名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ファウストラーゼンのイメージビジュアル
ファウストラーゼンFaust Rasen
Faust Rasen

ファウストラーゼン

通算成績10戦3勝

獲得賞金12,219万円

生年月日 2022.03.23(令和4年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ファウストラーゼンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIII函館記念 函館 芝2000 10人気 小林美駒 1:57.7 上り34.5映像
13 GI大阪杯 阪神 芝2000 12人気 岩田康誠 2:00.6 上り38.2映像
15 GIIIダイヤモンドS 東京 芝3400 6人気 横山和生 3:35.7 上り38.5映像
12 GIIアメリカジョッキークラブカップ 中山 芝2200 7人気 横山武史 2:12.2 上り34.3映像
18 GI東京優駿 東京 芝2400 13人気 M.デムーロ 2:29.0 上り37.6映像
15 GI皐月賞 中山 芝2000 8人気 杉原誠人 1:58.2 上り36.0映像
1 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 7人気 杉原誠人 2:01.3 上り37.2映像
3 GIホープフルS 中山 芝2000 17人気 杉原誠人 2:01.0 上り36.0映像
1 2歳未勝利 京都 芝2000 6人気 鮫島克駿 2:01.7 上り36.0
10 2歳新馬 中京 芝1600 9人気 吉村誠之助 1:36.6 上り34.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ファウストラーゼンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
モズアスコットMozu AscotFrankelGalileo
Kind
IndiaヘネシーHennessy
Misty Hour
ペイシャフェリススペシャルウィークSpecial WeekサンデーサイレンスSunday Silence
キャンペンガール
プレザントケイプPleasant CapeCape Cross
Felicity
STORY

旅程 — この馬の物語

2022年生まれの鹿毛の牡馬。父モズアスコット、母ペイシャフェリス。主な勝ち鞍は報知弥生ディープ記念。

芝の魔術師、その名の出どころ

ファウスト。ゲーテが生涯を賭けて書き続けた、悪魔と契約する男の名だ。ラーゼンはドイツ語で「芝」を意味する。ファウストラーゼン——芝の上を魔術師のように駆ける鹿毛、2022年3月23日生まれ。 北海道新ひだか町の友田牧場で産声を上げたこの牡馬の父は、モズアスコット。2018年の安田記念を連闘という非常識な手順で制し、2020年にはフェブラリーステークスも勝って芝砂二冠を果たした万能馬だ。父父はフランケル——欧州競馬史上最強のマイラーと称された不敗の名馬。母ペイシャフェリスは父スペシャルウィーク、祖母にイギリス産のプレザントケイプ(父ケープクロス)を持つ牝系。スピードと底力、ヨーロッパの血が混じり合う。 この馬の武器はまだ、誰も知らない。

デビューとまくりの芽生え

2024年9月21日、中京。2歳新馬戦、芝1600m。9番人気で出走したファウストラーゼンは10着に沈んだ。後手に回る競馬で、力を出し切れなかった。 だが鞍上の吉村誠之に代わって手綱を握った鮫島克駿は、この馬の本質を見抜く。11月3日、京都の2歳未勝利戦(芝2000m)。今度は勝ち上がった。6番人気、タイム2分01秒7。距離が延びて、脚質を活かしやすくなった。中山2000mというコースへの適性が、この一戦でそっと顔をのぞかせていた。

単勝303倍の刃 ― ホープフルSの衝撃

2024年12月28日、中山。ホープフルステークス(GI)、芝2000m。18頭立てのこのレースで、ファウストラーゼンは17番人気、単勝303.3倍というブービー人気だった。鞍上には杉原誠人が座る。 スタートで後方に置かれると、杉原はじっとペースを読んだ。前半1000mを61秒4で通過するスロー。ペースが緩んだ向正面で、杉原はゴーサインを出す。馬群の外を縦横に走り抜け、ファウストラーゼンは一気に先頭へ躍り出た。捲り——それが、この馬の戦法だった。 先頭に立って直線へ。しかし1番人気のクロワデュノールが外から迫り、残り200mで捉えられた。ファウストラーゼンは3着に踏みとどまる。勝ち馬には届かなかったが、単勝303倍の馬が先頭まで立った事実は消えない。杉原は馬を降りて言った。「まだ緩さが残る中、これだけやれたのですから、これからが楽しみです」[^1]。

