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マルカラスカル
通算成績32戦10勝
獲得賞金3億826万円
生年月日 2002.05.03(平成14年)毛色 黒鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7 | JGⅠ中山大障害 | 中山 障4100 | 3人気 | 西谷誠 | 4:48.8 | 上り14.1 | 映像 | |
| 10 | 3歳以上1000万下 | 阪神 ダ2000 | 11人気 | 石橋守 | 2:07.0 | 上り39.0 | — | |
| 5 | JGⅠ中山大障害 | 中山 障4100 | 1人気 | 西谷誠 | 4:45.7 | 上り13.9 | 映像 | |
| 1 | OPイルミネーションJS | 中山 障3570 | 1人気 | 西谷誠 | 4:00.6 | 上り13.5 | — | |
| 11 | 3歳以上1000万下 | 京都 ダ1800 | 12人気 | 石橋守 | 1:52.9 | 上り36.8 | — | |
| 1 | JGⅠ中山グランドジャンプ | 中山 障4250 | 3人気 | 西谷誠 | 4:57.7 | 上り14.0 | 映像 | |
| 1 | OP牛若丸ジャンプS | 京都 障3190 | 2人気 | 西谷誠 | 3:32.5 | 上り13.3 | — | |
| 3 | JGⅠ中山大障害 | 中山 障4100 | 2人気 | 西谷誠 | 4:40.0 | 上り13.7 | 映像 | |
| 11 | 3歳以上1000万下 | 阪神 ダ2000 | 15人気 | 石橋守 | 2:07.4 | 上り38.0 | — | |
| 12 | 3歳以上1000万下 | 京都 ダ1800 | 14人気 | 石橋守 | 1:54.4 | 上り38.0 | — | |
| 1 | JGⅠ中山大障害 | 中山 障4100 | 2人気 | 西谷誠 | 4:41.0 | 上り13.7 | 映像 | |
| 13 | 境港特別 | 阪神 芝2200 | 9人気 | 石橋守 | 2:17.9 | 上り35.2 | — | |
| 12 | 3歳以上1000万下 | 京都 ダ1400 | 6人気 | 上野翔 | 1:26.3 | 上り37.9 | — | |
| 1 | OP淀ジャンプS | 京都 障3790 | 1人気 | 西谷誠 | 4:16.4 | 上り13.5 | — | |
| 1 | OP牛若丸ジャンプS | 京都 障3190 | 1人気 | 西谷誠 | 3:38.9 | 上り13.7 | — | |
| 1 | 障害3歳以上未勝利 | 阪神 障3000 | 1人気 | 仲田雅興 | 3:18.4 | 上り13.2 | — | |
| 3 | 障害3歳以上未勝利 | 阪神 障3000 | 1人気 | 仲田雅興 | 3:18.7 | 上り13.2 | — | |
| 12 | OPエニフS | 京都 ダ1800 | 7人気 | 上野翔 | 1:51.7 | 上り37.9 | — | |
| 9 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1800 | 8人気 | 菊沢隆仁 | 1:46.0 | 上り35.8 | 映像 | |
| 1 | 加古川特別 | 阪神 ダ1800 | 10人気 | 菊沢隆仁 | 1:51.9 | 上り37.5 | — | |
| 6 | 鷹取特別 | 阪神 ダ1800 | 7人気 | 福永祐一 | 1:53.2 | 上り37.5 | — | |
| 8 | GIIIユニコーンS | 東京 ダ1600 | 12人気 | 松岡正海 | 1:37.9 | 上り37.5 | 映像 | |
| 10 | OP昇竜S | 中京 ダ1700 | 8人気 | 松田大作 | 1:47.8 | 上り39.1 | — | |
| 5 | OP端午S | 京都 ダ1800 | 13人気 | 吉田稔 | 1:52.6 | 上り38.2 | — | |
| 13 | OPマーガレットS | 阪神 芝1400 | 12人気 | 川原正一 | 1:22.5 | 上り35.3 | — | |
| 1 | 3歳500万下 | 阪神 ダ1400 | 7人気 | 福永祐一 | 1:25.5 | 上り38.3 | — | |
