名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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カナテープのイメージビジュアル
カナテープKana Tape
Kana Tape

カナテープ

通算成績21戦5勝

獲得賞金15,707万円

生年月日 2019.02.21(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
カナテープの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 10人気 松山弘平 1:31.7 上り33.0映像
6 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1600 7人気 松山弘平 1:32.2 上り33.2映像
15 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 7人気 D.レーン 2:12.6 上り36.1映像
3 GIIアイルランドT 東京 芝1800 5人気 佐々木大輔 1:45.8 上り32.9映像
1 GIII関屋記念 新潟 芝1600 1人気 R.キング 1:31.0 上り32.5映像
2 GIII府中牝馬S 東京 芝1800 3人気 大野拓弥 1:46.2 上り35.2映像
1 初音S 東京 芝1800 3人気 R.キング 1:45.5 上り33.7
6 嵯峨野S 京都 芝1800 7人気 小崎綾也 1:46.8 上り33.9
4 ユートピアS 東京 芝1800 3人気 佐々木大輔 1:46.8 上り33.7
3 佐渡S 新潟 芝1400 1人気 松山弘平 1:19.6 上り34.8
2 分倍河原S 東京 芝1600 1人気 J.モレイラ 1:32.6 上り34.3
3 豊橋S 中京 芝1600 2人気 藤岡康太 1:33.4 上り33.8
4 常総S 中山 芝1800 3人気 田辺裕信 1:47.0 上り33.4
3 ユートピアS 東京 芝1800 1人気 J.モレイラ 1:46.3 上り33.4
1 tvk賞 東京 芝1800 1人気 松山弘平 1:47.1 上り32.6
2 葉山特別 東京 芝1600 1人気 D.レーン 1:31.6 上り33.9
2 4歳以上2勝クラス 東京 芝1800 3人気 J.モレイラ 1:48.1 上り33.3
10 4歳以上2勝クラス 中山 芝1800 3人気 横山和生 1:48.0 上り36.2
1 3歳以上1勝クラス 東京 芝1800 4人気 福永祐一 1:48.0 上り33.2
8 3歳以上1勝クラス 新潟 芝1600 1人気 福永祐一 1:34.0 上り33.6
1 3歳新馬 東京 芝1800 2人気 横山武史 1:49.1 上り33.9

血統

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カナテープの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ロードカナロアLord KanaloaキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
レディブラッサムStorm Cat
サラトガデューSaratoga Dew
ティッカーテープTicker TapeRoyal ApplauseワージブWaajib
Flying Melody
Argent Du BoisSilver Hawk
Wiener Wald
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牝馬。父ロードカナロア、母ティッカーテープ。主な勝ち鞍は関屋記念。

名前の半分 ― 海を渡った母

名前の半分は、母のものである。 ティッカーテープ——英国に生まれ、大西洋を渡った米国で走り続けた鹿毛の牝馬。2004年にはアメリカンオークスとクイーンエリザベス2世チャレンジカップ、芝のGIを二つ制し、通算31戦8勝。息の長いキャリアを走り抜いた、タフネスそのものの名牝だった。 現役を終えた母は太平洋を渡り、北海道安平町のノーザンファームで繁殖牝馬となる。2019年2月21日に生まれたロードカナロア産駒の鹿毛の牝馬は、その年のセレクトセールで8400万円(税別)で落札され、C.フィプケの所有馬として美浦・堀宣行厩舎の門を叩いた。父の「カナ」に、母の「テープ」。カナテープと名付けられた仔の血には、遠い海の記憶がもうひとつ潜んでいる——4代母シャペルオブドリームズは、あのストームキャットの半妹。そして父ロードカナロアもまた、母の父にストームキャットを持つ。海を渡って交わった血が、この牝馬のどこかで静かに響き合っていた。

三歳の冬 ― 長い階段の一段目

2022年1月30日、東京芝1800メートルの新馬戦。横山武史を背にした3歳のカナテープは、直線で先頭に立つと後続を突き放し、初陣を白星で飾った。素質の片鱗は、確かにあった。だが、ここから頂までの階段は、思いのほか長かった。 夏の新潟では1番人気に推されて8着。秋の東京で福永祐一とともに2勝目を挙げたものの、明けて4歳になると、あと一歩だけがどうしても届かない。モレイラで0秒1差の2着、レーンでタイム差なしの2着。秋には松山弘平を背にtvk賞を上がり32秒6の鋭い脚で制して3勝目を掴んだが、続くユートピアSは単勝1.5倍の支持を裏切る3着。3勝クラス——オープンへの最後の壁が、この牝馬の前に立ちはだかった。

