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ジャンダルム
通算成績30戦7勝
獲得賞金4億1,551万円
生年月日 2015.04.25(平成27年)毛色 黒鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 12 | GI香港スプリント | シャティン 芝1200 | 6人気 | D.レーン | — | 映像 | ||
| 1 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 8人気 | 荻野極 | 1:07.8 | 上り34.6 | 映像 | |
| 17 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1200 | 9人気 | 荻野極 | 1:08.9 | 上り35.6 | 映像 | |
| 11 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 13人気 | 荻野極 | 1:08.7 | 上り35.3 | 映像 | |
| 1 | GIII夕刊フジオーシャンS | 中山 芝1200 | 2人気 | 荻野極 | 1:07.9 | 上り34.2 | 映像 | |
| 13 | GIIIシルクロードS | 中京 芝1200 | 5人気 | 荻野極 | 1:09.1 | 上り35.3 | 映像 | |
| 11 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 4人気 | 浜中俊 | 1:08.1 | 上り33.8 | 映像 | |
| 4 | GII産経賞セントウルS | 中京 芝1200 | 6人気 | 浜中俊 | 1:07.4 | 上り32.6 | 映像 | |
| 7 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1200 | 1人気 | 福永祐一 | 1:08.6 | 上り34.1 | 映像 | |
| 1 | L春雷S | 中山 芝1200 | 1人気 | 荻野極 | 1:07.3 | 上り33.8 | — | |
| 3 | GIII阪急杯 | 阪神 芝1400 | 4人気 | 荻野極 | 1:19.6 | 上り34.1 | 映像 | |
| 7 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 8人気 | 荻野極 | 1:20.2 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | L信越S | 新潟 芝1400 | 6人気 | 荻野極 | 1:20.9 | 上り34.3 | — | |
| 4 | GIII京成杯オータムH | 中山 芝1600 | 11人気 | 藤井勘一郎 | 1:34.1 | 上り35.3 | 映像 | |
| 11 | GIII関屋記念 | 新潟 芝1600 | 14人気 | 藤井勘一郎 | 1:34.2 | 上り35.1 | 映像 | |
| 10 | GIIIダービー卿チャレンジトロフィー | 中山 芝1600 | 2人気 | 藤井勘一郎 | 1:33.6 | 上り36.2 | 映像 | |
| 10 | L東風S | 中山 芝1600 | 1人気 | 藤井勘一郎 | 1:35.1 | 上り37.2 | — | |
| 1 | LニューイヤーS | 中山 芝1600 | 3人気 | 藤井勘一郎 | 1:35.8 | 上り36.2 | — | |
| 18 | GIII富士S | 東京 芝1600 | 9人気 | 藤井勘一郎 | 1:34.5 | 上り35.2 | 映像 | |
| 3 | GIII京成杯オータムH | 中山 芝1600 | 10人気 | 藤井勘一郎 | 1:30.9 | 上り34.2 | 映像 | |
| 6 | GIIIトヨタ賞中京記念 | 中京 芝1600 | 11人気 | 藤井勘一郎 | 1:34.1 | 上り35.2 | 映像 | |
