名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ハヤヤッコのイメージビジュアル
ハヤヤッコHayayakko
Hayayakko

ハヤヤッコ

通算成績45戦7勝

獲得賞金3614万円

生年月日 2016.02.10(平成28年)毛色 白毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ハヤヤッコの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
GII目黒記念 東京 芝2500 7人気 ディー 映像
10 GII日経賞 中山 芝2500 7人気 吉田豊 2:36.5 上り36.6映像
15 GI有馬記念 中山 芝2500 13人気 吉田豊 2:33.7 上り37.1映像
1 GIIアルゼンチン共和国杯 東京 芝2500 10人気 吉田豊 2:29.0 上り34.6映像
3 OPタイランドカップ 札幌 芝2600 5人気 北村友一 2:42.3 上り37.9
12 GIII函館記念 函館 芝2000 12人気 浜中俊 2:00.6 上り35.5映像
12 GI大阪杯 阪神 芝2000 15人気 幸英明 1:59.0 上り34.6映像
4 GII金鯱賞 中京 芝2000 8人気 幸英明 1:58.7 上り35.0映像
2 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 13人気 幸英明 1:58.9 上り33.9映像
10 GII産経賞オールカマー 中山 芝2200 12人気 浜中俊 2:12.9 上り36.3映像
5 GIII函館記念 函館 芝2000 7人気 浜中俊 2:01.8 上り36.0映像
6 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 3人気 丸山元気 2:05.9 上り37.5映像
4 GII金鯱賞 中京 芝2000 8人気 幸英明 2:00.3 上り34.3映像
6 GII日経新春杯 中京 芝2200 7人気 吉田隼人 2:14.7 上り35.3映像
5 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 12人気 浜中俊 1:59.5 上り34.3映像
10 GII札幌記念 札幌 芝2000 8人気 池添謙一 2:02.4 上り36.6映像
1 GIII函館記念 函館 芝2000 7人気 浜中俊 2:03.6 上り37.8映像
15 GI天皇賞(春) 阪神 芝3200 11人気 武豊 3:21.1 上り39.6映像
5 GII日経賞 中山 芝2500 13人気 大野拓弥 2:35.8 上り34.6映像
14 GII東海テレビ杯東海S 中京 ダ1800 9人気 池添謙一 1:53.8 上り38.7映像
9 LベテルギウスS 阪神 ダ1800 9人気 坂井瑠星 1:53.1 上り37.0
4 Lブラジルカップ 東京 ダ2100 3人気 内田博幸 2:09.8 上り36.1
10 GIIIシリウスS 中京 ダ1900 6人気 田辺裕信 1:59.1 上り38.8映像
1 OPスレイプニルS 東京 ダ2100 5人気 田辺裕信 2:08.0 上り35.6
8 LブリリアントS 東京 ダ2100 2人気 田辺裕信 2:11.0 上り36.9
5 GIIIマーチS 中山 ダ1800 4人気 三浦皇成 1:51.8 上り37.7映像
3 OP総武S 中山 ダ1800 3人気 田辺裕信 1:53.7 上り37.3
6 GII東海テレビ杯東海S 中京 ダ1800 3人気 田辺裕信 1:49.9 上り36.9映像
1 Lブラジルカップ 東京 ダ2100 2人気 田辺裕信 2:08.8 上り36.6
5 OPラジオ日本賞 中山 ダ1800 2人気 内田博幸 1:52.5 上り38.2
3 LBSN賞 新潟 ダ1800 5人気 田辺裕信 1:50.6 上り36.0
10 OPアハルテケS 東京 ダ1600 8人気 田辺裕信 1:37.2 上り36.2
12 GIII平安S 京都 ダ1900 11人気 斎藤新 1:57.8 上り36.9映像
2 OP総武S 中山 ダ1800 3人気 L.ヒューイットソン 1:53.1 上り36.9
10 OPアルデバランS 京都 ダ1900 3人気 川田将雅 1:59.4 上り37.7
2 OPポルックスS 中山 ダ1800 3人気 O.マーフィー 1:53.4 上り37.3
1 GIIIレパードS 新潟 ダ1800 10人気 田辺裕信 1:51.3 上り37.8映像
8 OP青竜S 東京 ダ1600 6人気 武豊 1:37.6 上り36.1
1 3歳500万下 中山 ダ1800 2人気 武豊 1:54.3 上り38.2
2 3歳500万下 中山 ダ1800 3人気 武豊 1:54.5 上り37.9
2 3歳500万下 東京 ダ1600 2人気 O.マーフィー 1:39.4 上り36.9
4 もちの木賞 京都 ダ1800 3人気 浜中俊 1:53.0 上り37.8
8 OPアイビーS 東京 芝1800 4人気 C.ルメール 1:49.5 上り33.1
1 2歳未勝利 新潟 芝1800 1人気 C.ルメール 1:49.4 上り34.2
3 2歳新馬 東京 芝1800 3人気 三浦皇成 1:50.8 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ハヤヤッコの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キングカメハメハKing KamehamehaKingmamboMr. Prospector
Miesque
マンファスManfathラストタイクーンLast Tycoon
Pilot Bird
マシュマロクロフネKurofuneフレンチデピュティFrench Deputy
ブルーアヴェニューBlue Avenue
シラユキヒメサンデーサイレンスSunday Silence
ウェイブウインドWave Wind
STORY

