名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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レモンポップのイメージビジュアル
レモンポップLemon Pop
Lemon Pop

レモンポップ

通算成績18戦13勝

獲得賞金76,020万円

生年月日 2018.02.15(平成30年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
レモンポップの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 1人気 坂井瑠星 1:50.1 上り36.9映像
1 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 1人気 坂井瑠星 1:35.9 上り36.6
1 JpnⅠさきたま杯 浦和 ダ1400 1人気 坂井瑠星 1:26.7 上り39.6映像
12 GIサウジカップ キングアブドゥル ダ1800 3人気 坂井瑠星 映像
1 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 1人気 坂井瑠星 1:50.6 上り37.3映像
1 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 1人気 坂井瑠星 1:33.8 上り34.7
10 GIドバイゴールデンシャヒーン メイダン ダ1200 1人気 坂井瑠星 映像
1 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 1人気 坂井瑠星 1:35.6 上り36.3映像
1 GIII根岸S 東京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:22.5 上り35.5映像
2 GIII東京中日S杯武蔵野S 東京 ダ1600 1人気 戸崎圭太 1:35.6 上り35.0映像
1 OPペルセウスS 東京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:22.7 上り35.3
1 OP欅S 東京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:22.9 上り34.6
1 鎌倉S 東京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:22.8 上り35.4
1 4歳以上2勝クラス 東京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:24.6 上り35.3
2 4歳以上2勝クラス 中京 ダ1400 1人気 C.デムーロ 1:24.0 上り37.1
2 夙川特別 阪神 ダ1400 1人気 C.デムーロ 1:24.2 上り36.6
1 OPカトレアS 東京 ダ1600 2人気 戸崎圭太 1:36.4 上り36.8
1 2歳新馬 東京 ダ1300 1人気 戸崎圭太 1:18.2 上り35.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
レモンポップの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
Lemon Drop KidKingmamboMr. Prospector
Miesque
Charming LassieSeattle Slew
Lassie Dear
UnreachableGiant's CausewayStorm Cat
Mariah's Storm
HarpiaDanzig
Razyana

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの栗毛の牡馬。父Lemon Drop Kid、母Unreachable。主な勝ち鞍はフェブラリーS・チャンピオンズC・根岸S。

レモンスカッシュの泡 ― 名前と血

父レモンドロップキッドは、1999年のベルモントステークスを制したアメリカの名馬。母アンリーチャブルの父はジャイアンツコーズウェイ。海の向こうで生まれたこの栗毛を手にしたのは、砂漠の国から世界の競馬を束ねるゴドルフィンだった。勝負服は、そのロイヤルブルー。 馬名はレモンスカッシュ――炭酸のはじけるレモン飲料に由来し、父の名に宿る「レモン」を、ひと粒の泡のように受け継いだ。 軽い名前とはうらはらに、血の底には静かな凄みがある。祖母ハーピア。その全兄が、のちに世界中の血を塗り替えた大種牡馬デインヒルである。2018年2月15日、その血を引く栗毛がアメリカに生を受け、海を渡って美浦の田中博康厩舎へ入った。 2020年11月7日、東京ダート1300mの新馬戦。鞍上は戸崎圭太。1番人気に応え、危なげなく勝ち上がる。砂の物語は、府中の短い一戦から静かに始まった。

戸崎圭太と、停滞の砂

続くカトレアSも制し、2歳のうちに素質は示した。だが、そこから一年、レモンポップはターフから姿を消す。復帰は2021年12月、鞍上はクリスチャン・デムーロ。人気に推されながら、夙川特別と翌年の2勝クラスで二度続けて2着に沈んだ。勝ちきれない。砂の上で、はがゆい時間が流れる。 戸崎圭太が手綱に戻ると、歯車が噛み合った。2勝クラスを抜け、鎌倉S、欅S、ペルセウスSと破竹の四連勝。オープンの壁を、力ずくでこじ開けていく。 そして2022年11月、初の重賞・武蔵野S。1番人気に応えられず、半馬身届かずの2着。頂の一歩手前で、また足踏みした。だが、この悔しさは翌年、一気に晴れることになる。

