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モーリス
通算成績18戦11勝
獲得賞金(海外含む・概算)約11億9,564万円
生年月日 2011.03.02(平成23年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GI香港カップ | シャティン 芝2000 | 1人気 | R.ムーア | 2:00.9 | — | 映像 | |
| 1 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 1人気 | R.ムーア | 1:59.3 | 上り33.8 | 映像 | |
| 2 | GII札幌記念 | 札幌 芝2000 | 1人気 | J.モレイラ | 2:02.0 | 上り36.3 | 映像 | |
| 2 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 1人気 | T.ベリー | 1:33.2 | 上り34.0 | 映像 | |
| 1 | GIチャンピオンズマイル | 香港 芝1600 | 1人気 | J.モレイラ | 1:34.0 | — | 映像 | |
| 1 | GI香港マイル | 香港 芝1600 | 2人気 | R.ムーア | 1:33.9 | — | 映像 | |
| 1 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 4人気 | R.ムーア | 1:32.8 | 上り33.1 | 映像 | |
| 1 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 1人気 | 川田将雅 | 1:32.0 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | GIIIダービー卿チャレンジトロフィー | 中山 芝1600 | 1人気 | 戸崎圭太 | 1:32.2 | 上り33.0 | 映像 | |
| 1 | スピカS | 中山 芝1800 | 1人気 | 戸崎圭太 | 1:50.2 | 上り33.8 | — | |
| 1 | 若潮賞 | 中山 芝1600 | 1人気 | F.ベリー | 1:33.7 | 上り34.6 | — | |
| 3 | OP白百合S | 京都 芝1800 | 4人気 | 浜中俊 | 1:45.2 | 上り33.5 | — | |
| 7 | GII京都新聞杯 | 京都 芝2200 | 7人気 | 川田将雅 | 2:11.5 | 上り35.8 | — | |
| 4 | GIIフジTVスプリングS | 中山 芝1800 | 5人気 | 川田将雅 | 1:48.8 | 上り35.1 | — | |
| 5 | GIII日刊スポシンザン記念 | 京都 芝1600 | 3人気 | 内田博幸 | 1:34.9 | 上り34.9 | — | |
| 1 | 万両賞 | 阪神 芝1400 | 1人気 | 川田将雅 | 1:22.7 | 上り35.1 | — | |
| 6 | GII京王杯2歳S | 東京 芝1400 | 1人気 | R.ムーア | 1:23.5 | 上り33.1 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 京都 芝1400 | 1人気 | 内田博幸 | 1:20.6 | 上り33.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父スクリーンヒーローScreen Hero | グラスワンダーGrass Wonder | Silver Hawk |
| Ameriflora | ||
| ランニングヒロイン | サンデーサイレンスSunday Silence | |
| ダイナアクトレス | ||
| 母メジロフランシス | カーネギーCarnegie | Sadler's Wells |
| Detroit | ||
| メジロモントレー | モガミMogami | |
| メジロクインシー |
