名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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リカンカブールのイメージビジュアル
リカンカブールLicancabur
Licancabur

リカンカブール

通算成績21戦5勝

獲得賞金12,804万円

生年月日 2019.04.16(令和元年)毛色 黒鹿毛セン

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
リカンカブールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
13 GIII七夕賞 福島 芝2000 10人気 荻野極 2:00.8 上り37.4映像
6 GIII小倉大賞典 小倉 芝1800 9人気 浜中俊 1:45.9 上り35.3映像
6 GIII中山金杯 中山 芝2000 12人気 菅原明良 2:00.6 上り34.9映像
7 GIII福島記念 福島 芝2000 11人気 吉田隼人 2:00.5 上り34.3映像
6 GIIオールカマー 中山 芝2200 10人気 吉田隼人 2:11.0 上り34.5映像
11 GIII小倉記念 小倉 芝2000 12人気 団野大成 2:00.9 上り36.8映像
5 OP小倉日経賞 小倉 芝2000 5人気 吉田隼人 2:02.7 上り36.3
15 GIII中山金杯 中山 芝2000 5人気 津村明秀 1:59.5 上り35.5映像
3 GIIオールカマー 中山 芝2200 12人気 津村明秀 2:12.0 上り34.6映像
8 GIII函館記念 函館 芝2000 11人気 津村明秀 2:00.3 上り35.8映像
16 GI大阪杯 阪神 芝2000 12人気 津村明秀 2:00.5 上り36.7映像
1 GIII中山金杯 中山 芝2000 5人気 津村明秀 1:58.9 上り34.5映像
7 GIIIチャレンジカップ 阪神 芝2000 7人気 藤岡康太 1:59.3 上り34.7映像
1 西宮S 阪神 芝2000 4人気 武豊 1:58.3 上り33.8
1 館山特別 中山 芝2000 2人気 戸崎圭太 2:05.4 上り37.2
2 フォーチュンC 阪神 芝2000 2人気 藤岡康太 1:59.8 上り35.0
6 GII神戸新聞杯 中京 芝2200 11人気 藤岡康太 2:12.0 上り35.6映像
1 足立山特別 小倉 芝2000 1人気 藤岡康太 1:57.6 上り35.0
4 GII京都新聞杯 中京 芝2200 12人気 藤岡康太 2:10.2 上り36.1映像
1 3歳未勝利 小倉 芝2000 4人気 藤岡康太 2:02.0 上り34.9
6 2歳新馬 阪神 芝1800 5人気 藤岡康太 1:50.4 上り34.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
リカンカブールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
シルバーステートSilver StateディープインパクトDeep Impactサンデーサイレンス
ウインドインハーヘア
シルヴァースカヤSilver Hawk
Boubskaia
アンブラッセモワZoffanyDansili
Tyranny
Ice FlowerPivotal
エジラール
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの黒鹿毛のせん馬。父シルバーステート、母アンブラッセモワ。主な勝ち鞍は中山金杯。

高地にひとつ ― 名の由来

リカンカブール。アンデスの南、アタカマ砂漠の東の縁に、ボリビアとチリの国境をまたいで立つ標高五九一六メートルの火山の名である。先住民アタカマの言葉クンサ語で「人々(リカン)の山(カブール)」を意味し、その端正な独立峰は乾いた高地のどこからでも仰ぎ見え、古くはインカやアタカマの人々が山頂近くで祈りを捧げたという。荒野に一本、ただ立ち続ける峰。その名を負った黒鹿毛は、二〇一九年四月十六日、辻牧場に生まれた。 父はディープインパクトの血を引くシルバーステート、母は仏国産のアンブラッセモワ。馬主は(株)ラ・メール、預けられたのは栗東・田中克典厩舎である。二〇二一年十月十六日、阪神の芝千八百メートルでデビュー。鞍上は藤岡康太。五番人気に六着と、旅は静かな一歩から始まった。

