名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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マジェスティバイオのイメージビジュアル
マジェスティバイオMajesty Bio
Majesty Bio

マジェスティバイオ

通算成績28戦8勝

獲得賞金377万円

生年月日 2007.03.09(平成19年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
マジェスティバイオの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
OPイルミネーションJS 中山 障3570 1人気 横山義行
3 JGⅠ中山大障害 中山 障4100 1人気 山本康志 4:49.4 上り14.1映像
1 OPイルミネーションJS 中山 障3570 1人気 山本康志 4:02.7 上り13.6
9 JGⅡ東京ハイジャンプ 東京 障3110 1人気 柴田大知 3:28.4 上り13.4
1 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 1人気 柴田大知 5:02.9 上り14.3映像
1 OPペガサスジャンプS 中山 障3350 1人気 柴田大知 3:51.5 上り13.8
1 JGⅠ中山大障害 中山 障4100 1人気 山本康志 4:44.2 上り13.9映像
2 OPイルミネーションJS 中山 障3570 1人気 山本康志 4:11.4 上り14.1
1 JGⅡ東京ハイジャンプ 東京 障3300 2人気 柴田大知 3:42.3 上り13.5
3 新潟ジャンプS 新潟 障3250 1人気 柴田大知 3:31.0 上り13.0
2 障害3歳以上OP 新潟 障2850 1人気 柴田大知 3:05.2 上り13.0
1 東京ジャンプS 東京 障3300 8人気 柴田大知 3:40.4 上り13.4
1 障害4歳以上未勝利 東京 障3000 2人気 柴田大知 3:26.0 上り13.7
2 障害4歳以上未勝利 東京 障3000 2人気 柴田大知 3:26.5 上り13.8
4 障害4歳以上未勝利 阪神 障2970 4人気 柴田大知 3:23.0 上り13.7
10 3歳以上500万下 小倉 ダ1700 5人気 赤木高太郎 1:47.1 上り38.1
7 3歳以上500万下 東京 ダ2100 8人気 村田一誠 2:14.5 上り39.8
12 3歳以上500万下 東京 ダ1600 12人気 田中博康 1:39.0 上り37.1
9 日田特別 小倉 芝2000 8人気 鮫島良太 2:03.1 上り36.3
8 3歳以上500万下 新潟 ダ1800 3人気 松岡正海 1:54.0 上り39.2
6 3歳500万下 京都 ダ1800 1人気 池添謙一 1:53.5 上り38.3
2 3歳500万下 阪神 ダ1800 4人気 池添謙一 1:52.0 上り37.3
4 3歳500万下 阪神 ダ1800 9人気 松田大作 1:54.1 上り38.0
5 3歳500万下 京都 ダ1800 10人気 鮫島良太 1:54.8 上り37.5
7 3歳500万下 京都 ダ1800 2人気 岩田康誠 1:55.1 上り38.8
1 2歳未勝利 阪神 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:56.3 上り38.7
3 2歳未勝利 阪神 ダ1800 4人気 内田博幸 1:56.8 上り37.1
6 2歳新馬 札幌 芝1800 8人気 松田大作 1:52.6 上り36.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
マジェスティバイオの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
オペラハウスOpera HouseSadler's WellsNorthern Dancer
Fairy Bridge
ColorspinHigh Top
Reprocolor
ハイグレードバイオヘクタープロテクターHector ProtectorWoodman
Korveya
ディシイペイティングDissipatingMajestic Light
Squander
STORY

旅程 — この馬の物語

2007年生まれの鹿毛の牡馬。父オペラハウス、母ハイグレードバイオ。

平取の鹿毛と、三代母スクワンダー

2007年3月9日、北海道平取町の清水牧場に一頭の鹿毛が生まれた。父オペラハウスは英国でキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスなどGIを3勝し、日本ではテイエムオペラオーメイショウサムソンを送り出した種牡馬。母ハイグレードバイオは中央で2戦し、勝てないまま繁殖に上がった牝馬だった。 血の奥行きは母の側にある。母の母はアメリカ産のディシイペイティング、その父がマジェスティックライト。さらにその母、つまりこの鹿毛の三代母スクワンダーは、高松宮記念を勝ったキングヘイローの三代母でもある。スクワンダーは浪費する、ディシイペイティングは散らす——牝系には、そういう意味の名が並んでいた。 勝負服は青地に緑の一本輪。マジェスティバイオと名付けられたこの馬が跳ぶことを覚えるまでには、まだ4年近くかかる。

