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メーデイア
通算成績19戦10勝
獲得賞金2億910万円
生年月日 2008.05.11(平成20年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | JpnⅢTCK女王盃 | 大井 ダ1800 | 1人気 | 浜中俊 | 1:51.4 | 上り37.3 | — | |
| 10 | GIジャパンカップダート | 阪神 ダ1800 | 13人気 | 浜中俊 | 1:51.4 | 上り37.3 | 映像 | |
| 1 | JpnⅠJBCレディスクラシック | 金沢 ダ1500 | 1人気 | 浜中俊 | 1:33.3 | 上り38.0 | 映像 | |
| 1 | JpnⅡレディスプレリュード | 大井 ダ1800 | 1人気 | 浜中俊 | 1:53.0 | 上り38.8 | — | |
| 1 | JpnⅢスパーキングレディー | 川崎 ダ1600 | 1人気 | 浜中俊 | 1:40.8 | 上り40.1 | — | |
| 17 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 14人気 | 横山典弘 | 1:33.4 | 上り34.9 | 映像 | |
| 1 | JpnⅢマリーンカップ | 船橋 ダ1600 | 1人気 | 浜中俊 | 1:39.9 | 上り39.7 | — | |
| 1 | JpnⅢTCK女王盃 | 大井 ダ1800 | 2人気 | 浜中俊 | 1:53.7 | 上り39.5 | — | |
| 2 | 初夢S | 京都 ダ1800 | 3人気 | 浜中俊 | 1:51.0 | 上り36.7 | — | |
| 1 | 3歳以上1000万下 | 阪神 ダ1800 | 1人気 | 浜中俊 | 1:53.3 | 上り37.3 | — | |
| 1 | 3歳以上500万下 | 阪神 ダ1800 | 1人気 | 浜中俊 | 1:50.6 | 上り37.7 | — | |
| 2 | 3歳以上500万下 | 阪神 芝1800 | 1人気 | 川田将雅 | 1:48.4 | 上り34.3 | — | |
| 3 | 御室特別 | 京都 芝2000 | 4人気 | 浜中俊 | 2:01.1 | 上り33.4 | — | |
| 5 | 4歳以上1000万下 | 阪神 ダ1800 | 1人気 | C.デムーロ | 1:53.2 | 上り38.4 | — | |
| 1 | 4歳以上500万下 | 阪神 ダ1800 | 1人気 | C.デムーロ | 1:53.9 | 上り36.8 | — | |
| 2 | 3歳以上500万下 | 新潟 ダ1800 | 1人気 | 川須栄彦 | 1:52.2 | 上り36.6 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 阪神 ダ1800 | 4人気 | 川須栄彦 | 1:53.2 | 上り38.3 | — | |
| 3 | 3歳未勝利 | 小倉 ダ1700 | 3人気 | 川須栄彦 | 1:47.5 | 上り38.5 | — | |
| 16 | 3歳未勝利 | 阪神 ダ1200 | 8人気 | 藤岡佑介 | 1:17.6 | 上り37.3 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父キングヘイローKing Halo | ダンシングブレーヴDancing Brave | Lyphard |
| Navajo Princess | ||
| グッバイヘイローGoodbye Halo | Halo | |
| Pound Foolish | ||
| 母ウィッチフルシンキングWitchful Thinking | Lord Avie | Lord Gaylord |
