名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ケイアイノーテックのイメージビジュアル
ケイアイノーテックKeiai Nautique
Keiai Nautique

ケイアイノーテック

通算成績28戦3勝

獲得賞金21,660万円

生年月日 2015.04.07(平成27年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ケイアイノーテックの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
4 GIマッキノンS フレミントン 芝2000 10人気 ニューイ
4 GIIヒルS ランドウィック 芝2000 3人気 ボス
7 GIマカイビーディーヴァ フレミントン 芝1600 5人気 ニューイ
4 GIウィンクスS ランドウィック 芝1400 12人気 ボス
15 GIII京都金杯 中京 芝1600 5人気 藤岡佑介 1:34.2 上り34.4映像
13 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 10人気 津村明秀 1:33.2 上り33.6映像
3 GII富士S 東京 芝1600 6人気 津村明秀 1:33.8 上り34.7映像
4 GIIIトヨタ賞中京記念 阪神 芝1600 3人気 岩田望来 1:32.8 上り34.7映像
5 GI安田記念 東京 芝1600 11人気 津村明秀 1:32.3 上り34.3映像
6 GII京王杯スプリングカップ 東京 芝1400 8人気 石橋脩 1:20.3 上り32.5映像
4 GIIIダービー卿チャレンジトロフィー 中山 芝1600 6人気 津村明秀 1:33.2 上り34.9映像
11 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 8人気 津村明秀 1:33.6 上り33.2映像
7 GIIIチャレンジカップ 阪神 芝2000 6人気 幸英明 1:59.4 上り33.8映像
9 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 14人気 幸英明 1:57.5 上り34.2映像
9 GII毎日王冠 東京 芝1800 7人気 幸英明 1:45.8 上り35.4映像
7 GI安田記念 東京 芝1600 10人気 幸英明 1:31.3 上り32.7映像
6 GII読売マイラーズカップ 京都 芝1600 6人気 A.シュタルケ 1:33.2 上り32.1映像
10 GIII根岸S 東京 ダ1400 7人気 藤岡佑介 1:24.7 上り36.3映像
6 GII阪神カップ 阪神 芝1400 3人気 藤岡佑介 1:21.9 上り35.1映像
11 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 9人気 藤岡佑介 1:33.8 上り34.6映像
5 GII毎日王冠 東京 芝1800 4人気 藤岡佑介 1:44.9 上り33.6映像
1 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 6人気 藤岡佑介 1:32.8 上り33.7映像
2 GIIニュージーランドトロフィー 中山 芝1600 1人気 戸崎圭太 1:34.2 上り34.5映像
1 3歳500万下 阪神 芝1600 1人気 川田将雅 1:34.2 上り33.9
2 こぶし賞 京都 芝1600 1人気 福永祐一 1:35.9 上り36.7
4 GI朝日杯フューチュリティステークス 阪神 芝1600 5人気 幸英明 1:33.9 上り33.8映像
3 GIIデイリー杯2歳S 京都 芝1600 3人気 川田将雅 1:36.9 上り35.1映像
1 2歳新馬 阪神 芝1600 1人気 福永祐一 1:36.8 上り33.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ケイアイノーテックの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
ケイアイガーベラSmarty JonesElusive Quality
I'll Get Along
アンナステルツAnna SterzDanzig
Edge
STORY

旅程 — この馬の物語

2015年生まれの鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母ケイアイガーベラ。主な勝ち鞍はNHKマイルC。