旅程 — この馬の物語

2016年生まれの白毛の牡馬。父キングカメハメハ、母マシュマロ。主な勝ち鞍はレパードS・函館記念・アルゼンチン共和国杯。

白は、突然変異から広がった

2016年2月10日、北海道安平町のノーザンファーム。父キングカメハメハ、母マシュマロ。生まれた牡馬は、白かった。 サラブレッドの白毛はきわめて稀な毛色である。この一族の白は、突然変異で白毛として生まれた祖母シラユキヒメから広がった。母マシュマロは白毛馬として史上初の新馬勝ちを挙げた馬。伯父ホワイトベッセルは白毛馬として史上初めてJRAの競走を勝った馬。伯母ユキチャンは関東オークスを制して白毛馬初の重賞勝ちを果たし、地方の交流重賞を三つ積み上げた。 一族は白いというだけで人目を引き、そのたびに「史上初」を一つずつ剥がしてきた。それでも、まだ誰も届いていない一線があった――JRAの重賞である。 馬名の意味は「速くて白い」。願いというより、宣言に近い。所有したのは金子真人ホールディングス。シラユキヒメも、ユキチャンも、母マシュマロも、そして父キングカメハメハと母父クロフネさえ、同じオーナーの馬だった。預けられたのは美浦・国枝栄厩舎。この馬は結局、デビューから最後の一戦まで、ただ一つの厩舎から送り出されることになる。

芝から始めた白い二歳

白毛一族は、主にダートで成績を残してきた。それでも国枝栄は、この馬のデビュー戦に芝を選んでいる。可能性を探るため――理由はそれだけだった。 2018年6月24日、東京の芝1800m。三浦皇成を鞍上に3番人気で3着。勝ったのはアンブロークン。二戦目、8月5日の新潟・芝1800mの未勝利戦をルメールで危なげなく勝ち上がり、最初の関門を抜けた。 10月のアイビーステークスは、のちに宝塚記念と有馬記念を勝つクロノジェネシスの前に8着。初めてダートを踏んだ11月のもちの木賞は、ノーヴァレンダの4着。芝でもダートでも、この時点ではまだ何者でもない。持っていたのは、遠目にも一頭だけそれと分かる白い馬体だけだった。

新潟、越えられなかった一線

2019年、3歳。1月と3月の500万下を続けて2着とし、3月23日の中山でようやく2勝目。5月の青竜ステークスは8着。夏を迎えた時点で、ダートの一介のオープン馬にすぎなかった。 8月4日、新潟のレパードステークス。ダート1800m、15頭立て。単勝2400円の10番人気。鞍上は田辺裕信。 道中は12番手。3コーナーでも11番手、4コーナーで9番手。直線、外へ持ち出された白い馬体が伸びてくる。前で粘るのは1番人気デルマルーヴル。ゴール前、クビだけ、ハヤヤッコの首が前に出た。1分51秒3。 白毛馬による、JRA重賞初制覇だった。シラユキヒメから広がった一族が越えられずにいた一線を、この日ようやく越えた。 この一戦には、もう一つの意味がある。5日前の7月30日、ディープインパクトが世を去っていた。JRAはこの週末の新潟・小倉・札幌の第11レースを「ディープインパクト追悼競走」とし、レパードステークスもその一つだった。ディープインパクトの馬主もまた、金子真人である。追悼のレースを、追悼される馬のオーナーの、白い馬が勝った。