| Avie | ||
| Halloween Joy | Exuberant | |
| Halloween |
旅程 — この馬の物語
2008年生まれの鹿毛の牝馬。父キングヘイロー、母ウィッチフルシンキング。
魔女の名を継いで
2008年5月11日、北海道安平町の追分ファームで鹿毛の牝馬が生まれた。父はキングヘイロー。母はウィッチフルシンキング——1994年生まれのアメリカ産で、その父はLord Avie。名前のなかに魔女を飼っている牝馬である。 その娘に与えられた名は、メーデイア。ギリシア神話に出てくるコルキスの王女の名である。女神ヘカテーの魔術に長け、金羊毛を守る竜を眠らせ、老いた人を若返らせ、イアーソーンの冒険を成功に導いた女だった。母はほかにも、ゼンノロブロイとの間にブラックウィザード、ゴールドアリュールとの間にウィッチクラフトを産んでいる。2012年に生まれた半弟の名はアプシュルトス——神話でメーデイアの弟が負っていた名である。母の産駒には、魔女の名前がいくつも並んだ。 一族には走る馬がいた。半姉ロフティーエイムは2006年の福島牝馬ステークスを勝ち、その孫スマッシャーが2021年のユニコーンステークスを勝っている。もう一頭の半姉マンティスハントの息子サングレーザーは、2017年のスワンステークス、2018年のマイラーズカップと札幌記念を勝った。追分ファームのこの牝系は、そういう一族である。 馬主は社台レースホース。預かったのは栗東の笹田和秀だった。1956年に広島県福山市で生まれ、大学を出て1980年に栗東の島崎宏厩舎へ厩務員として入り、1983年に調教師伊藤雄二の長女と結婚して伊藤厩舎へ移った男である。伊藤厩舎では調教騎乗だけを担う「攻め専」として、ウイニングチケット、エアグルーヴ、ファインモーションの背に乗った。2009年に自分の厩舎を開き、2011年にエリンコートで優駿牝馬を勝って、GIを手にしたばかりだった。
四秒六
デビューは遅かった。2011年4月10日、阪神のダート1200メートル。三歳の四月にようやく迎えた初戦は新馬戦ではなく未勝利戦で、鞍上は藤岡佑介、8番人気だった。結果は16頭の16着。勝ったミヤビヘレネから4秒6も離された。 牧場へ戻され、次にゲートへ立つまで四か月半が空いた。8月27日、小倉のダート1700メートルを川須栄彦で3着。9月19日、阪神のダート1800メートル。二番手から抜け出して5馬身、0秒8差の圧勝だった。三歳の九月——未勝利で走れる期限は、もう目の前に来ていた。 昇級初戦の11月20日、新潟の不良馬場。1番人気に推され、ペパーミントラヴとタイム差なしの2着。勝ち切れなかったが、この馬がどこで走る馬なのかは、もう見えていた。初戦の1200メートルを除く三戦はダートの1700メートルと1800メートル、勝ったのは1800メートルである。
砂を選ぶ
2012年は六戦して三勝。2月26日、阪神のダート1800メートルをC.デムーロで1秒0差。続く1000万下は大外16番枠から先行争いに巻き込まれて5着で、勝ったのはまたペパーミントラヴだった。 5月19日、京都の御室特別。芝2000メートルで4番人気3着、上がり3ハロンは33秒4。芝を走る脚がないわけではなかった。この日、初めてこの馬に跨ったのが浜中俊である。6月10日には芝1800メートルで1番人気2着、0秒1差。だが二週後、降級で戻った阪神のダート1800メートルを1秒3差で勝ち、12月8日にも同じ条件を勝った。この年に負けた三戦のうち二戦は芝、残る一戦は大外枠からの消耗戦である。答えははっきりしていた。砂の1800メートル、それも前で運べば、この牝馬は強い。 浜中俊は1988年12月25日、福岡県北九州市に生まれた。小学五年から地元の小倉で乗馬を始め、2004年に競馬学校へ入り、2007年に栗東の坂口正大厩舎からデビューしている。2009年にはスリーロールスで菊花賞を勝ってGIを手にした。そして2012年、131勝を挙げて24歳で全国リーディングジョッキーになる。だがその一年、GIの勝ち鞍はひとつもなかった。年間で最も多く勝った騎手が、最も大きなレースだけを勝てないまま冬を迎えていた。