砂を蹴った母 ― 新冠に生まれた弟

新冠の隆栄牧場に、砂で九つの勝ち星を積み上げた牝馬がいた。ケイアイガーベラ。その父はアメリカのスマーティジョーンズ、栗毛の身体で18戦9勝を挙げ、2010年のプロキオンステークスをコースレコードで、翌年のカペラステークスを最後の一戦として勝った、紛れもないダート重賞馬である。管理していたのは栗東の平田修だった。 その牝馬にディープインパクトを配して生まれた仔が、2014年生まれのフィアスインパクト。当歳のセリで6600万円の値がつき、そのままイギリスへ渡っていった。翌2015年4月7日、同じ配合から、同じ牧場で、鹿毛の牡馬が生まれる。兄が海の向こうにいるあいだ、弟は日本に残った。 馬名は、馬主・亀田和弘の冠名に、フランス語をひとつ足したものだった。ノーテック——nautique、水上の、という意味を持つ言葉。名づけられた時点では、その一語がどこへ向かうことになるのか、まだ誰にも分からない。 2017年6月3日、阪神の芝1600m。福永祐一を背に1番人気に応え、好位から内を割ってデビュー戦を勝つ。秋のデイリー杯2歳ステークスはジャンダルムの3着、暮れの朝日杯フューチュリティステークスはダノンプレミアムの4着。世代の上位に誰の名が並ぶのかは、この時点でおおよそ見えていた。その中に、この馬の名も、確かにあった。

八十六度目のゲート ― 藤岡佑介という縦糸

藤岡佑介は、2004年3月6日に中京でデビューした。父は栗東で厩舎を構える調教師・藤岡健一。競馬に囲まれて育ち、重賞は幾度も勝ち、2013年にはフランスへ長期遠征もした。ただ、GIだけが遠かった。二着が七度あった。八十五度、勝負服を着てGIのゲートに入り、八十五度、勝者ではないままそこを出た。 2018年、ケイアイノーテックは三歳になっていた。2月のこぶし賞は1番人気に推されながらパクスアメリカーナの2着。3月の3歳500万下では後方から上り33秒9の脚を繰り出し、4馬身突き放して勝つ。4月のニュージーランドトロフィーは戸崎圭太を背に1番人気。直線でいったんは先頭に立ちながら、ゴール寸前で外からカツジにかわされて2着——それでも、本番への優先出走権はこの手に残った。 NHKマイルカップの週、武豊が騎乗停止となり、鞍は藤岡佑介に回った。前日の土曜、彼は京都で重賞を勝ったばかりだった。腕は冴えている。ただし、この馬に跨るのは日曜が初めてだった。

七、八馬身の彼方から ― 二〇一八年五月六日

十八頭立て、六枠十一番、単勝12.8倍の6番人気。舞台は東京の芝1600m。 ゲートが開くと、ケイアイノーテックは後方から二頭目にいた。四コーナーを回って直線を向いたとき、先頭とのあいだには七、八馬身が空いている。思ったほど行き脚がつかず、促しても前に行けなかった、と藤岡はのちに振り返っている。それでも馬のアクションがいい。ならば信じて追うしかない。 大外に持ち出された鹿毛は、残り200mから別の生き物になった。上がり3ハロン33秒7、メンバー最速。先に抜け出していたギベオンを、ゴール板の上でクビだけかわす。二着ギベオンと三着レッドヴェイロンの差は、さらにアタマだった。勝ち時計1分32秒8。 「馬の能力だけで差し切れました」[^1]。鞍上は自分の腕を勘定に入れなかった。デビュー十五年目、GI八十六度目の挑戦での初制覇である。管理する平田修にとっては、2012年のカレンブラックヒル以来、二度目のNHKマイルカップだった。

出典:Number Web「今年すでに重賞4勝、GIは初勝利。NHKマイル制覇は藤岡佑介の転機だ。」島田明宏、2018年5月7日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/830698 、閲覧日:2026年7月25日。

勝ってから ― 府中、京都、中京

その日、藤岡はこう言っている。「初めてのGIは勝った実感がわかない……とよく聞きますが、僕は実感しかなかったですね(笑)」[^1]。十五年ぶんの、実感だった。 その秋、毎日王冠はアエロリットの5着。マイルチャンピオンシップ11着、暮れの阪神カップ6着。四歳の初戦では、一度だけ砂を試している。1月の根岸ステークス、東京ダート1400m——母が名を上げた砂の上で、結果は10着だった。春はシュタルケを背にマイラーズカップ6着、幸英明と組んだ安田記念は7着。秋の天皇賞は三冠牝馬アーモンドアイが府中を制した日で、この馬は14番人気の9着。 五歳の一年も、勝利は遠かった。東京新聞杯11着、ダービー卿チャレンジトロフィー4着、京王杯スプリングカップ6着。11番人気で臨んだ安田記念はグランアレグリアから0秒7差の5着、夏の中京記念は勝ち馬から0秒1差の4着。秋の富士ステークスで拾った3着が、日本での最後の掲示板になった。 2021年1月5日、中京で行われた京都金杯。鞍上には久方ぶりに藤岡佑介が戻ってきた。15着。GIをともに勝った一頭と一人の、日本での最後の一戦だった。

