名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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エトヴプレのイメージビジュアル
エトヴプレEtes Vous Prets
Etes Vous Prets

エトヴプレ

通算成績13戦3勝

獲得賞金1533万円

生年月日 2021.03.31(令和3年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
エトヴプレの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
14 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 13人気 丹内祐次 1:09.2 上り35.1映像
12 GIII愛知杯 中京 芝1400 13人気 幸英明 1:21.3 上り36.4映像
5 L淀短距離S 中京 芝1200 6人気 M.デムーロ 1:09.4 上り34.4
18 GII阪神カップ 京都 芝1400 13人気 M.デムーロ 1:21.6 上り35.9映像
11 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 3人気 藤岡佑介 1:08.7 上り35.0映像
4 GIII葵S 京都 芝1200 1人気 藤岡佑介 1:07.5 上り33.6映像
5 GI桜花賞 阪神 芝1600 9人気 鮫島克駿 1:32.5 上り34.2映像
1 GIIフィリーズレビュー 阪神 芝1400 11人気 藤岡佑介 1:20.1 上り35.1映像
4 OP報知杯中京2歳S 中京 芝1200 2人気 藤岡佑介 1:08.7 上り34.1
1 OP福島2歳S 福島 芝1200 1人気 藤岡佑介 1:10.4 上り35.9
1 2歳未勝利 阪神 芝1200 1人気 藤岡佑介 1:08.9 上り34.4
2 2歳未勝利 小倉 芝1200 1人気 藤岡康太 1:09.4 上り34.8
2 2歳新馬 小倉 芝1200 5人気 藤岡康太 1:09.3 上り34.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
エトヴプレの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
Too Darn HotDubawiDubai Millennium
Zomaradah
Dar Re MiSingspiel
Darara
NahoodhClodovilデインヒルDanehill
Clodora
MiseIndian Ridge
Misbegotten
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの芦毛の牝馬。父Too Darn Hot、母Nahoodh。主な勝ち鞍はフィリーズレビュー。

「準備はいいか」― 名と血

「Êtes-vous prêts?」――フェンシングで、審判が両者に投げかける合図。剣を構え、いざ立ち合う直前の「準備はいいか?」。その一言をそのまま名にした芦毛の牝馬が、2021年3月、アイルランドのゴドルフィンの牧場に生まれた。エトヴプレ。 父は無敗の欧州2歳王者から一線級のマイラーとなったトゥーダーンホット。その父はドバウィという欧州の大種牡馬である。母ナフードは2008年にファルマスステークス(英GI)を制した名牝で、半兄にはシャマーダル産駒で英リステッドを勝ったホークスベリーがいる。血の格に不足はない。 海を渡ったこの一頭が手綱を託されたのは、栗東・藤岡健一厩舎。そしてエトヴプレは、藤岡という一家の物語に深く縫い込まれていくことになる。

兄弟の手綱 ― デビュー

2023年8月13日、小倉の芝1200m。新馬戦で5番人気のエトヴプレに跨ったのは、藤岡康太。健一調教師の子で、佑介の弟にあたる。結果は2着。続く9月3日の未勝利戦も康太で2着。惜しいところで、勝ちだけが手をすり抜けていく。 9月23日、阪神の未勝利戦で鞍上が兄・藤岡佑介に替わると、1番人気に応えてついに初勝利。デビューから二度先着を許した壁を越え、一族の芦毛はキャリアの扉を開けた。父が育て、弟が導き、兄が勝たせる――エトヴプレは、はじめから藤岡家みなの馬だった。

秋の上昇 ― オープンへ

2023年11月12日、福島の芝1200m。オープン特別・福島2歳ステークスを、佑介を背にしたエトヴプレは1番人気で危なげなく制し、2勝目を挙げた。続く中京2歳ステークスは2番人気で4着。勝ち切れはしなかったが、短距離で確かなスピードを示す牝馬として、3歳のクラシック戦線へ名を連ねていく。

フィリーズレビュー ― 十一番人気の逃げ切り

2024年3月10日、阪神の芝1400m。桜花賞への切符がかかるフィリーズレビューで、エトヴプレは単勝11番人気だった。距離は自己最長、人気は掲示板の外。それでも藤岡佑介は迷わずハナを主張し、内でロスなくマイペースの逃げに持ち込む。直線、後続の追撃を4分の3馬身しのいで、そのまま先頭でゴールへ飛び込んだ。重賞初制覇。1番人気コラソンビートを、逃げの一手で封じ込めた一戦だった。 「かなり自信はあったんです」[^1]。1200mから1400mへ延びてむしろ良さが出る――佑介は勝利の確信を、静かにそう振り返った。伏兵の逃げ切りは、藤岡家に大きな一日をもたらした。

出典:東スポ競馬「【フィリーズレビュー結果&コメント】11番人気エトヴプレが逃げ切り 藤岡佑「かなり自信はあったんです」」2024年3月10日、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/42847、閲覧日:2026年7月5日。

春の暗転 ― 桜花賞

桜の季節。桜花賞では、弟の藤岡康太がエトヴプレの手綱を取ることになっていた。だが4月6日、阪神の競走で康太は落馬し、頭部と胸部を強く打って病院へ運ばれる。翌7日の桜花賞、急な乗り替わりで彼女に跨ったのは鮫島克駿。9番人気ながら上がり34秒2の脚で追い込み、5着に食い込んだ。 康太は意識を取り戻さないまま、4月10日に世を去った。35歳。JRA通算803勝、GIを2勝した、これからの騎手だった。その桜花賞で手綱を取るはずだった一頭は、家族の名を背に、彼のいない阪神の直線を、確かに走り抜いていた。

芦毛の余生 ― 走り終えて

桜花賞のあと、エトヴプレはスプリント路線へ向かう。5月の葵ステークスは1番人気に支持されて4着。夏のキーンランドカップ、暮れの阪神カップと、相手が強まるにつれ差は開き、結果は伸び悩んだ。2025年も短距離戦を転戦したが上位には届かず、8月のキーンランドカップを最後に、8月29日付で競走馬登録を抹消。母ナフードから継いだ血を次へ渡す、繁殖牝馬となった。 13戦を走り、そのうち3つを勝った。桜が咲く前のあの阪神で、11番人気の逃げ切りが藤岡家に残した午後は、確かに光っていた。彼女を勝たせた佑介はやがて自ら鞍を置き、父・健一と同じ調教師の道へ進んだ。芦毛の牝馬は牧場で春を待つ。準備はいいか――その名が問い続けた答えを、いつか次の世代が出す。

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