名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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グレイスフルリープのイメージビジュアル
グレイスフルリープGraceful Leap
Graceful Leap

グレイスフルリープ

通算成績44戦12勝

獲得賞金(海外含む・概算)約36,560万円

生年月日 2010.05.12(平成22年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
グレイスフルリープの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIJBCスプリント 京都 ダ1200 4人気 C.ルメール 1:10.4 上り36.4
3 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 4人気 C.ルメール 1:12.3 上り37.8
4 JpnⅡさきたま杯 浦和 ダ1400 2人気 武豊 1:27.1 上り38.9
1 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 6人気 武豊 1:11.8 上り37.4
5 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 3人気 武豊 1:28.3 上り40.5
1 JpnⅢ兵庫ゴールドトロフィー 園田 ダ1400 4人気 武豊 1:28.4 上り38.9
9 GIIIカペラS 中山 ダ1200 13人気 三浦皇成 1:11.7 上り37.1映像
1 GIコリアスプリント 韓国 ダ1200 6人気 武豊 1:10.7
5 JpnⅢサマーチャンピオン 佐賀 ダ1400 4人気 内田博幸 1:27.5 上り37.3
12 OP栗東S 京都 ダ1400 5人気 小牧太 1:24.1 上り36.9
3 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 5人気 川田将雅 1:28.7 上り39.5
9 GIII根岸S 東京 ダ1400 13人気 蛯名正義 1:23.9 上り36.8映像
11 OP2016ファイナルS 阪神 ダ1400 7人気 小牧太 1:23.8 上り37.9
7 JpnⅢテレ玉杯オーバルスプリント 浦和 ダ1400 3人気 小牧太 1:27.7 上り38.6
1 JpnⅢサマーチャンピオン 佐賀 ダ1400 1人気 小牧太 1:25.7 上り37.5
5 OPコーラルS 阪神 ダ1400 1人気 小牧太 1:23.1 上り36.4
1 OPポラリスS 阪神 ダ1400 1人気 小牧太 1:23.2 上り36.4
2 OPすばるS 京都 ダ1400 3人気 内田博幸 1:22.3 上り35.9
6 OP2015ファイナルS 阪神 ダ1400 1人気 武豊 1:23.2 上り37.0
2 OP霜月S 東京 ダ1400 1人気 内田博幸 1:23.4 上り36.9
1 OPグリーンチャンネルカップ 東京 ダ1400 9人気 内田博幸 1:23.0 上り35.7
8 OPコーラルS 阪神 ダ1400 5人気 小牧太 1:23.9 上り37.9
2 OPすばるS 京都 ダ1400 4人気 小牧太 1:23.2 上り35.5
1 妙見山S 阪神 ダ1400 2人気 小牧太 1:23.4 上り36.1
8 堺S 阪神 ダ1800 2人気 川田将雅 1:52.0 上り37.4
4 観月橋S 京都 ダ1800 2人気 幸英明 1:51.0 上り37.3
2 大阪スポーツ杯 阪神 ダ1400 1人気 小牧太 1:24.1 上り37.2
2 安芸S 阪神 ダ1400 1人気 小牧太 1:23.4 上り37.2
4 OP栗東S 京都 ダ1400 3人気 太宰啓介 1:23.4 上り37.0
4 GIIIアンタレスS 阪神 ダ1800 12人気 太宰啓介 1:51.5 上り37.0
1 播磨S 阪神 ダ1400 2人気 川田将雅 1:23.9 上り37.0
3 河原町S 京都 ダ1400 6人気 小牧太 1:22.8 上り36.6
4 羅生門S 京都 ダ1400 8人気 川須栄彦 1:24.7 上り37.2
15 貴船S 京都 ダ1200 4人気 小牧太 1:12.5 上り36.4
5 西陣S 京都 ダ1200 2人気 小牧太 1:10.8 上り36.7
10 藤森S 京都 ダ1200 2人気 小牧太 1:11.9 上り36.2
1 鶴見特別 阪神 ダ1200 4人気 小牧太 1:10.2 上り35.4
13 OP葵S 京都 芝1200 8人気 小牧太 1:10.1 上り35.1
1 3歳500万下 京都 ダ1200 1人気 小牧太 1:12.3 上り37.1
2 3歳500万下 阪神 ダ1200 1人気 小牧太 1:11.4 上り37.0
15 ポインセチア賞 阪神 ダ1400 6人気 国分優作 1:28.2 上り41.4
2 2歳500万下 京都 ダ1200 8人気 川須栄彦 1:11.8 上り36.8
1 2歳未勝利 阪神 ダ1400 1人気 小牧太 1:26.6 上り39.3
2 2歳新馬 阪神 ダ1400 1人気 小牧太 1:27.5 上り38.9

