 野畑凌 1:41.2 上り39.0
5 重賞I六甲盃 園田 ダ1870 4人気 下原理 2:03.8 上り39.6
11 SI大井記念 大井 ダ2000 10人気 吉原寛人 2:07.2 上り40.4
6 SIIIブリリアントC 大井 ダ1800 9人気 吉原寛人 1:54.3 上り40.1
7 SII勝島王冠 大井 ダ1800 4人気 笹川翼 1:55.1 上り40.1
11 JpnⅠJBCクラシック 船橋 ダ1800 9人気 笹川翼 1:57.8 上り42.9映像
7 JpnⅠマイルCS南部杯 盛岡 ダ1600 9人気 山本聡哉 1:36.0 上り36.6映像
11 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 8人気 御神本訓史 2:06.0 上り39.6映像
9 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 8人気 御神本訓史 2:20.6 上り40.1映像
13 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 10人気 C.ルメール 1:52.4 上り37.9映像
4 JpnⅠマイルCS南部杯 盛岡 ダ1600 4人気 吉原寛人 1:37.4 上り37.7映像
5 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 7人気 吉原寛人 1:41.1 上り40.0映像
7 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 9人気 矢野貴之 1:36.5 上り37.6映像
8 GI東京大賞典 大井 ダ2000 3人気 御神本訓史 2:09.7 上り39.6映像
1 M1ダービーグランプリ 盛岡 ダ2000 1人気 御神本訓史 2:03.0 上り36.7
1 JpnⅠジャパンDダービー 大井 ダ2000 1人気 御神本訓史 2:04.6 上り38.7
1 SI東京ダービー 大井 ダ2000 1人気 御神本訓史 2:04.8 上り37.0
1 SI羽田盃 大井 ダ1800 4人気 御神本訓史 1:50.9 上り37.2
1 ひばり特別 大井 ダ1800 1人気 本田正重 1:54.9 上り38.4
1 2歳144.4万上 大井 ダ1600 1人気 矢野貴之 1:40.7 上り38.9
1 2歳新馬 大井 ダ1600 1人気 矢野貴之 1:43.3 上り38.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ミックファイアの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
シニスターミニスターSinister MinisterOld TriesteA.P. Indy
Lovlier Linda
Sweet MinisterThe Prime Minister
Sweet Blue
マリアージュブライアンズタイムBrian's TimeRoberto
Kelley's Day
アーミールージュArmee RougeMiswaki
All Along
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牡馬。父シニスターミニスター、母マリアージュ。主な勝ち鞍はジャパンDダービー。

ミグと呼べなかった馬 ― 名前の由来

馬主の星加浩一には、預けた馬の名を厩舎の厩務員たちから募る習わしがあった。あかさたな順に頭文字を巡らせ、その年は「マ」行。渡邉和雄厩舎で挙がった案は、ロシアの戦闘機シリーズ「MiG」から採った「ミグファイア」だった。だが二〇二二年、その戦闘機の名は現実の砲火と分かちがたく結びついていた。時勢を鑑み、星加は「ミグ」を人の愛称めいた「ミック」へと捩る。ミックファイア。時代の空気が、生まれる前に一頭の名を書き換えた。 二〇二〇年四月五日、高橋ファーム生まれの鹿毛。父はダートに骨太な産駒を送るシニスターミニスター。三代母をたどれば、一九八三年に凱旋門賞を制し、その年フランスとアメリカの双方で年度代表馬に選ばれた名牝オールアロングに行き着く。血の底には、海を渡ってきた華があった。 二〇二二年九月、大井の新馬戦。矢野貴之を背に、危なげなく勝ち上がる。そのまま二歳戦を三連勝、負けを知らないまま二歳の暮れを迎えた。まだ、南関東で勝ち上がったばかりの一頭にすぎなかった。

