名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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キラーアビリティのイメージビジュアル
キラーアビリティKiller Ability
Killer Ability

キラーアビリティ

通算成績18戦3勝

獲得賞金287万円

生年月日 2019.01.27(令和元年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
キラーアビリティの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 GIIネオムターフC キングアブドゥル 芝2100 7人気 マーフィ 映像
8 GII巴インターナショナル バーレーン 芝2000 O.マーフィー 2:04.4
10 GII産経賞オールカマー 中山 芝2200 11人気 団野大成 2:12.4 上り34.3映像
15 GI大阪杯 阪神 芝2000 14人気 北村友一 2:00.2 上り36.0映像
2 GIIネオムターフC キングアブドゥル 芝2100 8人気 C.デムーロ 映像
4 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 8人気 B.ムルザバエフ 1:59.0 上り34.3映像
12 GII富士S 東京 芝1600 10人気 横山武史 1:33.1 上り34.3映像
5 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 7人気 北村友一 2:05.8 上り37.1映像
13 GI大阪杯 阪神 芝2000 11人気 団野大成 1:58.3 上り35.2映像
5 GII京都記念 阪神 芝2200 3人気 B.ムルザバエフ 2:11.8 上り35.0映像
1 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 5人気 団野大成 1:59.4 上り34.0映像
8 GIIアルゼンチン共和国杯 東京 芝2500 2人気 C.デムーロ 2:31.6 上り33.8映像
6 GI東京優駿 東京 芝2400 8人気 横山武史 2:22.9 上り34.5映像
13 GI皐月賞 中山 芝2000 4人気 横山武史 2:00.6 上り35.0映像
1 GIホープフルS 中山 芝2000 2人気 横山武史 2:00.6 上り35.8映像
2 L萩S 阪神 芝1800 1人気 岩田望来 1:48.5 上り33.6
1 2歳未勝利 小倉 芝2000 1人気 岩田望来 1:59.5 上り34.2
5 2歳新馬 阪神 芝1800 2人気 C.ルメール 1:48.4 上り35.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
キラーアビリティの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
キラーグレイシスKiller GracesCongareeアラジArazi
Mari's Sheba
HeatherdoesntbluffOld Trieste
Michigan Bluff
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの青鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母キラーグレイシス。主な勝ち鞍はホープフルS・中日新聞杯。

キラーの一族 ― 名前と血

母キラーグレイシスは、アメリカでハリウッドスターレットステークスを制した牝馬だった。二歳牝馬の米G1を勝ったその栗毛が、ノーザンファームで産んだ仔たちには、代々ひとつの言葉が受け継がれる――「キラー」。英語の俗語で「とびきりの、圧倒的な」を意味する、その一語だ。半姉はキラービューティ。そしてこの馬はキラーアビリティ。母の名と一族の名から連想を重ね、「素晴らしい能力」を名に負って生まれた。 父はディープインパクト。2019年1月27日、北海道安平町に生を受けたが、その半年後の夏、父はこの世を去る。父が生きていた最後の年に生まれた、その仔の一頭だった。青鹿毛の牡馬はキャロットファームの緑の勝負服をまとい、栗東・斉藤崇史のもとへ入る。名に負った「能力」を、いつ、どこで証してみせるのか。物語は、その問いから始まる。

二〇二一年の暮れ ― 横山武史と二歳王者

デビューは2021年6月、阪神の新馬戦。鞍上はルメール。2番人気に推されながら5着に敗れ、走り出しは平凡だった。だが続く小倉の未勝利戦を岩田望来で快勝すると、素質は音を立てて開き始める。萩ステークスは1番人気で2着。そして暮れ、中山のホープフルステークス――二歳GIの舞台で、手綱は横山武史に託された。 この年、横山武史は駆けていた。エフフォーリアで天皇賞・秋と有馬記念を勝ち、JRAの平地GIを五つ制して、クリストフ・ルメールと並ぶ最多タイ。自身初の年間100勝も達成した、二十三歳の飛躍の年だった。その締めくくりが、このホープフルだった。2番人気に応え、直線半ばで抜け出すと、勝ち時計2分0秒6はGI昇格後のレースレコード。管理する斉藤崇史にとっても、初めてのGIタイトルだった。 2着に退けたのは、同じディープインパクトを父に持つジャスティンパレス――のちに天皇賞・春を制することになる馬である。若い騎手、初GIの調教師、そして「素晴らしい能力」の名を負った二歳王者。頂は、時に早く訪れる。この暮れ、三者はいちどに、それぞれの頂へ手をかけた。

