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カゼノコ
通算成績40戦4勝
獲得賞金1億7,433万円
生年月日 2011.04.06(平成23年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4 | OPラジオ日本賞 | 中山 ダ1800 | 6人気 | 津村明秀 | 1:53.3 | 上り37.4 | — | |
| 3 | OPマリーンS | 函館 ダ1700 | 10人気 | 荻野極 | 1:44.2 | 上り36.3 | — | |
| 9 | L大沼S | 函館 ダ1700 | 8人気 | 荻野極 | 1:43.8 | 上り37.3 | — | |
| 2 | OP総武S | 中山 ダ1800 | 4人気 | 津村明秀 | 1:52.2 | 上り37.2 | — | |
| 5 | OPアルデバランS | 京都 ダ1900 | 6人気 | 川田将雅 | 1:57.9 | 上り36.5 | — | |
| 7 | GII東海テレビ杯東海S | 中京 ダ1800 | 10人気 | 小崎綾也 | 1:51.8 | 上り36.4 | 映像 | |
| 6 | OPベテルギウスS | 阪神 ダ1800 | 10人気 | 小崎綾也 | 1:52.8 | 上り37.0 | — | |
| 5 | OP福島民友カップ | 福島 ダ1700 | 12人気 | 小崎綾也 | 1:45.7 | 上り37.0 | — | |
| 13 | OPブラジルカップ | 東京 ダ2100 | 13人気 | 横山典弘 | 2:12.4 | 上り37.6 | — | |
| 10 | OP名鉄杯 | 中京 ダ1800 | 7人気 | 福永祐一 | 1:52.0 | 上り37.3 | — | |
| 2 | OPラジオ日本賞 | 中山 ダ1800 | 6人気 | 石橋脩 | 1:51.1 | 上り36.2 | — | |
| 5 | OP名鉄杯 | 中京 ダ1800 | 4人気 | 太宰啓介 | 1:52.2 | 上り36.5 | — | |
| 11 | OPアハルテケS | 東京 ダ1600 | 6人気 | 横山典弘 | 1:37.4 | 上り35.9 | — | |
| 4 | OPオアシスS | 東京 ダ1600 | 8人気 | 横山典弘 | 1:35.9 | 上り35.7 | — | |
| 13 | OPバレンタインS | 東京 ダ1400 | 4人気 | 武豊 | 1:25.2 | 上り36.0 | — | |
| 5 | GII東海テレビ杯東海S | 中京 ダ1800 | 11人気 | 太宰啓介 | 1:53.4 | 上り35.9 | 映像 | |
| 7 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 6人気 | 川田将雅 | 2:07.9 | 上り37.8 | — | |
| 10 | GIIIみやこS | 京都 ダ1800 | 6人気 | 北村友一 | 1:51.2 | 上り36.4 | — | |
| 5 | GIIIシリウスS | 阪神 ダ2000 | 6人気 | 北村友一 | 2:02.6 | 上り36.2 | — | |
| 5 | JpnⅠ川崎記念 | 川崎 ダ2100 | 4人気 | 秋山真一郎 | 2:15.9 | 上り38.3 | — | |
| 3 | JpnⅡ名古屋グランプリJp | 名古屋 ダ2500 | 1人気 | 秋山真一郎 | 2:46.2 | 上り37.7 | — | |
| 2 | GIIIみやこS | 京都 ダ1800 | 6人気 | 秋山真一郎 | 1:47.8 | 上り35.5 | — | |
| 7 | OPブラジルカップ | 東京 ダ2100 | 4人気 | 柴山雄一 | 2:11.3 | 上り36.5 | — | |
| 4 | OPブリリアントS | 東京 ダ2100 | 2人気 | 浜中俊 | 2:10.8 | 上り36.5 | — | |
| 8 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 7人気 | 浜中俊 | 1:36.8 | 上り36.2 | 映像 | |
