名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ロジックのイメージビジュアル
ロジックLogic
Logic

ロジック

通算成績23戦3勝

獲得賞金18,594万円

生年月日 2003.03.17(平成15年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ロジックの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 OP小倉日経OP 小倉 芝1800 11人気 上村洋行 1:46.9 上り36.0
9 GIIIプロキオンS 阪神 ダ1400 13人気 上村洋行 1:24.1 上り37.0
15 OP都大路S 京都 芝1600 7人気 上村洋行 1:36.1 上り35.8
12 OP福島民報杯 福島 芝2000 5人気 北村友一 2:01.5 上り37.9
4 OP大阪城S 阪神 芝1800 8人気 上村洋行 1:46.6 上り35.2
9 GIII小倉大賞典 小倉 芝1800 12人気 北村友一 1:48.3 上り35.8
8 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 12人気 藤岡佑介 1:58.1 上り34.3
11 GIIIダービー卿チャレンジトロフィー 中山 芝1600 2人気 内田博幸 1:34.0 上り35.7
8 OP大阪城S 阪神 芝1800 6人気 安藤勝己 1:47.4 上り34.3
8 GII京都記念 京都 芝2200 7人気 C.ルメール 2:17.9 上り35.9映像
4 GIII中山金杯 中山 芝2000 11人気 内田博幸 2:04.0 上り38.9
17 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 9人気 C.ルメール 1:34.1 上り35.6映像
8 OPカシオペアS 京都 芝1800 3人気 武豊 1:47.3 上り33.4
16 GII毎日王冠 東京 芝1800 5人気 武豊 1:46.6 上り35.4映像
5 GI東京優駿 東京 芝2400 11人気 幸英明 2:28.5 上り35.4映像
1 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 3人気 武豊 1:33.2 上り35.0映像
3 GIIニュージーランドトロフィー 中山 芝1600 2人気 内田博幸 1:33.7 上り35.2
2 GIIIアーリントンC 阪神 芝1600 5人気 武豊 1:35.3 上り35.3
3 GIII日刊スポシンザン記念 京都 芝1600 2人気 武豊 1:34.9 上り35.1
2 OPさざんかS 阪神 芝1400 2人気 武豊 1:22.0 上り35.3
1 2歳500万下 京都 芝1400 2人気 武豊 1:22.7 上り34.8
3 OP萩S 京都 芝1800 3人気 安藤勝己 1:50.0 上り34.8
1 2歳新馬 京都 芝1400 1人気 武豊 1:23.7 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ロジックの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アグネスタキオンAgnes TachyonサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
アグネスフローラロイヤルスキー
アグネスレディー
エイプリルドラマサクラユタカオーテスコボーイTesco Boy
アンジェリカ
ファインドラマシンザンShinzan
スイートベリー
STORY

旅程 — この馬の物語

2003年生まれの黒鹿毛の牡馬。父アグネスタキオン、母エイプリルドラマ。主な勝ち鞍はNHKマイルC。

ドラマの一族に、論理という名を

2003年3月17日、北海道新冠町の武田修一の牧場に黒鹿毛の牡馬が生まれた。母はエイプリルドラマ。二十戦して四勝、条件戦の階段を上りきる手前で競走生活を終えた牝馬である。その母はファインドラマ、半兄はヒーロードラマ、半姉はユメノドラマ、二年後に生まれてくる半妹はスウェリングドラマ――「ドラマ」の二文字は、この牝系を代々流れていた。 翌年、日高の一歳市場に上場されたこの馬を前田幸治が落札する。与えられた名は、ロジック。意味は論理学。劇ではなく理屈の名を背負って、栗東・橋口弘次郎の厩舎に入った。 血のほうにも、ひとつ変わった筋が通っていた。父アグネスタキオンは無敗のまま皐月賞を制し、その春に浅屈腱炎を発症して競走馬をやめた馬で、ロジックはその初年度産駒にあたる。母の父はサクラユタカオー、祖母の父はシンザン、曾祖母の父はトサミドリ。この牝系に重ねられた種牡馬は、四代さかのぼってすべて日本で生まれた馬だった。 2005年10月8日、京都の芝1400m。武豊を背に一番人気に応え、二歳新馬を勝ち上がる。

三着より下を知らない馬

二戦目の萩ステークスは、重い京都の芝で3着。勝ったのはフサイチリシャールで、この馬はその年の暮れに朝日杯を制し最優秀2歳牡馬に選ばれる。ロジックは11月の京都で二勝目を挙げ、暮れのさざんかステークスは2着。年が明けてシンザン記念3着、アーリントンカップ2着、中山のニュージーランドトロフィー3着。クラシックの本流には向かわず、マイルの前哨戦を順に踏んでいく組み立てだった。 ここまで七戦、着順はすべて三着以内。掲示板を外さない代わりに、重賞のタイトルはひとつも手に入らない。堅実、という褒め方は、勝ち鞍が要るこの世界では半分だけの褒め言葉である。 手綱はよく替わった。萩ステークスは笠松から中央へ移ってきた安藤勝己、ニュージーランドトロフィーは大井に籍を置いたまま乗りに来た内田博幸。外から来た騎手にも、故障や病を抱えて一度沈んだ騎手にも、橋口は当たり前のように管理馬を託す調教師だった。この流儀は、のちにこの馬自身へ返ってくる。 ニュージーランドトロフィーの3着で、NHKマイルカップの優先出走権を手にした。