宝くじ ― 御神本訓史との出会い

御神本訓史には、その春、クラシックに乗る馬がいなかった。大井のトップジョッキーであっても、器に恵まれる保証などない。羽田盃の出走登録は、レースの十日ほど前。騎乗依頼が舞い込んだのも、ちょうどその頃だった。三戦して、まだ負けていない――負けを知らない馬の伸びしろに、御神本は乗った。 二〇二三年五月、羽田盃。四番人気の下馬評をレースレコードで覆し、四つ目の白星を挙げる。負けを知らない脚は、そのまま生涯を決める春へと駆け込んでいった。のちに御神本は、この出会いをこう振り返っている。「本当に、宝くじが当たったようなものだと思います」[^1]

出典:Number Web(文藝春秋)島田明宏「ミックファイアとの出会いは『宝くじが当たったようなもの』 御神本訓史が語る“無敗の三冠馬”の衝撃」2023年9月17日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/858915、閲覧日:2026年7月17日。

最後の南関東ダービー ― 東京ダービー

東京ダービー。南関東の三歳馬にとって、最も重い一冠である。ミックファイアは一番人気に応え、羽田盃に続いてまたもレースレコードで駆け抜けた。無傷の五連勝。 この勝利には、時代の刻み目が重なっていた。翌二〇二四年からダートの三冠競走は全国交流へと組み替えられ、東京ダービーにもJRAの馬が出走できるようになる。南関東の馬だけで争う東京ダービーは、この年が最後だった。閉じた世界の、最後の王者。人気を背負う重圧を勝ち切って、御神本は静かに胸をなでおろした。

無敗の三冠 ― 最後のジャパンダートダービー

二〇二三年七月十二日、大井のジャパンダートダービー。ミックファイアは逃げ馬を好位に見ながら折り合い、四コーナーを回って進出、残り百メートルで先頭に立った。デビューからの六連勝で、JpnIの栄冠を掴む。 無敗の南関東三冠は、二〇〇一年のトーシンブリザード以来、二十二年ぶり二頭目。羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートダービーが三冠として括られた体系では、最初で最後の達成者となった。そしてこの日は、一九九九年に始まったジャパンダートダービーそのものの、最後の開催でもあった。閉じてゆく扉の内側で、無敗を貫いた一頭。 秋、盛岡のダービーグランプリも制して七連勝。同競走で無敗の馬が勝ったのは、後にも先にもこの馬だけだった。三歳の夏、ミックファイアは頂に立っていた。

初めての黒星 ― 古馬の壁

暮れ、大井の東京大賞典。三番人気に推されたミックファイアは、しかし八着に沈んだ。デビュー以来、初めての黒星だった。 扉の開いた世界は、想像より広く、そして硬かった。年が明けてフェブラリーステークスは七着、かしわ記念は五着。二〇二四年秋、盛岡のマイルチャンピオンシップで四着まで押し上げたのが、古馬になってからの最高だった。師走の中京、チャンピオンズカップではルメールを背に十三着。JRAの一線級と古馬の層の前で、あの無敗の脚は、なかなか届かなかった。 皮肉なことに、同じ父を持つテーオーケインズは、古馬になってから才を開かせ、帝王賞とチャンピオンズカップを制した血だった。時計の針は、同じ父の子にも違う速さで進む。

それでも走る

二〇二五年、御神本が再び手綱に戻る。川崎記念、そして帝王賞。かつて無敗の頂を分かち合った二人は、もう一度大レースの舞台に立った。だが、勝利は戻らなかった。マイルチャンピオンシップ、JBCクラシック――名だたる交流重賞を、ミックファイアは着外で走り続けた。 二〇二六年に入っても、その脚は止まらない。大井のブリリアントカップ、大井記念、そして六月には園田の六甲盃。勝ち鞍こそ遠いままだが、南関東の古馬戦線を、なお現役で駆けている。 古馬になってからの一勝は、まだ手にしていない。それでも、二〇二三年の夏に刻んだ無敗の三冠は、誰にも書き換えられない。あの年、最後の南関東ダービーと最後のジャパンダートダービーを、負けを知らないまま走り抜けた馬がいた――その事実だけは、時代の扉が閉じても確かに残る。次の一戦へ、鹿毛はまだ顔を上げている。

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