足踏み ― 五歳の一年

2024年、5歳のカナテープは一度も勝てなかった。豊橋Sで3着、単勝2.1倍に推された分倍河原Sは0秒1差の2着、夏の佐渡Sも1番人気で3着。力が足りないわけではない。それなのに、ゴールの瞬間だけ、いつも前に誰かの影がいた。 秋のユートピアSで4着に敗れ、暮れの京都・嵯峨野Sでは、ついに単勝53.2倍の7番人気まで評価を落として6着。デビューから3年近くが過ぎ、条件戦の馬群の中で6歳の冬が近づいていた。それでも陣営は、この牝馬を走らせ続けた。

目覚め ― 海を渡ってきた騎手

転機は、地球の反対側からやって来た。 2025年2月9日、東京の初音S。鞍上は、短期免許で来日中のレイチェル・キング。英国オックスフォードシャーに生まれ、オーストラリアを拠点に戦う騎手である。初めてカナテープに跨ったキングは、タイム差なしの接戦を制してみせた。デビューから丸3年——カナテープは、ようやくオープンの扉を開けた。 初めての重賞挑戦は、6月の府中牝馬S。単勝6.6倍の3番人気で臨み、直線で粘り強く踏ん張って2着に食い込んだ。重賞でも、この末脚は通用する。海を渡った母の血が、6歳の初夏、ようやく沸点に近づきつつあった。

一分三十一秒〇 ― 新潟の夏

2025年7月27日、関屋記念。ハンデ54キロ、単勝4.4倍の1番人気。鞍上には、夏の短期免許で戻ってきたキングがいた。来日初週の函館2歳Sをエイシンディードで逃げ切ったばかりの騎手と、初タイトルを狙う6歳牝馬の再会だった。 18頭立てのマイル戦は速い流れになった。キングは慌てず、道中は後方でリズムを守る。直線、馬場の真ん中へ持ち出すと、カナテープは上がり32秒5の末脚で前を飲み込みにかかった。粘る10番人気オフトレイル、迫る2番人気ボンドガール——ゴール前、その2頭をまとめてクビ差、差し切った。2着は2頭の同着。勝ちタイム1分31秒0は、従来の記録を0秒5も塗り替えるコースレコードだった。 デビューから3年半、17戦目で掴んだ初めての重賞タイトル。キングにとっては函館2歳Sに続く、JRA史上初となる女性騎手による2週連続の重賞制覇。そして調教師の堀宣行にとっては、史上7人目となるJRA全10場重賞制覇を完成させる一勝でもあった。レース後のキングは、重賞を勝てたこと、そして一度乗った馬でまた勝てたことが嬉しいと声を弾ませた。速い流れをリラックスして運んだ相棒は素晴らしい瞬発力の持ち主で、最後に良い脚を見せ、すべての力を出し切ってくれた、と。

テープの向こう ― 日高の春

重賞ウイナーとして迎えた秋、東京のアイルランドTでは好位から直線で早めに抜け出す積極的な競馬を見せ、ゴール前で捉えられての3着。初めて経験する2200メートルのエリザベス女王杯は15着に敗れた。明けて7歳、阪神牝馬Sは6着、ヴィクトリアマイルは10着——勝ったのはいずれもエンブロイダリー。東京のマイルが、結果として最後の直線になった。 2026年5月23日、カナテープはJRAの競走馬登録を抹消した。通算21戦5勝。北海道日高町の坂東牧場で、繁殖牝馬としての第二の馬生が始まる。 英国に生まれ、米国でGIを二つ勝ち、海を渡って母になったティッカーテープ。その娘は安平に生まれ、長い条件戦の日々の果てに、6歳の夏の新潟でコースレコードを刻んだ。「テープ」という名の響きには、ゴールで待つ白い線を重ねたくなる。長い長い助走の末に、この牝馬は確かに、誰より先にそこへ飛び込んだ。名前のもう半分を手渡す番が来ただけのことだ。その血を継ぐ仔が、いつかどこかの直線で同じ景色を見る日を、静かに待ちたい。

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