大井の五馬身
2013年1月6日、京都の初夢ステークス。二番手から直線で抜け出したところを、内で脚を溜めていたタカオノボルに差し切られて1馬身1/4差の2着。 十七日後、1月23日。大井のTCK女王盃。初めての地方競馬で、初めての重賞である。1番人気は逃げたレッドクラウディア、メーデイアは2番人気だった。三番手から進み、三コーナーで先頭に立つと、そこから後ろが二度と近づいてこない。1秒0——5馬身差。2着に飛び込んできたのは8番人気のアクティビューティで、その鞍上は吉田隼人だった。 浜中俊にとっては、大井競馬場の初騎乗初勝利である。そして同じ年の二月、彼はグレープブランデーでフェブラリーステークスを勝った。2009年の菊花賞から、三年四か月ぶりのGIだった。リーディングを取ってもGIが来なかった男に、大きいレースが戻ってきた冬——その最初の一勝が、大井の砂だった。 この時期、砂の女王の座は空こうとしていた。2011年と2012年のJBCレディスクラシックを連覇したミラクルレジェンドは、同じ1月に東海ステークスを走り、次のエンプレス杯を自身の引退レースとして勝って牧場へ帰っていく。前の女王と新しい女王は、結局一度も同じレースを走らなかった。
船橋、そして府中
4月3日、船橋のマリーンカップ。不良馬場のダート1600メートルに14頭、すべて牝馬である。56キロを背負って三番手から進み、四コーナーで先頭に立ち、レッドクラウディアに3馬身。JBCレディスクラシックへの優先出走権が付いてくるレースだった。 次に選ばれたのは、砂ではなかった。牝馬のダート路線は次の適鞍まで間隔が空く。5月12日、東京のヴィクトリアマイル。芝1600メートル、18頭、8枠16番、14番人気。主戦の浜中はこの日、この年の京都牝馬ステークスを勝ったハナズゴールに乗って2番人気6着。メーデイアの手綱は横山典弘が取った。 すんなりと三番手を進み、直線で総崩れになった。1分33秒4。勝ったヴィルシーナから1秒0差。一頭が競走中止したこの一戦で、完走した17頭のいちばん後ろだった。上がりは34秒9で、勝ち馬より0秒9遅い。芝のマイルで求められる脚は、この馬のものではなかった。 七年前、半姉ロフティーエイムも同じことをしている。福島牝馬ステークスを勝った次走にヴィクトリアマイルを選び、11着に終わった。姉妹は同じ舞台で、同じように弾かれた。
金沢、単勝一・〇倍
砂に帰った夏から、負けは消える。7月3日、川崎のスパーキングレディーカップ。56キロで二番手につけ、逃げる三歳のサマリーズを直線で捉えて1馬身。10月3日、大井のレディスプレリュード。重馬場を二番手から進み、三コーナーで先頭に立って、またアクティビューティを1馬身抑えた。JpnII。 11月4日、金沢。JBCレディスクラシックは2011年に生産者主導で創設された牝馬ダートの決定戦で、この年から日本グレード格付け管理委員会によってJpnIに格付けされた。その最初の一頭を決める日である。不良馬場のダート1500メートル、12頭立て、単勝1.0倍。 逃げたトシキャンディの背中を二番手で見ながら追い、四コーナーで先頭に立つ。上がり38秒0、1分33秒3。0秒6差の2着は、またもアクティビューティだった。この年、彼女に三度2着を献じたことになる六歳牝馬の鞍上・吉田隼人は、七年前、メーデイアの半姉ロフティーエイムで福島牝馬ステークスを勝ち、それを自身の重賞初制覇にした騎手である。姉に最初のタイトルを運んだ手が、妹の前に三度立ち、三度届かなかった。 笹田和秀にはオークスに続く大きな一勝、浜中俊には最も多く勝った年に手に入らなかった種類の勝利。牝馬ダートの頂に、メーデイアが立った。
十六頭のうちの一頭
