名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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イフェイオンのイメージビジュアル
イフェイオンIpheion
Ipheion

イフェイオン

通算成績14戦2勝

獲得賞金6,151万円

生年月日 2021.04.01(令和3年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
イフェイオンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
OP鞍馬S 京都 芝1200 14人気 吉村誠之助
10 OP米子城S 阪神 芝1200 9人気 北村友一 1:08.3 上り33.7
8 L淀短距離S 京都 芝1200 9人気 鮫島克駿 1:09.3 上り34.0
15 OP青函S 函館 芝1200 7人気 北村友一 1:10.7 上り36.8
14 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1600 11人気 北村友一 1:34.2 上り34.8映像
11 GIII愛知杯 中京 芝1400 4人気 川又賢治 1:21.3 上り36.6映像
5 LニューイヤーS 中山 芝1600 7人気 津村明秀 1:32.7 上り34.6
6 GIIIターコイズS 中山 芝1600 5人気 戸崎圭太 1:33.4 上り35.1映像
7 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 4人気 西村淳也 1:47.7 上り34.9映像
5 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 13人気 西村淳也 1:33.2 上り34.4映像
11 GI桜花賞 阪神 芝1600 8人気 西村淳也 1:32.9 上り34.2映像
1 GIIIフェアリーS 中山 芝1600 5人気 西村淳也 1:34.0 上り34.8映像
1 2歳未勝利 京都 芝1600 2人気 西村淳也 1:33.3 上り34.3
3 2歳新馬 京都 芝1600 6人気 西村淳也 1:35.2 上り34.2

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
イフェイオンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
エピファネイアEpiphaneiaシンボリクリスエスSymboli Kris SKris S.
Tee Kay
シーザリオCesarioスペシャルウィークSpecial Week
キロフプリミエールKirov Premiere
イチオクノホシゼンノロブロイZenno Rob RoyサンデーサイレンスSunday Silence
ローミンレイチェルRoamin Rachel
レディインLady YingKendor
Super Vite
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの芦毛の牝馬。父エピファネイア、母イチオクノホシ。主な勝ち鞍はフェアリーS。

星の花 ― 名前と血

2021年4月1日、社台ファームに生まれた芦毛の牝馬。馬主は社台レースホース、育てるのは栗東の杉山佳明。 名は、花に由来する。イフェイオン――ハナニラ。うつむき加減に星形の花を咲かせ、「ベツレヘムの星」とも呼ばれる、白い春の草花である。その名は、母の名と静かに響き合っていた。母イチオクノホシ。一億の星。星々を宿した母から、星の形をした一輪の花へ――母系をたどれば、名前はひとつの夜空でつながっている。 母イチオクノホシはJRAで2勝を挙げ、2011年の阪神ジュベナイルフィリーズで4着、翌年のクイーンカップ、2013年の阪神牝馬ステークスで2着と、重賞のゴール前で幾度も惜しく先着を許した牝馬だった。その半妹――イフェイオンの叔母にあたるのが、2024年の福島牝馬ステークスを勝ったコスタボニータである。母が届かなかった重賞のタイトルを、一族はたしかに手にしていた。 父エピファネイアは、無敗の三冠牝馬デアリングタクトを送り出した種牡馬。その母は、オークスと米オークスを制した名牝シーザリオ。牝馬の底力が、幾重にも折り重なった配合だった。 2023年10月7日、京都の芝1600m。西村淳也を背にした新馬戦は3着。星の花は、まだ蕾のまま、旅の入口に立っていた。

