名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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カラジのイメージビジュアル
カラジKarasi
Karasi

カラジ

通算成績52戦10勝

獲得賞金35,207万円

生年月日 1995.02.20(平成7年)毛色 鹿毛セン

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
カラジの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
9 ザトランプH オーストラリア 芝2400
10 ページズイベントイク オーストラリア 芝2500
12 FCMトラベルH オーストラリア 芝2500
9 カウントシーバスH オーストラリア 芝1800
7 キャンプオーストラリ オーストラリア 芝1794
10 ウッドフォードGC オーストラリア 芝1700
1 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 1人気 B.スコット 4:50.4 上り13.7映像
3 OPペガサスジャンプS 中山 障3350 2人気 B.スコット 3:44.3 上り13.4
6 ザトランプH オーストラリア 芝2400 マーテン 2:32.1
4 ジャイコH オーストラリア 芝3000 スコット 2:45.4
10 グレンフェルンH オーストラリア 芝2400 マーテン 2:31.8
9 オールウェイズウェル オーストラリア 芝2100 マーテン 2:16.9
12 スタークラフトH オーストラリア 芝1800 ハーナン 1:52.9
11 ルークラティヴH オーストラリア 芝1600 マーテン 1:39.6
1 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 2人気 B.スコット 4:50.8 上り13.7映像
2 OPペガサスジャンプS 中山 障3350 4人気 B.スコット 3:43.5 上り13.3
5 トランプH オーストラリア 芝2400 マーテン 2:31.6
2 ミッティーズH オーストラリア 芝3000 スコット 3:13.2
14 グレンフェルンH オーストラリア 芝2400 マーテン 2:32.1
9 シティオブグレンエイ オーストラリア 芝2100 シン 2:09.8
11 コロイトIGAコミュ オーストラリア 芝1700 ツァイコ 1:44.2
5 OPカラジ”中山GJウ” オーストラリア 芝1612 ハミルト 1:38.6
1 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 1人気 B.スコット 4:50.4 上り13.7映像
3 OPペガサスジャンプS 中山 障3350 6人気 B.スコット 3:43.4 上り13.3
6 マスターアヴェニール オーストラリア 芝2400 マーテン 2:33.3
2 MVサタディHC オーストラリア 芝3000 マーテン 3:09.4
1 ゴールデンDHC オーストラリア 芝3000 マーテン 3:11.7
4 ザジャーナルHC オーストラリア 芝2400 マーテン 2:31.7
12 トラヴィスハリソン オーストラリア 芝1600 ハミルト 1:38.0
6 ハンディキャップ オーストラリア 芝1500 ハミルト 1:30.8
3 ヒスケンスSC オーストラリア 障3717 スコット 4:14.2
1 グランドナショナルH オーストラリア 障3520 スコット 4:03.6
3 ニューグランドNH オーストラリア 障4000 スコット 4:29.6
1 オーストラリアンH オーストラリア 障3400 スコット 4:08.8
4 L.V.ラカルH オーストラリア 障3430 スコット 3:53.1
2 ムーニーバレーH オーストラリア 障3200 ダーデン 3:40.1
7 GIアデレードC オーストラリア 芝3200 カルダー 3:28.3
5 ハンディキャップ オーストラリア 芝2500 ガウチ 2:45.6
1 ヤルンバクラシックH オーストラリア 障3600 ダーデン 4:04.0
1 ハードル戦 オーストラリア 障3284 ダーデン 3:39.5
4 ノーフォーク卿S オーストラリア 芝3200 マーテン 3:23.5
7 ロイヒギンズ オーストラリア 芝2500 マーテン 2:39.8
6 条件戦 オーストラリア 芝2000 マーチャ 2:05.5
8 ハンディキャップ オーストラリア 芝1600 マーチャ 1:38.9
8 ハンディキャップ オーストラリア 芝2550 カロー 2:46.2
7 ハンディキャップ オーストラリア 芝2400 カロー 2:33.6
3 ハンディキャップ オーストラリア 芝2800 カロー 2:58.0
4 ハードル戦 オーストラリア 障2800 ダーデン 3:19.7
1 ハードル戦 オーストラリア 障3200 ダーデン 3:37.0
1 ハードル戦 オーストラリア 障3242 ダーデン 3:38.9
2 ハンディキャップ オーストラリア 芝3000 カロー 3:22.0
3 未勝利ハードル戦 オーストラリア 障3000 ウィリア 3:29.8
3 ハンディキャップ オーストラリア 芝2680 カロー 2:50.6
7 GIアデレードC オーストラリア 芝3200 プライス 3:30.2
12 GIIIカールトンドラーフト オーストラリア 芝2500 プライス 2:38.0
7 ハンディキャップ オーストラリア 芝2500 パンパ 2:41.1
10 ハンディキャップ オーストラリア 芝2000 カリー 2:06.1
9 条件戦 オーストラリア 芝1600 ガードナ 1:38.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
カラジの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
KahyasiイルドブルボンIle de BourbonNijinsky
Roseliere
KadissyaBlushing Groom
Kalkeen
KaramitaShantungSicambre
Barley Corn
Shahinaazヴェンチア
Cherry
STORY