内へ ― 二〇〇六年五月七日

東京競馬場は雨だった。芝はまだ渋らず、良のまま。三歳のマイル王を決める一戦にロジックは三番人気で入り、鞍上には武豊が戻っていた。 ゲートが開くと、前は速かった。二つ目のハロンで時計が一段速くなる。逃げた馬たちが自分の脚を先に使っていくのを、武豊は追わなかった。中団のうしろ。三コーナーを回っても、その位置は変わらない。外へ持ち出せば脚が要る。この馬にその余分は無い。 四コーナーを回っても、順位はほとんど動かなかった。府中の長い直線を向いて、まだ待っている。 進路は、内に取った。埒沿いの、いちばんロスの少ないところ。そこから伸びて、前を行くファイングレインの脚色に内から並びかける。二頭は残りを一完歩ずつ削り合い、先に地面のほうが尽きた。クビ。ロジックが前にいた。 初めての重賞が、GIだった。この日まで自分に先着していた馬たち――一番人気のフサイチリシャール、アーリントンカップのステキシンスケクン、ニュージーランドトロフィーのマイネルスケルツィ、シンザン記念のゴウゴウキリシマ――は、みなうしろにいた。父アグネスタキオンの産駒がGIを勝ったのは、これが最初である。

二十一日後の府中

三週間後、同じ東京の芝に、今度は2400mで立った。武豊はアドマイヤムーンを選び、ロジックの手綱は幸英明に渡っている。単勝は十一番人気。それでも中団から運んで5着に押し上げ、七着のアドマイヤムーンには先着した。勝ったのはメイショウサムソン、ひと月半前の皐月賞馬である。 ダービーは、橋口にとって特別な一戦だった。1996年にダンスインザダークを一番人気で送り出してクビ差の2着、2004年にはハーツクライで2着。この日の5着も、悲願からはまだ遠い。橋口がようやくダービーのタイトルを手にするのは、ワンアンドオンリーを送り出す2014年、定年まであと二年に迫った春のことである。 そしてロジックが三着以内でゴールすることは、二十一日前のNHKマイルカップが最後になった。

三着が、来ない

秋初戦の毎日王冠は五番人気で16着。続くカシオペアステークスは8着で、これが武豊がこの馬に乗った最後になった。ロジックが挙げた三つの勝ち星は、新馬も、二歳の条件戦も、GIも、すべて同じ男が乗っていたことになる。ルメールに替わったマイルチャンピオンシップは17着。 翌2007年、中山金杯4着、京都記念8着、大阪城ステークス8着。ダービー卿チャレンジトロフィーでは二番人気に支持されて11着。新潟大賞典8着。右前指骨の剥離骨折と脚部不安で、二度の長期休養が挟まる。2008年は小倉大賞典9着、大阪城ステークス4着、福島民報杯12着、都大路ステークス15着。 この2008年から引退までの手綱を、多く任されたのが上村洋行だった。飛蚊症を抱えたまま乗り続け、三度の手術で視力を取り戻して戻ってきた騎手である。橋口は復帰後の彼に多くの管理馬を託した。大阪城ステークスの4着も、最後の三戦も、上村が乗っている。 2009年、一年二か月ぶりの復帰戦にはダートのプロキオンステークスが選ばれ、9着。8月23日の小倉日経オープンで12着に終わったあと、右前浅屈腱炎が判明し、8月27日に登録を抹消された。その二か月前、繋養先で急死していたのが父アグネスタキオンである。父の競走生活を終わらせたのも、同じ浅屈腱炎だった。

先導する馬

抹消されたあと、ロジックは京都競馬場に残った。屈腱炎の治療を続けながら、誘導馬になるための訓練を受ける。その過程で去勢され、せん馬になった。 2010年5月30日、ロジックはふたたび京都の本馬場に出た。競走馬としてではない。平地のGIを勝った馬が誘導馬を務めるのは、JRAで初めてのことだった。かつて新馬を勝った同じ芝を、今度は誰よりも先に、競走馬たちを引き連れて歩く。 三年あまり京都で務め、2013年の秋に兵庫の三木ホースランドパークへ移って乗馬になった。人を背に乗せる仕事は2017年の9月まで続く。 外から来た騎手や、一度沈んだ騎手に次の鞍を用意する厩舎に、この馬はいた。走れなくなったあとで、ロジック自身が同じ扱いを受けたことになる。

論理の外側で

2017年、ロジックは福島県南相馬市へ移った。引退名馬の繋養展示事業の助成を受けながら、そこで六年余りを過ごす。相馬野馬追にも参加した。甲冑と旗が行き交う夏の祭りに、かつてのGI馬が加わっていた。 ファンが待っていたのは、二つ目の冠だったはずだ。GIを勝ってから十一か月、その間ひとつも勝てていなかったのに、中山のダービー卿チャレンジトロフィーでこの馬はまだ二番人気に推されている。人は待つのをやめていなかった。冠のほうは、ついに来なかった。代わりに来たのは、開催のたび、競走馬たちより先に京都の芝へ出てくる一頭という、それまで前例のない元GI馬の姿だった。 デビューから八戦、この馬は三着より下を知らなかった。GIを勝った日から先は、二度と三着以内に入らなかった。どちらも同じ一頭の本当で、その二つを結ぶ理屈は、論理学という名を負わされた当の馬にも、ついに解けなかった。解けないまま、彼は先導し、背中を貸し、祭りを歩き、最後は人に寄り添う馬になった。2024年1月20日、二十一歳。誕生日まで二か月足らずだった。繋養先の代表・深野高広は「ファンの方がいらした時にも寄り添ってくれるような優しい馬でした」[^1]と悼んでいる。 雨の府中で内へ取った、あの一本の進路。彼は迷わなかった。その迷いのなさだけは、勝ち鞍が尽きたあとも、最後までずっと彼のものだった。

出典:スポーツニッポン「06年NHKマイルC覇者・ロジック死す 21歳 福島県南相馬市のけい養先で」2024年1月22日配信、https://keiba.sponichi.co.jp/news/20240122s00004000269000c、閲覧日:2026年8月1日。

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