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マイネルホウオウ
通算成績28戦4勝
獲得賞金1億7,449万円
生年月日 2010.04.23(平成22年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 18 | OPキャピタルS | 東京 芝1600 | 18人気 | 丹内祐次 | 1:34.6 | 上り35.9 | — | |
| 7 | OPカシオペアS | 京都 芝1800 | 12人気 | 国分恭介 | 1:55.0 | 上り39.4 | — | |
| 13 | OPポートアイランドS | 阪神 芝1600 | 11人気 | 荻野極 | 1:34.2 | 上り35.0 | — | |
| 9 | OP朱鷺S | 新潟 芝1400 | 9人気 | 柴田大知 | 1:21.2 | 上り35.3 | — | |
| 5 | OPポートアイランドS | 阪神 芝1600 | 6人気 | 丹内祐次 | 1:35.0 | 上り34.2 | — | |
| 5 | OP朱鷺S | 新潟 芝1400 | 8人気 | 柴田大知 | 1:20.9 | 上り34.6 | — | |
| 18 | GIIIエプソムカップ | 東京 芝1800 | 11人気 | 丹内祐次 | 1:48.2 | 上り34.6 | 映像 | |
| 3 | OP谷川岳S | 新潟 芝1600 | 9人気 | 丹内祐次 | 1:33.7 | 上り34.3 | — | |
| 15 | OP六甲S | 阪神 芝1600 | 12人気 | 川須栄彦 | 1:34.5 | 上り34.9 | — | |
| 12 | OP東風S | 中山 芝1600 | 9人気 | 柴田大知 | 1:35.6 | 上り36.1 | — | |
| 14 | GIII富士S | 東京 芝1600 | 13人気 | 柴田大知 | 1:33.6 | 上り33.5 | — | |
| 2 | OPポートアイランドS | 阪神 芝1600 | 14人気 | 津村明秀 | 1:33.9 | 上り34.3 | — | |
| 13 | GIII京成杯オータムH | 中山 芝1600 | 15人気 | 石橋脩 | 1:34.0 | 上り35.0 | — | |
| 11 | GIIIエプソムカップ | 東京 芝1800 | 9人気 | 柴田大知 | 1:46.6 | 上り35.4 | 映像 | |
| 18 | GII読売マイラーズカップ | 京都 芝1600 | 12人気 | 和田竜二 | 1:33.7 | 上り33.1 | 映像 | |
| 6 | OP東風S | 中山 芝1600 | 5人気 | 柴田大知 | 1:34.3 | 上り34.7 | — | |
| 15 | GIII東京新聞杯 | 東京 芝1600 | 12人気 | 松岡正海 | 1:37.0 | 上り35.9 | 映像 | |
| 15 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 7人気 | 柴田大知 | 2:25.2 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | GINHKマイルカップ | 東京 芝1600 | 10人気 | 柴田大知 | 1:32.7 | 上り33.7 | 映像 | |
| 7 | GIIニュージーランドトロフィー | 中山 芝1600 | 4人気 | 柴田大知 | 1:35.3 | 上り34.6 | — | |
| 3 | GIIフジTVスプリングS | 中山 芝1800 | 11人気 | 柴田大知 | 1:48.1 | 上り34.7 | — | |
| 1 | OPジュニアカップ | 中山 芝1600 | 1人気 | 柴田大知 | 1:35.6 | 上り34.3 | — | |
| 1 | ひいらぎ賞 | 中山 芝1600 | 1人気 | 松岡正海 | 1:35.4 | 上り35.7 | — | |
| 8 | GIII東京スポーツ杯2歳S | 東京 芝1800 | 10人気 | 柴田大知 | 1:46.7 | 上り34.7 | — | |
| 2 | きんもくせい特別 | 新潟 芝1600 | 2人気 | 丹内祐次 | 1:34.1 | 上り32.9 | — | |
| 9 | GIII札幌2歳S | 札幌 芝1800 | 4人気 | 柴田大知 | 1:49.8 | 上り36.1 | — | |