出典:スポーツナビ「佑介ついに獲った! 15年目のGI初勝利 ケイアイノーテック秋は中距離路線も視野」2018年5月6日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201805060010-spnavi 、閲覧日:2026年7月25日。

兄の航跡へ ― 海を渡る名

1月27日、オーストラリアへの移籍が発表された。同じ日にJRAの競走馬登録は抹消され、2月13日、ケイアイノーテックは日本を発つ。栗東・平田修の管理を離れ、豪州のマシュー・スミス厩舎へ。2016年秋の登録以来、四年余りを預けた厩舎からの、国境をまたぐ転厩だった。 同じ航路を先に辿った馬がいる。全兄フィアスインパクトである。当歳でイギリスに渡り、2016年10月にヤーマスでデビュー戦を勝ったものの、英国では勝ち鞍を伸ばせないまま、2018年5月にオーストラリアへ移った。そこから馬が変わる。2019年、トゥーラックハンデキャップとカンタラステークスを続けて勝ってG1を二つ。その季のオーストラリア最優秀中距離馬に選ばれ、翌2020年にはマカイビーディーヴァステークスでG1三勝目を挙げた。同じ母から生まれ、同じ父を持つ兄が、南半球で花を咲かせていた。 水上の、という名を負った馬が、六歳の冬に海を渡る。

ランドウィックとフレミントン ― 最後の四戦

移籍初戦は8月21日、ランドウィックのウィンクスステークス。芝1400mのG1で、十四頭中十二番人気という評価だった。鞍上はグレン・ボス——マカイビーディーヴァの背で2003年から三年続けてメルボルンカップを勝った男である。発馬で後手を踏んで後方二、三番手、直線で外に出す際にも不利を受けながら、勝ったモウンガとの差は0.37馬身。四着だが、見せ場は十分すぎた。 9月11日、フレミントンのマカイビーディーヴァステークス。前年、兄が勝ったレースだった。道中は最後方。直線で馬群を縫うように追い込んだものの、インセンティヴァイズから4.1馬身差の7着に終わる。 10月2日のヒルステークスはG2。やはり最後方から追い上げて4着。次に予定していたのはコックスプレート——兄が最後に走ったレースである。だが出走馬が定数に満たないなかで、主催者の判断により選出から漏れた。 陣営が代わりに選んだのが、11月6日、フレミントンのマッキノンステークスだった。十頭立ての最低人気。中団から直線でポジションを押し上げ、勝ったザーキから4.5馬身差の四着。ゴール板を過ぎたところで、二十八戦の競走生活は終わった。

クレールフォンテーヌの新馬戦 ― 名の行き先

2022年12月2日、ケイアイスタリオンが、翌年からフランスのカーウィンファームで種牡馬入りすることを発表した。名にフランス語を負った馬が、海を二度渡って、その言葉の生まれた国の牧に立った。 2026年7月3日、ドーヴィルにほど近いクレールフォンテーヌ競馬場の第2レース、新馬戦。ケイアイノーテックの初年度産駒である牝馬ラカルメンが、初出走で後続に3馬身半の差をつけて勝った。父の産駒がフランスのターフに現れた最初の日に、勝利がそのまま届いたことになる。 二十八戦三勝。三つ目の白星が五月の府中のGIで、その一つが、十五年ぶんの願いを一人の騎手の手に渡した。母が蹴り続けた砂も、兄が引いた航跡も、この馬の身体を通り抜けていった。いまはノルマンディーの芝の上を、新しい脚がひとつ走り出している。

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