名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ジャンタルマンタルのイメージビジュアル
ジャンタルマンタルJantar Mantar
Jantar Mantar

ジャンタルマンタル

通算成績11戦6勝

獲得賞金71,249万円

生年月日 2021.03.21(令和3年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ジャンタルマンタルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
13 GIチャンピオンズマイル シャティン 芝1600 1人気 川田将雅 映像
1 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 1人気 川田将雅 1:31.3 上り33.1映像
2 GII富士S 東京 芝1600 1人気 川田将雅 1:31.8 上り33.3映像
1 GI安田記念 東京 芝1600 2人気 川田将雅 1:32.7 上り34.2映像
13 GI香港マイル シャティン 芝1600 2人気 川田将雅 映像
1 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 2人気 川田将雅 1:32.4 上り33.9映像
3 GI皐月賞 中山 芝2000 3人気 川田将雅 1:57.2 上り34.9映像
2 GIII共同通信杯 東京 芝1800 1人気 川田将雅 1:48.2 上り32.6映像
1 GI朝日杯フューチュリティステークス 阪神 芝1600 1人気 川田将雅 1:33.8 上り34.8映像
1 GIIデイリー杯2歳S 京都 芝1600 1人気 鮫島克駿 1:34.5 上り34.7映像
1 2歳新馬 京都 芝1800 2人気 鮫島克駿 1:47.4 上り34.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ジャンタルマンタルの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
パレスマリスCurlinSmart Strike
Sherriff's Deputy
パレスルーマーPalace RumorRoyal Anthem
Whisperifyoudare
インディアマントゥアナIndia MantuanaWilburnBernardini
Moonlight Sonata
Speed WagonTomorrows Cat
Rajica
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの黒鹿毛の牡馬。父パレスマリス、母インディアマントゥアナ。主な勝ち鞍は朝日フューチュリティ・NHKマイルC・安田記念。

インドの空を測る名 ― 名前と血

母インディアマントゥアナは、アメリカでレッドカーペットハンデキャップ(米GⅢ)を勝った牝馬だった。この仔を宿したまま、2020年冬のキーンランドセールで海を渡り、社台ファームへ買われていく。だから2021年3月に日本で生まれた黒鹿毛の牡馬は、生まれる前からもう旅をしていた。 ジャンタル・マンタルとは、18世紀のインドでジャイ・シング2世が築いた天文観測施設の名である。ジャイプルやデリーに残る、石とレンガで空を測るための巨大な器械群。世界遺産にも登録された、精密の塊だ。母の名に宿る「インディア(India)」から、その国の空を測る器械の名へ――名は母系がつけた。 父パレスマリスは、2013年にアメリカのベルモントステークスを制したクラシックホースだ。その半弟には、日本で天皇賞(春)を勝ったジャスティンパレス、ステイヤーズステークスを勝ったアイアンバローズがいる。父の母パレスルーマーは、長い距離をこなす強者を産む一族だった。日本にはあまり馴染みのない配合で、新しい風になるかもしれない――高野友和はそう語った。長距離の血から、なぜマイルの王が生まれたのか。その答えを、このときはまだ誰も知らない。

無傷の器械 ― 二歳王者

2023年10月、京都の芝1800m、新馬戦。鞍上は鮫島克駿。好位から抜け出して初陣を飾ると、続くデイリー杯2歳Sも鮫島とともに完勝した。 そして暮れの朝日杯フューチュリティステークス、手綱は川田将雅に渡る。中団のインで脚をため、直線で馬群を割って一気に突き抜けた。2着エコロヴァルツに1馬身1/4。1分33秒8。デビューから無傷の3連勝で、2歳マイル王の座に就いた。この年の最優秀2歳牡馬。危なげのない勝ちっぷりだけが、三戦に共通していた。川田とジャンタルマンタルの旅は、この日から始まる。