旅程 — この馬の物語
2011年生まれの鹿毛の牡馬。父スクリーンヒーロー、母メジロフランシス。主な勝ち鞍は安田記念・マイルチャンピオンS・香港マイル。
解散の年に生まれた ― メジロの牝系
2011年3月2日、北海道沙流郡日高町の戸川牧場で、鹿毛の牡馬が生まれた。母はメジロフランシス。かつて「長距離のメジロ」と呼ばれた洞爺湖町の名門、メジロ牧場が基礎に据えた牝系の末裔である。戸川牧場の代表夫妻はメジロ牧場に勤めていた過去があり、その縁でこの繁殖牝馬を引き継いでいた。 そのメジロ牧場は、この仔が生まれた年の5月20日付で解散した。メジロラモーヌとメジロマックイーンを殿堂に送り込み、天皇賞に執着し続けた牧場は、ついに一頭の年度代表馬もダービー馬も出さないまま看板を下ろす。撤退に先立って、何頭かの繁殖牝馬が戸川牧場など関係者の元へ移されていた。この鹿毛が立ち上がったのは、そういう春だった。 牝系を遡れば、5代母は北野豊吉がメジロ牧場の基礎に据えたメジロクイン。4代母メジロボサツは1965年の朝日杯3歳ステークスを勝ち、祖母メジロモントレーは牡馬を相手にアルゼンチン共和国杯を制した重賞4勝馬である。さらに8代母デヴオーニアをアメリカから輸入したのは、月寒の畜産家・吉田善助――のちに社台グループを興す吉田善哉の父だった。 母は小柄で、その産駒には途中で走るのをやめてしまう脆さがあった。戸川牧場代表の戸川洋二は、その欠点を埋める相手としてスクリーンヒーローを選んでいる。並ばれても抜かせない勝負根性と、母の馬格を補う大きなストライド。狙いははっきりしていた。 名は、フランスのバレエ振付家モーリス・ベジャールから採られた。モーリス。踊る人の名を持つ馬になった。
百五十万円と、京都のレコード
1歳の夏、この馬はサマーセールに上場され、150万円で落札された。値がついたのは、その翌年である。北海道トレーニングセールの公開調教で、ゴール前2ハロンを21秒8――その日の最速で駆け抜けたのだ。競りは跳ね上がり、ノーザンファームが1050万円で競り落とした。デヴオーニアの輸入から八代。牝系は巡り巡って、再び吉田一族の手元に戻ってきたことになる。馬主には吉田和美が名を連ね、栗東・吉田直弘厩舎に入った。 2013年10月6日、京都・芝1400mの新馬戦。内田博幸を背に1番人気に応え、2着馬に3馬身の差をつけて2歳コースレコードで勝ち上がる。デビュー戦から、時計は一流だった。 続く京王杯2歳ステークスにはライアン・ムーアが乗った。1番人気。だが馬体が立ち上がったところでゲートが開き、大きく出遅れる。挽回に脚を使い切って6着。実力のある馬だ、スタートさえまともなら――ムーアはそう言い残して去った。 朝日杯フューチュリティステークスは除外。年の瀬の万両賞を川田将雅で勝ってオープン入りしたものの、京都で見せたあのレコードの意味は、まだ誰にも測りかねていた。
勝てなかった一年
2014年、3歳。日刊スポーツ賞シンザン記念は3番人気で5着、勝ったのは、のちに最優秀短距離馬に選ばれるミッキーアイルだった。フジテレビ賞スプリングステークス4着、京都新聞杯7着、白百合ステークス3着。4戦してひとつも勝てず、勝ち星のないまま長い休養に入る。 原因は背腰にあった。痛みが取れず、力を出し切れない。そしてこの休養の途中で、モーリスは美浦の堀宣行厩舎へ転厩する。栗東から美浦へ、関西馬から関東馬へ。3歳の春に頭打ちになった馬にとって、これが最大の分岐点になった。 堀は千葉県市川市の出身で、大学時代は実家に近い中山競馬場で誘導馬の世話をするアルバイトをしていた。卒業後は電気設備会社の経理として働き、1991年にその職を辞して競馬学校の厩務員課程に入り直している。厩務員、調教助手を経て、開業は2003年。気性や馬体に難のある馬を、時間をかけて作り直す手腕で知られていた。転厩したモーリスには、背腰に負担のかからない調整が入念に施される。急がない厩舎に、急いでも進めなかった馬が来た。
生まれ変わった冬
