名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ファーンヒルのイメージビジュアル
ファーンヒルFern Hill
Fern Hill

ファーンヒル

通算成績30戦7勝

獲得賞金22,643万円

生年月日 2019.04.05(令和元年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ファーンヒルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 オグリキャップ記念 笠松 ダ1400 2人気 笹川翼 1:26.8 上り38.5
7 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 4人気 笹川翼 1:12.0 上り37.6
1 JpnⅠJBCスプリント 船橋 ダ1000 5人気 笹川翼 0:58.8 上り36.2映像
1 アフター5スター賞 大井 ダ1200 1人気 笹川翼 1:10.9 上り36.4
1 習志野きらっとスプリント 船橋 ダ1000 3人気 笹川翼 0:59.1 上り36.4
15 OP水無月S 阪神 ダ1200 7人気 鮫島克駿 1:12.7 上り38.1
3 OP天王山S 京都 ダ1200 11人気 吉村誠之助 1:10.8 上り35.7
7 OP大和S 京都 ダ1200 12人気 吉村誠之助 1:12.1 上り36.0
10 OPりんくうS 京都 ダ1200 12人気 吉村誠之助 1:13.0 上り38.0
12 OP藤森S 京都 ダ1200 9人気 吉村誠之助 1:12.6 上り37.3
3 OP越後S 新潟 ダ1200 5人気 佐々木大輔 1:11.2 上り36.4
2 L京葉S 中山 ダ1200 9人気 田辺裕信 1:09.8 上り35.2
10 OP室町S 京都 ダ1200 9人気 C.ルメール 1:12.8 上り37.8
8 OPNST賞 新潟 ダ1200 2人気 北村宏司 1:11.9 上り37.2
2 OP安達太良S 福島 ダ1150 7人気 北村宏司 1:07.3 上り35.9
1 安芸S 阪神 ダ1200 1人気 川田将雅 1:10.8 上り35.6
8 東大路S 京都 ダ1200 1人気 武豊 1:12.9 上り37.5
2 陽春S 阪神 ダ1200 3人気 武豊 1:11.9 上り36.9
3 なにわS 阪神 ダ1200 2人気 武豊 1:12.7 上り37.0
1 豊川特別 中京 ダ1200 1人気 武豊 1:12.0 上り36.8
3 3歳以上2勝クラス 阪神 ダ1200 3人気 武豊 1:12.4 上り36.6
8 3歳以上2勝クラス 中京 ダ1200 1人気 川田将雅 1:10.6 上り36.6
2 浦佐特別 新潟 ダ1200 3人気 武豊 1:10.2 上り35.8
3 OP端午S 阪神 ダ1400 9人気 武豊 1:23.6 上り35.7
9 OP昇竜S 中京 ダ1400 8人気 岩田望来 1:26.2 上り39.3
1 2歳1勝クラス 阪神 ダ1200 2人気 C.デムーロ 1:12.4 上り37.3
1 2歳未勝利 阪神 ダ1200 4人気 横山武史 1:12.7 上り37.1
10 2歳未勝利 福島 芝1200 4人気 横山和生 1:10.2 上り35.9
3 2歳未勝利 函館 芝1200 4人気 大野拓弥 1:10.0 上り35.5
3 2歳新馬 札幌 芝1200 2人気 大野拓弥 1:09.9 上り35.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ファーンヒルの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キンシャサノキセキKinshasa no KisekiフジキセキFuji KisekiサンデーサイレンスSunday Silence
ミルレーサーMillracer
ケルトシャーンKeltshaanPleasant Colony
Featherhill
ラブディランDylan ThomasデインヒルDanehill
Lagrion
ゴンチャローワGoncharovaGone West
Pure Grain
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの黒鹿毛の牡馬。父キンシャサノキセキ、母ラブディラン。

ファーン・ヒル ― 詩人の丘

母の名は、ラブディラン。その父は、詩人と同じ名を負った馬ディラントーマス。牝系は、ウェールズの詩人ディラン・トマスの名で結ばれていた。 ならば仔の名も、そこから採られる。ディラン・トマスが1945年に発表した詩「Fern Hill」――少年期を過ごした農場の丘と、指のあいだをすり抜けていく時間をうたった一篇である。詩のなかの少年は若く、無邪気で、けれど時に緑のまま朽ちていく。急いで実を結ぶ名ではなかった。 2019年4月5日に生まれた黒鹿毛は、2021年6月、札幌の芝1200mでデビューする。鞍上は大野拓弥、2番人気で3着。芝で三戦して勝ち切れず、舞台をダートへ移した11月の阪神で、横山武史を背に未勝利を勝ち上がった。年内にもう一つ、1勝クラスも重ねる。丘の名を負った馬の旅は、砂の上から始まった。