勝てない二年 ― ダートの底で

レパードステークスのあと、喉の炎症で休養が長引き、3歳シーズンはそこで終わった。 4歳の一年は噛み合わなかった。ポルックスステークス2着、アルデバランステークス10着、総武ステークス2着、平安ステークス12着、58キロを背負ったアハルテケステークス10着。惜しいのか駄目なのか分からないまま夏が過ぎ、BSN賞3着、ラジオ日本賞5着。 潮目が変わったのは10月25日、東京ダート2100mのブラジルカップだった。道中は最後方。直線半ばで外に出すと、上がり最速の脚でグレートタイムを2馬身突き放す。1年2か月ぶりの勝利であり、この馬の勝ち方がはっきり形になった一戦でもあった――後ろで脚を溜め、外から一気に。 翌2021年6月、同じ東京ダート2100mのスレイプニルステークス。やはり最後方に構え、直線で外から全馬をまとめて差し切り、バンクオブクラウズに3/4馬身。5勝目。 だが、そこから先が続かない。シリウスステークス10着、連覇のかかったブラジルカップ4着、年末のベテルギウスステークス9着。5歳の暮れ、ダートでの行き先は塞がっていた。

函館の雨

2022年、6歳初戦の東海ステークスは14着。ダートでの答えは、もう出ていた。 陣営が選んだのは、2歳のとき以来の芝である。日経賞で5着に食い込み、続く天皇賞(春)は阪神の3200m、武豊を背に15着。長距離のGIは、明らかに違った。 7月17日、函館記念。デビュー以来、初めての北海道――生まれた島と同じ土地のターフだった。前日から雨が降り続き、馬場は重。ハンデ57キロ、7番人気。鞍上は浜中俊。 1枠1番から中団の前寄り、内で脚を溜める。3コーナーで外目へ持ち出すと、直線の入口ではもう先頭に立っていた。追ってきたのは1番人気マイネルウィルトス。突き放しはしなかったが、詰めさせもしない。3/4馬身。 レパードステークス以来の重賞2勝目。自身にとっては芝で初めての重賞で、これで芝とダートの双方で重賞を勝ったことになる。北の島の雨は、この馬に合っていたらしい。

掲示板のそばで

7歳の2023年は、芝の重賞路線を回り続けた。日経新春杯6着、金鯱賞4着、新潟大賞典6着、函館記念5着、オールカマー10着。掲示板に載ることはあっても、勝ち切れない。 その年の締めくくり、12月9日の中日新聞杯。13番人気のハヤヤッコは、上がり3ハロン33秒9というメンバー最速の脚を使って3/4馬身差の2着に飛び込んだ。鞍上は幸英明。7歳の暮れになっても、脚は錆びていなかった。 8歳の2024年も、成績は行きつ戻りつだった。金鯱賞4着、大阪杯12着、3年続けて出走した函館記念は12着。9月の札幌・タイランドカップで3着に盛り返す。 一方で、この馬はターフの外で名を広げていた。この年のアイドルホースオーディションでは現役馬部門の2位に選ばれ、ぬいぐるみになることが決まる。強さの順位とは別の物差しで、白い馬は人に選ばれていた。

八歳の大外一気

2024年11月3日、東京競馬場、アルゼンチン共和国杯。芝2500mのハンデ戦。 ハヤヤッコに課された斤量は58.5キロ。16頭のなかで、いちばん重い。8歳で、10番人気。鞍上は吉田豊。 ゲートが開くと、白い馬体はするすると後ろへ下がり、1コーナーで16番手――最後方になった。4コーナーを回っても15番手。ほとんどの馬が、先に直線を向いていた。 そこからだった。大外へ持ち出されたハヤヤッコが、上がり3ハロン34秒6というメンバー最速の脚で府中の直線を飲み込んでいく。先に抜け出していたのは1番人気クロミナンス。外から並びかけ、クビだけ前に出てゴール板を通過した。2分29秒0。 およそ2年4か月ぶりの勝利であり、重賞3勝目。このレースを58.5キロで勝ったのは、1988年のレジェンドテイオー以来36年ぶりのことだった。 「おじいちゃんですけど、頑張ってくれた」[^1]。鞍上の言葉に、それ以上の説明はいらなかった。

