名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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インプレスのイメージビジュアル
インプレスImpress
Impress

インプレス

通算成績25戦9勝

獲得賞金17,140万円

生年月日 2019.03.24(令和元年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
インプレスの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 新潟ジャンプS 新潟 障3250 1人気 小牧加矢太 3:30.5 上り13.0映像
3 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4260 4人気 小牧加矢太 4:52.2 上り13.7映像
1 OPペガサスジャンプS 中山 障3350 1人気 小牧加矢太 3:45.0 上り13.4
1 障害3歳以上OP 京都 障3170 1人気 小牧加矢太 3:35.4 上り13.6
1 障害3歳以上OP 新潟 障2850 1人気 小牧加矢太 3:06.5 上り13.1
1 障害3歳以上未勝利 新潟 障2850 1人気 小牧加矢太 3:04.6 上り13.0
3 障害3歳以上未勝利 小倉 障2860 2人気 小牧加矢太 3:13.5 上り13.5
5 障害3歳以上未勝利 東京 障3000 3人気 小牧加矢太 3:26.4 上り13.8
7 OP平城京S 京都 ダ1800 10人気 団野大成 1:51.9 上り37.3
8 OP名古屋城S 中京 ダ1800 9人気 富田暁 1:53.5 上り36.6
11 GII日経新春杯 京都 芝2400 12人気 角田大河 2:25.4 上り37.2映像
13 GIジャパンカップ 東京 芝2400 14人気 三浦皇成 2:25.2 上り35.0映像
12 GII京都大賞典 京都 芝2400 11人気 藤岡佑介 2:28.2 上り38.0映像
3 GIII新潟記念 新潟 芝2000 10人気 菅原明良 1:59.2 上り33.4映像
13 GIII鳴尾記念 阪神 芝2000 12人気 鮫島克駿 1:59.9 上り35.9映像
10 LメトロポリタンS 東京 芝2400 7人気 鮫島克駿 2:29.1 上り34.4
5 OP大阪ーハンブルクカップ 阪神 芝2600 2人気 鮫島克駿 2:38.9 上り35.1
11 GII京都記念 阪神 芝2200 8人気 鮫島克駿 2:12.6 上り35.4映像
1 尼崎S 阪神 芝2400 2人気 鮫島克駿 2:27.9 上り32.8
1 兵庫特別 阪神 芝2400 2人気 鮫島克駿 2:25.6 上り34.3
5 木曽川特別 中京 芝2200 4人気 鮫島克駿 2:12.6 上り34.3
1 アザレア賞 阪神 芝2400 6人気 鮫島克駿 2:29.6 上り33.8
11 エリカ賞 阪神 芝2000 9人気 鮫島克駿 2:01.4 上り36.9
1 2歳未勝利 新潟 芝1800 1人気 津村明秀 1:49.8 上り34.1
2 2歳新馬 中京 芝2000 2人気 鮫島克駿 2:08.9 上り35.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
インプレスの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キズナKizunaディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
キャットクイルCatequilStorm Cat
Pacific Princess
ベアトリスII BeatriceDr FongKris S.
Spring Flight
BranganeAnita's Prince
Boskovice
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの黒鹿毛の牡馬。父キズナ、母ベアトリス。

父の色を着て

2019年3月、社台ファームで一頭の黒鹿毛の牡馬が生まれた。父はキズナ——2013年の日本ダービーを、後方から一頭だけ違う脚で差し切ったあの馬である。母はイギリス生まれのベアトリスⅡ。馬名のインプレスには「印象付ける、感動させる」という意が込められた。 背に負ったのは、水色地に赤い十字襷、袖に三本の輪。ノースヒルズ・前田家の勝負服だ。父キズナを走らせたのも前田家であり、栗東で父を預かり、ダービートレーナーへと押し上げたのも、同じ佐々木晶三だった。父と同じ色を着て、父と同じ厩舎から、この馬はターフに出てきた。 2021年9月、中京の芝2000mでデビュー。新馬戦は2着に敗れたが、翌10月、新潟の芝1800mを鮮やかに勝ち上がる。血筋が指し示すのは、父と同じ長い距離の世界だった。

