名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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マイネルエンペラーのイメージビジュアル
マイネルエンペラーMeiner Emperor
Meiner Emperor

マイネルエンペラー

通算成績25戦5勝

獲得賞金2928万円

生年月日 2020.03.13(令和2年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
マイネルエンペラーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 GI宝塚記念 阪神 芝2200 13人気 川田将雅 2:13.8 上り36.9映像
5 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 4人気 丹内祐次 3:03.0 上り35.3映像
11 GIIアメリカジョッキークラブカップ 中山 芝2200 5人気 戸崎圭太 2:12.1 上り35.1映像
9 GI有馬記念 中山 芝2500 11人気 丹内祐次 2:32.3 上り35.9映像
5 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 8人気 丹内祐次 3:15.0 上り36.7映像
1 GII日経賞 中山 芝2500 2人気 丹内祐次 2:36.1 上り37.0映像
3 GII日経新春杯 中京 芝2200 7人気 幸英明 2:10.4 上り36.3映像
1 オリオンS 京都 芝2200 2人気 L.デットーリ 2:13.8 上り33.5
2 比叡S 京都 芝2400 7人気 津村明秀 2:24.6 上り34.8
2 甲斐路S 東京 芝2000 5人気 松岡正海 2:00.8 上り33.8
3 高山S 中京 芝2000 4人気 A.シュタルケ 2:00.1 上り35.2
7 オールスターJ第2戦 札幌 芝2000 2人気 武豊 2:00.7 上り37.4
6 STV賞 札幌 芝2000 2人気 横山武史 2:01.1 上り34.5
2 五稜郭S 函館 芝1800 3人気 横山武史 1:49.7 上り35.8
4 八坂S 京都 芝2200 8人気 坂井瑠星 2:13.1 上り36.1
8 寿S 京都 芝2000 5人気 松山弘平 2:01.1 上り35.7
1 尾張特別 中京 芝2200 3人気 松岡正海 2:15.1 上り34.1
1 3歳以上1勝クラス 京都 芝2000 1人気 横山武史 2:00.9 上り34.5
4 3歳以上1勝クラス 京都 芝2200 2人気 吉田隼人 2:12.5 上り34.2
2 3歳以上1勝クラス 京都 芝2400 2人気 岩田望来 2:25.2 上り33.9
7 GIIテレビ東京杯青葉賞 東京 芝2400 10人気 和田竜二 2:25.0 上り35.4映像
5 L若葉S 阪神 芝2000 3人気 和田竜二 2:03.0 上り34.3
2 3歳1勝クラス 中京 芝2200 4人気 和田竜二 2:17.0 上り35.3
4 エリカ賞 阪神 芝2000 4人気 泉谷楓真 2:01.1 上り35.5
1 2歳新馬 阪神 芝2000 2人気 和田竜二 2:01.9 上り34.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
マイネルエンペラーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ゴールドシップGold ShipステイゴールドStay GoldサンデーサイレンスSunday Silence
ゴールデンサッシュ
ポイントフラッグメジロマックイーンMejiro McQueen
パストラリズム
マイネテレジアロージズインメイRoses in MayDevil His Due
Tell a Secret
マイネヌーヴェルブライアンズタイムBrian's Time
マイネプリテンダー
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ゴールドシップ、母マイネテレジア。主な勝ち鞍は日経賞。

皇帝の名を負って

2022年10月29日、阪神の芝2000メートル。父ゴールドシップの黒鹿毛の牡馬が、2番人気で新馬戦を勝ち上がった。鞍上は和田竜二。父は芦毛の巨人だが、その白い衣はこの馬に伝わらず、艶のある黒鹿毛で生まれている。母はマイネテレジア。ひとつ上の世代には、まったく同じ配合から生まれた全姉がいた。ユーバーレーベン——デビュー前年、2021年の優駿牝馬(オークス)を勝った牝馬である。半兄のマイネルファンロンは新潟記念を制していた。重賞馬を送り出すビッグレッドファームの牝系に、皇帝の名が乗る。マイネルエンペラー。だが位は、名乗った瞬間に手に入るものではない。ここから、その名にふさわしい一頭になるための長い坂が始まった。

青葉の坂で

明けて3歳。若葉ステークスを叩き、和田を背に青葉賞へ向かった。東京の芝2400メートル、日本ダービーへ続く一本道である。だが10番人気の評価どおり、届いたのは7着だった。皇帝の名で始まったクラシックの春は、表彰台の外で静かに閉じる。多くの良血がそうであるように、ここからが本当の道のりだった。上のクラスへ一足飛びに駆け上がるのではなく、平場の条件戦を、一戦ずつ登り直すこと。血の格が高いほど、その回り道は長く見える。

平場の二年

新馬を勝ってから2勝目まで、13か月と8戦を要した。2023年11月、京都でようやく1勝クラスを抜け、翌月には尾張特別を松岡正海で連勝する。以後も歩みは急がない。五稜郭ステークス2着、甲斐路ステークス2着、比叡ステークス2着——あと一歩の銀を、几帳面に積み上げていった。背中には横山武史が、武豊が、幾人もの名手が代わる代わる跨る。気性の難しさでも知られた父とは違い、この息子は素直で崩れなかった。堅実さこそが、この馬の武器になっていく。そして2024年12月、京都のオリオンステークス。来日していたL.デットーリを背に、3勝クラスをクビ差で制し、ついにオープンの座に手をかけた。

日経賞、二十戦目

鞍上が丹内祐次に定まると、歯車が噛み合った。2025年3月29日、中山の芝2500メートル、日経賞。デビューから数えて20戦目、重賞へは3度目の挑戦だった。道中は3、4番手の外。仕掛けは早く、最後の直線の入り口でもう先頭に立つと、追い縋る後続を一頭も前に出さないまま押し切った。2着チャックネイトをクビ差抑えての、重賞初制覇。時計は2分36秒1。丹内は、乗りやすいと聞いて臨み、道中に不安はなかったと振り返った。父ゴールドシップの気難しさとは無縁の素直さが、この馬をここまで運んできたのだ。全姉ユーバーレーベンがオークスの表彰台に立った春から4年近く、全弟は別の中山の坂の上に、自分の名で立った。

父の距離

重賞をひとつ得た馬は、父が立った舞台へ向かう。2025年5月、天皇賞(春)。京都の芝3200メートルは、父ゴールドシップが2015年に勝った長距離の大一番である。エンペラーは5着。自身のGI最先着を、父の距離で記した。年末の有馬記念は9着。中山の2500メートルもまた、父が2012年に制した場所だった。届きはしない。だが走る舞台は、いつのまにか一流のそれになっていた。良血が長い坂を登り切って、ようやく血の高さと同じ景色を見はじめる——そういう時間の掛かり方をする馬だった。

坂の途中

2026年。アメリカジョッキークラブカップは11着、阪神大賞典は5着、そして6月の宝塚記念は10着に終わった。その宝塚記念——父ゴールドシップが2013年と2014年に二度勝ち、この年は同じゴールドシップ産駒のメイショウタバルが制した舞台で、エンペラーは影に回った。全姉のオークス、父の長距離GI。このファミリーが立ってきた血の頂きに、黒鹿毛はまだ届いていない。届いていないが、20戦をかけて重賞のひとつを自分の脚で掴み、父の距離を一流の舞台で追うところまで、確かに登ってきた。25戦5勝。いまは放牧に出ているが、まだ現役の身だ。皇帝の名に追いつくための坂を、この馬はまだ登っている。再び中山や京都の長い直線にその姿を現す日を、静かに待てばいい。

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