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マイネルキッツ
通算成績52戦8勝
獲得賞金5億5,703万円
生年月日 2003.03.18(平成15年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11 | GIIステイヤーズS | 中山 芝3600 | 9人気 | 三浦皇成 | 3:47.3 | 上り36.9 | — | |
| 10 | GII産経賞オールカマー | 中山 芝2200 | 10人気 | 柴田大知 | 2:13.2 | 上り34.7 | — | |
| 7 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 11人気 | C.デムーロ | 3:15.6 | 上り37.4 | 映像 | |
| 5 | GII日経賞 | 中山 芝2500 | 11人気 | 三浦皇成 | 2:32.8 | 上り35.7 | — | |
| 5 | OP万葉S | 京都 芝3000 | 8人気 | 三浦皇成 | 3:08.5 | 上り35.5 | — | |
| 7 | GIIステイヤーズS | 中山 芝3600 | 7人気 | 松岡正海 | 3:47.7 | 上り37.4 | — | |
| 14 | GIIアルゼンチン共和国杯 | 東京 芝2500 | 12人気 | 松岡正海 | 2:33.8 | 上り38.2 | — | |
| 8 | GII産経賞オールカマー | 中山 芝2200 | 11人気 | 松岡正海 | 2:16.4 | 上り36.2 | — | |
| 9 | GII日経賞 | 中山 芝2500 | 5人気 | 松岡正海 | 2:39.0 | 上り36.7 | — | |
| 10 | GIIIダイヤモンドS | 東京 芝3400 | 6人気 | 松岡正海 | 3:37.7 | 上り35.2 | — | |
| 1 | GIIステイヤーズS | 中山 芝3600 | 4人気 | 三浦皇成 | 3:50.8 | 上り37.4 | — | |
| 7 | GII京都大賞典 | 京都 芝2400 | 5人気 | 松岡正海 | 2:25.1 | 上り33.7 | — | |
| 8 | GII目黒記念 | 東京 芝2500 | 2人気 | 松岡正海 | 2:32.9 | 上り36.2 | — | |
| 6 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 6人気 | 松岡正海 | 3:21.2 | 上り36.4 | 映像 | |
| 4 | GII日経賞 | 阪神 芝2400 | 6人気 | 松岡正海 | 2:26.2 | 上り34.8 | — | |
| 7 | GII札幌記念 | 札幌 芝2000 | 6人気 | 松岡正海 | 2:00.2 | 上り35.1 | 映像 | |
| 2 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 4人気 | 松岡正海 | 3:15.8 | 上り34.2 | 映像 | |
| 1 | GII日経賞 | 中山 芝2500 | 6人気 | 松岡正海 | 2:34.1 | 上り34.7 | — | |
| 4 | GIIアメリカジョッキークラブカップ | 中山 芝2200 | 4人気 | 松岡正海 | 2:13.3 | 上り35.1 | — | |
| 5 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 12人気 | 三浦皇成 | 2:31.2 | 上り36.7 | 映像 | |
| 8 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 7人気 | 松岡正海 | 2:23.2 | 上り34.9 | 映像 | |
| 7 | GII京都大賞典 | 京都 芝2400 | 5人気 | 松岡正海 | 2:25.1 | 上り35.1 | — | |