オープンまでは、たどり着いた

明けて4歳、鮫島克駿を背に、インプレスは芝の中長距離を着実に登っていった。2022年春のアザレア賞(阪神・芝2400m)を6番人気で制すると、秋には兵庫特別、そして11月の尼崎Sを連勝。阪神の2400mを2分27秒台でまとめ、3勝クラスを突破して、オープンの舞台へ届いた。 勝ち味は遅かった。それでも長い直線でじわりと伸びる脚は本物で、ここまでは、父の背中がまだ視界の中にあった。

父の舞台には、届かない

だが、重賞の壁は厚かった。京都記念11着、鳴尾記念13着、京都大賞典12着。相手が強くなるほど、伸びるはずの脚は前へ届かなくなる。唯一、2023年9月の新潟記念で10番人気3着に食い込み、ひと筋の光を見せたが、それが平地重賞での最高到達点だった。 その年の11月、インプレスはジャパンカップのゲートに立つ。父がダービーを勝ったのと同じ、東京・芝2400m。しかし単勝は14番人気。エクイノックスが世界を黙らせたあの一戦で、父譲りの水色の襷は13着に沈んだ。ダービー馬の子は、父の立った頂には、どうしても手が届かなかった。 年が明けても芝で答えは出ず、初めて挑んだダートも名古屋城S8着、平城京S7着。この馬は、行き場を失いかけていた。

柵の向こう側

転機は、2024年の初夏に訪れた。陣営はインプレスを障害競走へ転向させる。平地で行き場を失った馬が、柵を跳ぶ世界へ移ったのだ。 新しい鞍上は、小牧加矢太。名手・小牧太を父に持ちながら、自身は競馬学校を経ず、馬術の障害飛越から競馬へ渡ってきた、競馬界では異例の経歴の騎手だった。全日本障害飛越選手権を制した“跳ぶこと”の専門家が、跳ぶことに活路を求める馬の背に乗る。転向者どうしの巡り合わせ、と言ってもよかった。 6月の東京、初めての障害戦は5着。7月の小倉で3着。そして10月、新潟の障害未勝利戦で、インプレスはついに障害初勝利を挙げる。堰を切ったように、続く新潟・京都のオープンを連勝。柵の向こう側に、この馬の居場所は確かにあった。

最高峰と、その一つ下

2025年3月、中山のペガサスジャンプSを危なげなく勝つと、4月、インプレスは障害の最高峰・中山グランドジャンプ(J・GI、障4260m)に挑んだ。日本の障害でもっとも長く、もっとも過酷な一戦である。 結果は3着。勝ったエコロデュエルには8馬身、2着ネビーイームからさらに2馬身半及ばなかった。それでも、平地では14番人気で沈んだ馬が、障害の頂点で掲示板に名を刻んでいた。小牧とのコンビは、柵を跳ぶたびに呼吸を深めていく。次の目標は、夏の新潟に定まった。

ラストチャンス

2025年8月16日、新潟ジャンプステークス(J・GIII、障3250m)。1番人気に推されたインプレスは、向こう正面から強気に動いた。軽快に逃げるマイネルエールを最終障害できっちりと捉え、追いすがる各馬を1馬身振り切ってゴール。障害重賞初制覇だった。 だが、この勝利にはもう一つの意味があった。管理する佐々木晶三は、この一勝でJRA全10場の重賞を制覇——史上8人目の到達である。そして佐々木は、翌春の定年引退を控えていた。長いキャリアの最後に残された、ただ一つの空白。それを埋めたのが、自らダービーへと導いた父キズナの、その子だったのだ。レース後、来春での勇退を控えたベテランは「これにて廃業(笑)。感無量です」[^1]と笑った。 2026年2月26日、インプレスは競走馬登録を抹消され、中京競馬場で乗馬となった。父はダービーを勝ち、子は父の舞台には届かなかった。けれど障害へ渡ったその脚は、父を育てた師の地図の、最後の一マスを埋めてみせた。25戦9勝。芝から障害へ、居場所を変えながら走り抜いたこの馬は、その名の通り、確かに人の記憶へ何かを刻みつけた。柵を跳んだ日々を知る者の胸に、その姿は長く残る。

出典:スポーツ報知「【新潟ジャンプS】来春定年引退の佐々木晶三調教師が史上8人目JRA全10場重賞制覇 育てたキズナの子で決めた」2025年8月16日配信、https://hochi.news/articles/20250816-OHT1T51339.html 、閲覧日:2026年7月18日。

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