根岸Sと、坂井瑠星

2023年1月29日、根岸S。戸崎圭太を背に好位を進むと、直線では馬なりのまま先頭へ。追い込むギルデッドミラーを半馬身抑え、重賞のタイトルをついに手にした。 その三週間後、田中博康はコンビの変更を告げる。フェブラリーステークスの鞍上に、坂井瑠星を指名したのだ。戸崎で掴んだ重賞の勢いを、新しい相棒に託してGIへ――強気の決断だった。 2023年2月19日、東京ダート1600m。坂井の手綱で好位から抜け出したレモンポップは、追うレッドルゼルを1馬身半突き放し、GI初挑戦を初制覇で飾る。一頭の馬と一人の騎手の、二年弱にわたる旅は、この一勝から始まった。

中東の砂、盛岡の大差

王者の看板を背負い、初めて海を渡る。2023年3月、ドバイ・ゴールデンシャヒーン。だが初めての1200mは、世界の一線が刻む激流にのまれた。10着。田中博康は、短距離の速い流れに戸惑ったと振り返る。 影を抱えて帰国したレモンポップは、盛岡へ向かった。10月のマイルチャンピオンシップ南部杯。ここで見せたのが、圧巻だった。持ったまま先頭に立つと、2着イグナイターに2秒――このレース史上初の「大差」勝ち。砂の王が、格の違いを見せつける。 勢いは12月の中京へ続いた。チャンピオンズカップ、引いたのは大外15番枠。坂井は迷わず内へ切れ込んでハナを奪い、自分のペースで淀みなく刻む。初めての1800mも、末脚を武器に追い込むウィルソンテソーロも、まとめて封じた。1馬身1/4差の逃げ切り。同年のフェブラリーSとチャンピオンズCの両制覇は、2017年のゴールドドリーム以来、史上4頭目だった。この年、レモンポップは最優秀ダートホースに選ばれる。

もう一度、中東へ

2024年、陣営はもう一度、世界の頂に手を伸ばした。2月、サウジカップ。ダート世界最高賞金の大舞台で、レモンポップは3番人気に支持される。だが結果は12着。坂井はいつもの走りができなかったと唇を噛み、田中はレースでのナーバスな面を挙げた。海の向こうの砂は、二度、この馬に沈黙を強いた。 それでも国内では、揺らがない。6月、JpnIに格上げされた初年のさきたま杯を、浦和で2馬身突き放して制する。10月には再び盛岡の南部杯へ。ペプチドナイルとの競り合いを残り1ハロンで振り切り、史上7頭目の連覇を果たした。中東で失った時間を、日本の砂が静かに埋めていく。

有終 ― 二〇二四年十二月一日

引退の舞台に選んだのは、二年前と同じ中京、チャンピオンズカップ。1番人気。好スタートから先頭に立つと、いつものように自分のリズムで運ぶ。直線、ウィルソンテソーロがまた背後から襲いかかった。前年は1馬身1/4あった差が、この日はゴール前で消えかける。それでもレモンポップは、頭ひとつだけ前で駈け抜けた。ハナ差。史上2頭目のチャンピオンズカップ連覇である。 坂井瑠星は、勝ったのは馬の力だと繰り返した。国内GIは6戦6勝。日本のGIでは、ついに一度も負けなかった。「その背中にいられたことを誇りに思います」[^1]。二年弱、自分の中心にい続けた一頭への、まっすぐな言葉だった。

出典:東京スポーツ(東スポ競馬)「【チャンピオンズカップ結果&コメント】レモンポップが連覇! 坂井瑠星『背中にいられたことは誇り』」2024年12月1日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/52457、閲覧日:2026年7月21日。

涙と、血の続き

スタンドで、田中博康が泣いていた。かつては自らも鞍上に跨った男である。直線の坂を上るころ、こらえていたものがこぼれ、思わず「がんばれ」と声が出た。涙を流したのは、騎手だった時代を含めても初めてだったと、後に明かしている。一人の調教師を、この栗毛は確かに一段、高いところへ連れて行った。 国内では16戦して13勝、負けても2着が3回。連対を外したことは一度もない。二度の中東遠征だけが、砂に残した悔いだった。2023・2024年の最優秀ダートホースを連覇し、レモンポップはターフを去る。 向かった先は、北海道日高。父レモンドロップキッドがアメリカの血の泡を運んだように、この馬もまた、種牡馬として自分の泡を継いでいく。初めての産駒が砂を蹴り出すのは、まだ少し先のこと。盛岡の大差も、中京のハナ差も、その仔たちが走り出す日まで、静かに語り継がれていく。

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