平地の十三戦、そして転厩

デビューは2009年8月9日、札幌の芝1800m。松田大作を背に8番人気で6着だった。年末に阪神へ矛先を移し、ダート1800mの2歳未勝利で3着。3戦目となる12月20日、岩田康誠と組んで1番人気に応え、2着に1秒2の差をつけて初勝利を挙げる。 そこから先が長かった。500万下では京都、阪神、新潟、小倉、東京と場所を替えて走り、ダートも芝も、1600mも2100mも試された。最高着順は2010年4月17日、阪神で池添謙一と組んだ2着。平地の成績は13戦1勝で止まる。 2010年秋、栗東の藤原英昭厩舎から美浦の田中剛厩舎へ移った。関西から関東へ。転厩後の平地3戦は12着、7着、10着。年が明けると、この馬の名は障害の出馬表にあった。

障害の名手が開いた厩舎

田中剛は、跳ぶことを知っている人だった。1979年に騎手免許を取り、通算364勝のうち207勝が障害。優秀障害騎手賞を5度、最多勝利障害騎手賞を3度受け、中山大障害はカチウマタロー、オンワードボルガ、シンコウアンクレー、ノーザンレインボーで4度制している。1995年には日本人騎手として初めてグランドナショナルに騎乗した。 その騎手生活は2009年に終わる。怪我からの復帰にあたっての精密検査で変形性頚椎症と診断され、主治医から生命の危険を指摘された。障害免許を返上して平地に専念する道も考えたというが、7月に引退を発表。10月31日、東京の障害未勝利戦のあとに引退式が行われた。 翌2010年10月21日、美浦に田中剛厩舎が開業する。その厩舎に、栗東から移ってきた3歳馬がいた。平地でさらに3戦を使ったあと、師はこの馬を障害に向ける。障害の名手のもとで、平地に行き詰まった一頭が跳ぶことを覚えた——あとから見れば、筋の通った巡り合わせだった。

十四年ぶりの重賞 ― 東京ジャンプS

2011年4月2日、阪神。障害4歳以上未勝利、鞍上は柴田大知。初めての障害戦は4着だった。4月23日の東京でわずかに及ばず2着、続く5月7日の東京で障3000mを1秒0差で勝ち上がる。障害3戦目のことである。 柴田大知は1996年のデビュー。翌1997年にエアガッツでラジオたんぱ賞を勝ったあと、重賞から遠ざかっていた。平地の勝ち鞍が年間ゼロという年が続き、2006年には年間の騎乗が52回まで落ち込んでいる。 6月11日、東京ジャンプステークス。重馬場の障3300m、単勝36.4倍の8番人気。マジェスティバイオはマサノブルースを4馬身突き放して勝った。柴田にとっては14年ぶりの重賞であり、障害重賞は初めて。田中剛にとっては開業して初めての重賞で、それが自分の生きてきた障害だった。師は、調教師になってひとつ勝つことの難しさを痛感していたと喜びを語り、鞍上の仕事ぶりを称えている。 その3週間後、柴田はマイネルネオスで中山グランドジャンプを制してGIを初めて勝ち、勝利騎手インタビューで涙を流した。二頭の障害馬が、ひとりの騎手の長い停滞を同じ夏に終わらせた。

府中を差し切る ― 東京ハイジャンプ

夏は勝ち切れなかった。7月24日、新潟の障害オープンでクリーバレンにわずかに及ばず2着。8月20日の新潟ジャンプステークスも、同じクリーバレンの3着。どちらも1番人気だった。 10月15日、東京ハイジャンプ。稍重の障3300m、2番人気。今度は最後にワシャモノタリンを捉え、0秒4差で差し切ってJ・GIIを獲る。障害に転じてまだ半年あまり、未勝利戦から数えて7戦目だった。暮れの中山大障害へ向かう資格は、これで十分に揃った。

