名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ジャックドールのイメージビジュアル
ジャックドールJack d'Or
Jack d'Or

ジャックドール

通算成績17戦8勝

獲得賞金49,004万円

生年月日 2018.04.08(平成30年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ジャックドールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 5人気 藤岡佑介 1:58.4 上り37.9映像
6 GII札幌記念 札幌 芝2000 1人気 武豊 2:03.2 上り37.7映像
5 GI安田記念 東京 芝1600 5人気 武豊 1:31.7 上り34.0映像
1 GI大阪杯 阪神 芝2000 2人気 武豊 1:57.4 上り35.3映像
7 GI香港カップ シャティン 芝2000 2人気 武豊 映像
4 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 3人気 藤岡佑介 1:57.8 上り33.5映像
1 GII札幌記念 札幌 芝2000 3人気 藤岡佑介 2:01.2 上り37.3映像
5 GI大阪杯 阪神 芝2000 2人気 藤岡佑介 1:58.9 上り36.3映像
1 GII金鯱賞 中京 芝2000 1人気 藤岡佑介 1:57.2 上り34.6映像
1 L白富士S 東京 芝2000 1人気 藤岡佑介 1:57.4 上り34.7
1 ウェルカムS 東京 芝2000 3人気 藤岡佑介 1:58.4 上り34.3
1 浜名湖特別 中京 芝2000 1人気 藤岡康太 2:01.5 上り33.2
1 3歳以上1勝クラス 中京 芝2000 1人気 藤岡佑介 1:59.4 上り34.6
5 LプリンシパルS 東京 芝2000 4人気 三浦皇成 1:59.9 上り34.6
1 3歳未勝利 阪神 芝2000 1人気 藤岡佑介 2:00.3 上り34.8
2 2歳未勝利 阪神 芝2000 1人気 藤岡佑介 2:01.6 上り35.5
2 2歳新馬 中山 芝2000 1人気 斎藤新 2:05.3 上り35.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ジャックドールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
モーリスMauriceスクリーンヒーローScreen HeroグラスワンダーGrass Wonder
ランニングヒロイン
メジロフランシスカーネギーCarnegie
メジロモントレー
ラヴァリーノRavarinoUnbridled's SongUnbridled
Trolley Song
Sous EntenduShadeed
It's in the Air

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの栗毛の牡馬。父モーリス、母ラヴァリーノ。主な勝ち鞍は大阪杯・金鯱賞・札幌記念。

一族の栗毛 ― 栗東・藤岡厩舎

2018年4月8日、北海道日高町のクラウン日高牧場で栗毛の牡馬が生まれた。父は現役時代にGIを6勝した名中距離馬モーリス、母は輸入牝馬ラヴァリーノ、母の父はアンブライドルズソング。馬主は前原敏行。名は、人名の「ジャック」に、フランス語で黄金を意味する「ドール(d'Or)」を重ねたもの。ジャックドール――黄金の名を負って、この馬は世に出た。 預けられたのは、栗東の藤岡健一厩舎。そこは一つの家族の場所でもあった。健一の長男・佑介と次男・康太は、ともにJRAの騎手。父が馬を育て、息子たちが手綱を取る。ジャックドールは、その一族の輪のなかで走り出すことになる。 2020年12月6日、中山の新馬戦。鞍上は斎藤新で、1番人気に応えきれず2着。2戦目から長男・佑介が手綱を取ったが、これも2着。デビューは足踏みから始まった。3戦目の2021年4月25日、阪神の未勝利戦で佑介を背にようやく勝ち上がる。ここから、佑介とジャックドールの旅が本当に動き出す。

秋からの五連勝 ― 逃げるという答え

春に一度、ダービーを見据えたプリンシパルステークスへ矛先を向けたが、ここは5着。クラシックの舞台には届かなかった。しかし秋になって、この馬は自分の走り方を見つける。ハナを切って、そのまま止まらない。逃げこそが、ジャックドールの答えだった。 9月の1勝クラスを逃げ切ると、10月3日の浜名湖特別。この一戦の鞍上は、佑介の弟・康太だった。父が管理し、兄と弟がかわるがわる背に跨る――文字どおり一族の馬を、康太もまた逃げ切って勝たせた。続くウェルカムステークス、そして2022年1月の白富士ステークス。押し出すように先手を取り、後続を突き放す競馬で、勝ち星を積み上げていく。気づけば五連勝。上がり馬は、重賞の舞台へと駒を進めた。

金鯱賞、レコードの逃げ

2022年3月13日、中京の金鯱賞。1番人気に推されたジャックドールは、いつものようにハナへ立った。誰にも競りかけさせず、自分のリズムで刻み、直線でも脚色は衰えない。勝ち時計は1分57秒2。中京芝2000mのコースレコードを、従来から1秒1も削り取る驚異的な逃げだった。 五連勝で、重賞初制覇。逃げ馬としての完成形を、佑介とともに世に示した一戦である。次の目標は、その先にある。舞台を阪神に移した、同じ芝2000mのGI・大阪杯だった。

