名馬の記憶を、再生する。

RACE & RETIREMENT FILM ARCHIVE

YouTubeに散らばる名レースの記録と、北海道で余生を送る引退馬たちの映像を、ひとつの旅(Journey)として結び直すアーカイブ。

レースの三分間だけが、馬の一生ではない。ゴール板の先に続く時間まで、辿れるように。

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名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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イクイノックスのイメージビジュアル
イクイノックスEquinox
Equinox

イクイノックス

通算成績10戦8勝

獲得賞金221,544万円

生年月日 2019.03.23(令和元年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
イクイノックスの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIジャパンカップ(ラストラン) 東京 芝2400 1人気 C.ルメール 2:21.8 上り33.8映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:55.2R 上り33.6映像
1 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 C.ルメール 2:11.2 上り33.6映像
1 GIドバイシーマクラシック メイダン 芝2410 1人気 C.ルメール 2:25.7 上り36.1映像
1 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 C.ルメール 2:32.4 上り33.4映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:57.5 上り33.8映像
2 GI東京優駿(日本ダービー) 東京 芝2400 2人気 C.ルメール 2:21.9 上り33.7映像
2 GI皐月賞 中山 芝2000 3人気 C.ルメール 1:59.8 上り33.8映像
1 GII東京スポーツ杯2歳ステークス 東京 芝1800 1人気 C.ルメール 1:46.2 映像
1 新馬 新潟 芝1800 2人気 C.ルメール 1:47.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
イクイノックスの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キタサンブラックKitasan BlackブラックタイドBlack TideサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
シュガーハートSugar HeartサクラバクシンオーSakura Bakushin O
オトメゴコロOtome Gokoro
シャトーブランシュChateau BlancheキングヘイローKing HaloダンシングブレーヴDancing Brave
グッバイヘイローGoodbye Halo
ブランシェリートニービンTony Bin
メゾンブランシュMaison Blanche

引退後の暮らし

社台スタリオンステーション

引退後の映像は未登録です。社台スタリオンステーション(安平町)の様子は牧場地図で見る

STORY

旅程 — この馬の物語

レーティング世界一の評価のまま電撃引退。キタサンブラックが送り出した、現代最強の名前。

分点 ― 黒と白が交わる名

Equinox。天文の言葉で「分点」、昼と夜の長さが等しく釣り合う一点を指す。父キタサンブラックの黒(ブラック)と、母シャトーブランシュの白(仏語のブランシュ)。その中間に置かれた名が、やがて世界の頂点を意味することになる。2019年3月23日、北海道安平町のノーザンファームに生まれた青鹿毛。一口総額4000万円で募集され、馬主はシルクレーシング、管理は美浦の木村哲也。10戦8勝、国内外のGIを6つ。引退の翌々年、ロンジン・ワールドベストレースホースランキングで日本調教馬歴代最高の135ポンドを刻み、世界1位として殿堂に入った。その始まりは、いつも夜のVTR室で巻き戻したくなる、たった数分のレースの積み重ねだった。

影武者の血、欧州の名牝系

父キタサンブラックの父はブラックタイド。三冠馬ディープインパクトの全兄でありながらGIには縁がなく、種牡馬としても長く目立たない存在だった「影武者」。その血が、息子キタサンブラックを経てイクイノックスに結実する。GI未勝利の兄系が、いまやサンデーサイレンス系で最も太い後継系統を成しつつある。 母シャトーブランシュはマーメイドステークスを制した牝馬。その父キングヘイローは高松宮記念馬で、父は凱旋門賞馬ダンシングブレーヴ、母はG1・7勝のグッバイヘイロー。日高で繋養されていたこの名血に、ノーザンファームがわざわざ種付けに通った――大牧場の謙虚さが歴史的名馬を呼んだ、とも言われる。母系を遡れば祖母父にトニービン(凱旋門賞馬)。血統表には3頭の凱旋門賞馬が並ぶ。ミスタープロスペクター系を持たない汎用性の高さが、後の種牡馬価値を支えることになる。