| 14 | GIII東京新聞杯 | 東京 芝1600 | 8人気 | 武豊 | 1:33.2 | 上り33.7 | 映像 | |
| 16 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 11人気 | 武豊 | 1:34.0 | 上り33.5 | 映像 | |
| 7 | GIII富士S | 東京 芝1600 | 6人気 | 武豊 | 1:32.4 | 上り33.8 | 映像 | |
| 17 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 11人気 | 武豊 | 2:25.4 | 上り35.3 | 映像 | |
| 9 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 4人気 | 武豊 | 2:01.8 | 上り35.4 | 映像 | |
| 3 | GII報知杯弥生賞 | 中山 芝2000 | 4人気 | 武豊 | 2:01.3 | 上り34.1 | 映像 | |
| 2 | GIホープフルS | 中山 芝2000 | 4人気 | 武豊 | 2:01.6 | 上り36.2 | 映像 | |
| 1 | GIIデイリー杯2歳S | 京都 芝1600 | 5人気 | A.アッゼニ | 1:36.3 | 上り34.4 | 映像 | |
| 1 | 2歳新馬 | 阪神 芝1600 | 2人気 | 武豊 | 1:37.3 | 上り33.7 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父Kitten's Joy | El Prado | Sadler's Wells |
| Lady Capulet | ||
| Kitten's First | Lear Fan | |
| That's My Hon | ||
| 母ビリーヴBelieve | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| グレートクリスティーヌGreat Christine | Danzig | |
| Great Lady M. |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2015年生まれの黒鹿毛の牡馬。父Kitten's Joy、母ビリーヴ。主な勝ち鞍はスプリンターズS・デイリー杯2歳S・夕刊フジオーシャンS。
アイガーの絶壁
2015年4月25日、アメリカで黒鹿毛の牡馬が生まれた。母はビリーヴ。1998年に北海道鵡川町の上水牧場で生を受け、第1回セレクトセールでノースヒルズの前田幸治に落札され、2002年のスプリンターズステークスと2003年の高松宮記念を勝った快速牝馬である。引退後はケンタッキー州レキシントン近郊で繁殖に上がり、この黒鹿毛は7番仔にあたった。父には北米のトップサイアー、キトゥンズジョイが選ばれている。 血の奥は、さらに速い。母の母グレートクリスティーヌはダンジグ産駒で、アメリカのダート短距離で重賞を含む14勝を挙げた快速馬だった。その半姉が、セクレタリアトの娘レディーズシークレット――1986年に8つのGIを勝って全米年度代表馬に選ばれた名牝である。速さは、この一族の家業だった。ビリーヴの産駒にも、初仔で2009年の安田記念3着に食い込んだ半兄ファリダット、アイビスサマーダッシュで2着した半姉フィドゥーシアがいる。 1歳の秋に日本へ渡り、鳥取県伯耆町の大山ヒルズで育成された。ノースヒルズは2013年のキズナ、2014年のワンアンドオンリーで東京優駿を連覇したばかりで、牧場のゼネラルマネージャーは、この馬をその2頭以上に楽しみだと語っていたという。栗東の池江泰寿厩舎へ入り、名が決まる。ジャンダルム。スイス・アルプスの名峰アイガーにそびえる、高さ200メートルほどの絶壁の通称だった。
新潟の直線、二〇〇二年
