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リスグラシュー
通算成績22戦7勝
獲得賞金12億1,720万円
生年月日 2014.01.18(平成26年)毛色 黒鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 2人気 | D.レーン | 2:30.5 | 上り34.7 | 映像 | |
| 1 | GIコックスプレート | ムーニーバレー 芝2040 | 1人気 | D.レーン | 2:04.2 | — | 映像 | |
| 1 | GI宝塚記念 | 阪神 芝2200 | 3人気 | D.レーン | 2:10.8 | 上り35.2 | 映像 | |
| 3 | GIクイーンエリザベス2世カップ | シャティン 芝2000 | 2人気 | O.マーフィー | 1:58.9 | — | 映像 | |
| 2 | GII金鯱賞 | 中京 芝2000 | 5人気 | A.シュタルケ | 2:00.3 | 上り34.1 | 映像 | |
| 2 | GI香港ヴァーズ | シャティン 芝2400 | 2人気 | J.モレイラ | 2:26.5 | — | 映像 | |
| 1 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 3人気 | J.モレイラ | 2:13.1 | 上り33.8 | 映像 | |
| 2 | GII府中牝馬ステークス | 東京 芝1800 | 2人気 | M.デムーロ | 1:44.7 | 上り32.6 | 映像 | |
| 8 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 6人気 | 武豊 | 1:32.1 | 上り34.2 | 映像 | |
| 2 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 1人気 | 武豊 | 1:32.3 | 上り32.9 | 映像 | |
| 3 | GIIサンスポ杯阪神牝馬S | 阪神 芝1600 | 1人気 | 武豊 | 1:34.8 | 上り33.3 | 映像 | |
| 1 | GIII東京新聞杯 | 東京 芝1600 | 3人気 | 武豊 | 1:34.1 | 上り33.6 | 映像 | |
| 8 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 7人気 | 福永祐一 | 2:14.7 | 上り33.7 | 映像 | |
| 2 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 4人気 | 武豊 | 2:00.4 | 上り36.2 | 映像 | |
| 3 | GII関西TVローズS | 阪神 芝1800 | 3人気 | 武豊 | 1:45.8 | 上り33.7 | 映像 | |
| 5 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 3人気 | 武豊 | 2:24.9 | 上り34.2 | 映像 | |
| 2 | GI桜花賞 | 阪神 芝1600 | 3人気 | 武豊 | 1:34.6 | 上り35.3 | 映像 | |
| 3 | GIIIチューリップ賞 | 阪神 芝1600 | 2人気 | 武豊 | 1:33.6 | 上り33.9 | 映像 | |
| 2 | GI阪神ジュベナイルフィリーズ | 阪神 芝1600 | 2人気 | 戸崎圭太 | 1:34.2 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | GIIIアルテミスS | 東京 芝1600 | 1人気 | 武豊 | 1:35.5 | 上り33.5 | 映像 | |
| 1 | 2歳未勝利 | 阪神 芝1800 | 2人気 | 中谷雄太 | 1:46.2 | 上り34.4 | — | |
| 2 | 2歳新馬 | 新潟 芝1600 | 1人気 | 中谷雄太 | 1:37.0 | 上り33.0 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ハーツクライHeart's Cry | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| アイリッシュダンス | トニービンTony Bin | |
| ビューパーダンスBuper Dance | ||
| 母リリサイドLiliside | American Post | Bering |
| Wells Fargo | ||
| Miller's Lily | ミラーズメイトMiller's Mate | |
| Lymara |
旅程 — この馬の物語
2014年生まれの黒鹿毛の牝馬。父ハーツクライ、母リリサイド。主な勝ち鞍はエリザベス女王杯・宝塚記念・コックスプレート。
名と血 ― 遅れて咲く百合
リスグラシュー。フランス語で「優美な百合」を意味する lys gracieux に由来する。母はリリサイド――その名にも、母の母ミラーズリリーにも、百合(lily)が咲いている。母系から手繰り寄せた、花の名だった。 2014年1月18日生まれの黒鹿毛の牝馬。父はディープインパクトと同じサンデーサイレンスを父に持つ晩成の名種牡馬ハーツクライ。底力と成長力を伝える血である。管理するのは栗東の矢作芳人。 百合は、開くのに時間のかかる花だ。この一頭もまた、頂に立つまでに長い助走を必要とした。優美な名を背負った牝馬が、その名にふさわしく咲ききるまでの物語が、ここから始まる。
