名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ラキシスのイメージビジュアル
ラキシスLachesis
Lachesis

ラキシス

通算成績17戦5勝

獲得賞金29,598万円

生年月日 2010.01.31(平成22年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ラキシスの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 2人気 R.ムーア 2:15.3 上り35.0映像
4 GII京都大賞典 京都 芝2400 3人気 武豊 2:24.0 上り32.5
5 GII札幌記念 札幌 芝2000 2人気 C.ルメール 1:59.2 上り36.2映像
8 GI宝塚記念 阪神 芝2200 2人気 C.ルメール 2:14.8 上り34.6映像
1 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 4人気 C.ルメール 2:02.9 上り35.9
6 GI有馬記念 中山 芝2500 11人気 C.デムーロ 2:35.5 上り34.1映像
1 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 3人気 川田将雅 2:12.3 上り33.4映像
2 GII産経賞オールカマー 新潟 芝2200 7人気 川田将雅 2:12.3 上り34.6
15 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 9人気 川田将雅 1:33.1 上り33.9映像
2 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 3人気 川田将雅 2:01.7 上り34.4
4 GII京都記念 京都 芝2200 3人気 川田将雅 2:16.3 上り34.1
2 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 6人気 川田将雅 2:16.8 上り34.6映像
1 鳴滝特別 京都 芝2200 1人気 川田将雅 2:14.9 上り33.4
1 甲武特別 阪神 芝2200 2人気 川田将雅 2:13.4 上り34.3
11 GIIサンスポ賞フローラS 東京 芝2000 14人気 江田照男 2:04.5 上り34.0
6 OPすみれS 阪神 芝2200 4人気 岩田康誠 2:17.4 上り35.6
1 2歳新馬 阪神 芝2000 2人気 川田将雅 2:08.1 上り33.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ラキシスの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
マジックストームMagic StormStorm CatStorm Bird
Terlingua
Foppy DancerFappiano
Water Dance
STORY

旅程 — この馬の物語

2010年生まれの鹿毛の牝馬。父ディープインパクト、母マジックストーム。主な勝ち鞍はエリザベス女王杯・産経大阪杯。

魔法の嵐の娘

2010年1月31日、北海道安平町のノーザンファーム。父ディープインパクト、母マジックストーム。母は米国産の牝馬で、2002年のモンマスオークス(GII)を最低人気で勝ってステークスウィナーになり、のちに日本へ渡ってノーザンファームの繁殖牝馬となった。魔法の嵐、という名の母である。 馬主は大島昌也。栗東・角居勝彦厩舎に入った。登録された馬名の意味は「物語のキャラクター」。ラキシスという綴りは、ギリシャ神話で生命の糸の長さを計る女神の名でもある。 2012年12月2日、阪神の芝2000m、2歳新馬。鞍上は川田将雅。2番人気に応え、上がり3ハロン33秒7の脚で初戦を勝った。この馬が生涯に走る17戦のうち9戦で、背にはこの男がいる。

食が細い

年が明けて3歳。2月のすみれステークスは岩田康誠を背に6着、4月のフローラステークスは江田照男で、14番人気の11着。桜花賞もオークスも、この馬の横を通り過ぎていった。 躓いていたのは体だった。食欲が細く、体重が減り、十分な調教を積めない。走る以前の場所で足踏みしていた。 5か月の休養を挟んで戻ってきた秋には、食も馬体重も戻っていた。9月17日、阪神の甲武特別。10月13日、京都の鳴滝特別。どちらも芝2200m、どちらも鞍上は川田で、上がりは34秒3と33秒4。条件クラスを二つ続けて勝った。

二〇一三年十一月、淀の2着

条件戦を勝った四週後、この馬はGIのゲートに入っていた。エリザベス女王杯、6番人気。 先行して2番手で直線を向く。そこへ外からメイショウマンボが来た。その年のオークスと秋華賞を勝った牝馬である。1馬身1/4差の2着、2分16秒8。 重賞をひとつも勝っていない3歳牝馬が、GIで勝ち馬のすぐ後ろにいた。淀の2200mは、この日からこの馬の間合いになる。