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
グレイスフルリープの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ゴールドアリュールGold AllureサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ニキーヤNikiyaNureyev
Reluctant Guest
ラビットフットSeeking the GoldMr. Prospector
Con Game
ArgentarioBelieve It
Away
STORY

旅程 — この馬の物語

2010年生まれの栗毛の牡馬。父ゴールドアリュール、母ラビットフット。主な勝ち鞍はコリアスプリント・JBCスプリント。

兎の足に、優雅な跳躍と

2010年5月12日、北海道新冠。ノースヒルズで生まれた栗毛の牡馬は、前田晋二の勝負服を着て走ることになる。父はゴールドアリュール、母はラビットフット。 母は米国で生まれ、日本で走った牝馬である。23戦4勝。1996年の春にフラワーステークスへ出て15着、あとは条件戦とオープン特別を行き来して、1998年の秋に競走生活を終えた。派手な母ではない。ただ1997年8月10日、小倉の芝1200mで彼女が勝ったとき、鞍上には武豊がいた。 グレイスフルリープは、その7番目の産駒にあたる。馬名の意味は英語で「優雅な跳躍」。母の名はRabbit Foot——兎の足である。 2012年9月8日、阪神のダート1400m。小牧太を背に1番人気でデビューして2着、二週間後の未勝利戦を勝ち上がった。管理するのは栗東の橋口弘次郎厩舎。当時この厩舎は、幾多のGIを勝ちながら日本ダービーだけが獲れない厩舎として知られていた。

一四〇〇という居場所

3歳の4月、京都の500万下を勝つと、次に向かったのは芝のオープン・葵ステークスだった。13着。以後この馬が芝を走ることは二度となかった。 6月の鶴見特別で3勝目。だが秋の1600万下は10着、5着、15着と噛み合わない。4歳の3月に播磨ステークスを勝ってオープン入りし、1800mのアンタレスステークスへ12番人気で挑んで4着に粘る。しかし観月橋ステークス4着、堺ステークス8着と長い距離では伸びず、暮れの妙見山ステークス、1400mに戻してようやく5勝目を挙げた。 5歳の秋、東京。9番人気の低評価を覆してグリーンチャンネルカップを勝つ。上がりは35秒7だった。続く霜月ステークスは1番人気で2着、暮れのファイナルステークスも1番人気で6着。この日、初めてこの馬の手綱を取ったのが武豊である。 勝ったり負けたりの4年間。派手さはない。だがそのあいだにこの馬は、ダート1400mという自分の居場所を確かめていた。

厩舎を継ぐ

2016年2月29日、橋口弘次郎が定年で調教師を引退した。通算8645戦991勝、重賞96勝、GI10勝。ただひとつ、東京優駿だけが長く手の届かないところにあった。1996年のダンスインザダーク、2004年のハーツクライ、2009年のリーチザクラウン、2010年のローズキングダム——4度の2着。シルバーコレクターと呼ばれた。定年まで2年と迫った2014年、ワンアンドオンリーで20回目のダービーに臨み、ようやくそれを獲っている。 厩舎を引き継いだのは長男の慎介だった。中学3年で競馬学校の騎手課程を受け、視力が足りずに落ちている。高校を出るとアイルランドのリムリック大学馬科学科へ渡り、帰国後は池添兼雄厩舎で2000年から2014年まで調教助手を務めた。調教師試験に受かったのは2014年12月、2度目の挑戦だった。 2016年3月1日、父のスタッフと管理馬を多く引き継いで橋口慎介厩舎が開業する。グレイスフルリープの転厩も、同じ日付である。 3月5日、初出走。同じ日に初勝利。翌6日、阪神のポラリスステークスを小牧太が1番人気に応えて勝った。デビュー週に挙げた3勝は、1985年以降の最多記録となる。