2015年1月25日、中山の若潮賞。およそ半年ぶりの実戦で、転厩初戦をあっさりと勝った。3月のスピカステークスでは戸崎圭太を鞍上に迎え、またも出遅れながら、メンバー最速の上がり33秒8で差し切ってオープン入りする。出遅れる癖は治らなかった。だが、出遅れても届く脚がついていた。 4月5日、中山のダービー卿チャレンジトロフィー。ここでも後方からの競馬になったが、直線で抜け出すと一完歩ごとに脚色が違った。2着クラリティシチーに3馬身半。時計は1分32秒2――2005年にダイワメジャーが刻んだレースレコードを0秒1更新する走りだった。重賞初制覇。4歳の春になって、ようやく評価が走りに追いついた。
新マイル王 ― 二〇一五年安田記念
6月7日、東京・芝1600m。17頭のうち10頭がマイル重賞の勝ち馬で、GI馬は5頭を数えた。キャリア初のGIで、モーリスは1番人気に推される。鞍上は京都新聞杯以来の川田将雅。 最大の不安は、やはりゲートだった。ところがこの日は違った。「今日は出てくれた」[^1]――川田が驚くほどのダッシュで好位を取り切ってしまう。左回りも府中の長い直線も未知だったが、リアルインパクトとケイアイエレガントが引く淡々とした流れに、少し行きたがりながらも折り合った。 直線、坂上で先頭に立つ。背後からフィエロとクラレントが迫り、外に立て直したヴァンセンヌが脚を伸ばしてくる。差し返される寸前まで詰め寄られながら、クビ差を守り切った。1分32秒0。父スクリーンヒーロー産駒にとって初のGI制覇であり、堀宣行にとっては2011年のリアルインパクト、2012年のストロングリターンに続く安田記念3勝目でもあった。そのリアルインパクトも、同じ厩舎からこのレースを走っていた。
出典:日本中央競馬会「第65回 安田記念(GI)レース結果」2015年6月7日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/yasuda/result/yasuda2015.html、閲覧日:2026年7月28日。
淀とシャティン ― 六戦六勝の年
秋は毎日王冠から始める予定だった。だが2週前の追い切りのあとに疲れが残り、前哨戦を使わずマイルチャンピオンシップへ直行する。休み明け、しかも18頭立ての8枠16番。評価は4番人気まで下がった。 鞍上のライアン・ムーアは、京王杯2歳ステークス以来のコンビだった。あの出遅れから2年、馬体はすっかり出来ていた。中団の外で悠々と流れに乗り、直線で粘るアルビアーノを捉えて先頭に立つと、食い下がるフィエロ、内から伸びるイスラボニータ、外から迫るサトノアラジンを、まとめて振り切る。「堂々とした競馬だった」[^1]。同一年の安田記念・マイルチャンピオンシップ制覇は、2007年のダイワメジャー以来、史上6頭目だった。 12月13日、香港・シャティン。香港マイルには地元で絶大な人気を誇るエイブルフレンドがいて、モーリスは2番人気。道中は中団7番手、その直後にエイブルフレンドがぴたりとマークしてくる。直線で並びかけられ、一度は前に出られた。そこから差し返した。日本調教馬による同レース制覇は、2005年のハットトリック以来10年ぶり、史上3頭目である。 この年、6戦6勝。JRA賞は年度代表馬と最優秀短距離馬。短距離馬が年度代表馬に選ばれたのはタイキシャトル、ロードカナロアに次いで3頭目だった。同じ2015年、堀厩舎はドゥラメンテで皐月賞と日本ダービーも勝っている。ひとつの厩舎が、クラシック二冠馬と年度代表馬を同じ年に送り出した。 そして――生産馬からも所有馬からも一頭の年度代表馬を出せないまま解散した、あのメジロの牝系から、その称号が出た。
出典:日本中央競馬会「第32回 マイルチャンピオンシップ(GI)レース結果」2015年11月22日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/mile/result/mile2015.html、閲覧日:2026年7月28日。
敗れながら、伸びていた