| 7 | GI宝塚記念 | 阪神 芝2200 | 5人気 | 松岡正海 | 2:12.0 | 上り35.2 | 映像 | |
| 1 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 12人気 | 松岡正海 | 3:14.4 | 上り34.9 | 映像 | |
| 2 | GII日経賞 | 中山 芝2500 | 7人気 | 松岡正海 | 2:31.3 | 上り34.8 | — | |
| 4 | GIIアメリカジョッキークラブカップ | 中山 芝2200 | 9人気 | 松岡正海 | 2:14.4 | 上り35.4 | — | |
| 4 | GIII中山金杯 | 中山 芝2000 | 7人気 | 松岡正海 | 1:58.7 | 上り34.8 | — | |
| 2 | GIII福島記念 | 福島 芝2000 | 3人気 | 松岡正海 | 2:00.1 | 上り35.8 | — | |
| 7 | OPアイルランドT | 東京 芝2000 | 3人気 | 松岡正海 | 1:59.3 | 上り34.2 | — | |
| 4 | GII産経賞オールカマー | 中山 芝2200 | 5人気 | 松岡正海 | 2:12.6 | 上り35.0 | — | |
| 2 | GIII新潟記念 | 新潟 芝2000 | 2人気 | 後藤浩輝 | 1:57.8 | 上り34.4 | — | |
| 3 | GIII七夕賞 | 福島 芝2000 | 3人気 | 後藤浩輝 | 1:59.9 | 上り35.3 | — | |
| 5 | GIIIエプソムカップ | 東京 芝1800 | 6人気 | 後藤浩輝 | 1:46.1 | 上り35.0 | — | |
| 1 | 早春S | 東京 芝1800 | 1人気 | 後藤浩輝 | 1:47.0 | 上り34.2 | — | |
| 5 | 冬至S | 中山 芝1800 | 4人気 | 後藤浩輝 | 1:49.0 | 上り34.5 | — | |
| 1 | 神奈川新聞杯 | 東京 芝1800 | 2人気 | 松岡正海 | 1:46.9 | 上り34.2 | — | |
| 5 | 精進湖特別 | 東京 芝2000 | 6人気 | 五十嵐冬樹 | 2:00.5 | 上り34.4 | — | |
| 1 | 恵庭岳特別 | 札幌 芝2000 | 1人気 | 柴山雄一 | 2:03.4 | 上り35.6 | — | |
| 2 | 利尻特別 | 札幌 芝1800 | 1人気 | 柴山雄一 | 1:48.9 | 上り35.6 | — | |
| 6 | 知床特別 | 札幌 芝2000 | 5人気 | 柴山雄一 | 2:02.3 | 上り35.3 | — | |
| 5 | 秩父特別 | 東京 芝2000 | 1人気 | 後藤浩輝 | 2:00.3 | 上り36.0 | — | |
| 9 | 金峰山特別 | 東京 芝2000 | 1人気 | 後藤浩輝 | 2:00.5 | 上り35.4 | — | |
| 2 | 鹿野山特別 | 中山 芝1800 | 2人気 | 後藤浩輝 | 1:48.3 | 上り35.2 | — | |
| 4 | 4歳以上1000万下 | 東京 芝1800 | 1人気 | 後藤浩輝 | 1:48.7 | 上り33.8 | — | |
| 2 | 立春賞 | 東京 芝1800 | 4人気 | 後藤浩輝 | 1:47.8 | 上り33.8 | — | |
| 8 | 香取特別 | 中山 芝1800 | 3人気 | 津村明秀 | 1:49.3 | 上り35.6 | — | |
| 3 | 精進湖特別 | 東京 芝2000 | 3人気 | 後藤浩輝 | 1:59.9 | 上り34.1 | — | |
| 1 | 恵庭岳特別 | 札幌 芝2000 | 3人気 | 柴山雄一 | 2:02.4 | 上り35.7 | — | |