息子の話を始める前に、母のレースを一度だけ巻き戻しておきたい。 2002年9月29日、スプリンターズステークス。東京競馬場の改修に伴い、この年だけ新潟へ移された一戦だった。ビリーヴは1番人気。鞍上は、新潟遠征の予定がなかった岩田康誠に代わって手綱を託された武豊である。好スタートから3番手を進み、直線ではショウナンカンプとアドマイヤコジーンに前を塞がれた。武は最内へ潜り込ませ、残り100メートルでこじ開ける。半馬身。 牝馬が牡牝混合のGIを勝つのは1997年の天皇賞(秋)を制したエアグルーヴ以来であり、その8月に世を去ったばかりのサンデーサイレンスにとっては、初めての短距離GI産駒でもあった。ウイニングランでユタカ・コールが起きるなか、武はこう言った。「今日は馬を褒めてやってください」[^1] 翌春、ビリーヴは高松宮記念も勝つ。1200メートルでの生涯成績は18戦10勝、2着3回。この距離は、彼女の領土だった。
出典:日本中央競馬会『優駿』2010年9月号 159頁。引用は ja.wikipedia「ビリーヴ (競走馬)」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B4_(%E7%AB%B6%E8%B5%B0%E9%A6%AC) 経由で確認、閲覧日:2026年7月25日。
良血、無敗の二連勝
2017年9月9日、阪神の芝1600メートル。デビュー戦の鞍上は武豊だった。母にGI初制覇をもたらし、その兄姉にも乗ってきた男である。11頭立ての2番人気。4コーナーで外へ膨れながらも直線で盛り返し、前を行く馬をすべて捉えた。初出走初勝利。前田幸治は、ダービーまで行ってほしいと期待を口にしている。 11月11日、京都のデイリー杯2歳ステークス。武が調教中に負傷して騎乗できなくなり、短期免許で来日していたイギリスの騎手アンドレア・アッゼニが代打に立った。9頭立ての5番人気。内枠から中団の内を進み、近くを走る馬の競走中止という不利を受けながら動じず、直線は最内から馬群を割って出る。独走していたカツジを内から差し切り、1馬身1/4差。無敗の2連勝で重賞初制覇だった。アッゼニにとってもJRA重賞初勝利であり、父キトゥンズジョイの産駒がJRAの重賞を勝ったのは、同年のエプソムカップを制したダッシングブレイズに次いで2頭目である。 暮れ、この年からGIに昇格したばかりのホープフルステークスへ向かう。陣営の視線は、すでに翌春の東京優駿にあった。マイルに留まらず、2400メートルを見据えて2000メートルのGIを選んだのだ。4番人気。中団後方から3コーナー過ぎに外を回して進出し、先に抜け出したサンリヴァルを直線で捉えて先頭に立つ。だが大外からタイムフライヤーが伸びてきた。抵抗し、並び、そして終いに鈍る。1馬身1/4差の2着。3戦目にして、初めての敗北だった。
二四〇〇メートルの遠さ
2018年、弥生賞。朝日杯フューチュリティステークスを勝ったダノンプレミアム、東京スポーツ杯2歳ステークスを勝ったワグネリアンに次ぐ4番人気だった。4番手を進んだが直線で抜け出せず、サンリヴァルにハナ差先着しての3着。武豊は、世代なら普通はトップレベルだが相手が悪かった、と振り返っている。 皐月賞は跳ねるような不格好な発馬になり、先行できないまま稍重の中山で9着。初めて掲示板を外した。そして5月27日、東京優駿。上位に来れば凱旋門賞かブリーダーズカップへ、という青写真があり、事前登録まで済ませてあった。だが中団後方から末脚は見られず、17着。武は距離ではないかとの見解を示した。 秋、ブリーダーズカップ・マイル挑戦が表明されたものの、レーティングが足りずに立ち消える。富士ステークス7着、マイルチャンピオンシップ16着。良血と呼ばれ、陣営がダービーを目標に据えていた馬は、3歳を終えたとき、行き先を失っていた。
二年二か月
4歳の2019年は東京新聞杯14着から始まった。5か月半の休養を挟んだ中京記念から藤井勘一郎に乗り替わって6着。秋の京成杯オータムハンデキャップで3着に入り、久しぶりに掲示板へ戻ったが、続く富士ステークスは18頭立ての18着だった。 2020年1月18日、ニューイヤーステークス。好位から早めに先頭へ立ち、そのまま押し切る。2017年11月のデイリー杯2歳ステークス以来、2年2か月ぶりの勝利だった。だが1番人気に推された東風ステークスは10着、ダービー卿チャレンジトロフィーも10着。マイルでの答えは、まだ出ていなかった。 転機は秋に来る。10月18日、新潟の信越ステークスで初めて1400メートルを使われ、鞍上には荻野極が座った。好位につけ、逃げるカリオストロを1馬身1/4差で捉えて4勝目。距離が短くなるほど、この馬は素直になった。
