名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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フレンドシップのイメージビジュアル
フレンドシップFriendship
Friendship

フレンドシップ

通算成績15戦4勝

獲得賞金9,575万円

生年月日 2003.05.09(平成15年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
フレンドシップの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
13 OPKBC杯 小倉 ダ1700 13人気 熊沢重文 1:47.4 上り39.2
11 OP関越S 新潟 ダ1800 12人気 福永祐一 1:53.2 上り37.8
12 OPベテルギウスS 阪神 ダ2000 12人気 武幸四郎 2:03.0 上り37.8
13 OP師走S 中山 ダ1800 8人気 吉田隼人 1:53.6 上り39.3
15 OPトパーズS 京都 ダ1800 10人気 A.スボリッチ 1:53.6 上り38.4
15 OPアルデバランS 京都 ダ1800 7人気 A.スボリッチ 1:54.7 上り40.2
1 GIジャパンダートダービー 大井 ダ2000 2人気 内田博幸 2:06.1 上り39.6
2 GII兵庫チャンピオンシップ 園田 ダ1870 1人気 四位洋文 2:01.2
1 OP伏竜S 中山 ダ1800 1人気 四位洋文 1:54.3 上り39.0
1 3歳500万下 阪神 ダ1800 3人気 川田将雅 1:54.9 上り37.8
1 3歳未勝利 小倉 ダ1700 1人気 M.モンテリーゾ 1:49.4 上り37.7
2 3歳未勝利 京都 ダ1800 1人気 M.モンテリーゾ 1:51.9 上り38.6
2 3歳未勝利 京都 ダ1800 9人気 M.モンテリーゾ 1:53.9 上り37.1
12 2歳未勝利 札幌 芝1500 6人気 藤田伸二 1:32.8 上り37.3
7 2歳新馬 札幌 芝1800 5人気 藤田伸二 1:54.9 上り36.9

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
フレンドシップの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
フレンチデピュティFrench DeputyDeputy MinisterVice Regent
Mint Copy
MitterandHold Your Peace
Laredo Lass
フレンドリービューティFriendly BeautyStalwartHoist the Flag
Yes Dear Maggy
FredaqRaise a Native
Smart Steppin
STORY

旅程 — この馬の物語

2003年生まれの鹿毛の牡馬。父フレンチデピュティ、母フレンドリービューティ。

千歳の五月 ― 二〇〇三年

2003年5月9日、北海道千歳市の社台ファームで鹿毛の牡が生まれた。父はフレンチデピュティ、母は1992年アメリカ生まれのフレンドリービューティ。母の名の頭には友という語があり、仔にはフレンドシップという名が与えられた。社台ファームを預かる吉田照哉が、そのまま馬主として登録している。 預けられたのは栗東の角居勝彦厩舎だった。角居は2001年の開業で、この時点ですでにデルタブルースで菊花賞を、シーザリオでオークスとアメリカンオークスを勝っている。そしてこの馬が新馬戦に出るひと月あまり前の7月13日、同じ厩舎のカネヒキリが武豊を背に大井のジャパンダートダービーを勝っている。 デビューは2005年8月21日、札幌の芝1800m。藤田伸二を背に5番人気で7着。勝ったのは、二年後に有馬記念を勝つマツリダゴッホである。三週間後、同じ札幌の芝1500mは12着。芝で二度走って、二度とも掲示板に届かなかった。

砂 ― 二〇〇六年、冬から春へ

年が明けた2006年1月8日、京都のダート1800m。鞍上はマルコ・モンテリーゾ、9番人気だった。馬体は前走から16キロ増えて500キロになっている。結果はクビ差の2着。芝で沈んでいた馬が、砂に替えた最初の一戦で勝ち馬の首元まで並んだ。 連闘で同じ条件に向かうと今度は1番人気に推され、それでもまた2着。中1週で小倉のダート1700mに遠征して、三度目にようやく勝ち上がる。1か月置いた阪神の500万下は川田将雅を背に0.6秒差の圧勝、翌月の中山・伏竜ステークスは四位洋文に替わって1番人気に応え、これで三連勝。年明けから三か月で、オープン特別を勝つところまで来た。 この馬の脚は、芝ではなく砂で計るものだった。

園田のクビ差 ― 五月四日

5月4日、園田のダート1870m、兵庫チャンピオンシップ。三連勝の勢いを買われて1番人気に推された。対抗は牝馬のグレイスティアラで、前年の全日本2歳優駿を勝っている。生まれたのは2003年5月11日。フレンドシップの二日あとである。 レースは二頭のマッチレースになった。直線で並び、そのまま並んだままゴール板を通り過ぎて、クビだけ届かなかった。タイム差は0.0秒。時計の上では、二頭は同じ時間を走っている。 三連勝はここで止まった。それでも次に大井のゲートへ入ったとき、この馬の単勝は二番人気だった。

七月十二日、大井 ― 曇り

曇っていた。ダートは良。大井の2000mに14頭が並び、七枠十二番からゲートを出た。馬体重は485キロ。この年に入っていちばん軽い体だった。 羽田盃を勝ったサンキューウィンが先手を取りに行く。内田博幸はそれを行かせ、三番手にこの馬を置いた。前に二頭、あとは全部うしろである。 直線を向くと、二番手を進んでいたバンブーエールが先に抜け出した。池添謙一が追い、半ばで先頭に立つ。空いた前を、内田が追い出す。 そこから先は、切れ味の話ではなかった。上がりは39秒6かかっている。脚の速さで抜ける終いではない。内田は押して押して、前の一頭を捉えた。捉えてからは、離した。 ゴール板を過ぎたとき、二頭のあいだには一馬身半あった。時計は2分6秒1。中央の三歳馬が、地方の名手を背に、砂の一冠を持っていった。

