名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ハートレーのイメージビジュアル
ハートレーHartley
Hartley

ハートレー

通算成績8戦2勝

獲得賞金8,331万円

生年月日 2013.04.11(平成25年)毛色 鹿毛セン

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ハートレーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 GII京都記念 京都 芝2200 8人気 川田将雅 2:16.1 上り35.8映像
5 OPディセンバーS 中山 芝1800 5人気 戸崎圭太 1:48.3 上り34.6
10 OP丹頂S 札幌 芝2600 1人気 C.ルメール 2:44.9 上り40.5
3 OPメトロポリタンS 東京 芝2400 5人気 C.ルメール 2:24.9 上り33.7
5 OPディセンバーS 中山 芝1800 5人気 H.ボウマン 1:48.3 上り35.1
9 GIII共同通信杯 東京 芝1800 1人気 横山典弘 1:48.9 上り36.5映像
1 GIIホープフルS 中山 芝2000 3人気 H.ボウマン 2:01.8 上り34.3
1 2歳新馬 東京 芝2000 1人気 R.ムーア 2:04.5 上り33.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ハートレーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
ウィキッドリーパーフェクトWickedly PerfectCongratsA.P. Indy
Praise
Wickedly WiseTactical Cat
Winter Display
STORY

旅程 — この馬の物語

2013年生まれの鹿毛のせん馬。父ディープインパクト、母ウィキッドリーパーフェクト。主な勝ち鞍はホープフルS。

探査機が見た彗星 ― 名の由来

2013年4月11日、北海道安平町のノーザンファームで、鹿毛の牡馬が生まれた。父はディープインパクト。その仔に与えられた名の由来を辿ると、話は競馬場を離れて宇宙まで飛ぶ。 1986年3月15日、オーストラリアのサイディング・スプリング天文台で、マルコム・ハートレーがひとつの短周期彗星を見つけた。ハートレー第2彗星。およそ6年半で太陽のまわりを一周する、小さな氷の塊である。それから四半世紀近くを経た2010年11月4日、この彗星に700キロメートルの距離まで近づき、細長い核の姿を撮って送り返した探査機があった。その探査機の名が、ディープインパクトだった。 父の名を空に探せば、そこにハートレーがいた。名は、そうやって決まった。 母ウィキッドリーパーフェクトはアメリカの芦毛牝馬である。2010年6月にハリウッドパークでデビューし、8月にデルマーのソレントステークス、10月にはキーンランドのアルシバイアディーズステークスを制した。走ったのは2歳のその一年だけ、4戦3勝のGI馬。その年かぎりで競走を退くと、80万ドルでノーザンファームに買われて日本へ渡った。2歳の秋に頂点へ届いた血が、安平の牧場に運ばれてきたことになる。 サンデーレーシングは、この鹿毛に1億円という額をつけて募集した。預けられた先は美浦の手塚貴久厩舎。以後、この馬が競走馬でいたあいだ、厩舎が替わることは一度もなかった。

府中の直線 ― ムーアの見立て

デビューは2015年11月14日、東京の芝2000メートル。稍重の府中で、鞍上にはライアン・ムーアが座った。単勝1.5倍の1番人気である。 道中は促されてもなかなか動かないところを見せたが、直線で内が開くと一息に伸びた。上がり3ハロン33秒8、2着オーダードリブンに0.2秒差、勝ち時計2分04秒5。 レース後、世界を股にかける名手はこの2歳馬をこう評した。「来年、必ず重賞を勝てる器」[^1]。手塚は距離が延びてよさそうだと見て、いったん放牧に出したうえで、暮れの中山を次の目標に挙げている。ムーアの見立ては、それから一か月半で答え合わせを迎えることになる。

出典:スポーツニッポン「【東京新馬戦】1番人気ハートレーV「必ず重賞勝てる器」」2015年11月15日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2015/11/15/kiji/K20151115011511050.html 、閲覧日:2026年7月26日。