| 8 | 3歳500万下 | 阪神 ダ1400 | 1人気 | 福永祐一 | 1:26.5 | 上り38.6 | — | |
| 5 | 3歳500万下 | 京都 ダ1400 | 2人気 | 福永祐一 | 1:27.2 | 上り38.1 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 京都 ダ1400 | 1人気 | 福永祐一 | 1:25.9 | 上り37.2 | — | |
| 2 | 2歳未勝利 | 京都 芝1400 | 1人気 | 福永祐一 | 1:23.4 | 上り36.3 | — | |
| 2 | 2歳未勝利 | 京都 芝1600 | 3人気 | 福永祐一 | 1:36.5 | 上り35.5 | — | |
| 3 | 2歳新馬 | 京都 芝1400 | 2人気 | 福永祐一 | 1:23.5 | 上り35.6 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父グラスワンダーGrass Wonder | Silver Hawk | Roberto |
| Gris Vitesse | ||
| Ameriflora | Danzig | |
| Graceful Touch | ||
| 母トレアンサンブル | トニービンTony Bin | カンパラKampala |
| Severn Bridge | ||
| ダイナアクトレス | ノーザンテーストNorthern Taste | |
| モデルスポート |
旅程 — この馬の物語
2002年生まれの黒鹿毛の牡馬。父グラスワンダー、母トレアンサンブル。
舞台の名を継ぐ
2002年5月3日、北海道千歳市の社台ファームで黒鹿毛の牡駒が生まれた。父はグラスワンダー、母はトレアンサンブル。 母の母がダイナアクトレスである。1987年と1988年に当時の最優秀5歳以上牝馬に選ばれた名牝で、その名は馬主の冠名「ダイナ」に、英語で女優を意味するActressを重ねたものだった。母名モデルスポートからの連想に加え、出資者のひとりに女優の南田洋子がいたことによる。 以来この一族は、劇場の言葉で名を連ねていく。ダイナアクトレスの初仔ステージチャンプは日経賞とステイヤーズステークスを勝ち、二番仔プライムステージは札幌3歳ステークスとフェアリーステークスを勝った。プライムステージの仔アブソリュートは東京新聞杯と富士ステークス。1993年に生まれたランニングヒロインからは、のちにジャパンカップを勝つスクリーンヒーローが出る。銀幕の英雄、という意味の名である。 1995年に生まれたのがトレアンサンブルだった。競馬場に立ったのは二度きりで、いずれも京都の芝1600メートル、新馬戦。一戦目は1番人気に推されて七着に敗れている。そのレースを勝ったのはキングヘイローだった。二戦目も掲示板には届かず、そのまま繁殖に上がった。 馬主は岐阜県恵那市の河長産業。冠名は「マルカ」、勝負服は桃地に黄の襷、袖は緑である。その冠名のうしろに置かれたのが、Rascal——英語で、わんぱく者、食わせ者を指す言葉だった。舞台と銀幕の名が並ぶ一族に、悪童がひとり加わったことになる。 2004年10月23日、京都の芝1400メートル、2歳新馬。福永祐一を背に2番人気で三着。ここから始まった。
平地では、二十一回
新馬のあと二着を二度続け、四戦目、京都のダート1400メートルでようやく勝ち上がった。ここまでの四戦はすべて福永祐一が乗っている。 三歳の一年は、行き先を探す一年だった。2月と3月に阪神と京都のダート1400メートルを三度使い、三度目に勝つ。芝のマーガレットステークスは十三着。ダートの端午ステークスで五着に入るが、勝ったのはカネヒキリだった。中京の昇竜ステークス十着、東京のユニコーンステークス八着——ここでもカネヒキリが先頭でゴールしている。夏、阪神の加古川特別を10番人気で勝った。菊沢隆仁を背に、不良馬場のダート1800メートルである。二週間後の北九州記念は小倉の芝1800メートルで九着、勝ち馬はメイショウカイドウ。秋、京都のエニフステークスで十二着。勝ったのはヴァーミリアンだった。 平地で走った回数は、生涯で二十一。勝ったのは三度である。芝もダートも、短いところも長いところも試された。残っていたのは、跳ぶという道だった。
ハナへ