連覇、そして同じ夏 ― 二〇〇六年

単勝は320円、2番人気だった。1番人気はユニコーンステークスを勝ったナイキアースワークで、安藤勝己を背に4着。3番人気はナイアガラ、セレクトセールで6510万円の値がついた馬で、鞍上は武豊だった。前の年に同じレースを同じ厩舎のカネヒキリで勝った男は、この日は勝ち馬から10馬身離された最下位に沈んでいる。 角居勝彦にとっては、前年のカネヒキリに続く連覇だった。開業六年目の栗東の厩舎が、大井の砂の頂点を二年続けて持ち帰ったことになる。内田博幸にとっては、このレース初めての勝利である。この年の内田は大井に所属したまま勝ち星を積み上げ、佐々木竹見が保っていた年間最多勝の記録を塗り替えた。前年の東京ダービーをシーチャリオットで勝っていた彼は、この日で二つ目を埋めた。四年後にエイシンフラッシュで日本ダービーを勝ち、東京優駿・東京ダービー・ジャパンダートダービーの三つを制した史上初の騎手になる。 陣営は次の目標をダービーグランプリに置いた。調整に入って、屈腱炎が見つかる。 同じ年、同じ厩舎で、もう一頭の腱が壊れていた。カネヒキリである。6月28日の帝王賞でアジュディミツオーの逃げに1馬身届かず2着になったあと、マイルチャンピオンシップ南部杯を目標に調整されていたところで屈腱炎を発症し、長期休養に入っていた。角居厩舎のジャパンダートダービー馬が二頭、同じ年に、同じ故障で止まったことになる。

四百八十五から五百二十へ

復帰は2007年10月28日、京都のアルデバランステークス。大井のゴール板から1年3か月が経っていた。馬体は502キロ。17キロ増えている。7番人気で15着、勝ち馬から3秒8。上がりは40秒2かかった。 そこから五戦。トパーズステークス15着、師走ステークス13着、不良馬場のベテルギウスステークス12着。半年空けて2008年、新潟の関越ステークスは福永祐一を背に11着で、このとき馬体は520キロまで来ていた。最後の一戦は8月10日、小倉のKBC杯。熊沢重文で13着。勝ったのはスマートファルコンで、この馬はのちに東京大賞典とJBCクラシックをそれぞれ二度勝つことになる。 復帰後の六戦は、すべて二桁着順だった。いちばん良くて十一着。9月17日付で競走馬登録が抹消された。五歳の秋である。 その二週間後、カネヒキリが角居厩舎に帰ってきた。胸骨の骨髄液を右前脚の腱に移植する再生医療を経て、約2年4か月ぶりに出走した武蔵野ステークスは9着。それでも12月のジャパンカップダートを2年10か月ぶりの勝利で飾り、暮れの東京大賞典まで勝って、二度目の最優秀ダートホースに選ばれた。屈腱炎からでも戻れることが、同じ厩舎で証明された年である。フレンドシップは、その証明を待たずに厩舎を出ていた。 種牡馬にはなれなかった。乗馬になった。

同じ黄色

2008年11月30日、府中。黄色に黒の縦縞、赤い袖の勝負服が、ジャパンカップのゴール板を先頭で通過した。スクリーンヒーロー。同じ吉田照哉の服である。フレンドシップの登録が消えてから、二か月半後のことだった。 同じ牝系からも、あとになって名前が出た。フレンドシップの四代母は、1962年にアメリカで生まれたSmartaireという牝馬である。2012年の安田記念をレコードタイムで勝ったストロングリターンも、四代母は同じSmartaire。同じ千歳の社台ファームで生まれ、同じ黄色の服を着ていた。 2016年には、Smartaireを三代母に持つキョウエイギアが、大井のジャパンダートダービーを勝っている。十年を隔てて、同じ一族からもう一頭、砂の三歳王者が出たことになる。 服も血も続いた。続かなかったのは、フレンドシップ自身だった。

余生

角居勝彦は2021年2月28日、定年を待たずに調教師を勇退した。中央だけでGIを26勝し、ウオッカを、シーザリオを、ヴィクトワールピサを送り出した男は、厩舎を解散して郷里の石川県へ戻り、珠洲市で引退した競走馬を預かる場所をつくる。2023年8月、そこは珠洲ホースパークという名前になった。 なぜそんなことを始めたのかと問われて、角居は現役のころのことを話している。「競馬で負けた馬の余生は追いかけるな」[^1]と言われた、と。競走馬は引退すると多くが生きていられない、それが暗黙の了解で、自分はずっとそのままでいいのかと悩んでいた、と続けた。フレンドシップは、負けた馬ではない。三歳の夏に、砂の一冠を持っている。それでも記録が追いかけたのは、種牡馬になれず乗馬になった、という一行までだった。GIを勝っても、血が繋がらなければ、その先は誰かが意識して追いかけないかぎり残らない。その追いかける仕事を後半生にしたのが、この馬に一冠を獲らせた調教師だった。 ファンが覚えているのは、たぶん一行だろう。歴代優勝馬の一覧の、第七回カネヒキリと第九回フリオーソに挟まれた、第八回フレンドシップ。前後の二頭はそこから何年も砂を走り続け、この馬はそこで止まった。止まった場所が頂上だった、というだけの話である。競馬というブラッドスポーツのなかで、この鹿毛が残せたのは血ではなく、走った記録だけだった。記録の外側で、彼は人を背に乗せる馬になった。そちらの時間は誰にも計られない。計られないというだけで、無かったことにはならない。

出典:東京新聞「「引退競走馬に安住の地を」動いた伝説の調教師 被災地・奥能登で「根を張る」覚悟」2024年12月23日配信、https://www.tokyo-np.co.jp/article/374598 、閲覧日:2026年8月1日。

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