重賞未勝利という肩書き

4歳。2月の京都記念は4着。3月の中日新聞杯はマーティンボロにハナ差の2着。 5月のヴィクトリアマイル、東京の芝1600mで15着。馬体重はデビュー以来もっとも減っていた。上がり33秒9の脚を使いながら、それを届かせる位置に居られなかった。 9月、新潟の芝2200mで行われたオールカマー。7番人気で牡馬混合のGIIをマイネルラクリマとの追い比べに持ち込み、1/2馬身差の2着。 2着、2着、2着。相手は強くなり、内容は良くなっていくのに、重賞未勝利という肩書きだけが剥がれなかった。

クビ差 ― 二〇一四年十一月十六日

一年後の同じ京都、同じ芝2200m。単勝6.8倍の3番人気。1番人気はその年のオークスを勝ったヌーヴォレコルト、2番人気は前年ここで自分を差したメイショウマンボだった。 その2頭が先行し、ラキシスは直後につけた。直線で先に抜け出したのはヌーヴォレコルト。前が壁になったまま追い、一瞬できた隙間を割って、ゴール前で捉えた。クビ差。2分12秒3、上がり33秒4。 重賞の初勝利がGIだった。エリザベス女王杯は、川田将雅にとっても角居勝彦にとっても初めての優勝である。その秋のGIは、スプリンターズステークスから五つ続けて、重賞を勝ったことのない馬が勝っていた。 川田は、重賞にも手が届かない苦しい一年を過ごしてきたと振り返り、「一番大事なところで勝ってくれたことを褒めてあげたい」[^1]と言った。褒められたのは、食が細くて体を減らし続けた牝馬である。

出典:Number Web「エリザベス女王杯も重賞未勝利馬V。秋のGI馬5頭の、意外な共通点とは?」(島田明宏)2014年11月17日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/822094 、閲覧日:2026年7月29日。

有馬の乗り替わり、雨の阪神

暮れの有馬記念。11番人気、鞍上はC.デムーロ。川田は同じ角居厩舎のエピファネイア――前年の菊花賞と、その年のジャパンカップを勝った牡馬――に騎乗して5着だった。ラキシスは上がり34秒1で6着まで押し上げている。勝ったジェンティルドンナには、これが現役最後の一戦になった。 明けて5歳、4月5日の産経大阪杯。当時はGII、雨で馬場は不良。手綱はルメールに替わっていた。4番人気。 1番人気のキズナの前を進み、直線は内から鋭く伸びた。2馬身差、2分2秒9。産経大阪杯を牝馬が勝つのは、2008年のダイワスカーレット以来だった。勝ち馬に与えられる天皇賞・春の優先出走権を手にしたが、淀の3200mへは向かわなかった。

別の馬で勝つ男

6月の宝塚記念、2番人気で8着。勝ったのはラブリーデイで、その鞍上は川田将雅だった。 8月の札幌記念は5着。10月の京都大賞典は武豊を背に、上がり3ハロン32秒5――17戦でいちばん速い脚を使って4着。勝ったのはまたラブリーデイ、またその背に川田がいた。 11月15日、エリザベス女王杯。2番人気に支持されたが11着。勝ったのはマリアライトだった。これが最後の一戦になる。12月18日、競走馬登録抹消。17戦5勝、獲得賞金2億9598万6000円。 前年の勝ち馬として戻った淀で、掲示板にこの馬の名は残らなかった。

安平で母になる

生まれた牧場に帰り、ノーザンファーム安平の繁殖牝馬になった。2020年にエピファネイアとの間にマキシ、2022年にバゴとの間にミラージュナイトを産み、牡の2頭はどちらも競馬場で勝ち鞍を挙げている。2024年に生まれた仔も、父はエピファネイアである。あの有馬記念で川田が騎乗した同厩の牡馬は、いまこの牝馬の仔の父として名を連ねている。 1歳下に全弟がいた。サトノアラジン。姉がエリザベス女王杯を勝った2014年11月、弟はまだ重賞をひとつも勝てていない。姉の手綱を置いた男は一年半後、2016年5月の京王杯スプリングカップで弟の背に跨がって初めての重賞を勝ち、2017年6月の安田記念でその弟のGIを掴んだ。同じ母から出た姉と弟に、同じ男が最初のタイトルを持ってきたことになる。 角居勝彦は2021年2月、定年まで10年以上を残して厩舎を解散した。いまは石川県珠洲市を拠点に、走り終えた馬の次の居場所をつくる側にいる。 淀の直線で、前が壁になるのを待って一瞬の隙間を通り抜けた牝馬は、生まれた牧場で母をしている。生命の糸の長さを計る女神の名を与えられた馬が、いまは新しい糸を送り出す側にいる。

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