旅程 — この馬の物語

1995年生まれの鹿毛のせん馬。父Kahyasi、母Karamita。

アガ・カーンの馬房から、南半球へ

1995年2月20日、アイルランド。アガ・カーン4世のスタッドで、鹿毛の一頭が生まれた。父はカヤージ。1988年のダービーステークスとアイリッシュダービーを勝った、同じ主の名馬である。母はカラミタといった。 血統表を見ると、父カヤージ、その母、さらにその母、そして母カラミタと、Kで始まる名が四代にわたって並んでいる。カラジという名も、その列に置かれた一つだった。 1998年4月、イギリスでデビューする。管理していたのはマイケル・スタウトだった。だが英国での日々は続かなかった。その年の秋、彼は競走馬として売りに出され、地球の反対側へ渡っていく。 新しい住所はオーストラリア。せん馬の彼は、平地の長距離を走る馬として生き直した。2001年、ジーロングカップを勝つ。同じ年のメルボルンカップでは4着に入り、豪州で調教された馬のなかでは最先着だった。マイルではまるで走らず、距離が延びるほど頭を上げる。そういう馬である。 厩舎はデビッド・ホールからエリック・マスグローヴへ移った。このマスグローヴが、結局は彼の最後の日まで面倒を見ることになる。

八歳の転向

2003年の春、カラジはもう八歳になっていた。3月、芝1600メートルの条件戦で9着。4月12日のハンディキャップは10着。5月のアデレードカップはGIだったが、7着に沈んでいる。平地では、これ以上の伸びしろが見えなかった。 転機はその年の8月に来た。8月5日、未勝利のハードル戦。障害への初挑戦である。結果は3着だった。 障害を跳ぶことを覚えるのに、時間はかからなかった。9月6日と9月27日、続けて勝つ。八歳にして新しい職を得たようなものだった。 翌2004年、豪州の障害戦線でカラジは主役になる。3月にハードル戦を勝ち、4月にはヤルンバクラシックハードル。このヤルンバまで、障害で主に手綱を取っていたのはダーデンだった。 6月、鞍上が替わる。ブレット・スコット。ニュージーランドに生まれ、メルボルンを拠点にする障害専門の騎手で、肘から先を車輪のように回して鞭を打つ、いわゆる風車ムチで知られていた。コンビの初戦は4着。だがその五日後のオーストラリアンハードルで、二人はいきなり勝った。7月にはグランドナショナルハードルを制し、月末のヒスケンススティープルチェイスでも3着に踏ん張っている。 九歳の馬と、三十三歳の騎手。翌春から三年続けて、この二人は日本へ渡る。

二〇〇五年四月十六日 ― 空馬が走るなかで

中山グランドジャンプは、大障害コースの4250メートルを走る。大竹柵と大土塁を越えるこの競走は、当時、世界でもっとも賞金の高い障害競走とされていた。JRAは海外の実績馬を招いており、豪州で障害を六つ勝った十歳のせん馬にも声がかかった。 日本での初戦は前哨戦のペガサスジャンプステークスだった。6番人気。バローネフォンテンの3着に敗れる。 それでも本番では単勝1番人気に推された。前哨戦を勝ったバローネフォンテンも、有力視されていた一頭も、この日は出走してこない。空いた席に、外国から来た十歳馬が座らされた格好である。 レースは荒れた。フォンテラが大竹柵障害で落馬して競走中止となり、鞍上を失った馬がコースに残る。空馬は2番人気のロードプリヴェイルに何度も絡んでいった。その混乱のただ中を、カラジは淡々と飛び続けた。 4分50秒4。日本のJ・GIを、豪州の十歳馬が持っていった。