| 2 | JpnⅠ川崎記念 | 川崎 ダ2100 | 3人気 | 秋山真一郎 | 2:17.0 | 上り39.2 | — | |
| 7 | GIチャンピオンズカップ | 中京 ダ1800 | 14人気 | 秋山真一郎 | 1:51.6 | 上り35.8 | 映像 | |
| 7 | JpnⅠJBCクラシック | 盛岡 ダ2000 | 6人気 | 秋山真一郎 | 2:03.1 | 上り34.7 | 映像 | |
| 1 | JpnⅠジャパンダートダービー | 大井 ダ2000 | 2人気 | 秋山真一郎 | 2:03.9 | 上り36.5 | — | |
| 1 | OP鳳雛S | 京都 ダ1800 | 2人気 | 北村友一 | 1:52.2 | 上り35.4 | — | |
| 1 | 3歳500万下 | 京都 ダ1800 | 3人気 | 秋山真一郎 | 1:52.7 | 上り36.6 | — | |
| 10 | GIII毎日杯 | 阪神 芝1800 | 13人気 | 武幸四郎 | 1:48.4 | 上り35.8 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 阪神 ダ1800 | 1人気 | 秋山真一郎 | 1:55.8 | 上り38.0 | — | |
| 2 | 3歳未勝利 | 京都 ダ1800 | 2人気 | 秋山真一郎 | 1:53.7 | 上り37.2 | — | |
| 3 | 3歳未勝利 | 京都 ダ1800 | 2人気 | 太宰啓介 | 1:54.6 | 上り37.6 | — | |
| 9 | 2歳未勝利 | 阪神 芝1600 | 7人気 | 秋山真一郎 | 1:37.4 | 上り36.2 | — | |
| 3 | 2歳未勝利 | 中京 芝1600 | 2人気 | 秋山真一郎 | 1:36.9 | 上り35.0 | — | |
| 5 | 2歳未勝利 | 京都 芝1600 | 5人気 | 武豊 | 1:36.1 | 上り34.8 | — | |
| 11 | 2歳未勝利 | 函館 芝1200 | 2人気 | 菱田裕二 | 1:16.2 | 上り39.3 | — | |
| 3 | 2歳新馬 | 函館 芝1200 | 4人気 | 菱田裕二 | 1:11.5 | 上り35.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父アグネスデジタルAgnes Digital | Crafty Prospector | Mr. Prospector |
| Real Crafty Lady | ||
| Chancey Squaw | Chief's Crown | |
| Allicance | ||
| 母タフネススター | ラグビーボール | ナイスダンサー |
| ペルシアンテールPersian Tale | ||
| ユキノサクラ | リードワンダー | |
| ビーナスヤシマ |
旅程 — この馬の物語
2011年生まれの鹿毛の牡馬。父アグネスデジタル、母タフネススター。
「風の子」という名 ― 三代の勝負服
2011年4月6日、北海道新ひだか町。田中裕之の牧場で、一頭の鹿毛の牡馬が生まれた。父はアグネスデジタル、母はタフネススター。 JRAに登録されたこの馬の馬名意味は、三文字で足りている。「風の子」。冠名も、凝った外国語の意匠もない。 持ち主は橳嶋孝司といった。馬主歴三十年。大きな勢力ではなかったが、ひとつの牝系を手放さずに持ち続けた人である。祖母ユキノサクラ、母タフネススター、そしてカゼノコ。三代が同じ勝負服を着た。白地に紫の格子、紫の袖。 母タフネススターは17戦5勝。2001年のカブトヤマ記念を、48キロの軽ハンデを味方に大外から差し切った芝の牝馬だった。 そのタフネススターは、2012年12月17日に15歳で世を去っている。カゼノコはまだ1歳。母は、息子が走る姿を一度も見ていない。
二十五年目の一勝 ― 藤岡範士厩舎という場所
