名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ママコチャのイメージビジュアル
ママコチャMama Cocha
Mama Cocha

ママコチャ

通算成績28戦7勝

獲得賞金52,386万円

生年月日 2019.04.05(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ママコチャの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
5 JpnⅠさきたま杯 浦和 ダ1400 4人気 武豊 1:25.9 上り37.2映像
5 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 3人気 川田将雅 1:11.5 上り36.7
9 GI高松宮記念 中京 芝1200 4人気 川田将雅 1:07.3 上り32.8映像
4 GIIIオーシャンS 中山 芝1200 3人気 川田将雅 1:07.1 上り34.3映像
2 JpnⅠJBCスプリント 船橋 ダ1000 1人気 川田将雅 0:59.0 上り35.7映像
6 GIスプリンターズS 中山 芝1200 3人気 岩田望来 1:07.3 上り33.2映像
2 GII産経賞セントウルS 阪神 芝1200 2人気 岩田望来 1:07.5 上り34.1映像
2 GII京王杯スプリングカップ 東京 芝1400 1人気 川田将雅 1:18.5 上り33.1映像
3 GI高松宮記念 中京 芝1200 6人気 川田将雅 1:08.2 上り33.8映像
1 GIIIオーシャンS 中山 芝1200 1人気 川田将雅 1:07.1 上り33.1映像
5 GII阪神カップ 京都 芝1400 4人気 川田将雅 1:20.3 上り34.1映像
4 GIスプリンターズS 中山 芝1200 2人気 川田将雅 1:07.1 上り33.9映像
2 GII産経賞セントウルS 中京 芝1200 4人気 鮫島克駿 1:07.8 上り33.9映像
8 GI高松宮記念 中京 芝1200 3人気 川田将雅 1:09.9 上り34.8映像
5 GII阪神カップ 阪神 芝1400 1人気 川田将雅 1:19.5 上り34.9映像
1 GIスプリンターズS 中山 芝1200 3人気 川田将雅 1:08.0 上り34.5映像
2 GIIITV西日本北九州記念 小倉 芝1200 1人気 鮫島克駿 1:07.4 上り33.9映像
1 L安土城S 京都 芝1400 1人気 鮫島克駿 1:19.0 上り33.0
9 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1600 3人気 松山弘平 1:34.6 上り34.7映像
5 GIIIターコイズS 中山 芝1600 1人気 松山弘平 1:33.7 上り34.7映像
1 納屋橋S 中京 芝1600 1人気 松山弘平 1:33.4 上り33.2
1 豊栄特別 新潟 芝1600 1人気 松山弘平 1:31.7 上り33.3
1 3歳以上1勝クラス 阪神 芝1400 1人気 松山弘平 1:20.3 上り34.0
2 LエルフィンS 中京 芝1600 3人気 岩田望来 1:34.2 上り34.8
3 GIIIKBSファンタジーS 阪神 芝1400 3人気 藤岡佑介 1:21.5 上り34.8映像
1 2歳未勝利 阪神 芝1400 1人気 松山弘平 1:20.9 上り34.9
3 2歳未勝利 中京 芝1600 2人気 岩田望来 1:36.9 上り35.9
8 2歳新馬 阪神 芝1400 2人気 福永祐一 1:24.8 上り34.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ママコチャの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
クロフネKurofuneフレンチデピュティFrench DeputyDeputy Minister
Mitterand
ブルーアヴェニューBlue AvenueClassic Go Go
Eliza Blue
ブチコキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
シラユキヒメサンデーサイレンスSunday Silence
ウェイブウインドWave Wind
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牝馬。父クロフネ、母ブチコ。主な勝ち鞍はスプリンターズS・オーシャンS。

海の女神 ― 白毛一族に生まれた鹿毛

2019年、ノーザンファームに一頭の鹿毛の牝馬が生まれた。母はブチコ。JRAのダートを4勝した馬だが、その本当の値打ちは血の方にあった。ブチコの母はシラユキヒメ――日本の白毛馬の物語をほとんど一頭で背負ってきた、あの一族の祖である。そして全姉には、白毛のままGIを駆け抜けた怪物がいた。ソダシ。阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞、ヴィクトリアマイルを制した、競馬史上初の白毛GIホース。 だが、妹は白くなかった。鹿毛で生まれたこの馬には、姉のような華やかな話題性も、生まれながらの注目もなかった。馬名はインカ神話の海の女神ママ・コチャ。白い姉の影で、海の名を持つ鹿毛は、自分の物語を一から探さねばならなかった。

