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マルセリーナ
通算成績22戦4勝
獲得賞金2億6,938万円
生年月日 2008.02.17(平成20年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 15 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 12人気 | M.デムーロ | 2:17.5 | 上り34.3 | 映像 | |
| 7 | GII府中牝馬S | 東京 芝1800 | 8人気 | 川田将雅 | 1:49.1 | 上り32.6 | — | |
| 9 | GII札幌記念 | 函館 芝2000 | 12人気 | 川田将雅 | 2:10.7 | 上り41.8 | 映像 | |
| 4 | GIIIクイーンS | 函館 芝1800 | 2人気 | 川田将雅 | 1:49.7 | 上り36.9 | — | |
| 1 | GIIIマーメイドS | 阪神 芝2000 | 7人気 | 川田将雅 | 1:59.4 | 上り34.5 | — | |
| 6 | OPメイS | 東京 芝1800 | 4人気 | 吉田豊 | 1:45.7 | 上り33.3 | — | |
| 6 | GIIサンスポ杯阪神牝馬S | 阪神 芝1400 | 9人気 | 川田将雅 | 1:21.8 | 上り34.0 | — | |
| 12 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 11人気 | 北村友一 | 1:21.7 | 上り34.7 | — | |
| 11 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 8人気 | M.デムーロ | 1:33.7 | 上り34.0 | 映像 | |
| 5 | GII府中牝馬S | 東京 芝1800 | 3人気 | 岩田康誠 | 1:45.9 | 上り32.9 | — | |
| 17 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 11人気 | 田辺裕信 | 1:33.1 | 上り35.5 | 映像 | |
| 3 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 3人気 | 田辺裕信 | 1:32.7 | 上り33.5 | 映像 | |
| 2 | GIIサンスポ杯阪神牝馬S | 阪神 芝1400 | 2人気 | M.デムーロ | 1:21.9 | 上り34.6 | — | |
| 4 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 3人気 | C.ルメール | 1:20.9 | 上り34.7 | — | |
| 6 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 9人気 | 安藤勝己 | 1:34.3 | 上り34.6 | 映像 | |
| 7 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 3人気 | 福永祐一 | 1:59.0 | 上り34.6 | 映像 | |
| 6 | GII関西TVローズS | 阪神 芝1800 | 2人気 | 福永祐一 | 1:48.5 | 上り34.3 | — | |
| 4 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 1人気 | 安藤勝己 | 2:26.1 | 上り34.3 | 映像 | |
| 1 | GI桜花賞 | 阪神 芝1600 | 2人気 | 安藤勝己 | 1:33.9 | 上り34.3 | 映像 | |
| 1 | OPエルフィンS | 京都 芝1600 | 2人気 | 安藤勝己 | 1:34.4 | 上り34.2 | — | |
| 3 | GIII日刊スポシンザン記念 | 京都 芝1600 | 6人気 | 安藤勝己 | 1:34.3 | 上り33.9 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 阪神 芝1600 | 1人気 | 安藤勝己 | 1:36.8 | 上り33.9 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ディープインパクトDeep Impact | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ウインドインハーヘアWind in Her Hair | Alzao | |
| Burghclere | ||