クビ差 ― 七つ下の竜と

2006年、カラジは二度目の来日をした。前哨戦のペガサスジャンプステークスはテレジェニックの2着。前年と同じで、本番前の一戦は勝てない。 1番人気はテイエムドラゴンだった。前年暮れの中山大障害を九馬身差で勝ち、3月の阪神スプリングジャンプも制した四歳馬で、単勝は2.3倍。カラジは2番人気に退いた。十一歳と四歳。七つ違いの相手である。 最後の直線でクビ差を争ったのは、この二頭だった。並んで、譲らない。スコットの風車ムチが連打されるなか、わずかに前へ出ていたのはカラジのほうだった。 連覇は、ゴーカイに続く史上二頭目になった。

十二歳の四月

2007年の春も、カラジは日本へ来た。前哨戦のペガサスジャンプステークスは、またも勝てずに終わっている。それでも本番の単勝は1番人気だった。 大障害コースには、平地のようなコーナー通過順位も、ハロンごとの時計も残らない。あとから読めるのは、飛越を終えた馬たちが最後の直線でどう並んだか、それだけである。 その先頭にいたのは、メルシーエイタイムだった。その年の暮れに中山大障害を勝つことになる馬である。カラジは外から並びかけ、じわりと捕らえ、前に出た。 そこへ、後ろからリワードプレザンが来る。 その追い込みを凌いだのも、またスコットの風車ムチだった。 十二歳の馬が、それに応えた。並ばせない。前を譲らないまま、ゴール板を過ぎる。 史上初の三連覇だった。そして十二歳での優勝は、JRAのGI競走における最年長勝利の記録として残った。

四月六日、中山

2008年、カラジは四連覇を目指して四度目の日本に来た。豪州の夏は、いつもどおり平地を走って過ごしている。暮れから3月までの六戦、一度も五着以内に入っていない。それでも中山に着けば別の馬になることを、陣営は三度、確かめている。 3月27日、中山競馬場。前哨戦へ向けた調教のさなかに、右前脚の浅屈腱炎が見つかった。腱を痛めるこの故障は、競走馬にとって重い。ペガサスジャンプステークスも、中山グランドジャンプも、走らずに終わる。十三歳。引退が決まった。 JRAは3月29日から4月5日まで、ファンからのメッセージを募った。4月6日、中山競馬場で、集まった手紙が関係者の手に渡された。 日本で走ったのは、六度だけである。そのうち三度が中山グランドジャンプの一着で、残る三度はいずれも前哨戦の敗戦だった。それだけの縁しかない外国のせん馬のために、日本の競馬場は手紙を集めたのだった。

四分五十秒の三年

2005年、4分50秒4。2006年、4分50秒8。2007年、4分50秒4。 十歳、十一歳、十二歳。歳を重ねるほど遅くなるはずの馬が、同じコースを三年続けて、コンマ四秒の幅に収めていた。速さで押し切ったのではない。同じ場所へ、同じ精度で戻ってきただけである。障害馬の凄みは、たぶんそちらにある。 ブレット・スコットは2010年に騎手を引退し、メルボルン近郊のモーニントンで厩舎を開いた。2021年3月には調教場での事故で重傷を負う。それでも彼は戻ってきた。障害騎手の一生は、落ちて、起きて、また馬に向かう繰り返しである。中山の直線で腕を回し続けた男のその後も、同じ形をしていた。 カラジは豪州へ帰り、マスグローヴ厩舎で歳を取った。2018年、オーストラリア競馬の殿堂に迎えられる。2024年9月23日、加齢による衰えが見えたため、苦痛を避ける措置がとられた。二十九歳。現役を退いてから十六年、預かったのは最後まで同じ厩舎だった。 日本での六戦と、中山に残された手紙の束。それがこの馬と日本のあいだにあったすべてである。三度の四月に呼ばれ、三度とも先頭でゴール板を過ぎた鹿毛は、季節の逆さまな国の馬房で、静かに老いた。

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