12月1日、阪神のジャパンカップダート。16頭が集まり、そのうち牝馬はメーデイア一頭だけだった。牡馬が57キロ、彼女は55キロ。13番人気。 逃げたエスポワールシチーのすぐ後ろ、前から二、三番手の位置で運んだ。四コーナーで四番手。そこから直線で飲まれ、10着。勝ったベルシャザールから1秒0差である。同じ前めの位置にいた1番人気のホッコータルマエも、内で粘るところをベルシャザールとワンダーアキュートに捉えられて3着に終わっていた。牡馬の一線級にとっても、そういう日だった。 11着は、グレープブランデー。その年の二月に浜中へ三年四か月ぶりのGIを運んだ馬である。1馬身1/4だけ、メーデイアが前にいた。牝馬同士では1秒差をつけて勝ち、牡馬に混じれば1秒差をつけられる。二つの数字は同じ一頭のものだった。 その暮れ、船橋のクイーン賞をアクティビューティが勝った。メーデイアのいないレースで1番人気に応え、六歳にして初めての重賞である。三度2着に置かれた馬にも、ようやく順番が回ってきた。
五十七キロ
2014年1月22日、大井。TCK女王盃、11頭。前年は54キロで走ったレースを、この日は57キロを背負う。単勝1.4倍。 逃げたのはワイルドフラッパー、55キロ、鞍上はC.ルメール。メーデイアは二番手から追い、三コーナーで並びかけ、残り100メートルで競り落とした。2馬身半。1分51秒4。 レースの後、引退が発表された。1月24日付で競走馬登録が抹消される。19戦10勝。中央では13戦4勝、地方では6戦6勝。獲得賞金2億910万2000円のうち1億6200万円は、地方の砂で稼いだものである。交流重賞に出走したのは六度で、六度勝った。負けはひとつも持たずに、その路線から降りた。
安平から、また大井へ
生まれた追分ファームへ帰り、繁殖牝馬になった。産駒の名は、母の名前と同じ神話から採られていく。初仔オルトシア(父ディープインパクト)は笹田和秀が預かって11戦3勝、繁殖に上がった。ケラウノス、アフトクラーティラ。五番仔のメードスに与えられたのは、神話のメーデイアが産んだ息子の名だった。 二番仔ディクテオン(父キングカメハメハ)。名の意味は「全知全能の神ゼウスの生まれた場所」で、母名からの連想だった。三歳五月に阪神の芝でデビューして最下位、三戦して勝てず名古屋の角田輝也厩舎へ移り、そこで二連勝して栗東の吉岡辰弥厩舎に戻る。最初に預かったのは藤原英昭——母が女王になる前、その座にいたミラクルレジェンドを管理していた男である。 2023年に浦和記念と名古屋グランプリ、2024年に白山大賞典。2025年1月には大井・荒山勝徳厩舎へ移り、九月、ソウルのコリアカップを勝った。地方所属馬の海外重賞制覇は2006年のコスモバルク以来19年ぶりで、ダートでは初めてのことだった。そして12月29日、大井の東京大賞典。7番人気で先団に付け、直線で大外に持ち出し、粘るミッキーファイトをクビだけ捉えた。地方所属馬がこのレースを勝つのは2005年のアジュディミツオー以来20年ぶりで、鞍上の矢野貴之はGI級初制覇。その年のNARグランプリ年度代表馬に選ばれている。 母が最初の重賞を5馬身差で勝ち、57キロを背負って最後の一戦を勝った、あの大井の砂である。 メーデイアが最後に競り落としたワイルドフラッパーは、その年のエンプレス杯・マリーンカップ・レディスプレリュードを勝って砂の女王になった。そのワイルドフラッパーを盛岡のJBCレディスクラシックで下したのがサンビスタで、翌年サンビスタは中京で、牡馬混合の中央ダートGIを牝馬として初めて勝つ。十六頭のうち一頭だけの牝馬として阪神のゲートに入った馬が、開けられなかった扉だった。 2026年にも仔が生まれた。18歳、安平の牧場にいる。魔女の名をもらったこの馬がしたことは、呪文ではなく、ひとつの手順の繰り返しである。前を行く馬の背中を二番手で見て、コーナーで先頭に立ち、そのまま帰ってくる。金沢の砂は不良で、大井の砂は重かった。どちらでも、この馬は同じことをした。
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