| 母マルバイユMarbye | Marju | ラストタイクーンLast Tycoon |
| Flame of Tara | ||
| Hambye | Distant Relative | |
| Paglietta Gener |
旅程 — この馬の物語
2008年生まれの鹿毛の牝馬。父ディープインパクト、母マルバイユ。主な勝ち鞍は桜花賞・マーメイドS。
イタリアを走った母
母の名を、マルバイユという。2000年にアイルランドで生まれ、競走生活のほとんどをイタリアで送った牝馬である。同国では二十戦十勝。2003年にはフランスのアスタルテ賞を三着し、翌2004年、その同じ競走がGIに格上げされた年に勝った。ほかにイタリアのエミリオトゥラティ賞(GII)、セルジオクマニ賞(GIII)。海外通算二十四戦十一勝。 その母が日本へ渡り、北海道千歳市の社台ファームで、2008年2月17日に鹿毛の牝馬を産んだ。父はディープインパクト。無敗の三冠馬が種牡馬になって送り出した、最初の世代である。 社台サラブレッドクラブは、この牝馬を一口百万円・全四十口、総額四千万円で募った。募集カタログは肩回りと臀部の筋肉の良質さを称え、バネの利いた歩様に父譲りの瞬発力を見ている。育成の現場では、動きの良さに加えて、自分の尻尾をかじれるほど体が柔らかい馬だと評された。 名は、マルセリーナ。母と同じ「マル」で始まり、登録された由来は「女性の名前」という一語だけだった。
札幌のぬかるみ
当初は夏のデビューを目指していた。 2010年7月24日、滞在先の札幌競馬場で調教中、キャンターを止める際にぬかるんだ馬場に脚をとられてつまずき、両膝を地面に打ちつけた。三か月の見舞金百七十五万円が支払われるほどの重傷で、一時は競走馬になれるかどうかも危ぶまれた。デビューの予定は大きくずれ込んだ。 初陣は年の暮れ、12月11日の阪神・芝1600m。鞍上は安藤勝己。単勝1.4倍の一番人気に応え、上がり33秒9で二着に0.2秒差をつけた。 その翌日、同じ阪神で阪神ジュベナイルフィリーズが行われている。勝ったのは、同じ栗東・松田博資厩舎の無敗の芦毛、レーヴディソールだった。厩舎の桜は、その馬のものだと見られていた。
アンカツと、桜花賞という傷
手綱を任された男には、この競走に因縁があった。 安藤勝己は1976年に笠松でデビューし、通算十九回、その競馬場の最多勝利騎手になった。中央と地方の交流が大きく広がった1995年、地方所属のまま桜花賞へ乗り込む。相棒のライデンリーダーは無敗のまま報知杯4歳牝馬特別を制した牝馬で、桜花賞では単勝一番人気に支持された。結果は四着。芝の流れを読みきれなかったと、のちに本人が振り返っている。その不完全燃焼が、彼を国外にまで芝の騎乗経験を求めに行かせた。 2003年にJRAへ移籍。2006年キストゥヘヴン、2007年ダイワスカーレット、2009年ブエナビスタと、彼はこの競走を三度勝った。 年が明け、一戦一勝のマルセリーナはシンザン記念に出た。レッドデイヴィスやオルフェーヴルに離されての三着だが、牝馬では最先着である。2月5日のエルフィンステークスでは、一番人気のノーブルジュエリーを差し切った。ただデビューから馬体重が減り続けていた。陣営はトライアルを使わず、二か月を調整に充てて本番へ直行することを決める。
四月十日、仁川
その春、日本の競馬は形を変えていた。3月11日の東北地方太平洋沖地震で中山競馬場は開催を取りやめ、春の重賞は次々に西へ振り替えられ、皐月賞は一週間遅らせて東京で行われることになった。桜花賞は、日付も舞台も動かないまま4月10日に来た。 厩舎の主役は、そこにいなかった。レーヴディソールは一週前追い切りのあとに右前脚の骨折が判明し、桜花賞を離脱していた。十八頭立ての一番人気は、前年の阪神ジュベナイルフィリーズ二着ホエールキャプチャ。マルセリーナは単勝3.8倍の二番人気だった。 四枠八番。ある程度出して行こうと考えていた安藤は、発馬直後に外から寄せられて内へ押し込まれる。向正面では後方から三番目のインコース。松田博資は、その位置取りを見て一度は駄目だと思ったと、レース後に明かしている。 四コーナーから直線へ。前は先頭集団の壁で完全にふさがれていた。それが、阪神名物の坂の下でわずかに開く。 「(馬群の)開いたところを鋭い脚で抜けてくれた」[^1] 1分33秒9。ホエールキャプチャに四分の三馬身。さらに四分の三馬身差の三着には、同じ松田厩舎のトレンドハンターが入った。 ディープインパクトの初年度産駒による、初めてのGI制覇だった。安藤勝己は桜花賞四勝目——史上二位の記録であり、五十一歳でのこの一冠は、それまでのクラシック競走の最年長勝利記録を更新するものだった。松田博資にとってはベガ、ブエナビスタに続く三勝目。ライデンリーダーで届かなかった桜が、十六年後に四つ目として咲いた。
出典:スポーツナビ「ディープの娘、飛んだ! マルセリーナ桜の女王に=桜花賞」2011年4月10日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201104130002-spnavi、閲覧日:2026年7月30日。