出典:東スポ競馬「【アルゼンチン共和国杯結果&コメント】8歳ハヤヤッコが直線一気の差し切り!吉田豊「おじいちゃんですけど、頑張ってくれた」」2024年11月3日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/51244、閲覧日:2026年7月25日。

白毛、初めての有馬記念

アルゼンチン共和国杯の優勝が、一枚の切符を引き寄せた。12月22日、有馬記念。白毛馬がこのレースに出走するのは、史上初めてのことだった。 「有馬記念なんて、6年やって(担当して)きて、ご褒美だと思う」[^1]。6年この馬を担当してきた田村亮平助手は、そう語っている。ファンの多い馬で、お守りもたくさん届いていた。 レースでは、いつもの最後方待機ではなく3〜4番手の前々を進んだ。2周目の3コーナーでは先頭集団の一角、4コーナーで5番手。しかし中山の坂を上るころには脚が上がり、15着。ドウデュースの出走取消で15頭立てとなったレースの、最後の一頭としてゴールした。勝ったのは3歳牝馬レガレイラ。 負けはしたが、白い馬体は道中ずっと先団のなかにあった。8歳で、有馬記念の先団にいた。

出典:中日スポーツ「【有馬記念】ハヤヤッコ、「全くノートラブル」と田村助手は感謝「6年やってきて、ご褒美だと思う」」2024年12月21日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1002846、閲覧日:2026年7月25日。

目黒の直線

2025年、9歳。3月の日経賞は10着。 6月1日、東京の目黒記念。7番人気。鞍上はディー。 4コーナー、ハヤヤッコは大きく外へ膨らんだ。直線でスピードが落ち、ディーは競走を取りやめて下馬する。JRAの発表は、右前浅屈腱不全断裂。45戦目の途中で、この馬の競走生活は終わった。 その日のうちに、国枝厩舎の椎本助手がSNSに短い言葉を書いている。「ハヤヤッコ ひとまず命の心配はありません」[^1]。心配している人が多いから、と。 国枝栄は当初、この馬を自分の定年と一緒に引退させるつもりでいたと明かしている。それが少しだけ早まった。6月6日、引退が正式に決まる。長く走り続けてくれたこと、こちらが驚くような感動をもらったこと――ねぎらいの言葉が並んだ。 6月10日、美浦を退厩。担当してきた田村助手は涙をこらえながら、幸せな馬だったと言って馬運車を見送った。

出典:中日スポーツ「白毛一族のアイドルホース、ハヤヤッコが競走中止 椎本助手「ひとまず命の心配はありません」【目黒記念】」2025年6月1日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1075871、閲覧日:2026年7月25日。

苫小牧へ ― 会いに行ける白

6月19日、繋養先が決まった。北海道苫小牧市のノーザンホースパーク。同じ日、JRAは競走馬登録の抹消を発表し、「乗馬となる予定」と記した。安平で生まれた白い馬は、同じ北海道の、海に近い町へ帰ることになった。国枝は、時間が経てば皆さんにも会っていただけると思う、自分も会いに行きたい、と語っている。 その国枝も、翌2026年3月3日付で70歳の定年を迎え、37年の調教師生活を終えた。一緒に引退するはずだった一頭と一人は、結局、少しずれた時期に別々にターフを降りたことになる。 白い一族の景色は、そのあいだに変わった。従妹のソダシは阪神ジュベナイルフィリーズを勝って白毛馬として初めてGIの王座に就き、桜花賞でクラシックまで手にした。その全妹ママコチャはスプリンターズステークスを制し、近親のメイケイエールも重賞を積み上げた。珍しい毛色は、いつのまにか、勝つ血の呼び名になっていた。 45戦7勝、3億614万円。2018年から2025年まで、45回ゲートに入り、そのすべてを美浦の同じ厩舎から送り出された。いまその馬は、人が会いに行ける牧場の草の上にいる。走る姿を見た人よりも、これから会いに行く人のほうが、たぶん多い。

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