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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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カンチェンジュンガのイメージビジュアル
カンチェンジュンガKangchenjunga
Kangchenjunga

カンチェンジュンガ

通算成績24戦6勝

獲得賞金16,122万円

生年月日 2020.03.23(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
カンチェンジュンガの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 GII京王杯スプリングカップ 東京 芝1400 13人気 M.ディー 1:19.7 上り32.6映像
15 GIII阪急杯 阪神 芝1400 6人気 坂井瑠星 1:20.3 上り34.6映像
13 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 17人気 藤岡佑介 1:32.5 上り33.1映像
9 GIスプリンターズS 中山 芝1200 8人気 坂井瑠星 1:07.6 上り32.8映像
1 GII産経賞セントウルS 阪神 芝1200 8人気 川田将雅 1:07.4 上り33.1映像
7 GII京王杯スプリングカップ 東京 芝1400 7人気 幸英明 1:19.2 上り33.0映像
10 GI高松宮記念 中京 芝1200 9人気 武豊 1:09.0 上り34.5映像
1 GIII阪急杯 京都 芝1400 7人気 幸英明 1:21.7 上り34.0映像
7 GIII京阪杯 京都 芝1200 6人気 団野大成 1:08.2 上り33.1映像
8 Lオーロカップ 東京 芝1400 3人気 戸崎圭太 1:20.9 上り33.2
6 L夕刊フジ杯オパールS 京都 芝1200 7人気 西村淳也 1:07.6 上り33.2
6 GIIICBC賞 中京 芝1200 8人気 斎藤新 1:07.9 上り33.1映像
4 GIIITV西日本北九州記念 小倉 芝1200 10人気 田口貫太 1:08.3 上り34.9映像
5 L春雷S 中山 芝1200 9人気 西村淳也 1:07.3 上り33.1
1 下関S 小倉 芝1200 3人気 北村友一 1:09.0 上り34.4
1 周防灘特別 小倉 芝1200 6人気 西村淳也 1:08.6 上り34.1
8 小郡特別 小倉 芝1200 3人気 西村淳也 1:09.1 上り35.1
12 西日本新聞杯 小倉 芝1200 2人気 藤岡康太 1:08.9 上り34.9
8 GIII葵S 京都 芝1200 10人気 藤岡康太 1:07.8 上り32.7映像
1 3歳1勝クラス 阪神 芝1200 4人気 藤岡康太 1:09.0 上り34.3
5 3歳1勝クラス 阪神 芝1200 3人気 武豊 1:09.4 上り33.9
1 3歳未勝利 小倉 芝1200 6人気 西村淳也 1:10.6 上り36.2
6 3歳未勝利 小倉 芝1200 5人気 今村聖奈 1:10.3 上り35.7
6 2歳新馬 阪神 ダ1400 1人気 西村淳也 1:28.1 上り40.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
カンチェンジュンガの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ビッグアーサーBig ArthurサクラバクシンオーSakura Bakushin Oサクラユタカオー
サクラハゴロモ
シヤボナSiyabonaKingmambo
Relish
クェスタボルタノヴェリストNovellistMonsun
Night Lagoon
ワイドサファイアアグネスタキオンAgnes Tachyon
クイーンソネット
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牡馬。父ビッグアーサー、母クェスタボルタ。主な勝ち鞍は阪急杯・産経賞セントウルS。

五つの宝の山 ― 名前と血

カンチェンジュンガ。チベット語で「偉大な雪の五つの宝庫」を意味する、標高八五八六メートルの山の名である。エベレスト、K2に次ぐ世界第三の高峰。ネパールとインド・シッキムの国境に、五つの峰を連ねてそびえる。この巨大な名を負わされた鹿毛は、二〇二〇年三月、サンバマウンテンファームに生まれた。 父はビッグアーサーサクラバクシンオーの血を引き、二〇一六年の高松宮記念を制した快速馬である。母クェスタボルタ、その父はドイツの強豪ノヴェリスト。母系をたどれば母の母ワイドサファイアの一族に行き着き、叔父には二〇二〇年のかしわ記念を逃げ切ったワイドファラオ、叔母には愛知杯を勝ったワイドラトゥールがいる。短距離の父に、勝負根性を伝える母系。山の名を背負った以上、この馬もまた、いつか高みへ登らねばならなかった。