母タフネススターを預かっていたのは、栗東の藤岡範士だった。1943年、福岡県の生まれ。騎手として十年走り、1976年7月に自分の厩舎を開いた男である。 高い馬は馬主の負担を重くするだけだ、というのが藤岡の持論だった。良血を買わないかと持ちかけられても、高い馬は他の厩舎へ回してほしい、自分のところは安い馬で構わないと断り続けた。だから重賞のタイトルは、なかなか手元に来なかった。 開業から二十五年目、2001年秋の新潟。最下級条件から連勝で格上挑戦に踏み切ったタフネススターが、豪快な追い込みでカブトヤマ記念を勝つ。藤岡にとって初めての重賞であり、結局これが生涯ただ一つの重賞制覇になった。鞍上の酒井学にとっても、初の重賞だった。同じ厩舎には、母の全姉で1994年の桜花賞5着に食い込んだグッドラックスターもいた。派手ではないが、確かに走る牝系を、この厩舎は長く預かっていた。 そのタフネススターの調教を担当していた男がいる。野中賢二。1965年、やはり福岡県の生まれ。厩務員だった父の影響で十歳から馬に乗り、1982年10月に藤岡厩舎へ入った。厩務員から調教助手になり、やがて番頭を任される。のちに野中は、藤岡のことを「父であり人生の師匠」[^1]と呼んでいる。 2008年3月、野中は栗東に自分の厩舎を開いた。
出典:競馬ラボ「【野中賢二調教師】師も縁の母タフネススター譲りの切れ味カゼノコ」2014年7月2日配信、https://smart.keibalab.jp/column/interview/1192/、閲覧日:2026年7月28日。
厩舎が閉じる日
カゼノコのデビューは2013年8月3日、函館の芝1200m。菱田裕二を背に4番人気で3着に入った。この年は芝ばかりを五戦して、最高が3着。年内に勝ち上がることはできなかった。 年が明けた2014年1月、初めてダートを使うと3着。二度目のダートとなった2月の京都では、秋山真一郎を背に2着まで来た。 この冬、藤岡範士は定年を控えて厩舎を畳むことになる。1976年に開いた厩舎を、藤岡が退いたのは2014年2月28日。行き先を探した馬たちのなかで、カゼノコが移ったのは栗東の野中賢二厩舎だった。母の調教を見ていた男のところへ、その息子が来たことになる。 野中のもとでの二戦目、3月16日の阪神ダート1800m。1番人気に推されたカゼノコは、八戦目にしてようやく初勝利を挙げた。 「それは藤岡先生のところが良いタイミングで、良い状態でウチにくれたということです」[^1]。野中は、それを自分の手柄にしなかった。
出典:競馬ラボ「【野中賢二調教師】師も縁の母タフネススター譲りの切れ味カゼノコ」2014年7月2日配信、https://smart.keibalab.jp/column/interview/1192/、閲覧日:2026年7月28日。
お母さんのダート版
3月29日、阪神の毎日杯。野中は母のイメージを頼りに、もう一度だけ芝を試した。13番人気の10着。鞍上の武幸四郎からは、道中まるで集中していなかったと伝えられた。芝の実験は、それきりになる。 ダートに戻すと、様相が変わった。5月10日の京都で3歳500万下を勝ち、5月25日の鳳雛ステークスでは初めてのオープン挑戦をいきなり制する。11頭立ての後方三番手から大外を回し、上がり35秒4。逃げ込みを図ったアスカノロマンを飲み込んで1馬身1/4差。良馬場のダートでその脚を使う三歳馬は、そう多くない。 野中はこの馬を「お母さんのダート版」と見ていた。脚をためれば凄まじい切れを見せた母。その切れが、砂の上に出ている。 砂をかぶって集中力が保てるのか、と問われた野中の答えは、逆さまだった。「逆にそこがないから、最後に切れるんですよ」[^1]。真面目に走っていないから、最後まで脚が残る。欠点がそのまま武器になっているという理屈である。
出典:競馬ラボ「【野中賢二調教師】師も縁の母タフネススター譲りの切れ味カゼノコ」2014年7月2日配信、https://smart.keibalab.jp/column/interview/1192/、閲覧日:2026年7月28日。
大井の雨 ― ハナ差
2014年7月9日、大井のジャパンダートダービー。 主役はハッピースプリントだった。前年に二歳で地方競馬の年度代表馬に選ばれ、この年は羽田盃、東京ダービーを制して、十三年ぶりの南関東三冠に王手をかけていた。単勝1.4倍。カゼノコは5.1倍の2番人気である。 台風の影響で雨が落ち、馬場は稍重。ゲートを出た瞬間、カゼノコは不利を受け、十三頭の最後方に置かれた。 先手を取ったエスティドゥーラは残り800mで力尽き、ノースショアビーチが替わって先頭に立つ。ハッピースプリントは二番手のまま四コーナーを回り、残り200mでようやく先頭に躍り出た。羽田盃でも東京ダービーでも、ここから後続を突き放してきた。 