春は来なかった ― クラシックの器

二歳の頂に立った馬には、世代の春の視線が集まる。だが2022年の三歳世代は、のちに世界の頂へ駆け上がるイクイノックス、そしてダービーを制するドウデュースを擁する、稀に見る大豊作だった。 皐月賞は4番人気で13着。中山でレコードを刻んだはずの舞台が、この日は遠かった。府中の日本ダービーは6着。スローペースに展開は向かず、抜け出したドウデュースの脚色に屈した。名に負った能力が消えたわけではない。ただ、春という季節は、この馬の器にうまく流れ込まなかった。二歳の暮れに掴んだ栄光と、三歳の春に取りこぼした栄光――その落差を抱えたまま、キラーアビリティの旅は長い後半へ入っていく。

一年ぶりの白星 ― 中日新聞杯

2022年秋、アルゼンチン共和国杯は2番人気に推されて8着。歯車は噛み合わないままに見えた。だが暮れの中日新聞杯、中京の2000メートル。鞍上は団野大成。5番人気という評価をよそに、直線で前が詰まると、馬群のわずかな隙間を突いて伸びる。ゴール前、逃げるマテンロウレオをクビ差で捉えたとき、時計の針はちょうど一年ぶりに、この馬の勝利を指していた。 ホープフルからちょうど一年。派手な差し切りではない。狭い進路をこじ開け、あと一完歩で捉えきる――名に負った「能力」にふさわしい、意地の一勝だった。重賞2勝目。ターフに刻んだ二つ目のタイトルは、その名が飾りでないことを、静かに証していた。

遠い頂 ― 海を渡って

そこから先は、頂への長い道のりだった。京都記念、二度の大阪杯、富士ステークス、オールカマー――重賞の舞台に立ち続けたが、あの中日新聞杯の白星が、しばらくのあいだ最後の勝利になった。 それでも陣営は、挑むことをやめなかった。2024年2月、サウジアラビア。ネオムターフカップで、8番人気という低い評価をはね返し、2着に走る。海の向こうでも、名に負った能力はまだ確かに息づいていた。同年秋にはバーレーンへ遠征し、明けて2025年、ふたたびサウジの地を踏む。中央のターフから中東の砂の国まで、大陸をまたいで走り続けたその背には、勝てなくなってなお走ることをやめない、一頭の矜持があった。 2025年2月のネオムターフカップが、キラーアビリティの最後の一戦になった。通算18戦。三つの勝利と、あの暮れの栄光を、その脚に刻んで。

血は続く ― キラーの名を継ぐもの

2025年5月、キラーアビリティは競走馬登録を抹消された。行き先はインド。マハーラーシュトラ州プネーの牧場で、種牡馬としての第二の馬生が始まる。父が世を去った年に生まれた仔は、いま、その父の血を海の向こうへ運んでいく。 一族の物語は、ターフの上で続いている。半弟ジェイパームスはオープン競走を勝ち、半姉キラービューティの仔ゲルチュタールは、2026年の日経新春杯を制した。「キラー」の名を継ぐ血は、いまも新しい走りを送り出し続けている。 あの2021年の暮れ、中山でともに頂へ手をかけた二十三歳の騎手は、やがて日本を代表する名手のひとりになった。頂へ登り続けた人と、いちど頂に触れ、その能力を大陸の果てまで運んだ馬。二つの道が交わったのは、あの中山の直線の、ただ一夜だった。それでも「素晴らしい能力」――その名は、確かに一度、真実になった。遠いインドの空の下で、その血はいま、次の走りを待っている。

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