頂から始まった躓き ― デビュー

皮肉なことに、旅は頂の側から始まった。二〇二二年十二月四日、阪神のダート一四〇〇メートル。デビュー戦のカンチェンジュンガは単勝一番人気に推されながら、六着に沈む。期待という名の高みから、いきなり足を滑らせたのだ。 陣営は芝へ矛先を変えた。三歳を迎えた二〇二三年二月十九日、小倉の未勝利戦。西村淳也を背に、砂で燃え尽きなかった脚がようやく芝で火を噴き、初勝利をつかむ。だがそれは頂ではなく、長い登坂の、ほんの取りつきに過ぎなかった。

小倉の坂道 ― 二年越しの登坂

そこからの道のりは、地味で、長い。三歳春の葵ステークスは八着。二番人気に支持された秋の西日本新聞杯は十二着と大きく崩れ、重賞の壁は厚かった。 四歳の冬、馬は小倉の芝で我慢を覚える。周防灘特別、下関ステークスと連勝し、条件戦を一段ずつ登っていく。夏の北九州記念では十番人気ながら四着に食い込み、オープンでも足踏みの届く高さにいることを示した。派手な勝ち鞍はない。それでも、一戦ごとに標高を上げていく足取りだけは、確かだった。

五歳の春、大外から ― 阪急杯

二〇二五年二月二十二日、京都の芝一四〇〇メートル、阪急杯。五歳になったカンチェンジュンガは、七番人気の伏兵に過ぎなかった。手綱を取るのはベテラン幸英明。 道中は中団。四コーナーを回っても、前には逃げ粘るアサカラキングの影がある。だが直線、大外に持ち出された鹿毛は、外から豪快に伸びた。ゴール前で粘る先頭をきっちり飲み込み、先頭でゴール板を過ぎる。デビューからおよそ二年二か月、十七戦目にして、ついに重賞のタイトルを手にした。低いところから登ってきた馬の、最初の頂だった。

セントウルの差し切り ― 頂へ最も近づいた日

頂は、まだ上にあった。三月の高松宮記念は、父ビッグアーサーが九年前に制した舞台である。武豊を背に挑んだが、十着。父の勝ったレースには、届かなかった。 それでも馬は登るのをやめない。九月七日、阪神のセントウルステークス。八番人気の低評価をよそに、川田将雅を背に後方三、四番手で脚をため、直線で外へ持ち出す。早めに抜け出したのは、GIスプリンターズステークスを勝ったママコチャ。その一枚上の実力馬を、外からきっちり差し切った。重賞二勝目。自らの標高を、また一段引き上げた瞬間だった。 だが、そこがこの馬の稜線だった。続くスプリンターズステークスは九着、マイルチャンピオンシップは十三着。GIという最後の岸壁には、指がかからない。カンチェンジュンガは、自分の高さまでは確かに登り、その先の頂には手が届かなかった。

派手な顔に、またどこかで ― 別れ

翌二〇二六年、連覇を狙った阪急杯は十五着、京王杯スプリングカップも十二着と、稜線を下り始めた気配があった。そして初夏、右前に浅屈腱炎を発症する。九か月以上の休養が要ると診断され、六歳の馬にそれは終わりを意味した。六月二十五日付で登録を抹消。二十四戦六勝、重賞二勝を刻んだ稜線を、静かに下りた。 管理した庄野靖志は、開業以来世話になってきた幅田昌伸オーナーの馬で重賞を勝てたことを喜んだ。展開に恵まれた面はありながらも、うまくはまったときの末脚は強烈だった、と振り返る。「ハマったときの脚はすごかった」[^1]。そして、あの派手な顔に、またどこかで会いたい、と別れを惜しんだ。 行き先は阪神競馬場。かつて差し切ったその芝を、今度は乗馬として歩く。世界第三の高峰と同じ名を持ちながら、この馬が登ったのは、その頂ではなかった。それでも、五つの宝の山がそうであるように――最も高い一点でなくとも、空へ向かって確かに伸びた稜線は、見上げる者の記憶に残る。あの派手な顔とともに。

出典:東京スポーツ「浅屈腱炎発症のカンチェンジュンガはこのまま引退へ 庄野靖志調教師『ハマったときの脚はすごかった』」2026年6月18日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/72867、閲覧日:2026年7月17日。

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