二千は、わずかに長い ― 距離の答え

明けて2024年、共同通信杯。1番人気に応えきれず2着に敗れる。それでも繰り出した上がりは32秒6、末脚の鋭さだけは際立っていた。 陣営はクラシックの本丸、皐月賞へ向かう。中山の2000m、川田は前へ出て強気に運び、直線の入口では先頭に立った。だが残り100m、脚色がわずかに鈍る。勝ったのは無敗のジャスティンミラノ、レコードの1分57秒1。2着コスモキュランダ、ジャンタルマンタルは3着だった。父の一族が伝えるのは長距離の血。しかしこの馬の器は、2000mではほんの少しだけ長かった。距離が、静かに答えを返していた。

一番強いマイル馬になる ― NHKマイルC

中2週で、舞台をマイルへ戻す。立ちはだかるのは、桜花賞2着から1番人気に推されたアスコリピチェーノ。皐月賞3着と桜花賞2着――惜敗を舐めた二頭の、雪辱の一戦だった。 ジャンタルマンタルは危なげなく抜け出し、2.5馬身の差をつけて完勝する。1分32秒4。距離を短く切り取った瞬間、この馬は別の生き物になった。川田はレース後、この馬はいずれ日本で一番強いマイル馬になれると言い切った。まだ古馬の一線級と戦う前の、大きな予言だった。

シャティンの壁 ― 初めての大敗

2024年12月、香港マイル。2番人気で臨んだ初の国際GIだった。だが4コーナーの手前から、いつもなら湧いてくる持続する脚が、ついに湧いてこない。13着。ゴールを過ぎた馬体は目に見えて減り、疲労は深く残った。 無傷の器械にも、越えられない壁があった。海の向こう、シャティンの長い直線は、この馬に初めての沈黙を強いた。旅の途上に落ちた、大きな影である。

証明 ― 春秋のマイル王

山元トレーニングセンターと高野厩舎が時間をかけて立て直し、2025年6月、安田記念。好位の3番手から抜け出し、2着ガイアフォースに1馬身半、3着ソウルラッシュ。1分32秒7。世代のマイル王は、古馬を束ねる日本のマイル王へと登りつめた。川田は言った。「馬自身が本当に日本で一番強いマイル馬なんだと証明してくれたレースだった」[^1]。NHKマイルで放った予言が、一年越しに撃ち抜かれた瞬間だった。高野は、この馬の第二章が始まったと言葉を継いだ。 秋、富士Sは1番人気で2着。叩き台を経て、マイルチャンピオンシップ。京都で貫禄の差し切りを決め、1番人気に応える。2着は安田記念に続いて、またもガイアフォースだった。朝日杯フューチュリティステークス、NHKマイルC、安田記念、マイルチャンピオンシップ――牡馬が出走できるJRAの芝マイルGIのすべてを、史上初めて一頭で勝ち切った。同一年の春秋マイルGI制覇は史上9頭目。2025年、最優秀マイラー。

出典:スポーツナビ「【安田記念】“日本で一番強いマイル馬”を証明したジャンタルマンタル「第二章が始まった」」2025年6月9日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/2025060900009-spnaviow 、閲覧日:2026年7月16日。

旅の終い ― 器械が遺すもの

2026年4月、再びシャティン。チャンピオンズマイル、1番人気。好位で流れには乗ったものの、直線に向くと早々に手応えが鈍り、後方へ沈んでいく。13着。二度、香港の直線だけが、このマイル王を黙らせた。国内では敵なし、しかし海を越えた一点だけは、ついに測り切れなかった。 香港からの回復が思うように進まず、6月30日、引退が決まる。向かう先は北海道安平町の社台スタリオンステーション。長距離の血から生まれたマイルの王が、こんどは血を伝える側に回る。高野は「マイルでの圧倒的な能力はスピードの持続力が最大の源。必ずいい子を出してくれると思います」[^1]と、旅の相棒を送り出した。 インドで石が空を測る器械の名を負い、日本のマイルという一点を、これ以上ないほど精密に測り切った黒鹿毛。最後の一戦はシャティンの13着に終わった。それでも府中と京都のターフに刻んだ時計は、消えない。

出典:中日スポーツ「ジャンタルマンタル電撃引退 香港チャンピオンズM13着から回復進まなかったマイルG1・4勝の名マイラー、今後は北海道で種牡馬に」2026年6月30日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1274469 、閲覧日:2026年7月16日。

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