藤岡康太と、最初の白星

年が明けた二〇二二年二月五日、小倉の三歳未勝利。藤岡康太との再コンビで、初めてゴール板を先頭で駆け抜けた。八月の足立山特別では一番人気に応えて二勝目。手綱を取り続けた藤岡とともに、この馬は少しずつ前へ進んでいく。 三歳の春から秋、陣営はクラシックの登竜門に挑ませた。京都新聞杯は十二番人気で四着、菊花賞をうかがう神戸新聞杯では果敢にハナを切ったが、直線で後続に呑まれて六着。大舞台には、まだ手が届かない。藤岡との歩みは、この秋の一戦を最後に離れた。 それから一年半ののち、二〇二四年四月、藤岡康太は阪神での落馬事故により、三十五歳で世を去った。この馬に初めての勝ち方を教えた手綱は、もうこの世にない。けれど最初の二つの白星は、確かにその人の腕のなかで挙げたものだった。

積み上げる日々 ― 津村明秀を背に

大舞台の夢が一度遠のいても、歩みは止まらなかった。二〇二三年三月の館山特別は戸崎圭太を背に勝ち上がり、九月の西宮ステークスでは津村明秀とのコンビで完勝してオープン馬の座を掴む。以後、津村がこの馬の主戦となった。 年末のチャレンジカップは七番人気の七着。重賞の壁は厚かったが、条件戦を一つずつ登ってきたこの馬にとって、そこは通過点だった。津村を鞍上に、次の一年へ向かう。

金杯 ― 初めての重賞

二〇二四年一月六日、中山金杯。五番人気。道中は四番手の好位につけ、直線で力強く馬群を割って抜け出すと、猛追するククナを半馬身しのいでゴールした。二着ククナ、三着マイネルクリソーラ。勝ち時計は一分五十八秒九。デビューから二年三か月、初めての重賞タイトルだった。 鞍上の津村明秀にとっては、その年最初の重賞制覇。そして管理する田中克典にとっては、開業以来初めての重賞であった。田中は騎手として二〇一二年にターフを去り、調教助手を経て、五度目の挑戦で調教師免許を得た人である。二〇二一年三月に厩舎を開いて四年目、初めての大輪だった。津村はレース後、「僕のイメージで乗らせてもらいました」[^1]と、馬とのいきの合った一戦を振り返っている。

出典:東京スポーツ「【中山金杯結果&コメント】リカンカブールが差し切りで重賞初制覇 津村「僕のイメージで乗らせてもらいました」」2024年1月6日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/40737、閲覧日:2026年7月18日。

天井と、誇り

重賞馬となって、この馬はより高いところへ差し向けられる。二〇二四年三月の大阪杯はGIの十六着。一線級との地力の差は、隠しようがなかった。 だが同年九月のオールカマー、中山の芝二千二百メートルで、十二番人気の低評価をくつがえす。勝ったのはルメールのレーベンスティール、二着アウスヴァールに続く三着。人気を大きく上回るその走りは、伏兵の意地というほかなかった。 明けて二〇二五年、六歳初戦の中山金杯は連覇ならず十五着。小倉日経賞を走ったのち、この馬は去勢されてセン馬となった。牡馬としての将来を手放しても、走る理由は変わらない。競馬において残せるのは血ではなく走った記録だと、この馬はその後も脚で示していく。

立ち続ける

セン馬となってからのリカンカブールは、ハンデ戦と重賞のあいだを地道に走り続けている。二〇二五年は小倉記念十一着、オールカマー六着、福島記念七着。明けて二〇二六年も中山金杯で連覇はならず六着、小倉大賞典六着、そして七月の七夕賞は十三着。派手な結果は続かない。それでも、この馬はゲートに入り、まっすぐに走り、最後まで脚を投げ出さない。 二十一戦五勝、獲得賞金は約一億二千八百万円。手にした重賞は中山金杯――その一勝は若い調教師に初めての大輪を贈り、初めての手綱を握った人の記憶とともにある。荒野にただ一本、風雪をこらえて立ち続ける高地の峰のように、この馬もまた、ターフのどこかで次の一戦を待っている。

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