勝ちきれない春

新潟の新馬戦、好位から抜け出して2着に6馬身差。育成を担った早来の厩舎長は当初、馬体の成長を待って菊花賞を狙う長距離型と見ていたが、その走りに「物凄い馬ではないか」と驚かされた。続く東京スポーツ杯2歳ステークスは上がり32秒9で差し切り、無傷の重賞制覇――キタサンブラック産駒として初の重賞勝ちでもあった。 しかし春は、勝ちきれない。皐月賞は大外枠から同厩のジオグリフにクビ差の2着。ダービーはメンバー最速の上がりで追い込むも、ドウデュースにまたクビ差届かず2着。クラシックを2つ、ともにクビ差で取りこぼした馬。この時点では、まだ「強い2着馬」だった。

本格化 ― 3歳秋、頂への一冬

天皇賞(秋)。パンサラッサが前半1000m通過57秒4の大逃げを打つ。誰もが捕まらないと思った瞬間、後方からただ一頭、上がり32秒7でゴール寸前に差し切った。キャリア5戦でのこの勝利は史上最短。父キタサンブラックとの父子制覇でもあった。ルメールは言った――「今回が彼の最初のGIですが、これが最後ではない」。 暮れの有馬記念は、4コーナーを持ったまま上がり、2馬身半差の完勝。3歳馬のワンツーは28年ぶり。一冬で、強い2着馬は現役最強馬に変わっていた。

世界へ ― メイダンの夜

初の海外遠征、ドバイシーマクラシック。これまで一度も切らなかったハナを、この日は自ら奪った。ノーステッキのまま2着に3馬身半差、勝ち時計2分25秒65はコースレコードを1秒も更新する圧巻。キタサンブラック産駒の海外GI初制覇だった。ルメールはこの勝利を、2週間前に他界した名馬ハーツクライ――かつて自身を同じレースの勝利へ導いた相棒――に捧げた。 帰国初戦の宝塚記念は、スタートでつまずきながら後方2番手から差し切ってクビ差。父が勝てなかったレースを、産駒が獲った。GI4連勝。

完成 ― レコードと、頂点のままのラストラン

二度目の天皇賞(秋)。逃げるジャックドールを3番手で射程に入れ、直線で抜け出して1分55秒2。1999年のチリの記録を上回り、広く「世界レコード級」と語られた数字。史上3頭目の天皇賞秋連覇、GI5連勝。 そしてジャパンカップ。再びパンサラッサの大逃げを3番手で見ながら、坂で先頭に立つと、三冠牝馬リバティアイランドに4馬身差をつけて突き放した。GI6連勝、史上初の偉業。これが、ラストランだった。秋の連戦の疲労を理由に、現役最強の評価をそのまま走りに刻んで、ターフを去る。22億1544万円の総獲得賞金は、史上初の20億円超えだった。

数字が語る最強 ― 135ポンドと殿堂

2023年、ロンジン・ワールドベストレースホースランキングで135ポンド。エルコンドルパサーが凱旋門賞2着で得た日本馬最高記録134を超える、日本調教馬歴代最高値での単独世界1位。同年のジャパンカップはレースレーティング126.75で「世界1位のレース」に選ばれた――日本のGIとして史上初。年度代表馬は2022・2023年を連覇し、父子での年度代表馬は史上初の2年連続。 そして2025年、顕彰馬選定の初年度。記者158名のうち143票、得票率90.5%という圧倒的支持で、史上38頭目の殿堂入り。父キタサンブラックと並ぶ父子顕彰馬となった。数字のどれを取っても、この馬は最強と書いてある。

次の物語 ― 種牡馬イクイノックス

引退後は社台スタリオンステーション、父キタサンブラックの向かいの馬房へ。初年度種付料2000万円は、ディープインパクトもコントレイルも超える日本史上最高額。2026年には2500万円に増額された。配合相手にはアーモンドアイ、デアリングタクトの三冠牝馬、ソダシ、ソングラインら名牝が名を連ねる。 初年度産駒は2025年に誕生。ソダシの初仔、アーモンドアイの仔――。同年7月のセレクトセール当歳部門では上場24頭中23頭が総額35億6500万円で落札され、平均1億5982万円、最高はミッドナイトビズーの仔の5億8000万円。デビューはまだ2027年、一度も走っていない。それでも市場は、この名の次の蹄跡を待ちきれずにいる。