銀の季節 ― 武豊と、あと半馬身
2016年8月、新潟の新馬戦は2着。デビューから、わずかに届かない位置取りが始まっていた。続く未勝利を勝ち、東京のアルテミスステークスを武豊とともに制してオープンの扉を開く。素質は早くから明らかだった。 だが、大舞台では「2着」が続いた。2歳暮れの阪神ジュベナイルフィリーズで2着。明けて2017年、桜花賞も2着、秋華賞も2着。武豊を背に三歳の一年を駆けながら、GIの頂はいつも半馬身先にあった。四歳でも東京新聞杯を勝つ一方、ヴィクトリアマイルで2着、府中牝馬ステークスでも2着。重賞は勝てる。しかしGIの大旗だけが、どうしても手に入らない。 やがて八つに達する二着の山――それは才を欠いたからではない。あと半馬身を詰めるための、長い長い銀の季節だった。
百合、ひらく ― モレイラのエリザベス女王杯
2018年11月11日、京都。手綱を取ったのは「魔術師」ジョアン・モレイラだった。 逃げるクロコスミアを誰もが捉えあぐねる中、リスグラシューは出走馬中ただ一頭の上がり三十三秒台――33秒8の脚を伸ばし、ゴール前でクビだけ前に出た。エリザベス女王杯。八つの銀を経て、ついに掴んだ初めてのGIだった。モレイラにとっても、これがJRA・GI初制覇となった。 優美な百合が、ようやく一輪ひらいた。もっとも、その翌月の香港ヴァーズではまた2着に敗れている。蕾はほどけた。だが、満開はまだ先だった。この年、最優秀4歳以上牝馬。物語は、本当の春をまだ知らない。
豪州の風 ― レーンと矢作
2019年、五歳。初戦の金鯱賞はシュタルケで2着、香港のクイーンエリザベス2世カップはマーフィで3着。年明けの女王は、まだ本来の力を出しきれずにいた。 そこへ矢作が手綱を託したのが、この年はじめて短期免許で来日し、日本中を席巻していた二十五歳のダミアン・レーンである。レーンは来日早々ノームコアでヴィクトリアマイルを勝ってJRA・GI初制覇を遂げ、各地で連対を量産していた。若き日に豪州の厩舎で学んだ矢作にとって、母国から来た新星に名牝を委ねるのは、ひとつの賭けであり、確信でもあった。 宝塚記念。リスグラシューとダミアン・レーンが、初めて手を組む。
紅一点 ― 二〇一九年の宝塚記念
2019年6月23日、阪神。牡馬がひしめくグランプリに、牝馬はリスグラシューただ一頭――紅一点だった。 スタートが決まり、手応えも良い。レーンは無理に抑え込まず、逃げるキセキに次ぐ二番手へと馬を進めた。前半1000mを1分ちょうどで通過するミドルペース。直線、リスグラシューはあっさりとキセキを交わし、追いすがるスワーヴリチャードも突き放して、2着に3馬身の差をつけて突き抜けた。勝ち時計2分10秒8は、阪神2200mの宝塚記念で歴代二番目の速さだった。 八つの銀を一度に払うような完勝だった。牡馬の一線級を一蹴し、初めてコンビを組んだ豪州の若手とともに、女王はようやく満開へと向かう。レーンは、この馬はまだもっと走れると言い切った。その言葉は、秋に現実となる。
海を渡る百合 ― コックスプレート
2019年10月26日、オーストラリア・ムーニーバレー競馬場。リスグラシューは三度目の海外挑戦で、再びレーンを背にコックスプレートのゲートへ入った。 外を回って徐々に位置を押し上げると、わずか173mしかない短い直線で先頭を差し切り、最後は2着に1馬身半の差をつけてゴールした。日本で調教された馬がこのレースを制したのは、史上初めてのことだった。若き日に豪州で馬を学んだ矢作が、自らの管理馬で南半球の頂を踏む――海を渡った百合が、地球の裏側で咲いた瞬間だった。 これで宝塚記念から連勝。優美な名の牝馬は、もう日本だけの女王ではなかった。
別れの中山 ― 有馬記念、最後の輝き
2019年12月22日、中山。これがラストランだと決まっていた。レーンは、この一日のためだけに交付された特例の免許で来日し、勝負服に袖を通した。 中団の内で折り合い、四コーナーへ向かって各馬がペースを上げても、リスグラシューは馬なりのまま内を回る。直線で大外へ持ち出すと、上がり最速となる34秒7の末脚が爆ぜた。2着サートゥルナーリアを5馬身突き放す、完璧な圧勝。この日、単勝1.5倍で迎えた女王アーモンドアイは9着に沈み、もう一頭の女王が引退の花道を駆け抜けた。GI3連勝、有終の美である。 矢作はレース後、別れを惜しみながらこの牝馬をこう評した。「史上まれに見る名牝です」[^1]。八つの銀を積み上げた牝馬は、最後の四戦のうち三つをレーンと組んで勝ち、すべてをGIで締めくくった。
出典:デイリースポーツ「リスグラシューありがとう 矢作師万感『史上まれに見る名牝』」2019年12月23日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2019/12/23/0012981927.shtml、閲覧日:2026年6月25日。
遅れて咲いた百合 ― 残したもの
2019年、リスグラシューは年度代表馬に選ばれた。通算22戦7勝。そのうち八つは2着だった。勝ちきれなかった銀の季節があったからこそ、最後の満開はまばゆかった。 武豊が才を育て、モレイラがGIの扉を開き、レーンが花を咲かせきった。とりわけレーンが跨った三戦は、三戦三勝――宝塚記念、コックスプレート、有馬記念、いずれもGI。短い蜜月が、一頭の牝馬を女王の座へ押し上げた。 遅咲きの百合は、才に欠けていたのではない。ただ、咲くのに時間がかかっただけだった。役目を終えた女王はいま、北の大地で母となり、父ハーツクライから受け継いだ底力の血を、次の世代へと手渡している。優美な百合の物語は、その仔たちの蹄の中で、まだ続いている。
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