| 5 | 水仙賞 | 中山 芝2200 | 2人気 | 田中勝春 | 2:18.3 | 上り36.5 | — | |
| 2 | セントポーリア賞 | 東京 芝2000 | 4人気 | 田中勝春 | 2:02.0 | 上り35.2 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 東京 芝1800 | 5人気 | 柴山雄一 | 1:48.3 | 上り33.7 | — | |
| 6 | 2歳新馬 | 中山 芝1800 | 3人気 | 後藤浩輝 | 1:54.8 | 上り35.2 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父チーフベアハートChief Bearhart | Chief's Crown | Danzig |
| Six Crowns | ||
| Amelia Bearhart | Bold Hour | |
| Myrtlewood Lass | ||
| 母タカラカンナ | サッカーボーイSoccer Boy | ディクタスDictus |
| ダイナサッシュ | ||
| クリムゾンラトラーCrimson Rattler | Crimson Satan | |
| Falina's Dancer |
旅程 — この馬の物語
2003年生まれの栗毛の牡馬。父チーフベアハート、母タカラカンナ。主な勝ち鞍は天皇賞・日経賞・ステイヤーズS。
子鹿という名の栗毛
2003年3月18日、北海道新冠町のビッグレッドファームで栗毛の牡馬が生まれた。父はカナダ・オンタリオ生まれのチーフベアハート。1997年のブリーダーズカップターフを勝ち、二年続けてカナダの年度代表馬に選ばれた芝の馬である。 名は、冠名のマイネルにドイツ語のKitzを継いだ。子鹿、あるいは子カモシカという意味である。ラフィアンターフマンクラブの募集価格は一口17万円、百口で1700万円。美浦の国枝栄厩舎に入り、以後、厩舎が変わることはなかった。 母タカラカンナは1993年生まれ。地方でデビューして二戦二勝、中央へ移って五勝を挙げ、最後はまた南関東の水に戻って走り終えた。通算42戦7勝。長く走り続ける気性は、母の側から来ていたのかもしれない。その父サッカーボーイはマイルチャンピオンシップを勝って最優秀スプリンターに選ばれた馬だが、産駒には菊花賞のナリタトップロード、菊花賞と天皇賞・春と宝塚記念のヒシミラクルがいる。短いところで速かった血が、長いところで実る家系だった。 2005年9月24日、中山の芝1800メートル。後藤浩輝を背に3番人気でゲートに入り、6着。三週間後の10月15日、東京の芝1800メートルを柴山雄一が勝たせて未勝利を抜けた。このときの出走表の距離欄には、1800とだけ書いてあった。
恵庭岳特別を、二度
2006年2月、東京のセントポーリア賞で2着、中山の水仙賞で5着。クラシックには縁がないまま夏を越え、9月30日、札幌の恵庭岳特別を柴山雄一で勝った。芝2000メートル、二勝目である。 そこから一年、勝てない時間が来る。東京の1000万下で三度1番人気に推され、4着、9着、5着。人気だけが先に育っていった。 2007年9月22日、また札幌の恵庭岳特別に出た。一年前と、同じ競馬場の、同じ条件の、同じ名前のレース。七頭立ての1番人気で、また勝った。 その秋の11月18日、東京の神奈川新聞杯で初めて松岡正海が跨る。二十三歳の関東の騎手だった。十頭立ての2番人気で勝った。年が明けて2月4日、早春ステークスを後藤浩輝が1番人気で勝ち切り、五歳の冬になってようやくオープンクラスへ上がった。
兄と妹の福島
2008年、重賞路線。6月のエプソムカップ5着、7月の七夕賞3着。8月の新潟記念は2番人気で0秒3差の2着、9月のオールカマー4着。11月24日の福島記念は3番人気で、勝ったマンハッタンスカイとのタイム差は0秒。それでも2着だった。 この年、重賞で二度2着に来た。勝ち馬の名は違い、あと一つが同じように足りなかった。 11月の福島記念には、妹も出ていた。マイネカンナ。一つ下の半妹で、父はアグネスタキオン。同じラフィアンの募集馬で、同じ国枝厩舎の管理馬である。妹はその年の4月に福島牝馬ステークスを勝っている。兄より先に、妹が重賞を持っていた。福島記念は9着。兄は2着で、まだ一つも持っていない。 のちに松岡は、この頃の相棒を、いつも真剣には走ってくれなかったと振り返っている。「能力があるのは分かっていましたし、自分でも生かせなかった」[^1]