| 2 | OPコスモス賞 | 札幌 芝1800 | 3人気 | 三浦皇成 | 1:49.5 | 上り34.6 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 福島 芝1800 | 4人気 | 柴田大知 | 1:51.3 | 上り35.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父スズカフェニックスSuzuka Phoenix | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ローズオブスズカ | Fairy King | |
| Rose of Jericho | ||
| 母テンザンローズ | フレンチデピュティFrench Deputy | Deputy Minister |
| Mitterand | ||
| コウエイシャダイ | リアルシャダイReal Shadai | |
| ポイントゲッター |
旅程 — この馬の物語
2010年生まれの栗毛の牡馬。父スズカフェニックス、母テンザンローズ。主な勝ち鞍はNHKマイルC。
灰から立つ鳥の名 ― 新冠のセールから
2010年4月23日、北海道新冠町のヒカル牧場に栗毛の牡馬が生まれた。父スズカフェニックスは2007年の高松宮記念を制した短距離馬で、種牡馬としては、この栗毛が初年度産駒の一頭にあたる。母テンザンローズの父はフレンチデピュティ。翌2011年の北海道サマーセールで、この馬をビッグレッドファームが651万円で落札した。所有はサラブレッドクラブ・ラフィアン、預けられたのは美浦の畠山吉宏厩舎である。 名は、冠名のマイネルに鳳凰を重ねたもの。父の名にある不死鳥からの連想だった。灰の中から立ち上がる鳥の名を、この馬は背負うことになる。 2012年6月23日、福島の芝1800m。4番人気で、前めから直線を抜け出してデビュー戦を勝った。手綱を取ったのは柴田大知。このとき35歳、騎手になって17年目の男である。
十七年目の鞍上
柴田大知は栃木県宇都宮市の生まれ。双子の弟・未崎とともに1996年3月にデビューし、JRA史上初の双子騎手として騒がれた。同期に福永祐一、和田竜二。のちに花の12期生と呼ばれる世代である。初年度27勝、翌1997年にはエアガッツでラジオたんぱ賞を勝ち、二年目で重賞を手にした。 そこから先が長かった。騎乗依頼は細り、勝ち星は一桁に落ちる。周囲には調教助手への転身を勧める声もあったという。乗る馬を確保するため、2005年の暮れに障害競走へ初めて騎乗し、以後は平地と障害の双方に乗った。それでも2006年は、平地・障害を合わせて年間の騎乗が52回。平地に限れば2006年から2008年まで、三年続けて勝ち鞍がなかった。 浮上のきっかけは、ミルファームの馬に乗り始めたことから広がった縁だった。やがてマイネルの馬に乗るようになる。2011年6月、マジェスティバイオで東京ジャンプステークスを勝ち、14年ぶりの重賞制覇。7月2日にはマイネルネオスで中山グランドジャンプを制してJ・GIに手が届いた。勝利騎手インタビューで、騎手を辞めなくてよかった、と彼は涙をこらえられなかった。翌2012年にはコスモオオゾラで弥生賞を勝つ。5362日ぶりの平地重賞で、グレード制導入以降で最も長い間隔の勝利だった。 52回まで落ちた年間騎乗は、2011年に493回まで戻っていた。その手が、福島の新馬戦を勝った栗毛の背にあった。
皐月賞を捨てる
二歳の後半は、勝ち切れなかった。札幌のコスモス賞は三浦皇成で2着、続く札幌2歳ステークスはコディーノの9着。新潟のきんもくせい特別は丹内祐次を背にゴットフリートとハナ差の2着、東京スポーツ杯2歳ステークスでは再びコディーノに完敗して8着。それでも暮れの中山・ひいらぎ賞を松岡正海で勝ち、年が明けた1月5日、ジュニアカップを1番人気に応えて制した。三勝目である。 3月のスプリングステークスは11番人気。中団から鋭く伸びて、勝ったロゴタイプから0秒3差の3着に届いた。皐月賞の優先出走権である。 だが陣営は、そのクラシック第一冠へ向かわなかった。きんもくせい特別のハナ差、ひいらぎ賞、ジュニアカップ――走りの中身が良かったのは、いずれも1600mだった。この距離こそが最適という判断が、進路をNHKマイルカップに向けさせる。ステップに選んだニュージーランドトロフィーは流れが落ち着いて7着。本番での支持は、10番人気まで下がっていた。
五月五日、府中 ― クビだけ前へ
