名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ゴールドシップのイメージビジュアル
ゴールドシップGold Ship
Gold Ship

ゴールドシップ

通算成績28戦13勝

獲得賞金139,776万円

生年 2009(平成21年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ゴールドシップの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム映像
8 GI有馬記念(ラストラン) 中山 芝2500 1人気 内田博幸 2:33.5 映像
10 GIジャパンカップ 東京 芝2400 横山典弘 映像
15 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 横山典弘 2:16.0 映像
1 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 2人気 横山典弘 3:14.7 映像
1 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 1人気 岩田康誠 3:05.9 映像
3 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 岩田康誠 映像
15 GIジャパンカップ 東京 芝2400 2人気 岩田康誠 映像
14 GI凱旋門賞 ロンシャン 芝2400 横山典弘 映像
2 GII札幌記念 札幌 芝2000 2人気 横山典弘 映像
1 GI宝塚記念 阪神 芝2200 3人気 横山典弘 2:13.9 映像
7 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 2人気 C.ウィリアムズ 映像
1 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 1人気 岩田康誠 3:06.6 映像
3 GI有馬記念 中山 芝2500 R.ムーア 映像
15 GIジャパンカップ 東京 芝2400 2人気 内田博幸 映像
5 GII京都大賞典 京都 芝2400 1人気 内田博幸
1 GI宝塚記念 阪神 芝2200 2人気 内田博幸 2:13.2 映像
5 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 内田博幸 映像
1 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 1人気 内田博幸 3:05.0 映像
1 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 内田博幸 2:31.9 映像
1 GI菊花賞 京都 芝3000 1人気 内田博幸 3:02.9 映像
1 GII神戸新聞杯 阪神 芝2400 内田博幸 2:25.2 映像
5 GI東京優駿(日本ダービー) 東京 芝2400 2人気 内田博幸 2:24.0 映像
1 GI皐月賞 中山 芝2000 4人気 内田博幸 2:01.3 映像
1 GIII共同通信杯 東京 芝1800 2人気 内田博幸 1:48.3 映像
2 GIIIラジオNIKKEI杯2歳ステークス 阪神 芝1800 3人気 安藤勝己
1 OPコスモス賞 札幌 芝1800 1人気 秋山真一郎 1:53.6
2 GIII札幌2歳ステークス 札幌 芝1800 2人気 安藤勝己 1:50.9
1 新馬 函館 芝1800 2人気 秋山真一郎 1:51.2 映像

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ゴールドシップの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ステイゴールドStay GoldサンデーサイレンスSunday SilenceヘイローHalo
ウィッシングウェルWishing Well
ゴールデンサッシュGolden SashディクタスDictus
ダイナサッシュDyna Sash
ポイントフラッグPoint FlagメジロマックイーンMejiro McQueenメジロティターンMejiro Titan
メジロオーロラMejiro Aurora
パストラリズムPastoralismプルラリズムPluralism
トクノエイテイーTokuno Eighty

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間

いまは ビッグレッドファーム(新冠町)── 地図で見る

STORY

旅程 — この馬の物語

走るかどうかは気分次第、それでもGI六勝。引退後も多くのファンに愛され続ける、芦毛の人気者。

芦毛の気性 ― 出口牧場の暴れん坊

良血ではあった。だが、扱いやすい馬では決してなかった。 2009年3月6日、北海道日高町の出口牧場に生まれた芦毛。父ステイゴールドは現役時代に長くGIを勝てず、引退レースでようやく頂に立った遅咲きの個性派で、種牡馬としては気性の激しい産駒を送り出すことで知られた。母ポイントフラッグの父は、淀の長距離を支配した芦毛の盾取りメジロマックイーン。スタミナと、ひと癖。配合表の隅々まで、素直さとは縁の薄い血が流れていた。 馬主は実業家の小林英一。「ゴールドシップ」と名づけられたこの馬は、2011年7月、函館の新馬戦を秋山真一郎で快勝する。安藤勝己に乗り替わった札幌2歳ステークスとラジオNIKKEI杯はいずれも2着に惜敗したが、世代上位の素質は疑いようがなかった。 ただ、馬は賢すぎた。厩務員の今浪隆利はのちにこう振り返る。「3歳になって共同通信杯を使う前に、何があったか分からないけどすごく暴れた。その日からだね、シップとの闘いが始まったのは」。栗東・須貝尚介厩舎が抱え込んだのは、底知れぬ才能と、底知れぬ気難しさだった。