2005年12月3日、阪神の障害3000メートル、障害3歳以上未勝利。鞍上は仲田雅興。1番人気に推されて三着、勝ったコウエイトライとの差は0秒1だった。三週間後、同じ阪神の同じ条件で、今度は二着に2秒9をつけて勝った。障害での二戦目である。 年が明けて、手綱が西谷誠に替わる。1976年、滋賀県の生まれ。1995年に栗東・瀬戸口勉厩舎からデビューした騎手で、父の西谷達男もかつて同じ厩舎に属し、おもに障害を乗っていた。西谷自身は1999年にゴッドスピードで中山大障害を勝っており、瀬戸口厩舎の障害での主戦といえる立場にあった。 1月14日、京都の牛若丸ジャンプステークス。不良馬場を1番人気で押し切る。2月11日、淀ジャンプステークス、3790メートル。4分16秒4はレコードだった。障害に転じて四戦三勝、負けたのは初戦だけである。 そこで長い休みに入った。次に競馬場へ戻ってきたのは九か月後、しかも平地だった。11月の京都で十二着、12月の阪神・境港特別で十三着。境港特別で手綱を取ったのは石橋守。その年の春、瀬戸口厩舎のメイショウサムソンで皐月賞と日本ダービーを勝った男である。 障害を跳ぶのは十か月ぶりになる。そして中山のコースは、走ったことがなかった。
四千百メートル、一度も譲らず
2006年12月23日、中山競馬場。晴れ、芝は良。十六頭のフルゲートだった。 ゲートが開くと、西谷は迷わず前へ出した。久々の障害で相手の呼吸に合わせるより、自分の脈で行く。そういう組み立てだったのだろう。 中山の大障害コースは、正面から襷コースへ折れて芝を斜めに横切り、飛越のたびに隊列を伸び縮みさせながら進む。大生垣を越えるところでも、順番は変わらなかった。 一周目の一コーナー、先頭。二コーナー、先頭。三コーナー、先頭。四コーナーに差しかかったとき、二番手との間はもう馬体で埋められる距離ではなくなっていた。 後方に控えていた一番人気のメルシーエイタイムが、最終コーナーで一気に上がってくる。追う脚は確かにあった。だが直線を向いて、前がもう一度加速する。詰まりかけた差が、また開いていった。 最後の障害を越えて、あとはゴール板まで。四千百メートルのあいだ、この馬の正面には一頭も馬がいなかった。 六馬身。二着メルシーエイタイム、三着アグネスハット。障害に転じて五戦目、初めての重賞がJ・GIだった。
餞
この日の中山には、もうひとつの事情があった。管理する瀬戸口勉が、翌年二月に定年を迎える。1975年に栗東で開業し、笠松から移ってきたオグリキャップでGIを四つ、ネオユニヴァースで二冠、そしてこの年はメイショウサムソンで皐月賞と日本ダービーを勝った調教師である。西谷は1995年のデビュー以来、その厩舎に所属していた。 レース後、彼は「最後に大きなプレゼントを渡すことができた」[^1]と言った。実際これが、瀬戸口が調教師として勝った最後の中央GIになる。 もうひとつ。父グラスワンダーにとっても、産駒が勝った初めてのGIだった。翌日には有馬記念が組まれている。グラスワンダー自身が1998年と1999年に勝ったレースの、その前日に、最初の戴冠が障害コースから届いたことになる。 年が明け、マルカラスカルは2006年度のJRA賞最優秀障害馬に選ばれた。2月、瀬戸口の引退にともなって管理馬はすべて他の厩舎へ移る。この馬が移った先は同じ栗東の増本豊厩舎で、増本は瀬戸口の義兄弟にあたった。 秋、平地を二度叩いて中山大障害へ向かう。一番人気は前年の勝ち馬テイエムドラゴン、二番人気がマルカラスカル、三番人気は二年続けてこのレースの二着に泣いていたメルシーエイタイム。大生垣を越えたところで先頭に立ったが、最後の障害を飛び終えてからの長い追い比べで、離れずについてきたメルシーエイタイムに力ずくで交わされた。三着。勝ち馬との差は0秒3である。
出典:日本中央競馬会「第129回 中山大障害(J・GI)レース結果」2006年12月23日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/daishogai/result/daishogai2006.html 、閲覧日:2026年8月2日。
大差、そして外へ