2013年5月5日、東京競馬場。晴、芝は良。18頭立ての第18回NHKマイルカップは、アーリントンカップを勝っていた快足馬コパノリチャードの先導で流れた。手綱は福永祐一。柴田と同じ12期生が作ったペースは、1000m通過57秒8という速さだった。 マイネルホウオウは行き脚がつかず、後ろから3頭目。柴田はそこで脚をためた。 直線、2番人気ガイヤースヴェルトが早々に前を捉えにかかり、1番人気エーシントップ、フラムドグロワールが迫る。その先行勢を目がけて、まず脚を伸ばしてきたのがファルコンステークス勝ちのインパルスヒーロー。そしてその外、直線入口で大外へ持ち出されたマイネルホウオウが、馬場の真ん中を弾けた。 残り50m。内にフラムドグロワール、中にインパルスヒーロー、外にマイネルホウオウ。三頭が叩き合いながら粘るガイヤースヴェルトを交わし去り、いちばん外の栗毛がクビだけ前に出てゴール板を通過した。1分32秒7、上がり33秒7。三連単は123万円を超える大波乱だった。 「負けたくなかった。でも、よく覚えていない」[^1]。柴田大知はレース後にそう振り返っている。 この一勝は彼のJRA通算200勝目であり、平地GIの初制覇だった。平地と障害の双方でGIを勝った騎手は、グレード制の導入以降では熊沢重文に次いで二人目になる。畠山吉宏にとってもJRAのGI初勝利であり、父スズカフェニックスにとっては産駒初の重賞が、そのままGIタイトルになった。 もうひとつ、記録には残らない縁がある。2009年から2011年まで、この畠山厩舎の所属騎手だったのは双子の弟・未崎だった。その未崎は2011年の春に一度鞍を降り、調教助手になっていた。兄が初めて平地の大レースを勝ったのは、弟が去った厩舎の馬でだった。
出典:日本中央競馬会「第18回NHKマイルC 伏兵マイネルホウオウ、激闘を差し切ってGI初制覇」2013年5月5日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/nmc/result/nmc2013.html 、閲覧日:2026年7月29日。
二千四百と、腱
三週間後、同じ府中で東京優駿。7番人気の支持を受けたが、2400mは、陣営が最適と見定めた距離より800m遠かった。15着。勝ったのは武豊のキズナである。 夏を休養に充て、秋は毎日王冠から始動する予定だった。ところが調教中に左前脚の浅屈腱を痛める。屈腱炎は、競走馬にとって最も戻りにくい故障のひとつとされる。診断は全治9か月。四歳の一年は、まるごと消えた。
戻ってきた馬 ― 二〇一五〜二〇一七
2015年2月8日、東京新聞杯。ダービー以来、一年八か月あまりぶりの実戦だった。稍重の府中を松岡正海で走り、15着。 そこからの三年は、勝てない日々である。京都のマイラーズカップでは柴田と同期の和田竜二が手綱を取ったが最下位、エプソムカップは11着、京成杯オータムハンデキャップは13着。それでも10月の阪神・ポートアイランドステークスでは14番人気ながら津村明秀を背に2着に来ている。上がり34秒3。翌2016年5月の谷川岳ステークスでも、丹内祐次で3着に食い込んだ。一度は頂に立った馬が、阪神のポートアイランドステークスには三年続けて、新潟の朱鷺ステークスには二年続けて帰ってきた。鞍上は替わり続けたが、ゲートに入ることだけは変わらなかった。 2017年11月25日、東京のキャピタルステークス。18番人気18着。あの五月から勝ち星のないまま、18戦を走り切っていた。11月29日、競走馬登録を抹消。通算28戦4勝、獲得賞金1億7449万6000円。
誘導馬の朝
抹消のあと、この馬は日高育成牧場でリトレーニングを受け、2018年から東京競馬場の乗馬センターに入った。以来、府中で働いている。一般会員のレッスンを支え、小学校高学年から高校生までの乗馬スポーツ少年団を背に乗せ、開催日の試乗会に立つ。担当者は、最初からおとなしく穏やかで、少し頑固なところもあるが仕事にはひたむきな馬だと語っている。 そして毎年、NHKマイルカップの日には誘導馬として本馬場に出る。かつて自分が最後の50mでクビだけ前に出た、あの直線である。 2025年7月13日、福島。畠山吉宏厩舎のコスモフリーゲンで、柴田大知が七夕賞を勝った。48歳。マイネルホウオウの日から12年、あの日の調教師とあの日の騎手が、もう一度おなじレースを勝った。 灰から立ち上がる鳥の名を背負った馬は、一度だけ頂に立ち、そのあとの長い時間を走り続け、いまは人を乗せて府中の朝を歩いている。五月のその日、彼はいちばん前を歩く。かつて大外から飛んできたその直線を、今度は先頭で、ゆっくりと。
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