遠回りの距離 ― マイルから1200mへ

デビューから、この馬は『姉の妹』として扱われた。管理する池江泰寿厩舎は、ソダシのイメージから当初は中距離路線を主に使う。2021年6月の新馬戦は8着と躓いたが、秋に未勝利を勝つと、明けて1勝クラスから3連勝で頭角を現す。だがマイル路線では重賞の壁を越えられなかった。2022年暮れのターコイズS(GⅢ・芝1600)は1番人気で5着、2023年春の阪神牝馬S(GⅡ・芝1600)も9着。距離が、どこか合っていなかった。 転機は短縮にあった。1400m、そして1200mへ。スプリントに脚を向けると、馬は水を得たように動き出す。安土城S(L・芝1400)を快勝し、夏の北九州記念(GⅢ)で2着。のちに池江師はこう振り返っている――「1200mを早くに使っていれば、とうに重賞は勝っていたと思う」。姉の影が、妹を遠回りさせていた。だがその遠回りの果てに、海の女神は自分の海を見つけた。

ハナ差の女王 ― 2023スプリンターズステークス

2023年10月1日、中山芝1200m。第57回スプリンターズステークス。ママコチャは3番人気。手綱を取るのは川田将雅。重賞未勝利の牝馬が、いきなり短距離の頂に挑んでいた。 好位の3番手を進み、直線で堂々と抜け出す。だが残り、内からマッドクールが矢のように伸びてきた。二頭の影が重なり、ゴール板を一完歩で分け合う。ハナ差。前に出ていたのは、ママコチャだった。1分08秒0。重賞を一つも勝たないまま、いきなりGIを掴むという稀な戴冠だった。 川田は安堵を隠さなかった。「最後は際どくなりましたので、なんとか粘ってくれ、と思いながら、無事に勝ち切ってくれました」。そして馬への信頼を口にする。「とても良い馬だと思ってはいた。追い切りで乗って、これなら十分チャンスがあるなと思える背中をしていました」。白い姉が切り拓いた一族の血が、こんどは鹿毛の妹を通して、最速の称号にたどり着いた。この年、ママコチャはJRA賞最優秀短距離馬に初めて選ばれる。

頂を知った後で ― 王者の試練

頂は、守る方が難しい。女王となったママコチャは、翌2024年から短距離の最前線で戦い続けた。だがその道は険しかった。3月の高松宮記念(GⅠ・芝1200)は3番人気で8着。9月のスプリンターズS連覇も、岩田望来に手綱が替わった2025年を含め、4着・6着と頂には届かなかった。高松宮記念には毎年挑み、2025年は3着、2026年は9着。中京の坂と展開は、この馬に最後まで微笑まなかった。 それでも王者は脆くなかった。京王杯スプリングC2着、セントウルS2着、大井のJBCスプリント(JpnⅠ)2着と善戦を重ね、距離を問わず一線級で戦える地力を示し続ける。GIを一度しか勝てなかった事実より、頂を知った馬が一度も戦列から消えず、人気を背負って走り続けたことの方が、この牝馬の芯の強さを語っていた。

もう一つの頂点 ― 2025オーシャンステークスと血の継承

2025年3月1日、中山芝1200m。オーシャンステークス(GⅢ)。ママコチャは1番人気に応え、川田将雅とのコンビで完勝する。勝ち時計1分07秒1はレコードタイ。スプリンターズSのあと長く重賞から遠ざかっていた女王が、最も得意とする中山の1200mで、改めて自分の場所を取り戻した一戦だった。 この勝利は、鞍上にとっても節目だった。川田はこのオーシャンS制覇で同レース歴代最多タイの3勝目を挙げ、2006年から20年連続のJRA重賞制覇という金字塔を打ち立てる。名手の長いキャリアの一里塚を、海の女神が運んだ。 通算27戦7勝。白毛の姉ソダシが一族に光をもたらし、鹿毛の妹ママコチャが短距離の頂を掴む。シラユキヒメから続く一族は、毛色を違えた二頭の姉妹で、芝の表舞台に二つの異なる物語を刻んだ。海の名を持つ鹿毛は、姉の影で始まり、自分だけの海で頂を掴んでみせた。

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