大阪杯の落鉄 ― 届かないGI

2022年4月3日、大阪杯。2番人気に支持され、いつものように逃げた。だが歯車は噛み合わない。右トモの落鉄、スタートの立ち遅れ、そして1000m通過58秒8のハイペース。二の脚が続かず、直線で捕まって5着。連勝は、GIの入口で止まった。 立て直しは早かった。8月の札幌記念では、無理にハナへ行かず好位につけ、4コーナーで先頭をうかがって直線で抜け出す競馬を披露。逃げるだけの馬ではないことを示して、3番人気ながら完勝した。 そして10月の天皇賞(秋)。この年はパンサラッサが単騎で大逃げを打ち、1000mを57秒4で通過する超ハイペースを演出する。ジャックドールは先団からこれを追い、直線で早めに動いて前をのみにかかったが、逃げ粘るパンサラッサとの差は縮まらない。さらに後方から、3歳のイクイノックスがすべてを差し切っていった。ジャックドールは4着。GIの頂は、佑介とのコンビでは、あと一歩のところで遠かった。

武豊を迎える

陣営は、年末の香港カップに向けて大きな決断をする。鞍上に、武豊を迎えたのだ。父が育て、長男が主戦を張り続けてきた馬に、レジェンドが跨る。 2022年12月11日、シャティンの香港カップ。2番人気に推されたが、スタートが決まらず中団からの競馬になり、持ち味の逃げを封じられて7着。異国での初コンビは、噛み合わないまま終わった。それでも、この乗り替わりが次の春に実を結ぶ。

大阪杯 ― 一年越しの逃げ切り

2023年4月2日、大阪杯。ちょうど一年前、逃げて散った同じ阪神芝2000mに、ジャックドールは2番人気で戻ってきた。 武豊は、無理をしなかった。力むことなくハナへ立ち、前半800mを47秒5でゆったりと運ぶ。向正面からじわりとペースを引き上げ、持久力の勝負に持ち込むと、直線ではスターズオンアースの猛追を二枚腰でしのぎきった。勝ち時計1分57秒4はレースレコード。四度目の挑戦で、ついにGIの頂に立った。 「1、2コーナーで少し力みかけたけれど、馬自身が理解してくれていいペースで運ぶことができた」[^1]。武豊はこの勝利でJRA・GI通算80勝とし、岡部幸雄が持っていたJRA最年長GI勝利記録を塗り替え、54歳での史上最高齢GI制覇を果たした。一年前に落鉄と展開に泣いた逃げが、今度は文句のつけようのない形で決着した。

出典:テレ東スポーツ「【大阪杯】GI初制覇のジャックドール 成長を感じた、1年ぶりの逃げ 武豊騎手「馬自身が理解してくれた」」2023年4月2日配信、https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2023/04/027839.html、閲覧日:2026年7月20日。

頂の先で ― そして佑介が戻る

GI馬になったジャックドールは、その先で壁にぶつかる。6月の安田記念は、初めてのマイル戦。1600mでも逃げて直線でいったんは先頭に立ったが、残り100mで外から差し込まれて5着。距離の質の違いが出た。8月の札幌記念は1番人気に支持されながら、逃げずに好位で脚を溜める競馬を選び、直線で伸びを欠いて6着に沈んだ。 そして2023年10月29日、天皇賞(秋)。鞍上は、再び藤岡佑介だった。デビュー2戦目から手綱を取り、金鯱賞と札幌記念を勝ち、それでもGIには手が届かなかった主戦が、最後にもう一度この馬を駆る。ハイペースで逃げたが、直線で力尽きて11着。そしてこの秋も、府中の頂に立ったのは――前年と同じ、イクイノックスだった。これが、ジャックドールの現役最後の一戦になった。

旅の続き

2025年2月19日、右前脚屈腱炎の再発により、ジャックドールの現役引退が発表された。17戦8勝。金鯱賞、札幌記念、そして大阪杯。逃げるという孤独な選択で、前に誰も置かずに走り抜いた栗毛は、レックススタッドで種牡馬としての生を歩み始める。 この馬を送り出した一族には、その後も時間が流れた。2024年4月、弟の康太が阪神での落馬事故により、35歳で世を去る(4月6日に落馬し、10日に逝去)。かつてこの馬を浜名湖で逃げ切らせた次男の名は、成績表の一行に残った。兄の佑介は2025年、父・健一と同じ調教師への道を選び、試験に合格する。手綱を置いた男は、今度は馬を育てる側へ回った。 母ラヴァリーノの血も途切れない。半弟のディナースタは障害の重賞を勝ち、一族の血をターフに繋いでいる。ハナを切って止まらなかった黄金の名の馬は、走り終えたいま、次の生の入口で静かに草を食んでいる。

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