佐賀の砂 ― 開業初の重賞

2016年8月18日、佐賀競馬場。JpnIIIサマーチャンピオン。1番人気に推されたグレイスフルリープは好スタートからハナを奪い、自分のペースで隊列を引いた。直線でも後続を寄せつけず、2着に0.7秒差をつける。小牧太にとって、デビュー戦から数えて18度目の騎乗だった。 開業から半年足らず。地方への初遠征で、橋口慎介の重賞初制覇である。厩舎には父から引き継いだダービー馬もいた。それでも最初のタイトルを持ち帰ったのは、6歳のダートスプリンターだった。 秋の浦和・テレ玉杯オーバルスプリントは7着、暮れの阪神・ファイナルステークスは11着。この年はそれで終わった。

ソウルの二番手

7歳の年、中央ではまるで走らなかった。1月の根岸ステークスは13番人気で9着、5月の栗東ステークスは12着、12月のカペラステークスもまた13番人気の9着。この年、JRAで得た賞金は0円である。栗東ステークスは、小牧太がこの馬に乗った21度目にして最後の騎乗になった。 その谷間の9月10日、ソウル競馬場。第2回コリアスプリント。前年の第1回では、日本から遠征した2頭が3着と5着に敗れている。 鞍上は武豊。15頭立ての外めの2番手を楽な手応えで追走し、残り300mで逃げ馬を交わして先頭に立った。前年の韓国三冠馬パワーブレードが追ってきたが、1馬身3/4差でこれを振り切る。1分10秒7。武豊にとっては韓国初騎乗での勝利であり、橋口慎介にとっては開業2年目での海外勝利だった。 20年前、母ラビットフットが小倉で勝った日の鞍上も、同じ男である。 年の瀬、園田の兵庫ゴールドトロフィー。先行から3コーナーで抜け出して、この年ふたつ目のタイトルを獲った。中央で1円も稼げなかった年に、この馬は遠征先の砂で二度勝っている。

京都、クビ差

8歳。3月の黒船賞は5着。4月18日、大井の不良馬場で行われた東京スプリントを6番人気で逃げ切り、重賞4勝目を挙げる。5月のさきたま杯は2番人気で4着だった。 秋、鞍上がC.ルメールに替わる。10月の東京盃は3着。 11月4日、京都競馬場。JBCスプリントは地方競馬場の持ち回りで行われてきたが、この年だけはJRAの主催で、京都のダート1200mが舞台になった。16頭立て。グレイスフルリープは4番人気。1番人気は4歳のマテラスカイで、その鞍上は武豊だった。 マテラスカイが逃げる。グレイスフルリープはその背中を見ながら好位で我慢し、直線で並びかけた。ゴール前、首だけ前に出る。1分10秒4、クビ差。44度目の出走、デビューから6年を経て、この馬が初めて手にしたJpnIだった。 ルメールはこの秋、秋華賞のアーモンドアイ、菊花賞のフィエールマン、天皇賞(秋)のレイデオロと勝ち続けており、これで4週連続の大レース制覇になった。 橋口慎介にとっては開業3年目にして初のGI級。レース後、彼はこう言った。「父からも電話が入っているかもしれません。いい報告ができますね」[^1]

出典:競馬ラボ「【JBCスプリント】4週連続ルメールV!8歳グレイスフルリープが競り勝つ」2018年11月4日配信、https://www.keibalab.jp/topics/36900/、閲覧日:2026年7月29日。

飯舘の草地へ

9歳の春はドバイワールドカップミーティングを目標にしていた。しかし右前脚に腱鞘炎を発症し、休養が長引く見込みとなって現役を退くことが決まる。2019年3月1日付、競走馬登録抹消。44戦12勝。五つの重賞タイトルは、すべて6歳以降に獲ったものだった。 向かった先は、福島県飯舘村の「馬・デイズクラブ」。ここで乗馬になった。飯舘村は2011年の原子力発電所事故で全村が計画的避難区域に指定され、2017年3月末に、帰還困難区域を除いて避難指示が解けた村だ。人が戻りはじめた土地に、6年あまりを砂の上で過ごした馬が入った。2020年には引退名馬繋養展示事業の助成対象馬になっている。 優雅な跳躍、と名づけられた。44戦のうち、跳んだと呼べる瞬間がいくつあったかは分からない。ただ8歳の秋、京都のゴール板の前で首ひとつぶん前に出たあの一完歩だけは、確かに宙にあった。 その馬はいま、福島にいる。

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