出典:中日スポーツ「ホープフルS、ブービー17番人気もファウストラーゼン3着! 3連単29万3380円まで跳ね上がる」2024年12月28日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1005691、閲覧日:2026年6月28日。

父への贈り物 ― 2025年弥生賞

年が明けて2025年、ファウストラーゼンと杉原誠人のコンビは再び中山2000mへ向かう。3月9日、報知弥生賞ディープインパクト記念(GII)。稍重の馬場、7番人気。 スタート直後にヨレて後方に下がる。ホープフルSと同じ光景だった。だが杉原は動じない。ペースが緩む向正面、前と同じタイミングでアクセルを踏んだ。外から一気に捲り上がり、3コーナーで先頭へ。そのまま直線へ雪崩れ込む。ヴィンセンシオが食らいつく。坂の途中で一旦並ばれても、ファウストラーゼンは頭を下げて踏ん張り、最後は差し返した。クビ差の辛勝。勝ちタイム2分01秒3。 杉原はゴール後、一言でこう語った。「馬を信じて追いました」[^1]。 そしてこの勝利は、父モズアスコットにとっても特別な一日となった。産駒によるJRA重賞初制覇。芝砂二冠という異端の父が、芝の重賞を仔に贈られた瞬間だった。

出典:東京スポーツ「【弥生賞結果&コメント】ファウストラーゼン鮮やかなまくりでV 杉原誠人『馬を信じて追いました』」2025年3月9日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/55947、閲覧日:2026年6月28日。

クラシックの壁と、その先

弥生賞の優勝で皐月賞への優先出走権を手にしたファウストラーゼンは、4月20日の中山へと駒を進めた。皐月賞(GI)、8番人気。しかしこの日の中山は厳しかった。15着。クラシックの地力は別次元にあった。 続くダービー(GI)には、鞍上をデムーロに替えて臨んだ。東京芝2400m、13番人気。向正面の捲りが効きにくい府中の長距離、18着に終わった。 2026年に4歳を迎えたファウストラーゼンは、騎手を替えながら古馬の一線に挑み続ける。アメリカジョッキークラブカップ(GII)12着、ダイヤモンドS(GIII)15着、大阪杯(GI)13着——数字だけを見れば苦しい道のりだ。だが大阪杯で新コンビを組んだ岩田康誠は、レース後に言った。「3コーナー過ぎまで夢見たわ。いい手応えで普通のレースができました」[^1]。捲りの手応えは、まだ消えていない。

出典:日刊スポーツ「【大阪杯】『3角過ぎまで夢見たわ…』岩田康騎手と新コンビで挑んだファウストラーゼンは13着」2026年4月5日配信、閲覧日:2026年6月28日。

長い審議の末に ― 2026年函館記念

大阪杯から2か月半、ファウストラーゼンは北の洋芝に戻ってきた。2026年6月28日、函館記念(GIII)、芝2000m。10番人気。鞍上は21歳の小林美駒――4度目の重賞挑戦だった。 レースはいつもの形になった。後方から3コーナー過ぎに外をまくり上げ、直線で先頭。府中で効かなかった捲りが、小回りの函館では刃になる。半馬身。2着のケリフレッドアスク(北村友一)をしのいで、ファウストラーゼンは弥生賞以来の重賞2勝目を手にした。 だが、ウイニングランは素直に喜べないものになった。直線で外へ斜行し、ケリフレッドアスクの進路に影響を与えたとして、異例の長時間審議。到達順位はそのまま確定したが、小林美駒の表情は晴れなかった。JRA所属の女性騎手として4人目の重賞勝利、本人にとっては初タイトル。その大きな一勝を、彼女はまず、直線で2着馬の進路を妨げたことへの詫びから切り出し、頑張ってくれた馬と、調教からの2週間を支えた関係者への感謝を口にした。 捲りという武器は、まだ錆びていない。向正面で外に持ち出された瞬間にだけ研がれるその刃は、北海道の夏で、もう一度きらりと光った。 ファウスト(Faust)は悪魔と契約した男の名だ。しかし、芝の上でなら契約は無用——この鹿毛の脚は、ただその一瞬のために研がれていればいい。

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