妖精の名を継ぐ ― フェアリーステークス

ひと月後の未勝利戦を、2番人気に応えて危なげなく勝ち上がる。その勢いのまま、明けて2024年1月7日、中山の芝1600m――フェアリーステークスに駒を進めた。3歳牝馬による重賞であり、その名は「妖精」を意味する。星の花の名を持つ牝馬が、妖精の名を冠したレースに立った。 5番人気。外枠からのスタートに、西村は何よりも五分の発馬を心がけた。道中は好位の4、5番手。直線で反応よく加速すると、先頭へ躍り出る。だが、楽な勝利ではなかった。ゴール前、猛追するマスクオールウィン、ラヴスコールとの三つ巴。三頭が鼻面をそろえる大接戦を、クビ差だけ抜け出して制した。杉山佳明にとっても、西村淳也にとっても、これが重賞初制覇だった。 「いいスタートを切って、いいレースができた」[^1]。西村はそう振り返り、まだあどけない愛馬への期待を、隠さずに言葉にした。「まだ馬が若く、改善するところがいっぱいありますし、そこが改善できたらすごい馬になると思います。クラシックに乗れたらいいですね」[^1]。すごい馬になる――鞍上のその願いを胸に、星の花は桜の季節へと向かった。

出典:中日スポーツ「【フェアリーS】イフェイオンが差し切り重賞初V 西村淳也『いいレースができた』同レース初勝利」2024年1月7日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/833853、閲覧日:2026年7月5日。

桜、そして百四十八倍 ― クラシックの春

西村の願いどおり、イフェイオンはクラシックの舞台に立った。2024年4月7日、阪神の桜花賞。8番人気の評価に対し、結果は11着。桜は、この馬にはまだ遠かった。 だが、ひと月後の答えは違った。5月5日、東京のNHKマイルカップ。単勝は148.0倍の13番人気。人気の光は、どこにも当たっていなかった。それでもゲートが開くと、イフェイオンは上がり34秒4の脚で鋭く伸び、掲示板に届く5着まで食い込む。低評価をはねのける、意地の走りだった。桜で沈み、マイルで見せる。牝馬の春は、影と光を代わる代わる連れてきた。

旅の距離 ― 古馬へ、そして短距離へ

クラシックを終えたイフェイオンは、牝馬重賞の戦列に身を置き続ける。夏の札幌、クイーンステークスは4番人気で7着。暮れの中山、ターコイズステークスは戸崎圭太を背に6着。年が明けてニューイヤーステークスで5着に粘り、愛知杯、そしてサンスポ杯阪神牝馬ステークスへ。鞍上は西村から戸崎、津村明秀、川又賢治、北村友一へと移ろい、勝ち星からは遠ざかっていった。 それでも陣営は、この牝馬に新しい距離を探し当てる。2025年夏の青函ステークスを境に、舞台は芝1200mへ。マイルに華を咲かせた妖精は、短距離という未知の草原へ旅の向きを変えた。淀短距離ステークス、米子城ステークス。着順は伸び悩んだが、走ることをやめない一頭が、そこにいた。

2026年5月16日 ― 星の還る場所

2026年5月16日、京都競馬場。芝1200mの鞍馬ステークス。イフェイオンは14番人気で、その日もゲートに入った。 4コーナー。疾病を発症したイフェイオンは転倒し、後続のヤンキーバローズを巻き込んで、レースは止まった。右第1指関節開放性脱臼。予後不良と診断され、安楽死の措置が取られた。5歳だった。ターフの上で、星の花は、あまりに突然に旅を終えた。 フェアリーステークスの日、西村淳也は「そこが改善できたらすごい馬になる」と言った。その言葉が指した未来のすべてを、イフェイオンが歩き切れたわけではない。桜には届かなかった。それでも、母イチオクノホシが重賞のゴール前で幾度も涙をのんだ、その同じ牝馬たちの舞台で、娘は妖精の名を冠したレースを、確かに先頭で駆け抜けた。母が手にできなかった一枚を、娘は掴んでいた。 うつむいて咲く白い星形の花は、春が来るたび、地際でそっと星を灯す。華やかではない。けれど、たしかにそこで光る。イフェイオン――星の名を持つ一輪は、短くとも、その名のとおりに輝いた。

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