内田博幸と二冠 ― 大まくりの衝撃

2012年、手綱は内田博幸に託される。共同通信杯を差し切って迎えたクラシック、皐月賞。4番人気のこの馬は、十八頭立てのスタートで行き脚がつかず、三コーナーでなお十七番手の最後方近くにいた。 そこから、競馬史に刻まれる一瞬が始まる。荒れた内を嫌って多くの馬が外へ持ち出すなか、内田はあえて傷んだ内ラチ沿いへ突っ込んだ。距離ロスを一切切り詰め、最短距離を縫って差を一気に詰める——後方から、まるで瞬間移動のように位置が繰り上がっていく。四コーナーを回るころには六番手。のちに『ゴルシワープ』と呼ばれる、その異次元の進出だった。直線で持ち前のロングスパートが炸裂し、2馬身半差の完勝でGIを掴む。馬群の隙が開く一瞬を逃さず、底無しのスタミナに賭けた名手の好判断が、怪物の脚を解き放った。 だが完璧な三冠は許されなかった。1番人気で臨んだ日本ダービーは、府中の長い直線で伸びを欠いて5着。早くも、この馬の気分の在りかが勝敗を分けることを覗かせた。 真骨頂は秋にも爆ぜる。神戸新聞杯を完勝して臨んだ菊花賞、京都3000m。最後方に置いた馬体が、二周目の向正面から突如動いた。三コーナーの上り坂を意に介さず、今度は大外をぐるりとまくり上げ、直線を待たずに先頭へ——内ラチ最短を突いた皐月賞とは対照的な、豪快な大まくりだった。後続を完封し、皐月賞に続く二冠を手にする。内田は言い切った。「後ろから来ても抜かせない馬。強いゴールドシップを見せられてよかった」。

最後方からの戴冠 ― 二〇一二年有馬記念

暮れの中山、有馬記念。3歳で古馬の一線級に挑むゴールドシップは、ファン投票を勝ち抜いた1番人気に推された。 スタートからまたしても後方。だが直線、外を回して豪快に伸び、先に抜け出したオーシャンブルーを1馬身半差で捉えて差し切った。勝ち時計2分31秒9。1着・2着をともにステイゴールド産駒が占める、父の血の祝祭だった。皐月・菊花に続くGI3勝目を、3歳にして暮れのグランプリで飾る。内田博幸にとっても、これが初めての有馬記念制覇だった。 最後方から一気にまくり上げる破天荒な末脚は、芦毛の馬体と相まって「怪物」「怪獣」と呼ばれた。誰にも従えられない走り方のまま、ゴールドシップは世代の頂に立った。

気分が乗れば、誰より強い ― 古馬王道の波

2013年、古馬になっても二つの顔は変わらなかった。阪神大賞典を1番人気で完勝し、宝塚記念は内田を背に抜け出して、初めての古馬GIを手にする。気分さえ乗れば、この馬を負かせる相手はいなかった。 だが乗らなければ脆い。天皇賞(春)は5着、1番人気の京都大賞典も5着に沈む。極めつけはジャパンカップ。2番人気の支持に対し、まるで走る気を見せぬまま15着の大敗を喫した。続く有馬記念はライアン・ムーアに手綱が渡って3着。栄光と凡走が、同じ一頭の中で隣り合っていた。 「気分が乗れば、誰より強い」——この一頭を語る言葉は、裏を返せば「乗らなければ、誰より走らない」でもあった。