2008年1月19日、牛若丸ジャンプステークスを勝って年を始める。向かった先は、この馬がまだ一度も走ったことのない中山グランドジャンプだった。相次ぐ脚部不安で、春の中山とは縁がないままきていた。 4月19日、中山。曇り、芝は重。四連覇を狙っていたカラジが直前に出走を取りやめている。雨にもたたられ、十頭立てだった。 スタート直後に先頭へ。いったんフォレストダンスに前を明け渡したが、湿った馬場を苦にする様子はなく、淡々と同じピッチを刻む。大生垣を越えたところでもう一度ハナを奪い返すと、そこから後続との差はじわじわと広がっていった。最終障害を越えて直線、追う必要はもう残っていない。西谷は後ろを振り返り、決勝線の手前で何度も拳を突き上げている。二着メルシーエイタイムまで2秒2、着差の記録は「大差」だった。 秋。11月16日、京都のダート1800メートル、1000万下。12番人気で十一着。その二週間後の11月30日、東京競馬場のジャパンカップをスクリーンヒーローが勝った。父はグラスワンダー、母ランニングヒロインの母はダイナアクトレス——二歳下のいとこである。同じ父と同じ祖母を持つ二頭が、同じ年に、障害と平地でそれぞれの頂に立った。 12月6日、中山のイルミネーションジャンプステークス。二着に4秒6をつけるレコード勝ちで、西谷にとっては障害での通算百勝目でもあった。 12月27日、中山大障害。単勝1.4倍の断然人気に推され、いつものように逃げて差を広げていく。ところが襷コースを終えて左回りに入ったところで、外へ逸走した。もう一度ハナを取り戻したものの、その分がゴール前で効いた。五着。勝ったのは同じ増本厩舎のキングジョイ、二着は、この年の春に大差で置いてきたメルシーエイタイムだった。
二年の沈黙と、八歳の暮れ
その中山大障害を最後に、この馬は競馬場から消えた。次に姿を見せるまで、二年近くがかかっている。 その間に、あの日この馬を負かしたキングジョイが翌年の中山大障害も勝って、連覇を果たしている。2009年の鞍上は西谷誠だった。 2010年12月5日、阪神のダート2000メートル、1000万下。馬体重は516キロ、11番人気で十着。手綱は石橋守。四年前と同じ順序である——平地を一度叩いて、中山へ向かう。 12月25日、中山大障害。晴れ、芝は良。十二頭立ての三番人気。八歳になっていた。 そして、また引っ張った。四年前の逃げ切りをもう一度、という走りだった。テイエムトッパズレが前をうかがい、トーワベガとタマモグレアーが外から圧をかける。最終障害を飛び終えて各馬が一斉に追い出すと、中団で脚をためていた10番人気のバシケーンが外から差し切った。マルカラスカルは七着。 レースのあと、左前脚に浅屈腱不全断裂が見つかった。2011年1月5日付で競走馬登録が抹消される。三十二戦十勝。引退後は乗馬になり、滋賀県栗東市の牧場へ移った。
前に、何もない
障害を跳ぶ騎手が、四千メートルを走りきるあいだ一度も前に馬影を見ない——そんな景色は、何度も訪れるものではない。西谷誠はそれを、この馬の背中で二度見ている。中山大障害の四千百メートルを、最初の障害から最後の障害まで先頭で。中山グランドジャンプの四千二百五十メートルを、大生垣で奪い返してから2秒2の差で。 2008年の暮れに外へ逸れたのも、同じ性質の裏側だったのだろう。前に馬がいないところまで行ってしまう馬だった。だから脚を痛めて二年ぶりに戻ってきた八歳の暮れにも、隊列の後ろで息を潜めることをしなかった。十二頭立ての先頭に立ち、四年前と同じ位置から同じコースへ入っていって、七着で帰ってきた。その一鞍が最後になった。 西谷は2026年4月いっぱいで騎手を退いた。1995年に瀬戸口勉厩舎から始まった三十二年で、J・GIを四つ勝っている。うち二つがこの馬だった。引き際について問われて、彼は「〝老兵は死なず、単に消え去るのみ〟でいいかなと。何も後悔はありません」[^1]と答えている。 消え去るのみ、と彼は言った。けれど障害の騎手が生涯に持ち帰るものは、たぶん勝ち星の数ではない。飛越の直後、着地して顔を上げたときに目の前が空いている、あの一瞬だろう。マルカラスカルはそれを二度、まるごと差し出した。四千百メートルのあいだ、前にあったのは芝と、次の障害と、あとは中山の冬空だけだった。
出典:サンケイスポーツ「引退発表の西谷誠騎手が心境を語る「引き際的には〝老兵は死なず、単に消え去るのみ〟でいいかなと」 今後は四位厩舎で調教助手に転身」2026年4月15日配信、https://www.sanspo.com/race/article/general/20260415-OF6TJOHRYVNRVFNSZHEZGPZCFU/ 、閲覧日:2026年8月2日。
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