一二〇〇メートルへ
2021年、GI馬3頭が顔を揃えた阪急杯を2番手から粘って3着。そして4月11日、春雷ステークスで初めて1200メートルに挑んだ。トップハンデを背負って1番人気に支持され、好位から直線で抜け出して2馬身半差の快勝。母の領土に、6歳の息子がようやく足を踏み入れた。 夏の北九州記念は1番人気に推されたが、後手を踏んで7着。鞍上の福永祐一は、ゲートの中で暴れていたと明かしている。秋のセントウルステークスもややスタートで遅れて4着。速い脚は確かにあるのに、その脚を使う前の一瞬が、いつもこの馬の課題だった。 この頃に手綱を取っていたのは浜中俊である。荻野極が競馬学校を卒業するとき、目標に挙げた騎手だった。浜中とのスプリンターズステークスは11着。1年後、同じ中山の芝1200メートルで、その手綱を握っているのは荻野になる。 7歳初戦のシルクロードステークスは5番人気で13着。1200メートルでの答えは、まだ半分しか出ていなかった。
二十年後の一二〇〇
2022年3月5日、中山のオーシャンステークス。2番人気。好位から進んでゴール前で抜け出し、後方から追い込むナランフレグを3/4馬身抑えた。デイリー杯2歳ステークス以来、4年ぶりの重賞制覇である。荻野極にとっては、2017年のフローラステークスで重賞に初めて騎乗してから5年目の、JRA重賞初勝利だった。 だが3週間後の高松宮記念では、好位から直線で2番手に上がりながら次々に飲み込まれて11着。勝ったのは、オーシャンステークスで退けたナランフレグだった。夏の北九州記念は大外を回して17着。7歳の秋、ジャンダルムは8番人気だった。 10月2日、中山の芝1200メートル。内枠から好スタートを切り、3番手を進む。逃げるテイエムスパーダを4コーナーで捉えて先頭に立つと、そのまま差を広げにかかった。外から猛然と伸びてきたウインマーベルを、クビ差。1分07秒8。 荻野極のGI初勝利だった。初めてGIに乗ったのは2018年暮れの阪神ジュベナイルフィリーズ。18頭立ての18番人気で、18着だった。それから4年近くを経て、レース後に彼は言った。「関係者に感謝の言葉しかありません」[^1] 20年前、同じ距離の同じ競走を勝った牝馬がいる。ビリーヴ。スプリンターズステークスを母と仔が揃って勝ったのは、これが初めてのことだった。JRAで同じGIを母仔が制した例そのものが、ビワハイジ母仔、アパパネ母仔に次ぐ3組目である。2400メートルには届かなかった馬が、母と同じ1200メートルで頂に立った。
出典:中日スポーツ「【スプリンターズS】8番人気ジャンダルムがG1初勝利 荻野極「課題のスタート、うまく行きました」」2022年10月2日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/556152 、閲覧日:2026年7月25日。
岩峰の向こう
12月11日、シャティン。香港スプリントに遠征し、12着。母ビリーヴもまた2002年の暮れに同じレースへ渡り、そこで連勝を止めている。母はその後、高松宮記念で立ち上がった。息子にとっては、これが最後の一戦になった。12月19日、競走馬登録抹消。通算30戦7勝。 2023年から北海道新ひだか町のアロースタッドで種牡馬となる。初年度の種付料は100万円だった。だが供用3年目を目前にした2025年2月24日、左後肢の大腿骨を骨折して予後不良と診断され、安楽死の処置が取られた。10歳。遺されたのは、二世代ぶんの血である。 2026年6月28日、小倉の芝1200メートルの新馬戦に、その初年度産駒が名を連ねた。父が6歳になってようやく辿り着いた距離に、仔は最初から立っている。 ジャンダルムという語は、もともとフランス語で国家憲兵を指す。山では、尾根の途中に立ちはだかって登山者の行く手を阻む岩の塔を、そう呼ぶ。2400メートルの頂には、この馬は届かなかった。けれど、越えられない壁の名を背負わされた黒鹿毛は、20年という尾根を渡って、母が立っていたその一点に辿り着いたのだった。
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