府中の二千四百と、秋の淀
5月22日、優駿牝馬。単勝2.2倍の一番人気に推された。いつもどおり後方で待機し、直線は大外から追い上げたが、四着。勝ったエリンコートは、桜花賞に登録しながら抽選から漏れ、その同じ日に阪神の忘れな草賞を勝って権利をつかんだ馬だった。 秋はローズステークスから。福永祐一と新しく組んだが折り合いを欠いて六着。三番人気で臨んだ秋華賞は、後方で脚を溜めながら直線で伸びず七着。勝ったのはアヴェンチュラだった。 10月20日、松田はクリストフ・ルメールとの新コンビでマイルチャンピオンシップへ向かうと表明する。だがルメールにはサプレザの依頼があり、一週間後、鞍上はまた安藤に戻った。九番人気で六着。暮れの阪神カップはルメールが手綱を取って四着。 三歳の八戦は、二つの勝ち鞍を残して終わった。そのうちの一つが、四月十日だった。
乗り替わりの季節
四歳の一年は、鞍上が定まらなかった。 阪神牝馬ステークスはミルコ・デムーロで、逃げるクィーンズバーンを捉えきれず二着。ヴィクトリアマイルは騎乗予定だった岩田康誠が騎乗停止となり、急遽田辺裕信に替わる。後方から33秒5で追い上げ、ホエールキャプチャの三着に入った。同じ鞍上で臨んだ安田記念は疲れが抜けきらず十七着。 秋、府中牝馬ステークスでようやく岩田が跨ると、メンバー最速の32秒9で伸びた。それでも最重量の斤量が響いて五着。マイルチャンピオンシップも道中で前が詰まり、直線はやはりメンバー最速の脚を使いながら十一着。暮れの阪神カップは、乗るはずだったデムーロが尿管結石を発症して北村友一に替わり、直線で進路が空かないまま十二着に終わった。 六戦して、一度も勝てなかった。 そしてこの年の11月24日、安藤勝己は京阪杯のパドトロワを最後にレースから姿を消す。翌2013年1月31日、納得のいく騎乗ができなくなったことを理由に騎手免許を返上した。最後の騎乗で馬を動かしきれなかったことが引退の決め手だったと、のちに本人が明かしている。中央で挙げたGI二十二勝の、最後の一つが、あの四月十日だった。
二年二か月
五歳の年、手綱の多くは川田将雅が取った。 4月の阪神牝馬ステークスは六着。ヴィクトリアマイルと京王杯スプリングカップに登録したが、いずれも収得賞金が足りずに除外された。桜花賞馬が、出走枠に入れないまま春を過ごした。5月のメイステークスも六着。 6月9日、阪神のマーメイドステークス。ハンデは五十六キロ、十四頭のトップハンデである。単勝12.4倍の七番人気だった。中団を追走し、直線で逃げるアグネスワルツを捉えて、先頭でゴール板を過ぎた。桜花賞から二年二か月ぶりの一着。この競走が2006年にハンデ戦となって以降、トップハンデを背負って勝った馬は、それまで一頭もいなかった。 桜の日、安藤はこの馬をこう評していた。「使うたびに成長して、力をつけていっているところがこの馬の良さですね」[^1] 乗り手が何度替わっても、その見立てだけは生きていた。
出典:スポーツナビ「ディープの娘、飛んだ! マルセリーナ桜の女王に=桜花賞」2011年4月10日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201104130002-spnavi、閲覧日:2026年7月30日。
千歳へ帰る
夏、函館のクイーンステークスに二番人気で出て四着。8月の札幌記念は、札幌競馬場がスタンドの改築工事に入っていたため函館で行われ、重馬場の泥のなかで、勝ったトウケイヘイローから4秒2離された九着だった。10月の府中牝馬ステークスは七着。 11月10日、京都のエリザベス女王杯。メイショウマンボが勝ったそのレースを十五着で走り終え、四日後の11月14日、競走馬登録を抹消された。二十二戦四勝、獲得賞金二億六千九百三十八万五千円。生まれた千歳の社台ファームへ戻り、繁殖牝馬になった。 一年下の半弟グランデッツァは、姉が桜を勝った翌春にスプリングステークスでディープブリランテを差し切り、皐月賞では一番人気に推されて五着。のちに七夕賞も勝ち、重賞を三つ取った。半姉ジターナの孫には、2025年の京成杯を勝ったニシノエージェントがいる。 自身の産駒からは、二番仔ラストドラフト(父ノヴェリスト)が2019年の京成杯を、三番仔ヒートオンビート(父キングカメハメハ)が2023年の目黒記念を勝った。半姉の孫と自分の仔とで、この一族は京成杯を二つ持っている。八番仔まで、母の仕事は続いている。 イタリアの芝を走り回った牝馬が日本で産んだ娘は、2011年の春の仁川で、ふさがっていた進路がほんの一瞬だけ開いた、その隙間に応えた。その一度が、ディープインパクトという種牡馬にとって最初のGIになる。千歳へ帰ったその馬は、いま十八歳になった。
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