ピンチヒッターの大障害

12月3日、中山。大障害の前哨戦、イルミネーションジャンプステークスで手綱が替わる。柴田大知が同じレースにマイネルネオスで騎乗するためで、代わって鞍上に座ったのは山本康志。1995年のデビュー以来、障害を主戦場にしてきた騎手である。不良馬場の障3570m、マジェスティバイオは1番人気に推されながら、ディアマジェスティに1秒4離された2着に敗れた。 12月24日、中山大障害。10頭立て。柴田はこの日もマイネルネオスの鞍上にあり、マジェスティバイオの手綱はふたたび山本が取った。それでもこの馬は1番人気に支持される。障4100m。道中は後方に控え、直線で鋭く伸びて、前を行くディアマジェスティをゴール寸前で半馬身抜き去った。4分44秒2。 山本康志はデビュー17年目でJ・GIを初めて勝った。1999年の中山大障害でこの舞台に初めて乗ってから、12年が経っていた。田中剛にとっても開業後初のGIで、騎手時代の4勝と合わせ、中山大障害を騎手と調教師の双方で制したのは史上7人目となる。送り出すとき、師は鞍上にこう声をかけていた。「1年で1回しか跳べない障害もあるから楽しんでこい」[^1] 翌日の中山ではオルフェーヴルが有馬記念を勝った。年が明けて、JRA賞の最優秀障害馬にはマジェスティバイオが選ばれた。

出典:スポーツニッポン「【中山大障害】バイオ快勝!うれしいG1初制覇」2011年12月25日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2011/12/25/kiji/K20111225002310090.html 、閲覧日:2026年7月30日。

不良の中山を八馬身

2012年3月24日、ペガサスジャンプステークス。重馬場の障3350mを勝って始動した。鞍上は柴田大知に戻っている。 4月14日、中山グランドジャンプ。不良馬場、13頭立ての1番人気。障4250m——中山大障害よりさらに150m長い旅程を、この馬は2着バアゼルリバーに8馬身の差をつけて終えた。勝ち時計5分02秒9。前年暮れの中山大障害に続く、J・GI連勝である。 柴田大知にとっては前年のマイネルネオスに続く中山グランドジャンプ連覇、田中剛にとっては秋春連続のJ・GI制覇だった。この年の2月末には稲葉隆一調教師が定年で厩舎を解散し、3月からマイネルネオスも田中厩舎の所属になっている。2011年にJ・GIを勝った2頭が、同じ厩舎に並んで繋がれることになった。

百五十六票

秋は思うようにいかなかった。10月14日、ちょうど半年ぶりの実戦となった東京ハイジャンプは1番人気で9着。勝ったデンコウオクトパスから1秒3離された。 12月1日、イルミネーションジャンプステークス。ふたたび山本康志と組み、4分02秒7で勝つ。前年に敗れたレースを取り返して、暮れの大一番へ向かった。 12月22日、中山大障害。稍重の15頭立て、1番人気。だがこの日はマーベラスカイザーが強く、0秒6差の3着に終わる。J・GI3勝目はならなかった。 年が明け、JRA賞の投票が行われた。最優秀障害馬に選ばれたのは、中山大障害を勝ったマーベラスカイザーではなく、そこで3着に敗れたマジェスティバイオだった。156票対121票。2年連続の戴冠である。

二〇一三年十一月三十日

2013年、この馬は春も夏も競馬場に現れなかった。復帰したのは11月30日、中山のイルミネーションジャンプステークス。前年暮れの中山大障害から11か月あまりが空いていた。15頭立ての1番人気、馬体重は518キロで前走から4キロ増。鞍上は横山義行。 3周目の5号障害で転倒し、競走中止。右前浅屈腱断裂と診断され、予後不良となって安楽死の措置がとられた。6歳。デビューから4年3か月、跳ぶようになってからは2年半あまりだった。 生涯28戦8勝。うち障害は15戦7勝。J・GIを2つ、J・GIIとJ・GIIIをひとつずつ勝ち、獲得賞金は3億77万5000円。JRA賞最優秀障害馬に2度選ばれた。 三代母の名は、浪費を意味する。その血を引いた馬は、六歳で閉じた生涯で何ひとつ浪費しなかった。田中剛の最初の重賞と最初のGIを運び、山本康志が17年目に届いたGIを背負い、柴田大知の14年の空白を埋めた。一年に一回しか跳べない障害もある、と師は言った。そのとおりだった。だからこの馬は、跳べるときに跳んだ。

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