出典:スポーツナビ「東の伏兵マイネルキッツ波乱V! 松岡の進言が激走生んだ=天皇賞・春」2009年5月3日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/200905060003-spnavi 、閲覧日:2026年8月1日。
行かせてください
2009年の始動は中山金杯4着、アメリカジョッキークラブカップ4着。陣営は次に中京記念を予定していた。 そこへ、鞍上が申し出た。「日経賞から天皇賞へ行かせてくださいと自分からお願いしたんです」[^1] 何戦か乗って癖を掴んでいたし、日経賞から天皇賞のほうが合っていると思った——理由はそれだけである。二十四歳の騎手が、六歳の重賞未勝利馬の進路を、自分で決めに行った。 3月28日の日経賞は7番人気の2着。勝ったのはアルナスラインで、差は0秒1。 国枝栄は関東に厩舎を構えながら、期待の馬を早くから栗東へ送り込む調教師だった。長い輸送の負担を減らすためだと本人は言う。この馬もそうやって淀へ向かった。 5月3日、京都芝3200メートル。単勝46.5倍、十八頭立ての12番人気。重賞は一つも勝っていない。GIは、これが初めての出走だった。
出典:スポーツナビ「東の伏兵マイネルキッツ波乱V! 松岡の進言が激走生んだ=天皇賞・春」2009年5月3日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/200905060003-spnavi 、閲覧日:2026年8月1日。
最内の、三千二百
曇りだった。芝は良。ゴールデンウィークの京都に、八万を超える人が入っていた。 返し馬で、鞍上は何かを感じている。「返し馬の時から、いつもとは具合が違うなと思いました」[^1] 一枠二番。ゲートが開く。押さない。最初のコーナーを回るころ、栗毛は十番手にいた。三千二百メートルは長い。急ぐ理由が、まだどこにもない。 向正面。すぐ前を、前年のジャパンカップを勝ったスクリーンヒーローと横山典弘が進んでいた。この日の二番人気である。松岡はその内、柵沿いの一番短い線をなぞって進んだ。外へ持ち出さない。持ち出す必要がない。前が開いていて、開いたまま流れていく。 三コーナーの下り。ここで位置が動く。十番手が四番手になる。淀の坂は、下りながら速くなる場所である。 四コーナー。先頭で三頭が横に並んでいた。菊花賞馬アサクサキングス、ジャパンカップ馬スクリーンヒーロー、メジロマックイーンの仔ホクトスルタン。その真後ろの内に、栗毛がいた。 直線。最内が空いていた。そこから抜けた。 外からアルナスラインが来る。日経賞で先着された相手が、蛯名正義を乗せて並びかけてくる。並びかけて、そこまでだった。クビ。押し切った。 時計は3分14秒4。この馬が初めて勝った重賞は、天皇賞だった。重賞を勝たないまま春の盾を持ち帰ったのは、1980年のニチドウタロー以来、二十九年ぶりのことである。
出典:スポーツナビ「東の伏兵マイネルキッツ波乱V! 松岡の進言が激走生んだ=天皇賞・春」2009年5月3日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/200905060003-spnavi 、閲覧日:2026年8月1日。
一度きりではなかった