2016年の春はドバイターフを目指していた。だが香港遠征の疲れが抜けず、爪も痛めて回避となる。代わりに選んだのが、5月1日のチャンピオンズマイルだった。香港のトップジョッキー、ジョアン・モレイラを迎え、スローペースを4番手で折り合うと、直線は持ったまま。軽く仕掛けられただけで鋭く反応し、2着コンテントメントに2馬身差。モレイラがゴール板の手前でガッツポーズを作る余裕さえあった。GIは4連勝、連勝は7に伸びた。 その連勝が、連覇を狙った安田記念で止まる。鞍上には、この馬に乗る4人目の外国人騎手としてトミー・ベリーが迎えられた。12頭立て、単勝は1倍台。逃げたのはロゴタイプで、モーリスは引っ張り切れない手応えのまま2番手につけた。直線、ロゴタイプは内ラチ沿いを選び、外へ持ち出されたモーリスとの差は縮まらない。残り100m付近から伸びたが、1馬身1/4届かず2着。堀厩舎に移ってから、初めての敗戦だった。 8月の札幌記念も、モレイラで2着。重馬場の外を回らされ、逃げ切ったのは同じ堀厩舎のネオリアリズムだった。ただ、距離延長の構想は敗れる前から動いていた。ノーザンファーム代表の吉田勝己が秋の距離延長の可能性に触れ、その足がかりとして札幌記念が選ばれていたのである。負けても方針は変わらなかった。レースの2日後、マイルには戻らず天皇賞(秋)へ向かうこと、そして年末の香港を最後に引退することが発表される。
秋の盾と、最後の直線
10月30日、東京。国内最終戦となる天皇賞(秋)には、エイシンヒカリ、リアルスティール、ラブリーデイ、ロゴタイプ、ステファノスが顔を揃えた。2戦続けて2着に敗れた馬が、それでも1番人気に推される。 エイシンヒカリが引っ張る流れは1000m通過60秒8。ムーアはこの緩さを歓迎し、前から離されないいい位置で追走できたと振り返っている。直線、坂を駆け上がりながら馬場の真ん中を先頭へ。手前を替えてもうひと伸びし、外から追い込むリアルスティール、内を突いたアンビシャスらを突き放して1馬身半差。「早めのスパートでも、誰も追いつけないはずだ」[^1]――鞍上の自信が、そのまま馬の走りになっていた。マイル王が、2000mの盾も手にした。 12月11日、シャティン。引退レースに選ばれたのは香港マイルではなく、香港カップだった。ムーアを交えた協議の末の決定である。単勝1.6倍。エイシンヒカリが逃げ、モーリスはまた出遅れて後方に置かれた。だが直線に入ると、内から馬群を割って上がってくる。半ばで先頭のエイシンヒカリを捉え、そのまま突き放した。2着シークレットウェポンに3馬身。危ういと思わせる瞬間が、どこにもなかった。GI6勝目にして、最後の勝利である。 翌2017年1月15日、中山競馬場で引退式が行われ、同じ日に競走馬登録を抹消。18戦11勝、うちGI6勝。その6勝のうち3勝は、海の向こうのシャティンで挙げたものだった。
出典:日本中央競馬会「第154回 天皇賞(秋)(GI)レース結果」2016年10月30日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/akiten/result/akiten2016.html、閲覧日:2026年7月28日。
父になった馬
北海道安平町の社台スタリオンステーションに立った初年度、265頭の繁殖牝馬が集まった。母の父や祖父にサンデーサイレンスを持つ牝馬と配せばサンデーサイレンスのクロスが生じる血統構成で、ジェンティルドンナ、ブエナビスタ、ハープスター、シーザリオといったGI級の名牝が相手に選ばれている。 2021年1月、ピクシーナイトがシンザン記念を勝って産駒の重賞初制覇を挙げ、その秋のスプリンターズステークスで初のGIをもたらした。翌2022年にはジェラルディーナ――母はジェンティルドンナ――がエリザベス女王杯を制し、2023年にはジャックドールが大阪杯を勝つ。シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアではヒトツがヴィクトリアダービーとオーストラリアンダービーを制し、マズが現地のスプリントGIを重ねた。2024年の朝日杯フューチュリティステークスはアドマイヤズームだった。 モーリスは今も安平町にいる。洞爺湖の牧場が看板を下ろすのと入れ替わるように生まれた鹿毛は、15歳になった。長距離に賭け続けた牝系はマイルの王を生み、その王が今度は、別の距離の王たちを送り出している。血は、畳まれた場所では終わらなかった。
産駒 — 旅を継ぐ馬
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