名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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マッドクールのイメージビジュアル
マッドクールMad Cool
Mad Cool

マッドクール

通算成績17戦6勝

獲得賞金36,083万円

生年月日 2019.03.29(令和元年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
マッドクールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 GI安田記念 東京 芝1600 10人気 坂井瑠星 1:33.3 上り34.9映像
6 GI高松宮記念 中京 芝1200 4人気 坂井瑠星 1:08.7 上り34.4映像
2 GII阪神カップ 京都 芝1400 6人気 坂井瑠星 1:20.2 上り34.2映像
12 GIスプリンターズS 中山 芝1200 3人気 坂井瑠星 1:07.7 上り34.3映像
11 GIチェアマンズSP シャティン 芝1200 3人気 坂井瑠星
1 GI高松宮記念 中京 芝1200 6人気 坂井瑠星 1:08.9 上り33.7映像
8 GI香港スプリント シャティン 芝1200 2人気 C.デムーロ 映像
2 GIスプリンターズS 中山 芝1200 6人気 坂井瑠星 1:08.0 上り34.4映像
9 GIIICBC賞 中京 芝1200 1人気 坂井瑠星 1:08.2 上り34.1映像
1 L春雷S 中山 芝1200 1人気 D.レーン 1:08.8 上り35.0
3 GIIIシルクロードS 中京 芝1200 1人気 藤岡康太 1:07.4 上り33.6映像
1 知立S 中京 芝1200 1人気 藤岡康太 1:07.2 上り33.3
1 知多特別 中京 芝1200 1人気 坂井瑠星 1:07.7 上り33.9
1 大牟田特別 小倉 芝1200 1人気 坂井瑠星 1:06.9 上り33.7
1 3歳未勝利 中京 芝1400 2人気 坂井瑠星 1:20.4 上り34.4
3 3歳未勝利 阪神 ダ1400 2人気 坂井瑠星 1:25.9 上り38.4
3 3歳新馬 中京 芝1600 1人気 池添謙一 1:37.5 上り34.9

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
マッドクールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
Dark AngelAcclamationRoyal Applause
Princess Athena
Midnight AngelMachiavellian
Night At Sea
Mad About YouIndian RidgeAhonoora
Hillbrow
Irresistible JewelデインヒルDanehill
In Anticipation

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの芦毛の牡馬。父Dark Angel、母Mad About You。主な勝ち鞍は高松宮記念。

音楽祭の名を負って ― 名の由来と血

マッドクール。マドリードの夏を毎年沸かせる音楽フェスティバル、その名をそのまま負って生まれた芦毛の牡馬である。 2019年3月29日、アイルランド。生産は名門モイグレアスタッド。父はヨーロッパで一時代を築いたスプリント系種牡馬ダークエンジェル、母はマッドアバウトユー。血の格は母系にある。母マッドアバウトユーは現役時代、愛1000ギニーとプリティポリーステークスで二着、マルセルブサック賞とモイグレアスタッドステークスで三着と、欧州のGI戦線をたびたび賑わせた一流の牝馬だった。勝ち切れなかったGIの舞台に、この母は幾度も手が届きかけていた。 海を渡り、サンデーレーシングの所有馬として栗東・池添学厩舎に入る。母が届かなかった大レースの頂を、その産駒が異国で掴むことになる——それはまだ、誰も知らない先の話だ。

坂井瑠星との約束 ― 未勝利からの誓い

2022年1月、中京の芝1600メートル。デビュー戦は池添謙一を背に三着。距離とダートを試した二戦目も三着に沈んだが、三戦目、中京の芝1400メートルでようやく初勝利を挙げる。手綱を取っていたのは坂井瑠星。ここから、一頭と一人の道が重なっていく。 未勝利を勝ったその時から、坂井は陣営とともに一つの目標を口にしていた——高松宮記念。まだオープンにも上がっていない三歳馬にとって、それは早すぎる夢のようでもあった。だが馬は応えた。夏の小倉で大牟田特別、秋の中京で知多特別、暮れの中京で知立ステークスと、1200メートルを舞台に三連勝。三歳のうちに三勝クラスまで一気に駆け上がった。距離を1200に絞ったスプリンターの輪郭が、この年のうちにはっきりと見えていた。

重賞の壁と、ハナ差の悔し ― 二〇二三年

2023年、重賞の扉を叩く。一月のシルクロードステークスは一番人気に推されて三着。四月の春雷ステークスは重馬場をダミアン・レーンが導いて快勝し、力のあるところを見せた。だが夏のCBC賞では一番人気に応えられず九着に大敗する。スプリント路線は甘くない。栄光と取りこぼしが、交互に訪れた。 秋、初めてのGI。10月のスプリンターズステークスで、マッドクールは好位から抜け出し、一度は先頭に立った。ゴールはもう目の前だった。だが、外を回って追いすがったママコチャに、ハナ差だけ捉えられた。二着。勝利にこれ以上ないほど近づいて、あと一完歩が届かなかった。年末には香港スプリントに遠征したが、シャティンの千二百で八着に終わる。悔しさだけを土産に、この馬は年を越した。

雪辱の中京 ― 二〇二四年高松宮記念

2024年3月24日、中京。雨に濡れた重馬場。単勝は6番人気、9.6倍。前走までの評価は、決して高くなかった。 逃げるビクターザウィナーを、坂井は内の前目でぴたりと見る。理想の位置だった。直線、内ラチ沿いのわずかな隙間を突いて、芦毛が伸びる。先頭に立った。だが後ろから、あのナムラクレアが猛然と迫ってくる。前年秋、勝利をこぼした側にいた馬が、今度は差される側に回った。凌げるか——。 アタマ差。今度は、こぼさなかった。第54回高松宮記念、マッドクールが最速の称号を掴んだ。母マッドアバウトユーが幾度も手を伸ばして届かなかったGIのタイトルを、その子が異国の春に手にした瞬間だった。未勝利を勝った日に交わした約束は、二年越しで果たされた。坂井にとっても、この馬と積み上げてきた時間の、確かな結実だった。

頂の後の翳り ― 二〇二四〜二五年

王者になっても、スプリントの一年は苛烈だった。四月の香港・チェアマンズスプリントプライズは十一着。秋、連覇のかかったスプリンターズステークスは三番人気に支持されながら十二着に沈む。1200メートルの一戦は、少しの狂いも許さない。 それでも、この馬は簡単には終わらなかった。暮れの阪神カップ、距離を1400に延ばした一戦で六番人気ながら二着に好走。相手はまたもナムラクレア。好敵手との差は、わずか0.1秒だった。年が明けても走る意志は衰えず、2025年の高松宮記念に連覇を期して臨む。だが六着。続く安田記念は、マイルの距離で十着に終わった。この一戦が、結果として最後の走りになった。

新冠へ ― 走り終えて

2025年10月、マッドクールはJRAの登録を抹消された。左前脚の繋靭帯に腫れが見つかったための引退だった。派手な連勝で駆け上がった三歳、栄光と紙一重の悔しさを味わった四歳、頂を掴んだ五歳、そして翳りとともに走り切った六歳。17戦6勝。そのうちの一つが、最速を証すGIだった。 繋養先は、北海道新冠の優駿スタリオンステーション。母マッドアバウトユーが欧州のGIに幾度も手を伸ばした血は、海を渡って一度は頂に届き、今度は日本の地で次の世代へ受け継がれていく。名の由来となった夏の音楽祭が毎年きまって幕を開けるように、この芦毛が残していく物語も、まだ続きを持っている。

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