盾を持ち帰った馬に、夏は易しくなかった。宝塚記念は5番人気で7着、勝ったのはドリームジャーニー。秋は京都大賞典7着、11月のジャパンカップは十八頭の最後方を進んで8着。年末の有馬記念は三浦皇成に乗り替わり、12番人気ながら十番手から追い上げて5着に入った。 翌2010年3月27日、稍重の中山で日経賞。59キロを背負い、エアシェイディを四分の三馬身抑えて勝った。前年に2着だったレースである。二つ目の重賞は、GIのあとに来た。 5月2日、二度目の天皇賞・春。今度は4番人気だった。勝ったのはジャガーメイル——前年、この馬が勝ったレースで5着だった馬である。0秒1差の2着。 十二番人気で勝ち、四番人気で負けた。この二つは、同じことを言っている。あの日の三千二百メートルは、間違いではなかった。 8月の札幌記念で7着。そこから七か月半、レースに姿を見せなかった。
不良の三千六百
2011年の日経賞は、中山ではなく阪神の芝2400メートルで行われた。三月の地震で関東の開催が動いた年である。八歳になったマイネルキッツは4着。5月の天皇賞・春は稍重で6着、続く目黒記念は2番人気に支持されて8着、秋の京都大賞典は7着。勝ち星のないまま冬になった。 この年、松岡は八月に左の腓骨を、十一月十九日に右の鎖骨を折っている。 12月3日、中山の芝3600メートル。馬場は不良。鞍上は三浦皇成。四番人気の栗毛は3分50秒8で走り、イグアスを0秒2抑えた。ステイヤーズステークス、八歳で三つ目の重賞であり、これが最後の勝利になる。 そこから先は勝てない。2012年はダイヤモンドステークス10着、日経賞9着、オールカマー8着、アルゼンチン共和国杯14着、ステイヤーズステークス7着。2013年、十歳。万葉ステークス5着、日経賞5着、四度目の天皇賞・春はC・デムーロが乗って7着、オールカマーは柴田大知で10着。11月30日、中山のステイヤーズステークス11着。これが52戦目だった。12月4日、競走馬登録を抹消。デビューから最後の一走まで、厩舎は美浦の国枝栄のままだった。
横浜の丘
種牡馬にはならなかった。引退したその足で、神奈川県横浜市の根岸競馬記念公苑で乗馬になった。日本で最初の常設の洋式競馬場が置かれ、戦時中に閉じた、その跡地である。会いに来た子どもやファンを背に乗せ、馬術の競技会にも出た。天皇賞馬に乗れる場所が、横浜の丘の上にあった。 2014年の秋、同じ勝負服の馬が同じ厩に入ってくる。マイネルネオス。八歳で中山グランドジャンプを勝った障害馬で、やはりラフィアンのマイネルだった。二頭は八年あまりを同じ場所で過ごしている。そして勝負服ではない服を着た松岡正海が、その背に乗って手綱を持った日がある。2023年6月、二十歳になったマイネルキッツは横浜を離れ、北海道浦河町のうらかわ優駿ビレッジAERUへ移った。受け入れた太田篤志は、届いた馬体が乗馬をしてきた馬とは思えないほど仕上がっていたと驚き、こう言っている。「AERUに来た馬で一番扱いやすい馬だった」[^1] 2009年の春、松岡は自分の相棒を「自分でも生かせなかった」と言った。生かせなかった、と自分を責めた男が、陣営に頭を下げて淀の三千二百メートルへ連れて行き、十二番人気の栗毛を八万の人の前で勝たせた。その後の十五年あまりで、彼は初めての年間百勝を挙げ、幾度も骨を折り、2020年には左の大腿骨を折って翌年に三百二十八日ぶりの実戦へ戻り、香港でGIを二つ勝ち、通算九百勝に届いた。国枝栄は翌年アパパネで牝馬三冠を、八年後にアーモンドアイでもう一度それを獲り、二十二のGIとともに厩舎を閉じて殿堂に入った。二人にとって最初の天皇賞は、重賞を一つも持たない馬の背にあった。 あの三千二百メートルへ行くと決めたのは、陣営でも下馬評でもなく、鞍上ひとりだった。そして十年以上が過ぎたあとも、その男は同じ馬の背にいた。横浜のその丘には、淀の坂も、八万の歓声もない。栗毛はただ、ゆっくり歩いていた。
出典:テレ東スポーツ「乗馬ができる天皇賞馬・マイネルキッツ「ステイヤー気質でいつもゆったりのんびり」【もうひとつの引退馬伝説】」2024年11月30日配信、https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2024/11/036339.html 、閲覧日:2026年8月1日。
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