中山二〇〇〇 ― 無傷の二連勝

2015年12月27日、中山競馬場、ホープフルステークス。当時はまだGIIで、GIへ格上げされるのは二年後のことだ。舞台は皐月賞と同じ中山の芝2000メートルである。 手綱を取ったのはヒュー・ボウマン。その2か月前に豪州でウインクスに跨りコックスプレートを勝ったばかりの男が、短期免許で日本に来ていた。ハートレーに跨るのは、この日が初めてだった。 3番人気。中団やや後方の8番手を進み、3コーナーから4コーナーにかけて進出を開始する。外からは1番人気ロードクエストが最後方から大外を回してまくり上げ、並びかけてきた。プレッシャーをかけられても崩れず、直線で先頭に立つと、残り200メートルを過ぎてから突き放した。2分01秒8、上がり34秒3、0.2秒差。3着はバティスティーニ。 「馬が飛んでいたよ」[^1]。ボウマンにとっては、これがJRA重賞の初制覇でもあった。手塚は、関東の代表としてしっかり育てていきたい、と来春のクラシックを見据えている。二戦二勝、無傷の重賞馬。1億円という評価に、この鹿毛はわずか二戦で応えてみせた。

出典:スポーツニッポン「【ホープフルS】ハートレー無傷2連勝!ボウマン「凄い馬だ」」2015年12月28日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2015/12/28/kiji/K20151228011761610.html 、閲覧日:2026年7月26日。

一・九倍の午後

2016年2月14日、東京・共同通信杯。クラシックへの始動戦である。単勝1.9倍の1番人気に推された。 ゲートは決まった。だが向正面から横山典弘が促し続けても反応は返らず、4コーナー手前ですでに手応えを失っていた。直線で追われても伸びず、残り300メートルでは苦しくなって内へヨレる。最後は無理をさせずに流し、9着。勝ち馬から1秒5、上がりは36秒5だった。 「何でだろう」[^1]。この日が初騎乗だった名手は、首をひねるばかりだった。手塚も、馬場のせいなのか気持ちの部分なのか、敗因を言い切れないと語っている。 このレースを勝ったのはディーマジェスティだった。二か月後、その馬は8番人気で皐月賞を制する。ハートレーが立つはずだった、中山の頂である。

出典:スポーツニッポン「【共同通信杯】1番人気ハートレー9着…横山典「何でだろう」」2016年2月15日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2016/02/15/kiji/K20160215012042070.html 、閲覧日:2026年7月26日。

二十二か月

放牧を挟んで皐月賞へ直行する——それが陣営の描いた道筋だった。しかし4月、左前脚の跛行で皐月賞を回避。まもなく左前脚球節部の骨折が判明し、全治6か月と発表される。3歳の春は、そこで終わった。 2017年7月、福島テレビオープンで復帰する予定が組まれた。だが追い切りのあとに鼻出血を発症し、出走を取り消す。二度目の休養に入り、その間に去勢された。 帰ってきたのは2017年12月17日、中山のディセンバーステークス。共同通信杯から1年10か月ぶりの実戦で、鞍上には再びボウマンが戻ってきた。走りはぎこちなく、あまりに久しぶりでレースの仕方を忘れているのではないか、と鞍上が評したほどだった。それでも5着、勝ったマイネルハニーとの差は0.5秒である。 その11日後、同じ中山の芝2000メートルで、ホープフルステークスが初めてGIとして行われた。二年前、この馬が勝ったとき、それはまだGIIだった。

天栄の空の下へ

2018年5月5日、東京のメトロポリタンステークス。クリストフ・ルメールを背に2400メートルを走り、上がり33秒7の脚で3着に食い込む。勝ったベストアプローチとの差は0.1秒。もう一度、この馬は届きかけた。 だが、そこから先は伸びなかった。9月の札幌・丹頂ステークスは1番人気に推されながら上がり40秒5と失速して10着。12月のディセンバーステークスは戸崎圭太を背に5着。年が明けて2019年2月10日、川田将雅とともに京都記念へ向かう。生涯で唯一の関西遠征であり、これが最後の一戦になった。11着だった。 2019年11月20日、JRAの競走馬登録が抹消される。通算8戦2勝、獲得賞金8331万1000円。引退後は福島県天栄村のノーザンファーム天栄で乗馬となった。ゲートを出る仕事が終わり、人を乗せる仕事が始まったことになる。 母ウィキッドリーパーフェクトは、その後も仔を産み続けている。2015年生まれの半妹ウィキッドアイズは、兄と同じ手塚厩舎に入った。2019年には父も母も同じ全弟フォーグッドが生まれた。兄と同じく、せん馬である。そして2026年にも、この牝馬は新しい仔を送り出した。 名の由来になった彗星は、およそ6年半に一度、同じ空へ帰ってくる。二歳のハートレーが中山の直線で見せたあの伸びも、同じように、記録のなかを巡り続ける。

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