その外から、二頭が伸びていた。フィールザスマートと、カゼノコ。 写真判定。ハナ差で、大外の鹿毛が届いていた。2分3秒9。南関東三冠は消え、三歳のダート王が決まった。 一週間前、野中はこう話していた。「お母さんも調教していたりして、そこからまた縁ができて、オープン馬が出て、統一G1に行けるというのは、凄いところですよね」[^1]。その縁が、ちょうど一周した夜だった。 馬主歴三十年の橳嶋にとって、生産者の田中にとって、そして野中にとって、これが初めてのGI・JpnIだった。鞍上の秋山真一郎にとってもジャパンダートダービーは初制覇であり、父アグネスデジタルにとっても、GI・JpnIを勝った産駒はこの馬が最初だった。この年に地方でのわずか二戦が生んだ賞金は4500万円。カゼノコが中央競馬でどの一年に稼いだ額よりも大きかった。
出典:競馬ラボ「【野中賢二調教師】師も縁の母タフネススター譲りの切れ味カゼノコ」2014年7月2日配信、https://smart.keibalab.jp/column/interview/1192/、閲覧日:2026年7月28日。
王者たちの背中
秋は盛岡のJBCクラシック。上がり三ハロンは出走馬中で最も速かったが、従来のレコードを1秒1縮めて駆け抜けたコパノリッキーからは2秒3離された7着だった。暮れの中京・チャンピオンズカップは14番人気の低評価。メンバー二位の上がり35秒8を繰り出しながら、前が止まらない流れに阻まれて7着に終わる。 2015年1月の川崎記念では、ホッコータルマエの背中まで迫って2着。2月のフェブラリーステークスは出遅れが響いて8着。秋、京都の不良馬場で行われたみやこステークスでは、右回りに替わることを好材料とみる声が戦前から出ていた通り、最速の上がりで2着まで詰め寄った。年末の名古屋グランプリは3着。 足りないのは、いつも半歩だった。走る条件は、はっきりしている。JRAの左回りダートでは、生涯12戦して一度も三着以内に入れなかった。右回りのダートでは16戦して3勝、2着4回、3着2回。切れる脚は、回る向きを選んだ。
八歳まで、出走表に名前があるということ
2016年、2017年、2018年。カゼノコはオープン特別と重賞を走り続けた。2017年1月の東海ステークスは11番人気の5着。同年9月、不良馬場の中山で行われたラジオ日本賞では2着に食い込んだ。2019年3月、重馬場の総武ステークスでまた2着。7月の函館・マリーンステークスでは10番人気から3着に押し上げている。 2019年1月20日、中京の東海ステークス。カゼノコは10番人気の7着だった。この日、二馬身差をつけて勝ったのは同じ野中厩舎のインティである。一か月後、インティはフェブラリーステークスを制し、野中に開業以来初めての中央GIをもたらした。厩舎が次の頂に届いた冬、八歳になった先輩は、まだ同じ砂の上を走っていた。 最後の一戦は2019年9月15日、中山のラジオ日本賞。津村明秀を背に6番人気で4着。11月20日付で競走馬登録を抹消した。 40戦4勝。勝ち星はすべて、三歳の春から夏にかけての四か月に集まっている。そのあとの二十八戦は勝てなかった。それでも八歳の秋まで、この馬の名前は一線級の出走表にあり続けた。
先導する側で
引退後、カゼノコは馬事公苑で乗馬となり、のちに阪神競馬場で誘導馬を務めた。 阪神は、八戦目にしてようやく勝てた場所である。追われて走った直線を、今度は本馬場入場の先頭に立ち、ゆっくりと歩いた。 母タフネススターの生涯獲得賞金は1億7291万7000円。息子は1億7433万5000円。母は17戦で、息子は40戦で、ほとんど同じ額に届いた。 大井でハナ差を分け合った二人は、いまはどちらも馬を仕上げる側にいる。野中賢二は2026年6月にJRA通算400勝に達した。秋山真一郎は2024年2月をもって騎手を引退し、翌2025年3月、栗東に自分の厩舎を開いている。 藤岡範士が二十五年かけて掴んだ、ただ一つの重賞。その馬の息子が、番頭だった男の厩舎で統一JpnIを勝った。血だけでなく、縁が運んだ一勝だった。 風の子、という名前のとおり、この馬の脚は決まって最後の直線で吹いた。四十戦のうち、それが間に合ったのは四度。そのうちの一度が、あの雨の大井だった。
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