世界は甘くない ― 宝塚連覇と凱旋門賞

2014年は、海の向こうを見据えた一年だった。阪神大賞典を岩田康誠で連覇し、横山典弘に替わった宝塚記念を勝って、グランプリ連覇を達成する。気難しさを抱えたまま、それでも王道のGIをもう一つ重ねた。 照準はフランス、凱旋門賞。だが天皇賞(春)は7着、札幌記念も2着と本調子を欠いたまま渡欧する。10月のロンシャン、最後方からの競馬で直線に賭けたが、伸びは続かず14着。連覇を遂げたトレヴから大きく離された。須貝尚介は「世界は甘くない。厳しい競馬だった」と言葉少なに敗北を呑んだ。 帰国後のジャパンカップは再び15着、有馬記念は3着。世界の壁は厚く、そして気分屋は、海を渡っても気分屋のままだった。

百二十億円 ― 二〇一五年宝塚記念

最後の年も、衰えは感じさせなかった。春、阪神大賞典を史上初の3連覇で飾る。続く天皇賞(春)は、ゲート入りを嫌って発走が4分も遅れる一幕のすえ、二周目の向正面から横山典弘がゴーサインを出すと外をまくり上げ、カレンミロティックをクビ差しのいでGI6勝目を掴んだ。気性の難しさと底力が、同じ一頭に同居していた。 そして宝塚記念。前年までの連覇に続けば、JRA史上前例のない同一GI3連覇がかかる大舞台。1番人気は当然だった。だが発走直前、ゲート内で立ち上がって威嚇したゴールドシップは、扉が開いた瞬間に再び棹立ちになり、絶望的に出遅れる。届くはずもなく15着。彼に投じられた約120億円の馬券は一瞬で紙くずとなり、この一件は「120億円事件」と語り継がれた。 第1章から流れ続けた気性という伏線は、最も大きな舞台で、最も残酷なかたちで回収された。歴史的偉業を奪ったのは、ほかならぬ彼自身だった。

始まりの手綱、終わりの手綱 ― ラストラン

引退レースは、暮れの有馬記念と決まった。鞍上は内田博幸。栄光の二冠と3歳の戴冠をともにし、2013年を最後に手綱を離れていた男が、ちょうど2年ぶりに戻ってきた。始まりの手綱が、そのまま終わりの手綱になった。 1番人気。残り1000mから内田が早めに仕掛けるロングスパートで、ファンが幾度も見た破天荒な競馬を再現しようとした。だが直線、芦毛の脚は最後まで伸びきらず、ゴールドアクターに屈して8着。気分屋は、最後まで気分屋のままだった。 おとぎ話のような勝利では幕を閉じなかった。けれど満員の中山は、勝てなかったその一頭に惜しみない拍手を送った。28戦13勝、GI6勝。きれいに勝ち続けた優等生では決してない。むしろ二桁着順を幾度も並べた波の馬だった。それでも人々が愛したのは、誰にも飼い慣らせない、その自由な走りそのものだった。

血と余生 ― ビッグレッドファームの芦毛

ターフを去ったゴールドシップは、北海道のビッグレッドファームで種牡馬となった。獲得賞金13億9776万円。きれいに整った数字ではないが、その額以上の記憶を競馬場に残した馬だった。 気性は血にも受け継がれた。ビッグレッドファーム代表の岡田繁幸は、この馬をこう評している。「頭が凄く良くて繊細。あまりにも繊細すぎて好不調に波がある。自分が王者だと思っているから——感性が鋭い故のこと」。父ステイゴールドの個性は、ゴールドシップを通してさらに次の世代へ流れていく。 2021年、産駒ユーバーレーベンが優駿牝馬(オークス)を制してGIサイアーの仲間入りを果たす。さらにメイショウタバルは2025年・2026年と宝塚記念を連覇した——父が、その身の気性ゆえに3連覇を逃した、まさに同じ宝塚記念の舞台で。届かなかった盾を、血が取り返したのだ。 ビッグレッドファームで草を食む芦毛の姿は、いまも見物客を集める。飼い慣らせなかった怪物は、いまや次代の個性を産み落とす父として、静かに余生を送っている。

そのほかの現役時代のレース映像

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