武豊の手綱 ― 級を一つずつ

明けて3歳、手綱の多くを預かったのは武豊だった。5月の端午ステークスは3着、夏の浦佐特別は2着。勝ち切れない日が続いたが、暮れの中京・豊川特別で、1番人気に応えてようやく先頭でゴールする。2勝クラスを抜けるのに、デビューから一年半がかかっていた。 4歳の春も、上りは緩やかだった。なにわステークス3着、陽春ステークス2着。1番人気に推された東大路ステークスでは8着に沈み、勝ち切れなさが影のようについて回る。それでも6月、川田将雅に乗り替わった安芸ステークスを1番人気で完勝し、3勝クラスの壁も越えた。級を一つずつ、こつこつと。派手さはないが、歩みは止まらなかった。

重賞の、その手前で

だが、オープンには壁があった。昇格初戦の安達太良ステークスは2着。京葉ステークスでは9番人気の低評価をはねのけて2着に食い込み、これがJRAで残した最上の一枚になる――が、それはリステッドの二着どまり。重賞の舞台には、ついに一度も立てなかった。 2024年の後半から、時計は狂い始める。藤森ステークス12着、りんくうステークス10着、大和ステークス7着。11番人気で3着に粘った天王山ステークスに一瞬の火は見えたが、続く水無月ステークスは15着の大敗。2025年6月8日のその一戦が、この馬のJRAでの最後になった。詩のなかの少年のように、若さは緑のまま、朽ちかけていた。

南関東、笹川翼

2025年6月11日、JRA登録を抹消。行き先は、大井・荒山勝徳厩舎だった。中央で勝ち切れなかった6歳の短距離馬に、南関東の水が合うかどうかは、走ってみるまで分からなかった。 手綱を取ったのは笹川翼。新潟の出身、2013年に大井でデビューし、勝ち星を年々積み上げてきた男である。コンビ初戦は7月の習志野きらっとスプリント、船橋ダート1000m。3番手から直線で一気に先頭を叩き、地方重賞をあっさりと初制覇した。9月のアフター5スター賞も、大井の1200mで前々から抜け出し、追いすがるトーセンサンダーに2馬身差をつける。移籍後、無傷の二連勝。砂と、鞍上と、この馬の脚が、ようやく噛み合い始めていた。

JBCスプリント ― 砂の頂へ

2025年11月3日、船橋。JBCスプリント、Jpn1、ダート1000m。相手には、2023年のスプリンターズステークスを勝った芝の女王ママコチャが、初めての砂に挑んで1番人気に立っていた。ファーンヒルは、5番人気。 ゲートが開くと、エンテレケイアと激しく先手を争いながらハナへ。稍重の砂を、鞍上の鞭に応えてぐんと伸びる。直線、外からママコチャが迫った。それでも脚色は衰えない。1馬身、突き放してゴール。勝ち時計58秒8。地方馬による史上5頭目のJBCスプリント制覇であり、父キンシャサノキセキの産駒にとって、初めてのGI級タイトルだった。 「これで負けたらしょうがない」[^1]。笹川にとっては2023年のイグナイター以来、二度目のJBCスプリントだった。彼はこの年、350勝を挙げて初めて全国リーディングの座に就く。馬の絶頂と、乗り手の絶頂が、同じ秋に重なっていた。 遅れてきた血だった。父キンシャサノキセキもまた、南半球生まれのハンデを負いながら、7歳で初めて高松宮記念を勝ち、8歳で史上初の連覇を遂げた晩成の快速馬である。その父が種牡馬として長く待った頂を、6歳の息子が砂の上で初めて手渡した。

出典:中日スポーツ「【JBCスプリント】ファーンヒルがJRA勢を破ってダート短距離王に君臨、笹川翼「これで負けたらしょうがない」と強気な騎乗で押し切り」2025年11月3日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1158662、閲覧日:2026年7月18日。

歌は、鎖のなかで

レース後、荒山師は先を見据えた。「来年はドバイ、サウジも視野に入れながら考えていきたい」[^1]。 2026年、大井の東京スプリントは7着、笠松のオグリキャップ記念は3着。頂を知った馬にも、砂は毎回やさしくはない。それでもファーンヒルは、今も大井の砂の上に立ち続けている。 名の由来となった詩で、ディラン・トマスはこう歌った――時は、少年を緑のまま、死にゆくままに抱きしめた。それでも少年は、海のように鎖のなかで歌いつづけた、と。中央で勝ち切れなかった歳月は、この馬にとっての鎖だったのだろう。歌はずっと鳴っていた。ただ、ほどけて響き渡るのに、少しばかり長くかかっただけだ。次の一戦へ。丘の名を負った馬は、まだ走っている。

出典:スポーツナビ「【JBCスプリント】史上5頭目の地方馬V、大井のファーンヒルが速さで中央勢を圧倒」2025年11月4日配信、https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2025110400017-spnaviow、閲覧日:2026年7月18日。

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